2024年1月29日

第81号(2024年1月29日発行)

2024年1月29日

こんにちは、軽井沢風越学園です。

この季節の9年生たちは、たくさんの感情をぎゅっと抱きしめながら、残りの風越学園での日々を懸命に生きようとしている様子があちこちで見られます。
そしてもちろんどの学年の子どもたちにも、春とは違う姿がある。
次の春に向けて、寒さが少し物足りない冬の残りをどんなふうに過ごそうかと考えています。

かぜのーと 第81号(2024年1月29日発行)
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【1】『自由の中の不自由さをとらえていく』末永 真琳
【2】『アドベンチャー雑感1「何もしない」』甲斐崎 博史
【3】『こだわることで愛情を感じたり、見えてくる面白さがある。』佐々木 陽平
【4】『手放した先には。』殿村 英嗣
【5】 実践ラボ 参加者募集のお知らせ
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【1】# 幼稚園
   『自由の中の不自由さをとらえていく』末永 真琳
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風越に来て1年が経った。決まっていることがほとんどない、ゆったりと時間が流れる毎日に「自由」な印象を受け、「自由」がある中で子どもたちがどんなことに心をうごかしてゆくのか、目の前で起きていることを捉えていきたいと思っていた。しかし、日々を過ごす中で、「自由」な時が流れる空間は同時にとても不安定で、不確かで、「不自由」を痛感させられる場であると感じ今回は、子どもたちの中に不自由さを感じた時の私の葛藤と気付きを書き残したいと思う。

【ポケモンの世界で繋がろうとする子どもたちの記録】

5月11日(木)
近頃ポケモン図鑑をもってくる子どもがいる。朝から一人、誰とも関わらずに図鑑を見ている。このまま1日が終わってしまうことにモヤモヤし、ポケモン図鑑を読んでいるだけでは出会えないことがここにはあると感じてほしいと思った。「森の中にポケモンがいるかもしれないよ」と声を掛け森の探検に誘ってみた。図鑑を握りしめながら一緒に出かけ、土の中や木に住むポケモンを想像しながら森を歩いた。

7月25日(火)
森の入り口にある木でできた台の上に集まり、知っているポケモンを言ったり、何のポケモンが強いのかを言い合ったりしている。丸くなって話し込み、周りにいる子はその様子を一歩離れた場所で眺めていた。どのポケモンが木の上まで高く登れるのかという話題の後、ちょうど近くを通りかかった子が木の台の横にあるツルを登り始めた。「ねえ、ここ、上まで登れるよ。もっと高くいけるよ。」とポケモンの話をする子に声を掛ける。すると、「それは上まで登れてないじゃん。」「全然できてない。」そんな言葉をつぶやく。ポケモンの話題を通して生まれた繋がりに居場所を求め、入ってきた子の行動に何か言わないではいられない姿から、やっと得られたこの空気には誰にも入られたくない、壊されたくないということが伝わってくる。子どもたちの表情が険しいことが気になっている。

続きはこちら >> https://kazakoshi.ed.jp/kazenote/now/32912/

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【2】# アドベンチャー
  『アドベンチャー雑感1「何もしない」』甲斐崎 博史
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「『何もしない時間』が用意されていて、はじめて人は真に自分がやりたい何かをはじめるんじゃないかと思うんです。でもほんとは何もしなくてもいいんだと思います。」
—狭山市在住59歳男性

サバイバルとブッシュクラフト は似ているが目的は違う。サバイバルは「生還」が目的だが、ブッシュクラフト はそこで「時を過ごす」ことが目的だ。時を過ごすためにサバイバルスキルを使う。だから似ているのだが、そこに流れている時間の感覚がまったく違う。

森の中に入り、1人で時を過ごす。ブッシュクラフト のプログラムには、はじまりの時間と終わりの時間しか示されていない。野営地に着いたらシェルターをつくり、腹が減ったら火を起こし食事をつくって食べ、眠くなったら寝袋ひとつで寝る。生き残るための体温保持、水・火・食の確保はやらなければならないが、それ以外に何をやるかは決まっていない。「何もしない時間」がたっぷりある。

何もしない時間があってはじめて「何しようかな?」と考える。行く前から計画的にやりたいことを決めて道具とか準備してくる子もいる。そこに着いて周りの状況を見て何をやるか決める子もいる。友だちとおもしろいこと(たいていは危ないこと笑)を見つけて悪巧みを考える子もいる。一心不乱にナイフで木を削っている子もいる。なにやら怪しげなメニューを考えてきて1人で調理している子もいる。でも、ほんとに何もしないでボーッと焚火や景色などを眺めている子も多い。

続きはこちら >> https://kazakoshi.ed.jp/kazenote/now/32863/

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【3】#スタッフインタビュー
  『こだわることで愛情を感じたり、見えてくる面白さがある。』佐々木 陽平
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『ますのーと』と名付けて、ほぼ毎日、数学の実践について書き残している佐々木(ようへい)。「1つの問題でどこまで考え続けられるか」「おもしろい!これ、おもしろい!が聞こえる場」「自由になるための数学とは」・・・こんなタイトルのものを70以上も書き続けている。今回、インタビューをしていても感じたが、この人、心底「数学」が好きなんだと思います。(かぜのーと編集部・三輪)

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__ 風越学園にきた経緯を教えてください。

風越にくる前までは、数学の問題を学級全体で考えて話し合うという授業観だったので、子どもたちを集団で見ることが多かったんです。だから、 ある子のアイデアや考え方をどう思うかな、この解法をもっとよくするにはどうしたらいいかなと、集団に問い返しながら授業をしていました。もちろん、そういう授業をするよさもあったからやっていたんだけど、一人ひとりの子どもを見れていなかったなということや、僕が持っていきたい議論ややりたいことを子どもたちに押し付けてしまっていたということに気が付いて、これを続けていくのはちょっと違うなと思うようになって。

その頃にコロナがあり、文部科学省の通達する評価の方法が変わり、一人ひとりの子どもを見る機会が増えました。「子どもたちが見えた」という瞬間が自分の中に実感として感じることも少しずつ増えて、一人ひとりの子どもたちが深く考えたり、数学を面白く思ったり感じたりできる授業ができないかなと考えて風越にくることにしました。そこから、あっという間に2年目って感じかな。
続きはこちら >> https://kazakoshi.ed.jp/kazenote/staff_interview/32866/

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【4】# 風越参観記
  『手放した先には。』殿村 英嗣
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あの日をどう受け止めていいのか。応えるにはまだ時間がかかる。じっくりと咀嚼して、飲んでは出してを繰り返しながらぼちぼちとやっていくことになりそうだ。森林の奥に広がる不思議な建物は、そう感じるような場所。そこに広がっている世界は、あまりにも当たり前に子どもが子どもらしく楽しんでいて、大人が大人らしく葛藤を抱えていた。
 公立小学校の一教員として12月15日に行われた実践ラボ「概念で深める探究の学び in 科学者の時間」の1日を等身大でじっくりと振り返りたいと思う。
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1,2時間めの科学者の時間は、まずはシャベリカを使ったゆるゆるとしたお喋りタイムからスタート。子どもたちに聞くと、いつもこんな風に始まるんだと教えてくれた。見に来た大人もその中に入っていいとのことで1つのグループに入れてもらうことになった。参観者とともにつくる時間を意識してとのことだそうだが、参観者はお客さんではなくともに場をつくるひとりだという感覚が新鮮で、これまでみてきた”公開授業”とのちがいを強烈に感じた。

「好きな音」「最近食べた美味しかったもの」「人生最後の日に食べたいもの」などがトークテーマになった。子どもたちは慣れたように順番に話していく。ここで、自分は「人生最後に食べたいものはないなあ」と思いつかず黙っていると、隣に座っている子が「どうですか?」と順番を回してくれた。この言葉にあたたかさを感じたことを覚えている。
 思い返してみると、玄関の近くのホワイトボードにファシトレの活動について書いてあったものをみた。こういう場面で子どもたちにあたたかさを感じたのは、平等に話す機会を大切にするなどファシリテーションの技術が身についているからだろうか。

続きはこちら >> https://kazakoshi.ed.jp/kazenote/insight/32888/

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【5】#お知らせ
  実践ラボ 参加者募集のお知らせ
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大人も自立した学び手であってほしいという願いから、軽井沢風越ラーニングセンターでは学びを深めたいスタッフによる「実践を開く」場づくりのサポートをしています。
12月につづき、2月と3月にも実践ラボを開催することとなりました。
風越学園を題材に、それぞれの現場の実践を見直す機会としてご一緒できる実践者のみなさんの参加をお待ちしています。

「プロジェクト学習を支えるものづくり学習環境とは?」
開催日:2月21日(水)・3月22日(金)
講師:山﨑 恭平(技術・家庭科スタッフ)
申し込み〆切:2月15日(木)
詳細はこちら >> https://kazakoshi.ed.jp/klc/labo/#lab-01

「子どもが自由になるための環境の設定と大人の関わりを考える」
開催日:3月26日(火)・5月以降別途調整
講師:岡部 哲(図工スタッフ)
申し込み〆切:3月21日(木)
詳細はこちら >> https://kazakoshi.ed.jp/klc/labo/#lab-02

(あとがき)

お正月の能登半島地震のために尽力している保護者の姿に幼稚園のある女の子が、友だちにも能登のことを知ってほしい、募金を集めたいと呼びかけ、今日から募金活動が始まっています。集まった寄付は、能登復興ネットワーク いやさかにお送りする予定です。
 
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発行元 学校法人軽井沢風越学園
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