2024年2月29日

第82号(2024年2月29日発行)

2024年2月29日

こんにちは、軽井沢風越学園です。

今週火曜日に今年度最後のアウトプットデイを終えました。
回を重ねるごとに、アウトプットデイそのもののつくり手として関わる子どもたちの数と場が増えていて、数年後には子どもたちだけで運営できてしまうのではと思ったりします。
開校時からのプロセスをともにしている保護者と「”だんだん”、だねぇ」というやりとりを交わしました。

かぜのーと 第82号(2024年2月29日発行)
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【1】『なるべく正直に話してみる』岩瀬 直樹
【2】『アドベンチャー雑感2「ただ歩く」』甲斐崎 博史
【3】『ものづくり学習環境は、子どもの学びとどう関わるだろうか。』山﨑 恭平
【4】『「連携」の本質ってなんだろう』大作 光子
【5】『「コトコトの日」は何をつくっている?』つくリーダー有志
【6】 3/26(火)実施・実践ラボ参加者募集中です(3/21〆切)
【7】 書籍『プロジェクトの学びでわたしをつくる』3月末に出版します
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【1】# わたしをつくる
   『なるべく正直に話してみる』岩瀬 直樹
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「ゴリさん、ちょっと相談したいことがあるんだけど。」
ある日の放課後にマレ(8年生)とエナ(8年生)に声をかけられた。

学校づくりのさまざまな企画に参画し、つくる楽しさを実感している2人。アウトプットデイのクロージング(閉会式)の企画運営チームにも関わっている。チームのメンバーはほかに、えっちゃん(6年生)、けんちゃん(6年生)、コウセイ(5年生)。どうやらチームがうまくいっていないらしい。

「年上だから遠慮されているのかもしれないけれど、私たちが出した案でいつも決まっちゃう。納得しているのか、言えないのか気になってるんだよ」

「最初に『私たちはどんなチームになりたい?』を話したときは、みんなが意見を言えるように、とか意見を言えるようになりたい、とか言ってたのに全然意見が出ない。振っても出てこない」

「結局、2人でつくっている感じになっちゃってる」。

2人には、前回のアウトプットデイでも企画運営チームでの後悔があった。どうしても9年生に頼ってしまう、9年生のような動きができない、と悩んでいた2人。積極的に動きたい気持ちなのに、全体が見えていないんじゃないか、これで本当にいいのかと不安がやってきて、つい動きにブレーキがかかる。そんな自分を突破したい、今回は自分たちがプロジェクトをひっぱっていくんだ、そんな気持ちをぼくは受け取っていた。そして、そんな想いとともに、プロジェクトリーダーとして責任を持って走りはじめた2人。しかし思うようにいかない。

焦りや不安からか、えっちゃん、けんちゃん、コウセイへの不満のような気持ちが生まれ始める。ホワイトボードに2人の見えていることや気持ちを十分発散してから、「そんな感じなんだね。一番困っていること、願っていることって何なの?」と聞いてみた。

続きはこちら >> https://kazakoshi.ed.jp/kazenote/now/33069/

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【2】# アドベンチャー
  『アドベンチャー雑感2「ただ歩く」』甲斐崎 博史
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「目の前の山に登りたまえ。山は君の全ての疑問に答えてくれるだろう。」
ラインホルト・メスナー (イタリアの登山家)

7年生のセルフディスカバリープログラムは、3泊4日で山の中を歩く。6、7人のチームでキャンプしながら、4日間の装備をすべて自分で背負って歩く。昨年度は信越トレイル54km・獲得標高約2500m、今年度は妙高高原の苗名滝から雨飾山山頂まで46km・獲得標高約3000mの行程を歩き通した。

普段私たちは1日にどれくらい歩いているのだろうか。厚生労働省が推奨している健康的な生活をおくるための目標数値は、成人男性で1日平均約8000歩を歩くこととされている。これは距離にすると6km弱になる。そう考えると7年生が体験していることは、かなりハードなことになる。しかも、ただ歩くだけではなく、15〜20kgのザックを背負い、激しい高低差のある未舗装の道を歩くのだから、その辛苦は並々ならないものがある。なぜこんなことを7年生の子どもたちは体験しているのだろう。

セルフディスカバリーの目的は、「自分に向き合い、自分の可能性に気づく」、そして「ありたい自分の姿を探す」ことだ。自分の可能性に気づくことは、普段の生活の中でもあるといえばあるのだが、アドベンチャー体験を通すとよりはっきりとわかる。フィジカルな部分は当然として、メンタルの部分でかなり自分と向き合う。そして、精神力が身体能力を凌駕することがよく起こる。

歩くというのは、身体的にはいたってシンプルな行動だ。思考もあまり戦略的になる必要はない。考えるのは効果的な水分や栄養補給、ペース配分、地図読みくらいだ。黙々と一歩一歩前に、ただ歩いていけばいつか目的地にたどり着く。課題を達成することに複雑な動きも思考もほぼ必要としないこのプログラムは、その余白の部分で、自分とひたすら向き合う時間が多くなる。複雑な動きがないとはいえ、身体は極限状態まで疲弊し、心はポッキリと折れる直前まで追い込まれる。そのような状況の中で自問自答が延々と続く。

続きはこちら >> https://kazakoshi.ed.jp/kazenote/now/33034/

甲斐崎の「アドベンチャー雑感」他記事:
・アドベンチャー雑感3「チーム」>> https://kazakoshi.ed.jp/kazenote/now/33080/

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【3】#ラボ
  『ものづくり学習環境は、子どもの学びとどう関わるだろうか。』山﨑 恭平
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2023年年度末に実践ラボ「プロジェクト学習を支えるものづくり学習環境とは?」を開くことにした。軽井沢風越学園で自分が担当している教科の1つに「技術・家庭科」がある。この教科の名前がつけられた技術家庭室の学習環境についてあらためて考えたいという内容の企画だ。企画に至った背景や思いについて、実施前に書き留めておこうと思う。

技術・家庭科の特徴として「実践の場は社会や生活の中である」というところがある。学校中での学びが、社会や生活の中での活用を前提としている。そしてもう1つ特徴としてあるのが、その教科内容が社会や生活の変化に強く影響を受け変化していくことだ。例えば、AIなど先進的なテクノロジーや多様な性の理解など、ここ数年で話題になったトピックはその変化の例として分かりやすい。

軽井沢風越学園では技術・家庭科の学習を単一の教科の時間として行わず、プロジェクトの時間で学習している。プロジェクトはテーマプロジェクトとマイプロジェクトの2つの時間で行われている。テーマプロジェクトでは、こちらから対象や方法の提案が行われるので、学習活動や学習内容を構成的に設定して実施することが多い。例えば、マルエネはとても分かりやすい例だ。一方でマイプロジェクトはこちらから内容を構成することはかなり少ない。その分、個人の興味関心、情熱から起こり、グループも学年を超えてつくられることもあり、躍動する子どもたちの様子にパワフルさを感じる場面も少なくない。

このマイプロジェクトの時間、僕は技術家庭室という「場」につき、そこで起こるプロジェクトに関わることが多い。そこにいると、いろんな「~したい」が持ち込まれる。遊びの道具をつくりたい人もいれば、理科での実験道具として竜巻発生装置をつくりたい人(その様子は以前のたいちのかぜのーとで紹介されている)もいるし、友だちの誕生日プレゼントをつくりたい人、推しグッズをつくりたい人もいる。最近は140km/hで過去や未来にいける車をつくりたい人もやってきた。

続きはこちら >> https://kazakoshi.ed.jp/kazenote/now/33260/

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【4】# 軽井沢風越ラーニングセンター
  『「連携」の本質ってなんだろう』大作 光子
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ほりけん(堀内)がやってきて10ヶ月が終わろうとしています。残り2ヶ月。毎日のリフレクションは約34万字,266ページを越えようとしています(すごい…)。

私は学習者中心の学び,探究的な学びをつくる先生の力量形成を道筋を探す旅を一緒に歩んできました。別にずっと隣を歩いていたわけではなく,むしろちょっと離れたところからじっと見ていました。恐れることはありません。あたたかな気持ちでじっと見ていたのです。

私の方がほりけんより先生としては後輩ですが,風越では先輩です。
きっと本気のプロジェクトの学びをつくることでも先輩です。
でも先輩だからといって,偉くもなければ,すごいわけではありません。
だから,ここまでの学びの中で,とにかく一緒にこの時を生きているという気持ちで,近くもなく遠くもないところから見守ってきました。

私はそんな存在です。

続きはこちら >> https://kazakoshi.ed.jp/kazenote/klc/32965/
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【5】#保護者
  『コトコトの日は何をつくっている?』つくリーダー有志
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「何してるのー?」キッチンの窓から興味深々で中の様子を伺う幼稚園児さん、暫くすると、「いい匂い・・・」とキッチンに引き寄せられる人たちがチラホラ・・・「楽しみにしてるよ、今日のメニューは何だっけ?」とスタッフの声。そう、今日はコトコトの日。

2023年度から始まったコトコトの日。保護者のつくる温かい手料理を学園の全員が食べられる日として、学園内では耳馴染みとなりつつある。そのはじまりから、だんだんな日々のリアルを一緒に味わってもらえたら嬉しい。

久々の開催となった「芋煮会」。
芋煮会は、年に一度、有志の保護者によって全校へ温かい風越流芋煮汁が振る舞われる日だ。「おかわりある?」とキラキラの笑顔でやってくる子どもたちにほっこり。具だくさんの芋煮にもほっこり。そして、調理する保護者も調理中や合間のお茶タイムのおしゃべりが、とっても楽しいのだ。子どもの近況やおすすめのお店の事など、とりとめのない話なのだけれど、それがまたいいなぁと思うところ。

「嬉しいね、こういう時間」
「こういう機会があると、学校にも来やすいよね」
「通っていた幼稚園では、毎月お誕生日月のママたちがカレーを作るっていうのがあって・・・毎月あって楽しかったよ」
「へぇー、そんなの風越でもできたらいいかも!?」

早速、毎月お誕生日月のママたちがカレーを作るというアイデアを風越学園のスタッフに相談してみたところ、「いいね!まずはテスト的に一回やってみるのはどう?」ずいぶんあっさり・・・でも、力強いサポートを感じる返事が返ってきた!

こうして雑談から、ひょっこりとコトがはじまった。

続きはこちら >> https://kazakoshi.ed.jp/kazenote/dandan/33245/

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【6】#お知らせ
    3/26(火)実施・実践ラボ参加者募集中です(3/21〆切)
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3/26(火)にスタッフの岡部(図工担当)による実践ラボの初回を実施します。
「子どもが自由になるための環境の設定と大人の関わり」について、風越学園のカリキュラムにおける一つの柱である、マイプロジェクトの活動をきっかけに考えます。
風越学園では、子どもたちの作品以上にその活動がどのように生まれ、変遷をたどるのかといったプロセスを大切にしています。このような子どもから始まるプロジェクトや学びにおいて、どのような、つくること、描くことができるかを、既存の造形教育の枠をはみ出しつつも、学校や教育機関の中でどのように行なっていくかを一緒に考えていきたいと思います。
参加者はプロジェクト学習や造形教育、子ども主体の教育活動に関心を持っている方であれば、図工・美術の教員に限りません。

申込・詳細は、こちらから >> https://kazakoshi.ed.jp/klc/labo/#lab-02
関連記事は、こちらから >> https://kazakoshi.ed.jp/kazenote/dandan/30766/

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【7】#お知らせ
  書籍『プロジェクトの学びでわたしをつくる』を出版します
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昨年、プロトタイプ版を刊行した『プロジェクトの学びでわたしをつくる』の増補改訂版を2024年3月に出版することとなりました。

本書は、軽井沢風越学園がどのように探究の学びやプロジェクト学習をとらえ、どんなツールや仕組みで設計しているか、スタッフはどんなことを考え、子どもたちはどのように受け取っているかを伝える試みです。
実体験と抽象、探索と探究、あそびと学び。それらを行き来しながら、一人ひとりの「わたしをつくる」と「わたしたちでつくる」時間を積み重ねている子どもたちと風越学園のスタッフの実践の現在地を共有します。

先週2月23日から予約販売を受付開始したところ、おかげさまであっという間に予約数300が受付終了となり、ありがたいことです。来週3月6日(水)17時から通常予約の受付を開始します。
バリューブックスの商品ページおよび風越学園のお知らせページを更新いたしますので、新年度に向けて手にとっていただけると嬉しいです。
この本が、本気で探究の学びにチャレンジしようとしている全国の方々の学びや実践に伴走するものになることを願っています。
>> https://kazakoshi.ed.jp/news/klc/33207/

また、4月7日(日)に東京都内にて出版記念イベントを予定しています。詳細は風越学園ホームページでご案内します。

(あとがき)

個人的な今回のアウトプットデイのハイライトは、スタッフの竹内を中心に保護者とスタッフがまざって昨年11月から育てているぬか床コミュニティのアウトプットでした。

それぞれのぬか床とぬか漬けを持ち寄り、ああだこうだ言いながら立ち寄る大人や子どもたちに食べてもらい、アウトプットすることのドキドキやフィードバックをもらえることの喜びを体感。私も5年生男子にレンコンのぬか漬けを褒めてもらい、続けていけそうな予感がしています。

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発行元 学校法人軽井沢風越学園
ホームページ https://kazakoshi.ed.jp
メールアドレス info@kazakoshi.jp
#配信停止については、ホームページのお問い合わせ(https://kazakoshi.ed.jp/contact/)
からお知らせください。