風越のいま 2022年1月26日

いつでも遊んでいて、いつでも学んでいる

井手 祐子
投稿者 | 井手 祐子

2022年1月26日

新型コロナウイルスの感染が広がり、休校になった今週。オンラインで行われた朝のつどいに、西1年生の子どもたちが集まった。

つどいの中で、「今日、どんな風に過ごすの?学びはどうする?」と子どもたちに聞いてみた。すると、「ビーズをする」「お散歩に行く」「映画を見る」「10時半〜11時半まで学びをする」「ドリルを今日全部終わらせる」など、1日の計画をホワイトボードに書いて見せてくれる子どもたち。「えー!決まってない」「分からない」と言う子がいないことに驚いた朝だった。

おまけに、「自分で学ぶのが難しいようなら、一緒に学ぶ時間を作ろうか?朝のつどいの後、zoomを繋ぎっぱなしにしてやってもいいよ。」と提案してみたが、「大丈夫!自分で学べる〜!!」と、頼もしい声が。この自信に満ちた感じが、なんとも西1年生らしい。

新型コロナウイルスの感染状況に翻弄されて、学びの場所やグループ単位を幾度となく変更することになったこの1年。特に1年生の子どもたちは、2階のルーム→キッチン→土間・YY→ライブラリーの青床と、空いている場所を探して、数ヶ月おきに移動してきた。そんな環境で、後期の人たちの昼休みと自分たちの学びの時間が重なり周りがザワザワしていても、見学の人たちに囲まれても、変わらず自分の学びに向かう子どもたちの姿があった。学びの時間より前にやってきて勝手に自習し始める人がいたり、家でも学びたいと自らプリントを持ち帰ったりすることも。「そろそろ時間だから終わろうか」と声をかけると、「えー!!もっと続きがやりたい」といつまでも学び続ける人がいるくらい。

そんな学びを自分のモノにしてきた子どもたちだから、学びの場が自宅になるくらいは、大した変化ではないのかもしれない。

子どもたちの学びに向かうエネルギーに感心するばかりで、何がどうして、こうなったのか、まだ上手く説明できないけれど・・・。今の子どもたちの状態は、「学びのコントローラーを子ども自身が持つ」を成し得ているのではないかと思う。自立した学び手として歩み始めた子どもたちの姿を、残しておきたい。

暮らしから学ぶ〜算数〜

前期の小学生を受け持つとっくん(片岡)りりー(勝山)みほさん(橋場)ふっしぁん(藤山)もぎーさん(茂木)と相談して、4月は「自分たちの暮らしを作る」「子どもたちの関係性をつくる」を大切することにした。年少から小学2年生までの子どもたちが、たっぷり遊んで暮らしをつくる日々。

探検に出かけて見つけたものを題材に、数えたり、測ったり。「オタマジャクシは何匹いる?」「花の調査で使う棒は、全部で何本?」「さくらの実は合わせていくつ?」「うなぎ2貫、いくら3貫、ラーメン1杯なので、お金の葉っぱ6枚ください」と、暮らしや遊びの中で数と出会い、体験を通して量感を身につけることを意識していた。

4月も終わりに差し掛かったころ、「ゆっけ、ぼくたち1年生なんだけど。学びはないの?」と子どもたちが聞いてくるようになった。「実は暮らしの中でたくさん学んでるんだけどなぁ。みんながイメージする学びってどんなもの?」と尋ねると、「小学生は、校舎の中に入って学ぶんじゃないの?紙とペンを持って勉強したいの」と。

みほさんとは、夏休み前までは暮らしの中で学ぶだけでもいいんじゃない?と話していたけれど、子どもたちの熱に押され、午後は校舎に入る生活が始まった。(1・2年生の学びでは、教科書やワークを使って全ての単元を押さえるのではなく、暮らしや遊びの中で触れる体験ベースの単元と、数の概念を定着させたり、一般化するために整理して学ぶ単元とをいったりきたりしながら学んでいる。)

5月〜夏休み前。学びのエンジンがかかった子どもたちに、ゴリさんが伝授してくれた「8年生が実践する風越の学び方」。

・ピンチはチャンス(分からないは学ぶきっかけ)
・ぐいぐい学ぶ(自分で手応えを感じながら)
・超丁寧に
・自分が賢くなる
・みんなで賢くなる

ゴリさんの語りかけにも触発されて、「わたしたち、8年生と同じことができちゃうの?!」「すごいじゃんぼくたち」と、目の色が変わった。「おれたちより集中して学んでる・・・。」と、通りがけに呟いた8年生の言葉にニンマリしたり、丸つけのアルバイトに来てくれた3年生のチヅルに刺激を受けて、算数が苦手な2年生が「私も1年生に教えたい!」と算数の復習を自ら始めたり。互いの熱量に感化されて、どんどんギアが上がっていくから、それに伴走する大人の準備が間に合わなかったくらい。

「アオバ、算数どう?」「こんな感じ!」

6月ごろ。1年生のハク、ハジメ、キョウ、ユウスケのお寿司屋さんごっこに、数字が使われるようになった。



学びの時間に触れたことが、遊びの中に取り入れられるようになったのだ。その遊びからヒントを得て、学びの時間にお店屋さんをテーマに足し算を学んで・・・。いつでも学んでいて、いつでも遊んでいる状態だった。

関係がぐっと深まってきた秋。1年生の算数では、ワークショップ形式の学びを取り入れた。「誰が見ても、一眼で分かるような、数え方を発明せよ!」をお題に、体験を通して量感を身につけてきた経験を生かして、数人のグループで相談して、自分たちなりの方法・考えを発表することに。正解ありきで知識として身につけるのではなく、まずは考えてみる、表現してみる、このプロセスをたっぷり経験してほしいと考えた。

「くり上がりの足し算」のポイントを押さえた後、『さんすうミッション』を手渡した。一人一人の進度に合わせて、基本から発展まで、取り組む課題を自分で選べるようになったビンゴだ。1日にいくつも課題をクリアする人もいれば、大きな課題にじっくり取り組む人も。ガクは、チャレンジプリントのある1問に、5日間挑戦し続けた。その集中力には目を見張るものがあった。

 

また、ミッションの一つに、「7+8 ゴリさんに考え方を説明する」「4+9 KAIさんに考え方を説明する」という、頭の中の思考を言語化して説明する課題があるのだが、これがなかなかの難問で、ラスボスの二人を探して、何度もチャレンジする子どもたちの姿があった。自分で決めたチャレンジだから、簡単には諦められないし、頑張れるのだろう。

そして、秋の終わりごろ。次の単元「繰り下がりの引き算」では、個人で、自分なりの方法や考え方を発表することに。子どもたちにはそれぞれ拘りがあり、人と違うことがどこか誇らしげ。

そして、今。
オンラインの初日、「大丈夫!自分で学べる〜!」と言った西の1年生。翌日聞いてみたら、本当に自分たちで学んでいた。締切に追われてかぜのーとを書いている自分が恥ずかしくなるくらい、子どもたちの方が学びのコントローラーを持っているみたい。あっぱれ!

#1・2年 #カリキュラム #前期 #土台の学び

井手 祐子

投稿者井手 祐子

投稿者井手 祐子

生き物たちのドラマに魅せられて、軽井沢で森のガイドを15年。子どもたちと自然を見続けたくて軽井沢風越学園へ。学園の森の保全しながら、子どもたちと自然の不思議や面白さを見つけていきたい。幼少期は、近所で評判のお転婆娘。実は、冒険や探険に誰よりも心躍らせている。

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