風越のいま 2024年2月5日

アドベンチャー雑感2「ただ歩く」

甲斐崎 博史
投稿者 | 甲斐崎 博史

2024年2月5日

2023.9 7年生セルフディスカバリープログラム2日目 乙見山峠への山道をひたすら登るチームC

「目の前の山に登りたまえ。山は君の全ての疑問に答えてくれるだろう。」

ラインホルト・メスナー (イタリアの登山家)

 7年生のセルフディスカバリープログラムは、3泊4日で山の中を歩く。6、7人のチームでキャンプしながら、4日間の装備をすべて自分で背負って歩く。昨年度は信越トレイル54km・獲得標高約2500m、今年度は妙高高原の苗名滝から雨飾山山頂まで46km・獲得標高約3000mの行程を歩き通した。

 普段私たちは1日にどれくらい歩いているのだろうか。厚生労働省が推奨している健康的な生活をおくるための目標数値は、成人男性で1日平均約8000歩を歩くこととされている。これは距離にすると6km弱になる。そう考えると7年生が体験していることは、かなりハードなことになる。しかも、ただ歩くだけではなく、15〜20kgのザックを背負い、激しい高低差のある未舗装の道を歩くのだから、その辛苦は並々ならないものがある。なぜこんなことを7年生の子どもたちは体験しているのだろう。

 セルフディスカバリーの目的は、「自分に向き合い、自分の可能性に気づく」、そして「ありたい自分の姿を探す」ことだ。自分の可能性に気づくことは、普段の生活の中でもあるといえばあるのだが、アドベンチャー体験を通すとよりはっきりとわかる。フィジカルな部分は当然として、メンタルの部分でかなり自分と向き合う。そして、精神力が身体能力を凌駕することがよく起こる。

 歩くというのは、身体的にはいたってシンプルな行動だ。思考もあまり戦略的になる必要はない。考えるのは効果的な水分や栄養補給、ペース配分、地図読みくらいだ。黙々と一歩一歩前に、ただ歩いていけばいつか目的地にたどり着く。課題を達成することに複雑な動きも思考もほぼ必要としないこのプログラムは、その余白の部分で、自分とひたすら向き合う時間が多くなる。複雑な動きがないとはいえ、身体は極限状態まで疲弊し、心はポッキリと折れる直前まで追い込まれる。そのような状況の中で自問自答が延々と続く。

 プログラムの2日目は、距離約27km、獲得標高約1200mのハードな道のりだ。計画の段階では日没ギリギリで雨飾高原のキャンプ場にたどり着く計算だった。アクシデントがなければ、の話である。しかし、ひとつのチームはスタート直後に大きく道をロストし正規ルートに戻るまでに2時間弱かかった。もうひとつのチームはスタート時点である子のチャレンジについてミーティングとなり、ここも時間を大きくロス。行程のはじまりで到着は夜になるだろうと予測がついた。結果からいうと、この日最後まで自分の荷物を背負ってゴールのキャンプ場までたどり着いたのは、子どもたちの半数にも満たなかった。そして、最後のチームがキャンプ場に着いたのは、夜8時を少し過ぎた頃だった。

2023.9 7年生セルフディスカバリープログラム2日目ゴールの雨飾高原まで残り1km地点のムサシ、ユロ、ソウタ サナ

チームによって差はあるが、子どもたちは11〜13時間ただ歩いていた。延々と続く同じような風景、疲労が溜まる身体、折れそうになる心。そのあいだ、どのような自分に出会っていたのだろう。諦めるか、まだ挑戦し続けるか、自分はできるのか。リタイアした子は車のシートに座り込み、何を考えていたのだろう。ありたい自分を探し当てただろうか。

 

#7・8年 #アドベンチャー #わたしをつくる

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