わたしたちのカリキュラム

【12年間の幼小中混在校】

「自分をつくる時期」と「自分でつくる時期」

軽井沢風越学園は幼稚園と義務教育学校からなる12年間の幼小中混在校(注1)です。カリキュラム上は、幼稚園年少から小学2年生までを<前期>、小学3年生から中学3年生までを<後期>とします。これは、実体験から抽象的に学び始める時期、探索から探究へと移行する時期、あそびから学びが発展する時期などをイメージして決めました。<前期>は「自分をつくる時期」、<後期>は「自分でつくる時期」と考えています。

 

前期の子どもたちは、あそびや生活の中で、身の回りの世界を体全体で感じたり、感情をめいっぱい表現したりしながら、「〜したい」を軸とした自分らしさや自分の生活をつくっていきます。後期の子どもたちは、前期の間にじっくり育んだ「〜したい」をもとに、他者や社会との関係を大切にしながら、様々な「つくる」を本気でたっぷり経験していきます。

 

幼稚園児・小学生・中学生がまざってあそび、学ぶことが、軽井沢風越学園の大きな特徴です。前期と後期はゆるやかなつながりを持ち、スタッフは子どもの実態に即して、今その子にとって何が必要かを考え、過不足なく関わることを目指します。多様な人たちとともに、互いが気持ちよく過ごすための環境を自分たち自身でつくることを通じて、子どもたちはつくり手としての経験を深めていきます。

(注1)一般的には“一貫校”ですが「じっくり・ゆったり・たっぷり・まざって」の願いを込めて“混在校”と表現しています。


【カリキュラムの3つの軸】

①土台の芽・探究の芽

前期(幼稚園年少から小学2年生)の子どもたちは、じっくり・ゆったり・たっぷりとしたあそびを中心に1日を過ごします。わたしたちが考える子ども時代に大切な経験は、「本物に触れ、自分の体と心をつかって感じること」、「五感を通して感じ、自分の感性や感覚を豊かにすること」、「自分の手で自分の未来をつくる実感を持つこと」です。森や、図工室(ラボ)・ライブラリーなどがある校舎でのあそびや関わりを通じて、子どもたちはこうした経験を積み重ねていきます。食事や衣類の着脱など自分の身の回りのこと、自分の気持ちを伝えること、身の安全を自分で守ることなど、自分の心と身体を知りながら、自分で自分の生活をつくっていくことを大切にします。

 

前期の学びは「あそびに没頭しているうちに、結果として学んでいる」ことをカリキュラムの中心とします。教えたい内容を大人が示すのではなく、幼児教育で行われてきた「あそびや環境を通して、子どもたちが様々な内容を経験できるような学び方」を小学校低学年にも広げます。子ども自身の「〜したい」という意欲や動機から自分で道を切り開いていくことで、学びは一つの教科に収まることなく立体的に広がります。自分たちで生活する場を野外につくりたい、森にひみつきちをつくりたい、ちょうや虫をつかまえたい、ライブラリーで絵本をじっくり読みたい、お店やさんをしたいなど、子どもの「~したい」から始まるあそびが土台の芽・探究の芽となるのです。

参考映像(2020年6月):「晴れの日」・「曇り/雨の日

「熱中」

②土台の学び

土台の学びは、探究を支え深める学びです。教科の専門性を持ったスタッフのサポートにより、その子に合った学び方をその子のペースで学んでいくことを前期から段階的に試行します。子どもの前を歩く、子どもと手をつなぐ、子どもの後ろからついていくなど、学習内容やスタッフとその子の関係性によってサポートの方法は様々です。また、子ども自身で何をするかを決められる時間の余白を設け、より深めたいことを学んでいきます。

 

具体的には、たとえばあそびの中で出会った言葉をきっかけに、自分で読みたいものや書きたいことを選び、たっぷりと読みひたり、書きひたる経験を大切にします。また、あそびや生活の中での形や量・数との出会いを発展させ、スタッフが数学的体験をデザインすることもあります。こうして得られる学びは、探究する力の土台となるとともに、土台の学びのプロセスそのものが試行錯誤を含んだ探究であると考えます。

後期では、より専門性を高めた土台の学びの時間を設定しています。国語科の「作家の時間」「読書家の時間」、理科の「科学者の時間」、社会科の「地球と人」などです。算数は、自由進度学習を取り入れ、異年齢で学び合いながら主体的に学習を進めています。

参考記事:変態し続ける1,2年生の1日

参考映像(2020年6月):「前期(作家の時間) 」

「後期(算数・数学/作家・読書家の時間)」

 

③探究の学び

後期(小学3年生から中学3年生)の子どもたちは、それぞれの「〜したい」という情熱から始まる探究の学びにひたります。後期のカリキュラムのうち約半分が探究の学びの時間です。子どもから生まれた問いを個々に深めたり、興味関心の近いグループで探究をすすめていく「わたしをつくる」、年齢の近い子どもたちで一つのテーマを探究する「テーマプロジェクト」が探究の学びのメインになります。スタッフが探究のテーマを提案する場合もありますが、問いを立てるのは子ども自身です。軽井沢風越学園では網羅主義的に知識を増やすことは目指しません。探究が「やってみたい、知りたい、解明したい」などの情熱とつながっていれば、子どもたちは教科の分け隔てなく学んでいくことができると信じています。

 

探究の学びで大切にしたいことは、以下の通りです。

 

  • 子どもたち一人ひとりの「〜したい」が大切にされること
  • 互いの学ぶプロセスや学んだものを通して、互いをより深く理解していくこと
  • 学ぶプロセスで実社会と関わったり、学んだものを実社会につなげていくこと
  • 仲間やスタッフとふりかえりを行う中で、学びの軌道修正をしたり、何を学んだか確かめながら次に進んでいくこと

 

土台の学びと探究の学びは、密接に結びついています。土台の学びが探究の学びをより豊かにするだけでなく、探究の学びを通じて興味・関心が拡がり、日々の土台の学びにもより前向きに取り組むことができます。そのため、土台の学びとテーマプロジェクトは、同じラーニンググループ(3・4年、5・6年、7・8年の異年齢グループ)で学びます。ただし、この単位は固定的ではなく、時には同年齢で集まったり、逆にもっと大きな異年齢のまとまりで集まったり、時に興味・関心で集まったりと、流動的に変化していきます。

 

軽井沢風越学園では、子どもが自分の学びをデザインします。学習計画を立てるだけでなく、宿題やテストも自分で計画し、何を学んだかを定期的にふりかえって、仲間やスタッフと共有します。他の人の助けを得ながら、自分なりの学び方やペースをつくることは、自分の未来は自分でつくることができるという実感につながります。

参考映像(2020年6月):セルフビルド(剥製)」・「セルフビルド(科学)

「セルフビルド」

テーマプロジェクト(7年生)」

「第1回 プロジェクトアウトプットデー 2020/7/1」


【あそびと学びを支える環境】

①自然、ライブラリー、ラボ

軽井沢風越学園には豊かな自然とライブラリー、道具や材料に囲まれてつくることに没頭できるラボなど、様々なおもしろさ・不思議さにふれ、実際に自分もやってみたい、試してみたい、つくってみたいと思うような多様な環境があります。

学校敷地内には、校舎面積の2倍以上の森林があり、そこには多様な植物がしげり、たくさんの動物や昆虫が生息しています。その森の中で、前期の子どもたちは思う存分好奇心を発揮しながらあそび、後期の子どもたちは様々な自然に関わるプロジェクト進めています。

 

ライブラリーには、2021年7月現在で約3万冊の蔵書があり、前期・後期それぞれの子どもたちのあそびや学びに生かされています。また、子どもたちの知的好奇心・創造力などを刺激し、本をはじめとする情報がプロジェクトのはじまりになったり、探究を進めるサポートになったりしています。ライブラリーを校舎の真ん中に据え、子どもたちの生活空間に溶け込むように、本を読むことが生活の一部になるように環境を整えています。

 

ラボは、図工室・工房・技術家庭科室・理科室・そうぞうの広場の総称で、子どもたちのつくる・えがく・探究する活動が日々展開されています。それぞれの部屋に専門のスタッフが付き、子どもたちの「〜したい」に寄り添い、伴走しています

 

②ホーム

軽井沢風越学園には同学年での学級はなく、異年齢構成の<ホーム>があります。2021年度の前期は2つのホームに分かれ、65名前後の子どもたちと5〜7名のスタッフを1つのホームとしています。時期や活動に合わせて、その中で様々な小グループをつくりながら過ごしています。後期は、30名前後の子どもたちと2名のスタッフを一つのホームとしています。異年齢で過ごすことを通して、自分の視線とは違う世界を見たり、真似したり、試したりしながら、新しい世界をともにつくります。

 

あそびや学びに没頭するには、自分の存在が大切にされていると感じられる安心の場が必要です。ホームは「聴きあう」ことと「多様さを認めあう」ことを大切にし、子どもたち自身で安心な場をつくります。 

 

また、ホームは仲間と何かをつくったり決めたりすることで、自分たちの手で環境をよりよく変えていけるという手応えを重ねる場でもあります。

 

③コミュニケーション・プラットフォーム typhoon

軽井沢風越学園では、パソコンやスマートフォン、タブレットからアクセス可能なコミュニケーション・プラットフォーム「typhoon」を開発しました。学校と保護者との連絡は、このプラットフォーム上でやりとりされます。

 

また、後期の子どもたちはこのプラットフォーム上でプロジェクトのスケジュールを調整したり、学びの進捗状況やふりかえりを記入します。そこでは、仲間やスタッフ、保護者から、いつでもフィードバックをもらうことができます。

 

④アドベンチャーカリキュラム

2021年度から、アドベンチャーカリキュラムを始めることにしました。私たちは、アドベンチャーには人の成長を促す力があると考えています。アドベンチャーというと、どうしても自然の中でのことと思われるかもしれませんが、まだ分からないことを学ぶこと、自分の「〜したい」を追究すること、多様な人とつながり協同することなど「未知なるもの」との出会いをアドベンチャーととらえています。アドベンチャーを通じて子どもたちが得た体験は、日常の子どもたちのあそびや学びを支えていくことにつながります。


アドベンチャーカリキュラムは3つの柱で構成されています。
まずは、未知の自分たちに出会う「リレーションシップラボ」。ここではホームの関係性を築くプログラムを行います。
2つめは未知の自然や活動に出会う「アクティビティベース」。軽井沢周辺には、豊かな自然がすぐ手に届くところにあります。その自然の中で、日常では経験できないアドベンチャーにチャレンジします。
最後に、未知の自分に出会う「セルフディスカバリー」。それぞれ次のステージへ進む6年時と9年時に、アドベンチャーを通して今の自分を知ると同時に、他者や社会など自分の外側にあるものを単に受け入れるのではなく、自ら意思決定したり、自分のこれからのことに自身の体験を意味づけたりするための長期のアドベンチャープログラムです。

 


【子どもの一日】

軽井沢風越学園では、自分の時間の使い方は自分で決めます。1日の始まりと終わりにホームでの時間を持ち、前期の子どもたちは話し合ってあそびや活動を決めています。後期の子どもたちはそれぞれに毎週の学習計画をつくるため、一人ひとりが異なる時間割で過ごします。以下は、2021年7月の時間割サンプルです。

  • 幼稚園・義務教育学校ともに、登園・登校時間は8時15分から、始業は8時30分からです。
  • 幼稚園の降園は15時、義務教育学校の下校時間は15時30分です。ただし水曜日は、前期は14時降園、後期は13時30分下校になります。

 

放課後の過ごし方は、現在保護者の方々と一緒に、どのような形で場をつくれるか協議しています。子どもたちに豊かな時間を過ごしてほしいと思う一方で、放課後にどのように校舎を開放するのか、スタッフの業務との兼ね合いはどうするのかなどの懸念もあります。どんな体制や方法であれば子どもたちの放課後が豊かになるのか、これから子どもたち、保護者、地域の方々と共につくっていきます。

 


【民主的な文化をつくる・かざこしミーティング】

軽井沢風越学園は、子どもも大人も一人ひとりがつくり手です。毎月、「よりよい風越をつくっていくために話し合いたいこと」をもち寄って、「かざこしミーティング」を行います。そこには、誰でも参加自由。3歳〜15歳の子どもたちとスタッフはもちろん、時には、保護者や地域の人たちも参加して、わたしたちの風越について話し合います。そこで扱われる議題は、「〜したい!」を実現するためのものもあれば、問題を解決するためのものまで様々です。本来、学校の年間予定で決まっているような「行事」についても、ここから生まれてくるかもしれません。ここから始まったミーティングは、それぞれの日常に戻っても続きが行われたり、そのままプロジェクトが立ち上がっていったりします。

かざこしミーティングでは、以下の3つのことを大切にします。

  1. 日常的な対話:毎月の「かざこしミーティング」で話し合うことに留まらず、よりよい風越をつくっていくための対話は、日常的に、同時多発的に行われます。そういった日常の積み重ねが、よりよい風越をつくり、よりよい自分たちをつくっていきます。また、いつでも、誰でも、話し合いたいことがあれば、提案し、話し合いの場を持つことができます。そのための必要な助けを求めることができます。
  2. 多様なプロセス:話し合いのプロセスは多様です。納得いくまでとことん話し合うこともあれば、期限を決めて決め切ることも、まずやってみてから話し合うこともあります。ファシリテーターは、子どもたち自身が務め、必要な人に相談しながら、議題に合った方法を選んで話し合いを進めていきます。
  3. オープンな広場:風越の中で行われている話し合いについては、常にオープンにされていて、いつでも、誰でも意見し、参画することを目指しています。参加できなかった人たちにも情報は開示され、どこでどんなことが話し合われているかや、風越内の関心ごとについてオープンになっていることも大切にされます。

 

2021年7月30日版