だんだん風越 2021年9月21日

学園説明会「”「  」になる”ってどういうこと?」(後編)

かぜのーと編集部
投稿者 | かぜのーと編集部

2021年9月21日

学園説明会の3日め「”「  」になる”って、どういうこと?」のテーマで、前編・中編としてご紹介してきました。

この後編では、本城が聴き手となり、8年生のサラと、保護者のアキコさんに話を聴いてみます。

左からアキコさん、サラ、本城

 
本城

ここからは、8年生のサラと、7年生と4年生の保護者であるアキコさんと一緒に、”「  」になる”ってどういうこと?について、おしゃべりしていきたいと思います。
”「  」になる”っていう言葉って、開校の時からホームページでは紹介していたけれど、ちゃんと子どもや保護者と取り扱ったことはなかったと思うんですよね。
まずは、入学前と入学後で風越学園に対する印象や見え方について、変わった部分と変わってない部分を教えてください。

サラ

入学前の風越学園は、「自分でつくる」の印象があった。ホームページを見たり、お母さんの話を聞いたりすると、風越は時間割や勉強も「自分でつくる」の印象があったから、それも楽しそうだなって。1期生として学校をつくるっていう部分にも魅力を感じて入って。入学してからも今も、「自分でつくる」っていうのは、変わらずある。ただ、自分でつくるのがこんな感じだというイメージは事前になかったから、入学してから戸惑いや驚きはたくさんあった。テーマプロジェクトみたいな学びとか、3年生から中学生まで一緒に授業やるとか、校舎のつくりも驚きだった。入学前と印象が変わったというよりは、イメージしてたけど深いところまで考えてなかったから驚いた、っていう感じかな。

本城

自分でつくるとは聞いていたけど、そこまで?っていう驚き?

サラ

ゼロからつくるって、椅子とか机くらいから自分たちでつくらなきゃいけないのかなとか思ってた。あ、椅子と机はもうあったなって(笑)。

本城

その驚きによって、自分が変わっていったなっていう部分って、ある?

サラ

テーマプロジェクト(以下、テーマ)を通じて、一番、自分の中に変化があるなと思う。テーマって外部の人とのやりとりが多くて、去年私は役場の人と関わっていて。探究するテーマに詳しい外部の人に聞きにいったり、最後の発表のために展示について詳しい人に話を聞くとか。そうやってるうちに、外部の人と接する力というか、いろんな人との接し方が経験できる。日頃から私たちが一番歳上で生活してるから、先輩がいない。だからといって、下の子たちが私たちを先輩扱いもしないんだけど(笑)。外部の歳上の人たちと日頃から関わることで、成長してるのかな。自分の中でいい経験になってるっていうか。すぐに力になるっていうよりは、将来になっていきるのかなっていう感じがする。

本城

すぐに力になるっていうよりは、未来にいきている感じなんだ。

サラ

うん、そういう感じがする。

本城

ありがとう。アキコさん、保護者として入学前後やこれまでを振り返ると、どうですか。

アキコ

私にとっては、風越の時間割は思ったよりも決まっている部分があるなと受け止めてました。でも、その中の方法や実際にやる行動の変化が、常にある。スタッフも常に変えようとしているというか。決まっていることと、その中で簡単に変われる自由というか、フレキシブルな感じが、すごく嬉しいです。なぜそういうふうに試しているか、子どもたちがどこまでその変化に対応してるかまでは伝わってこないけど、色々と試しながら動いているのを私は嬉しく見ています。その状況を不安定って捉える人もいるかもしれないけれど。

本城

そういう変化を、子どもたちはどんなふうに受け取っていそうですか?

アキコ

息子たちが言うには、トライしようとしたけど、僕たちがやらなかったから変えたんだろうね、と変わった要素をわかっている時もあるし、なんでか知らないけどここは厳しくなったんだよね、という時もある。変化があるということは、子どもたちも普通に受け止めている感じです。それを心地よくないと思う子どももいるとは思う。安定しているものを求める子どももいるかもしれない。我が家の場合は今のところ、こっちの方が好きだったのにこうなっちゃった、ということも含め、それによって、こっちの方が好きだったというのがわかるので、もしできるならこっちがいいって言ってみたら?、と話しています。変化を楽しんだり経験していく方が、固まっていかないままでいいのかなって、私は思います。

本城

風越学園の変化や不安定さについて、サラはどう?

サラ

今年、なんか急に時間割に色々入って、急にがっちりきたな、みたいなのはありました。去年の時間割で国語とか土台の学びの一部は選択制だったんですよね。理科も社会も、そんなにいっぱいはなかった。でも今年になって、急に全部必修になったから、それに対する困惑は、友達の中でも話してました。今年は結構必修あるんだねー、みたいな。そこは、びっくりした。

本城

びっくりって、どんなびっくり?

サラ

それが風越学園が求めていることなのかどうかはちょっと気になったし、それなら公立とあんまり変わらなくなっちゃうんじゃないかって感じたかな。でもその時間割で定着しちゃうと、当たり前になってそれはそれで安心みたいになっちゃうから、今は不満に思ってるというよりかは、もっと改善できるなら、改善したいなという気持ち。

本城

最初は、公立の中学校になっちゃうのか?みたいな驚き。でも過ごしているうちに慣れちゃって。改善したい気持ちもあるんだね。

アキコ

改善したいポイントが、子どもそれぞれで違うんだろうな。その気持ちをどういうふうにスタッフに投げかけていくというか、そもそもスタッフに投げかけようと思う?

サラ

スタッフに、こういうところがこうだと思うんだよね、みたいなことを一部のスタッフに言ったことはある。でも深刻な感じというよりは、ぽろっと言った感じだから、受け止めてもらってるかどうかはわからないです。時間割が決まったことで、去年より全然時間がないんです。みんな、時間がないんだよ、って言うことが多い。課題が終わらないとか、テーマプロジェクトの話し合いする時間がない。

アキコ

そうそう、学校でこれやりたいんだよっていう子どもに、じゃあやればいいじゃん、っていうと、時間がないんだよって、息子たちからもよく聞く。

サラ

「わたしをつくる」の時間もあるけど、その時間では授業で終わらないことやってる子もいるし、任意で数学やってる子もいるけど、テーマプロジェクトの何かをやらないといけないとか。マイプロジェクトがその時間で充実してる人もいるけど、「わたしをつくる」でやりたいことができない人がたぶんいるから、それは「自分をつくる」なのかな?って思ったりする。

本城

自分でつくる時間が減ってきてるときに、これからの進路だったり、未来をつくる時にどんな影響が出てくると思う?

サラ

今は、時間割の中でスタッフから提供されてやってることの方が多い。それが多くなると、自分で決められなくなっちゃうんじゃないかな。私も普段からこういうことを思ってるっていうのを表に出すタイプじゃないから、自分が自分自身に対して何かを思っても、まぁいいかって流しちゃってるというか。でも、こうしたらいいと思ってることを言えずに発散できないと、これから進路先を決める時に本当は自分が行きたくないのに行っちゃったとか。将来やりたいことがあっても、適当に生きていく、みたいになりそう。自分で決められる、自分の意見が言えるみたいなことが、学校でできるようになっていく、学校で育まれていくっていうのが、いいのかなって思う。

本城

学校は、むしろそういう場所であるべきだっていう感じ?

サラ

勉強、勉強というより、学校でしかできないことが、できたらいい。

本城

学校でしかできないことって、どういうこと?

サラ

勉強は、やろうと思えば家でも塾でもできる。家は家族しかいないけど、学校はいろんな人が来るところ。いろんな子がいて、年齢や個性も違うし、やりたいことも意見も違う。そういう人たちがたくさんいることをいかしたコミュニティというかコミュニケーションができるといいのかな。私はこう思ってる、こうしたいんだよ、と言える場所が、人との関係の中でできるようになるといいのかな。授業で手をあげられなくても、別にいいんですよ。でも、人との関係の中で自分の意見が言えないのはちょっと問題なんじゃないかな。私はどうしたい、というのが他の人に言えるというのが、学校なのかも。私も言えるようになりたいし、他の人が言ってくれるといいなって。いろんな人が集まる学校でそれができると強いなって思う。

本城

今の話、アキコさんはどんなふうに聞きましたか?

アキコ

その通りだなと思って。学校以外にホームスクーリングという選択肢もある中で、学校を選ぶ理由の一つは、いろんな人がいること。サラも言っていたように、いろんな大人や子どもがいて、その考えや存在に触れられる。子どももそう感じられてるんだな、よかったなって思った。
みらいツクール(*)のように、ちょっと先輩の人たちともまざる機会がある。親やスタッフとは、できあがった関係があって、それがない違う人たちとまざると、期待をされないですよね。ただ、聞いてあげられる立場の大人が、保護者やスタッフ以外にいっぱいいるといいなぁとすごく思っています。サラが言ったような、話ができる環境、もっと子どもたちが自分から出せるような空気感に徐々になっていくのかわからないけれど、そのことについてはどう思います?しんさん。

みらいツクールでは、8年生と若者・保護者が「のびてゆくカタチ」をテーマにそれぞれ作品をつくった

本城

聞いていて、あぁ、やっぱり7,8年生は、学校をつくっていく人たちなんだなというのは、改めて思いましたね。つくりたいと思ってここにきたんだな。そして、つくりたかったのは、勉強が一番じゃなくて、いろんな人との出会いの中で、私はこう思うと言える場。でも今は、そうじゃない方向に向かっているのかなと思った。これまで言えなかったり、僕らもそこに耳を傾けていなかったのかな。「とはいえ」、こっちも大事だよね、みたいな感じになっちゃってたのかなって。この話をスタッフたちはどう聞くのかなっていうのも気になってます。

サラ

子どもとスタッフが、もっと混じったほうがいいんですよ。子どもとスタッフでもっと信頼関係で築けていたほうが、友達同士で言えないことをスタッフに言える。スタッフにも友達にも言えない子は親にしか言えないけど、親にしか言えないと学校での自分の周囲との関係は変わらない。スタッフと信頼関係を築けているのが一番。

本城

スタッフと子どもは、機会があれば信頼を築いていける?

サラ

日頃からもっとスタッフと子どもがもっと関わって、こういう人なんだってわかるようになるといい。遊びでも勉強でもいいんだけど。スタッフと子どもの関わりが増えたらいいのかなって。

アキコ

もっとスタッフのことを知りたいっていう気持ちと、もっと自分のことを知ってもらいたいっていう両方の気持ちがある?

サラ

まだあんまり知らないスタッフもいるんですよ。スタッフはどう思ってるのかなとか知りたいし、7,8年はこう思ってるよとか、何も言えてない人がいるんだよ、というのをスタッフに知ってもらいたいというのもある。

本城

スタッフのことを知りたい、知ってもらいたいと思ってることはありがたいな。中学生くらいになると、なるべく大人に近づかないでほしいと思ったりするから。

アキコ

つながれる可能性を感じてるってことだもんね。

本城

そう、そこは見限られていないんだなと。子どもと大人、大人と大人の信頼関係がないと成り立たないので、大事な話だったなと思います。改めて、”「  」になる”って、サラにとって、どういうこと?

サラ

まだ、はっきりしてるものじゃない。日頃から意識はしてないけど、これからなのかな。風越学園で1年と少し過ごして、はっきりしてる人もいるかもしれない。私は、あと1年と何ヶ月しかいられない、これからの風越生活の残りで”「  」になる”、が見つかるといいなという感じ。見つけなきゃいけないという感じじゃない。私は気づいてないだけなのかなと思ったりもする。もしかしたら自分が見つけてないけど、人から見たら見えてるものがあるかもしれない。

本城

見つかるといいな、のいいなっていうのは、どういいんだろう。

サラ

”「  」になる”っていうのが見つかると、自分のことを知れる。これからどうしたらいいとかが、わかると思う。それが一つの経験として、力になるのかなって。

アキコ

私は、自分の子どもに対しても学校に対しても、なるべく期待を持たない日々を過ごしたいなと思っていて。自分の子どもではない子どもと接することによって、そうなりやすい。その気持ちを感じながら、スタッフや自分の子どもに対しても接したい。それがしやすい環境、そういうあり方で、いやすい環境だなと思っています。

本城

そういう環境が長く続くといいなということと、サラが感じている引っかかりからすると、今の環境は長く続かないほうがいい、今日はその両方受け取りました。
ということで、”「  」になる”ってどういうこと?をサラとあきこさんと一緒に取り扱ってみました。すごく大事な、ありがたい時間でした。ありがとうございました。

みらいツクール…全国各地の18歳から24歳の若者20名がつどい、”「  」になる”プロセスを関係性の中で探り、確かめ合う企画。6月に3泊4日で実施し、8年生全員と数名の保護者もまざって時間を過ごした。

 

(終わりに)

改めて、今、私たちはどこにいて、どこに向かっていきたいのかを考える時間になりました。子どもを真ん中に置いて考えるというのは、この子たちのために何をしてあげればいいのか、大人の期待を乗せていくことじゃない。改めて原点に戻った感じがしています。
サラの言葉には、「つくる」と「まざる」の両方がありました。その結果、”「  」になる”。「つくる」と「まざる」と”「  」になる”の関係も、引き続き考えていきたいです。

前編と中編はこちらです。

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かぜのーと編集部です。軽井沢風越学園のプロセスを多面的にお届けしたいと思っています。辰巳、三輪が担当。

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