風越のいま 2022年1月18日

「スタッフのはたらき」って?

かぜのーと編集部
投稿者 | かぜのーと編集部

2022年1月18日

昨年5月から、ほぼ毎月1回、オンライン授業見学を実施しています。なかなか個人の見学をお受けできない情況を受けて、今年度新しく試みていることの一つです。第8回・1月14日のテーマは、「スタッフのはたらき」。本城・岩瀬に加え、スタッフの馬野岡田の4人が2つの映像を見ながら交わしたやりとりの一部をご紹介します。

本城

「スタッフのはたらき」って聞くと、どんなことやどんなシーンを思い浮かべる?

馬野

ちょうど今、5,6年生の子どもと、1対1の面談をしているので、一人ひとりとやりとりしながら、こんなことやってみたら?、とかこんな本を読んでみるとどう?、などとその子の興味・関心と関連して何かを伝える、みたいなことが思い浮かびますね。あとは、環境づくりかな。スタッフから直接的に伝えるわけじゃないけれど、ある環境・設定を置くことでスタッフからのメッセージやはたらきがあると思っています。

岩瀬

スタッフがそこにいる、というのも一つのはたらきかけだよね。たとえその場で子どもに声をかけなくとも、常に相手に何かの影響を及ぼしているなぁと思う。スタッフのはたらきとは、その影響にどれくらい自覚的であるか。自分の存在が、その子にどんな影響を与えているのか。今の居方がどんな影響を与えているかを常に想像しながら、どれくらい敏感でいられるかが大事なんじゃないかな。
風越学園みたいに、子どもが自分の学びのコントローラを持つことを大事にしようとすると、スタッフがただ見ているだけ、任せる、みたいになりがち。その子が本当にコントローラを操作していて試行錯誤している経験になってることもあれば、実はスタッフにほっとかれている、関心ないんだなと子どもが思うこともある。

本城

何かする、しない、どちらも影響力があるよね。話を聞きながら、初めて僕がゴリさん(岩瀬)の教室に行った16,7年前くらいのことを思い出しました。当時は埼玉県の公立小学校で5年生の担任をしていたんだよね。教員であるゴリさんの動きよりも、教室の子どもたちのことがとにかく印象に残っていて。あの教室を見ているからこそ、ゴリさんと学校づくりを一緒にしたいなと思ったのでした。スタッフの「うごき」と「はたらき」って、似てるけど違うところがあるな、ゴリさんの教室ではゴリさんのうごきというよりも、「はたらき」が作用してたんじゃないかな、と思い返していました。

岩瀬

僕が教室にいたあの時間って、何もしてなさそうに見えてほんと忙しくて。忙しいというのもちょっと違うんだけど。感覚的には、体で場を感じて、気になるからこのあたりに行ってみようとか、あのあたりは穏やかだから大丈夫そうだなとか、場を見ながら考え続けている。できるだけ、たくさん関わらないように、と意識してるけど、必要な声をかけたり、傍に座ってみたりとか、センサーをものすごく働かせて、その場にいたんだよね。

本城

たくさん関わらないように、ということと、何もしないということは違うんだよね。では、映像を見ていきましょう。まずは、昨年度の3,4年生の「つくる・描く」の場面です。国語で扱った「のはらうた」に関連して、詩の世界を版画で表現する時間です。

本城

2分50秒くらいまで、こぐま(岡部)が全体にインストラクション(説明)している様子が写っていました。そこでの「はたらき」について、どんなふうに見ましたか。

馬野

割り箸でペンを作って書く。子どもたちは、普段割り箸をあんなふうに使わないと思うけど、こんな使い方ができるんだ!って思ったんじゃないかな。子どもたちから、「丸く描いたらどうなる?」とか「角度を変えたらどうなる?」って声が出てきていた。こんなことできるかも、というワクワクを引き出すすてきなインストラクションだったなと思って見てました。

岡田

こぐまさんは、子どもからこういうことが返ってくるんじゃないかなっていう想定をある程度した上で、いろんな声を受け取って即座に考えて返している。同時に、子どもにあれこれ伝えすぎないことを意識してるのかなとも思います。

馬野

こういう完成形にしましょうね、ではなくて、手段を伝えて子どもたちの想像力を信じてやってみようっていう感じなのかな。

岩瀬

話すこぐまの声が、やわらかいなと感じたんだよね。子どもの側からすると、まるで自分に話しかけられてるみたいに感じてると思う。全体の場なんだけど、1対1で話してるみたいだから、まるで二人で話してるかのように子どもが反応するって、こぐまのインストラクションの特徴だなって思う。一斉に向かって、対象がないような話し方をしちゃう人って案外多くて。そうすると子どもって、自分に向けて話してると思えない。でも、こぐまは「私」に話してくれてるっていう距離感の近さを感じて、それを子どもたちも受け取っているんじゃないかな。

本城

子どもたちがそれぞれ作品をつくっていく場面では、こぐまは何をして、何をしていないんだろう。

馬野

こぐまが「そうじゃないよ、こうやるといいよ」というところと、「どっちがいいと思う?」と子どもに託すところ、どちらのシーンもあった。例えば、「グルーガンはでこぼこになるから使わない方がいいよ」っていう声かけ。グルーガンでやってみなよ、という関わり方も選択肢としてあると思うけど、子どもが試行錯誤してグルーガン使わない方がよかった、という学びを得ることがこの時間の目的ではない。この材料を使ったら、こんなことできるかもあんなことできるかも、という子どもの試行錯誤に対しては、「おもしろいと思う方でいいんだよ」、とか、「紙の表面がザラザラでもツルツルでもどっち選んでもいいんだよ」、という声かけだった。こぐまの中で、子どもにつけたい力とかねらいみたいなものがちゃんとあって、それが関わり方、特に間違った時や失敗した時の関わりに出てるなと思って見ていました。

岡田

僕も近い感想で、道具の使い方は教える。でも、作品がどうなっていくか方向づけするための言葉はかけていない。「どうなるかな、楽しみだね」、という感じ。あとは、他の子がやろうとしてることに「それ、いいね!」って反応してキャッチアップしながら、それを他の子に伝えていくはたらきをしていましたね。

岩瀬

こぐまは私の作品に関心があるに違いない、という子どもの受け取りがありそう。それによって、没頭できる安心感にも繋がって、他の子どもの上手い・下手を気にしている様子がないよね。こぐまが子どもの世界観や願いを大事にするから、その大事にされている感が、他の子の作品への関心にも繋がるのかな。こぐまに聞くと、●●の前の作品はこんなふうにつくっていて、みたいに、その子がこれまでどんなものをどんなふうにつくったのか、今どういうものをつくろうとしていて、こういう働きかけすると次にこう繋がるんじゃないか、みたいなことがどんどん出てくる。一人ひとりのことをすごくみていて、その子が実現したいと思っている世界に関心があるから、それが子どもに伝わってるんだろうなと思う。

本城

こぐまが、一人ひとりの子どもに関心を持っているからこそ、映像の中でも子どもたちは「こぐま、こぐま」って呼ぶ声が多いよね。「こぐま、できたー」とか。
場合によっては「先生、先生」ってスタッフの名前を呼ぶことが、スタッフへの依存的なことを生んでしまうことがある。こぐまの実践の中にはそれは感じないんだけど、依存を生むはたらきかけもあるよね。幼稚園でも、「先生、先生」と頼って、子どもたちだけでは遊べなくなってしまうことがある。依存を生むはたらきかけと、そうではないはたらきかけの違いって、なんなんだろう。

岩瀬

確かに、依存はしてないんだよね。こぐまと子どもの関係性は、上下じゃない。子どもの作品を前で一緒に眺めてる横並びの立ち方だから、こぐまと一緒に考えた作品、こうなったよって見てほしかったり、次にどうしようかと相談したくなったりするんじゃないかな。そういう子どもとの立ち位置が違いを生むのかも。

本城

そういうのはあるかもね。では続けて、これも昨年度の5〜7年生の体育の映像です。何をしてるか、ちょっとわかりづらいですが、大縄を一本使って、アドベンチャー、つまり一つのチャレンジをしています。「ここにあるロープで、10分間いろいろ試してみて」という呼びかけから始まります。スタッフのアンディ(寺中)が何をしていて、何をしていないかを見てみましょう。

本城

見てみて、どうでしたか。

岩瀬

アンディから子どもたちに強制があるわけじゃない、言葉も少ないよね。でも、ちょっとずつ自分たちのものになっていって、自分たちでなんとかしようっていう対話が始まっている。評価がされているわけでもない。こぐまは一人ひとりに関わっていくけど、アンディは常に集団に対して話すよね。その点ではたらきのアプローチは違うんだけど、でも共通していそうなことがありそう。それは、なんだろうな。

本城

個へアプローチするこぐまと、場へアプローチするアンディの違いはあるね。共通していること、なんだろう。

馬野

うーん。共通点かなと思うのは、子どもの力を信じてることかな。人数を増やしたり減らしながら縄を越えていくあのアクティビティって、僕もやったことあるけれど結構難しくて。でも活動を通して子どもたちがチームとして・個人として成長できることを信じてる気がする。クリアするまでやらずとも、ふりかえりで何か学びとって次に活かせることがあるって信じてる。場のあったかい雰囲気も、こぐまと一緒のように感じる。

岡田

そういうあったかい雰囲気から来てるのか、失敗や自分の素を出せる雰囲気がありましたね。あとは、アンディの声かけのタイミングがすごいなと。どこでどんな声をかけると子どもたちの中で対話が生まれやすいのかを見極めていそう。タイミング、重要だなと思って見ていました。

本城

ふたりのアプローチは違うんだけど、その場や子どもに対して徹底的な関心と責任はどちらも持っていて。自分がこの場に影響力のある人間だということを意識して、どう関わるか、どう関わらないか、何をして、何をしないか。どこにバランスを置くか、みたいなことを考え続けてるんだろうないうことが、言葉や態度に現れているなと思ったな。

岩瀬

責任を持っているっていうのは、わかる気がする。子どももそれを感じてるんじゃないかな。だから安心してチャレンジできる。

本城

目に見える、耳で聞こえること以上に、かなり「はたらいて」いるよね。スタッフの存在が、場や一人ひとりに働いている。じゃあそういう「はたらき」は、どうすればできるようになるんだろう。

岩瀬

子どもの存在を真ん中に据えた学びの場をつくってみたいと願っている大人自身が、子ども時代にそういう学びをあんまり経験していないよね。学ぶことや学校って、こういうものだという経験が体に染み付いている。すると、その経験をどこかで再現してしまう。でも大人になってからも学べるし、学べばできるようになっていくと僕は思っていて。経験や勘のよさだけじゃなくて、学べるような場を今年の4月からつくっていきたいなと考えています。それは、風越学園がめざしている「つくり手を増やす」ことにも繋がるんじゃないかなと思って。

本城

風越学園にいる一人ひとりのスタッフの力量を高めていくときに、外にも開きながら機会をつくることは大事にしていきたいですね。あらためて「スタッフのはたらき」って、どういうことで、何が大事なのかについて、一言ずつ聞いて終えたいと思います。

馬野

僕は風越学園にくる前は中学校の教員だったので、集団へのアプローチが多くて。風越学園のスタッフは、子ども一人ひとりに関心を持つことを本当に大事にしていかなきゃいけないし、自分にはまだまだ伸びしろがあるなということを思っています。

岡田

自分にも「先生の型」みたいなものができているなと映像を見ながら思いました。一人の大人として、子どものことを信じているよ、ということが伝えられるようになりたいなというのと、4月からは派遣元の日野市の小学校に戻るので、風越学園にいる間にいろんなスタッフのはたらきを見ながら、現場に持ち帰りたいなと思います。

岩瀬

自分たちのはたらきや、自分たちのやってることが、子ども一人ひとりにどういう影響を与えているのか、感度高く持ち続けていたい。そして、ある程度は練習可能だろうから、練習し続けるということも大事にしていきたいですね。

以上です。
次回のオンライン授業見学は、3月14日に実施します。今の8年生の「みらいをつくる」(卒業後の進路)について、その現在地をお伝えできればなと思っています。
お申し込みはPeatixページからお願いします。 >> https://peatix.com/event/3135317/view

 

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かぜのーと編集部です。軽井沢風越学園のプロセスを多面的にお届けしたいと思っています。辰巳、三輪が担当。

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