2021年7月19日
(書き手・酒井 朝羽/2023年3月 退職)
「なにこの熱量!私、この空間好きだ!」
今年度2回目のアウトプットデイが7月8日(木)に行われた。午前中にあったテーマプロジェクトの発表。私の担当した7・8年生Bグループの発表を見ていて、私は心の中でこうつぶやいていた。
なぜこんなにも子どもたちに熱量があったのか、スタッフ自身がこんなにもワクワクできたのか、この機会に言語化してみようと思う。
今年度、2ターム目に入ったテーマプロジェクト。今回は7・8年生を2つのグループに分けてプロジェクトをやることになり、一つのテーマは「私メインでやらせてください!」と手を挙げて、ぽん(根岸)・りんちゃん(甲斐)とともに担当することになった。
今回のプロジェクトから、「探究スキルカード(※)」を使うことになり、探究スキルカードを参考にしながら3人でどんなプロジェクトにしようかと話し合った。
その中で、「どんなことがあると探究を楽しいと感じるか」という話しになり、私が探究していく中で楽しい!面白い!と思うことはどういう瞬間なのかをふりかえってみた。
自分でやりたいと決めたことを探究していく楽しさを知ったのは高校時代の経験が大きい。
学校の授業とは関係なく、勝手に他校の友達とマイプロジェクトをやっていた。それは学校を越えて同世代の高校生と議論できる場をつくるプロジェクトだった。とにかく同世代が本音で話せる場がないことを憂いていたので、ないなら作っちゃえばいいじゃん!と他校の友達と「長野高校生会議」という場づくりに奮闘していた。
「生きること死ぬこと」というテーマで話したいとメンバーで決めた時、ゲストとして誰を呼ぼうか考えた。ある子は「お世話になっているお坊さんが面白いから連絡してみるね」といい、ある子は「信州大学医学部に出生前診断に関わる人がいるから呼びたい」といい、あともう一人ゲストを決めようというとき、誰かが「チャイルドラインに関わる人を呼んでみるのよくない?」といい、なぜか私がチャイルドラインの人にアポを取ることになった。
小学校からチャイルドラインの存在を知っていたが、運営している方に別に知り合いがいたわけでもなく、ホームページに載っていた電話番号にかけて、アポを取ってみることに。どんな場なのか説明をして、「高校生が話す場に、ぜひ来てほしいです」と伝えると、「いいですよ」と返事をもらえた。こんなにも簡単に返事がもらえると思っていなかったので、驚いたと同時に、世の中には自分のやりたいことを助けてくれる人がいることを知れた。そこからメールでやりとりや実際に会って打ち合わせをしながら、「長野高校生会議」の当日を迎えた。
チャイルドラインの方との議論のテーマは「高校生として生きる」とし、それぞれが悩んでいること感じていることを率直に話す時間にした。友達が感じている生きにくさを語ってくれたり、取材に来ていた新聞記者の人が「幸せのハードルを下げることで小さなことでも幸せに感じることができるんじゃないか」と幸せについて語ってくれたり。チャイルドラインの方はじっくりとみんなの話に耳を傾けてくれていた。初めて会った人も多かった中、集まった人たちが本音で語り合えることがうれしかったし、すごく楽しい時間だった。
学校の中で友達と共に学ぶ時間も面白かったけど、学校の外に出ていろんな人に出会い、話す経験は最高に面白い時間だった。
このプロジェクトによって、私は外の人と出会う楽しさを学んだ。
探究の進め方って色々とあると思うけど、私がプロセスの中で子どもたちにも味わってほしい、出会ってほしいと思っているのは「外に出ること」「自分で情報を取りに行くこと」だなと改めて高校時代をふりかえることで気づくことができた。
今回のテーマプロジェクトでは、そうしたアクションをすることの面白さを味わい、その子自身がこれからさまざまな探究の進め方のヒントになるといいなあと思い、探究スキルカードの「フィールドワーク」「ゆけますコンパス」を中心に置いて設計することにした。
今回印象的だったのがミヤビとアオイの姿である。
最初の授業では今回のテーマは「生命(いのち)」であること、今回大事にしたいことは、「外に出ること」「自分で情報を取りに行くこと」だよと子どもたちに伝えた。そのことをたぶんまっすぐ受け止めたふたり。(そういうところが素敵!といつも思っている)
「動物のいのち」について考えたいということで、普段ミヤビがお世話になっている「あおぞら動物病院」に行って実際の動物病院の現場を見て獣医さんに話を聞きたいと、すぐに電話をしていた。数日後、「あさは、6月16日にアポ取れたから、あとは引率よろしく~」といわれた。なんと行動が早いんだろう!とうれしくなった。
取材当日、まずは増山院長先生に「子どもたちがアポを取ってくれて、電話の対応も丁寧ですごいなと思ったよ!」と褒められるところから始まり、ミヤビとアオイは10個以上考えてきた質問をどんどん増山先生に投げかける。ほかにも働いていた獣医さんや看護師さんにも遠慮なく、質問をどんどん投げかけていた。3時間という取材時間はあっという間で、その中で2人の質問は尽きることがなかった。
「こうやって子どもたち自身で学びをつかみとってほしいし、私はそのためのサポートを風越学園でしたかったんだなあ」と感じた瞬間だった。
私にも子どもたちに話せることってたくさんあるけど、こういった動物病院の現場は実際に行ってみないとわからないし、日々働いている人から生の声を聞けるって、今この瞬間にしか出会えないものにたくさん出会っているんだなと思った。この経験はミヤビとアオイだからこそ起こせたことで、他の人が同じあおぞら動物病院へ取材に行ったとしても、その場でいろんな話を聞くことはできるけど、2人が経験したことをそっくりそのまま経験することは誰もすることができない。一人ひとりの経験ってそういうものだと思っていて、その人にしか語れないものとなる。そうしたオリジナリティがプロジェクトを面白くするんじゃないかと思わせてくれた取材だった。
次の日、テーマの時間で2人は取材の様子を他の子たちにも伝えてくれた。2人の行動の早さにみんな驚き、楽しそうに帰ってきた2人を目の当たりにした。それがきっと他の子たちにも伝播したのか、その日からみんなのアクションが確実に加速していった。
他の子たちも様々な人に取材をした。高校の先生、カウンセラー、大学教授、りんご農家・・・。自分で情報を取りにいったからこそ、その人にしか語れない経験があり、そのオリジナリティがみんなのアウトプットに表れていた。子どもたちはアクションしたからこそわかったことをたくさん言葉にしていた。だからこんなにも熱量のあるアウトプットデイになったんだろうなあ。
みんなに「自分で情報を取りに行くんだよ」と言うからには、私もやってやろうじゃないかと、子どもたちの問いにつながりそうな方5名にアポを取った。もちろん子どもたちのアポではサポートも必要だったので、その都度スタッフでうまく分担してサポートをし、今回のプロジェクトは成り立っている。
「アクションは子どもたちの探究を加速させる」
そんなことを私に感じさせてくれた今回のテーマプロジェクト。
今回学んだことがこれからの子どもたちの探究にどう影響していくだろう。これからも子どもたち自身が学びのコントローラーを握り、アクションをバンバン起こしていってほしいし、私自身はそれを全力でサポートできるスタッフになりたい。