毎日うろうろ 2022年1月12日

風越の校舎は「街」のようだ。

岩瀬 直樹
投稿者 | 岩瀬 直樹

2022年1月12日

見学に来た人に「ここは学校というより小さな社会ですね。社会をつくっている感じ」と言われたことがある。学校は25年後の社会。未来の社会はこうありたい、を体現しようとする場所だとぼくは常々考えているので、とても嬉しい感想だった。

11月、東京学芸大学教職大学院の渡辺貴裕(准教授)さんが2日間、見学に来たときには、「岩瀬さん、風越は街のメタファーですね」と話していた。

風越の校舎と敷地は「街」だなあと感じる。いろいろなことがそこで生じていて、人が集まり、出会いがある。
校舎がオープン&ガラス張りで、いろいろな活動の様子が目に入るから、自然と部屋に足を踏み入れて、活動を見守ったり、何をしているか子どもに教えてもらったり。腰を下ろせる場所が至るところにあるから、ちょっと一服したり、思い浮かんだ考えをメモで入力しておいたり。校舎内で人が行き交っていて、長野県教委の知り合いに出会ったり(高校の探究に関する県の研修を風越の校舎で開催されていた)、見学の保護者の方に話しかけられたり、地域の連携プロジェクトのため来校して見学していた高校生とおしゃべりしたりも。持参した上履きの底が剥がれたときには、工房に行って、ウルトラ多用途の接着剤を貸してもらいもした。
これらのことが自然に起こる。「学校は小さな社会」といった言い方があるけれど、今回、「あぁ、風越は街だな」としみじみ感じた。
カリキュラムに関して、個人探究の「プロジェクト」をどう進めるかとか、異学年の「ホーム」をどう機能させるかとか、まだまだ課題はいっぱいだが、そこに居る人たちが(子どもも大人も)担い手となって、「まちづくり」が進んでいけばいいなあと思っている。
(Facebookの渡辺さんの投稿より)

この「街」というメタファーで改めて学校を歩いていると確かにそんな感じだ。
写真はぼくが校舎で一番好きな場所。ここにいると、この街のあちこちでおこなわれていることが一望できる。子どもも大人も、お互いがやっていることをなんとなく感じ合いながら、影響を受け合いながら学ぶ。

7、8年生が演劇のプロジェクトのリハーサルをしている側で、何やらパソコンをいじっている人がいる。1階に降りていって声をかけてみた。

ぼくが校舎内をウロウロするときには、まず「何をしているの?」ときく。それぞれがやっていることが違うから、そうきくのは当たり前といえば当たり前だが、「集中しているねー!」「すごいねー!」と評価して歩くのではなく、その子が関心を寄せていることに関心を寄せるようにしている。

「何しているの?」
「今度の風越ミーティングで流す、ドラマの動画を編集しているの。めちゃくちゃ面白いから!」
「へー、もう少し詳しく教えてよ。」
「内緒!本番楽しみにしてて!」

何やらオリジナル脚本をつくってスタッフ出演の動画を撮影して、それを編集しているらしい。それを上映してみんなに喜んでもらいたいそうだ。

いつもはその後には「この後何をするの?」と学びのこれからの展開をきくのだけれど、今回は内緒らしいから、これ以上は断念。

お互いの様子をなんとなく感じあいながら、いろいろな場所でいろいろな人がいろいろなことをしていて、それぞれ学んでいる。

風越の校舎は、教室など空間を閉じることで人の動きを制限してきたこれまでの学校建築とはそもそもの設計思想がちがっていて、その子自身が自分の学びや暮らしに応じて移動しながら学ぶ、人が行き交う場だ。
調べたくなった人はライブラリーに。落ち着いて読みたい人はソファーに。つくりたくなったらラボへ。集中したくなったら2階のカウンターへ。スタッフに相談があるときはオフィスに。自分の目的に合った居場所を探す。だから常に人が動いている。
人によっては学校っぽくないと不安になったり、空間で制御したくなったりもするかもしれない。でも、学びのコントローラーを操作するのはその子自身。それはつまり自分で学びの場を選ぶこと、居心地のよい場を選ぶことでもある。学習者中心に相応しい空間とは、その子自身が自己選択・自己決定できることを保証することにあるんじゃないか。
なかなかいい場所を見つけられなかったり、没頭できることに出会えなかったりすることもあるけれど、それも含めて大切な経験だと思っている。

大人も子どももいろんな人が行き交う自由でオープンな空間。
いろんな人が行き交うのだから、そこで生まれる出会いや学びは事前にはわからない。そのカオスな感じを大切にしたい。
街と表現してもらって、あらためてそれはとてもうれしいことだなと思っています。

(後日12月24日(金)に上映した映像はこちら)

 

 

#2021 #異年齢

岩瀬 直樹

投稿者岩瀬 直樹

投稿者岩瀬 直樹

幸せな子ども時代を過ごせる場とは?過去の経験や仕組みにとらわれず、新しいかたちを大胆に一緒につくっていきます。起きること、一緒につくることを「そうきたか!」おもしろがり、おもしろいと思う人たちとつながっていきたいです。

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