2022年1月27日
こんにちは、軽井沢風越学園です。
風越学園の「今」をみていると、過去と未来がせめぎあってできているなと思うことがよくあります。スタッフや子どもたち、保護者のこれまでの経験とこんなふうにありたいという願いがシーソーのよう。変化する状況の中で、重心を取る位置も変化し続けます。
今月号のかぜのーとでは、そんなせめぎあいをいくつかお届けします。
かぜのーと 第57号(2021年1月27日発行)
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【1】『風越の校舎は「街」のようだ。』岩瀬 直樹
【2】『心を伝えたい 道具、材料』岡部 哲
【3】『ヘルプを出す』本城 慎之介
【4】『「ベテラン」のその後。』勝山 翔太
【5】『「スタッフのはたらき」って?』かぜのーと編集部
【6】『「個に応じている学び」なのに なぜ「学びに向かいにくい子ども」が出てくるのだろう?』 赤木 和重
【7】『1人1台端末のその先へ』山﨑 恭平
【8】『いつでも遊んでいて、いつでも学んでいる 』井手 祐子
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【1】毎日うろうろ 『風越の校舎は「街」のようだ。』岩瀬 直樹
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見学に来た人に「ここは学校というより小さな社会ですね。社会をつくっている感じ」と言われたことがある。学校は25年後の社会。未来の社会はこうありたい、を体現しようとする場所だとぼくは常々考えているので、とても嬉しい感想だった。
11月、東京学芸大学教職大学院の渡辺貴裕(准教授)さんが2日間、見学に来たときには、「岩瀬さん、風越は街のメタファーですね」と話していた。
風越の校舎と敷地は「街」だなあと感じる。いろいろなことがそこで生じていて、人が集まり、出会いがある。校舎がオープン&ガラス張りで、いろいろな活動の様子が目に入るから、自然と部屋に足を踏み入れて、活動を見守ったり、何をしているか子どもに教えてもらったり。腰を下ろせる場所が至るところにあるから、ちょっと一服したり、思い浮かんだ考えをメモで入力しておいたり。
校舎内で人が行き交っていて、長野県教委の知り合いに出会ったり(高校の探究に関する県の研修を風越の校舎で開催されていた)、見学の保護者の方に話しかけられたり、地域の連携プロジェクトのため
来校して見学していた高校生とおしゃべりしたりも。持参した上履きの底が剥がれたときには、工房に行って、ウルトラ多用途の接着剤を貸してもらいもした。これらのことが自然に起こる。「学校は小さな社会」といった言い方があるけれど、今回、「あぁ、風越は街だな」としみじみ感じた。カリキュラムに関して、個人探究の「プロジェクト」をどう進めるかとか、異学年の「ホーム」をどう機能させるかとか、まだまだ課題はいっぱいだが、そこに居る人たちが(子どもも大人も)担い手となって、「まちづくり」が進んでいけばいいなあと思っている。
(Facebookの渡辺さんの投稿より)
この「街」というメタファーで改めて学校を歩いていると確かにそんな感じだ。
続きはこちら >> https://kazakoshi.ed.jp/kazenote/gori/21215/
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【2】風越のいま 『心を伝えたい 道具、材料』岡部 哲
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道具や材料を使いたいと思ったときに使えるようにしておく、というのはラボの基本的なコンセプトでありますが、それとは別軸で、一つ一つの道具や材料の丁寧な手渡し方が大変大切であると考えています。
丁寧に手渡すということについて、一つの例を挙げてみます。
例えば、子どもたちの発達や心理状態を見計らって、そろそろ金づちを使って釘を打つのが楽しくなってきそうだというタイミングで、木に釘を打つことから始まる造形活動をすることがあります。
活動自体は、金づちを使って木に釘を打ち、楽しいものをつくるのが目的ですが、それには、道具を扱う身体的能力が体に備わっている必要があります。
子どもにとって金づちは意外と重いため、筋力が発達していない子が扱おうとしても、釘は木に刺さりません。その人たちにとって、その道具が適切かどうかという判断を誤ると、それは単に失敗体験となります。
力のない幼児に金づちを使わせたいのであれば、事前に柔らかい木に適切なサイズの釘、軽い金づちなど、準備することができますし、中学生くらいであればもっと高度な接合方法を提案してもいいかもしれません。要は、こちらが手渡す以上は、心身ともに子どもの発達に合っている道具、材料、つくりかたを見極める必要があるということです。
続きはこちら >> https://kazakoshi.ed.jp/kazenote/now/21379
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【3】風越のいま 『ヘルプを出す』本城 慎之介
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第42週、オミクロン株の大波に飲み込まれる。
来週は年少から6年生まで学年閉鎖。
学級とか学年という単語は風越ではほとんど使わないので少し違和感がある。
学内の対応で手一杯な状況の中、保護者の1人から、
保護者全体のチャンネルにこんな呼びかけ。
その後、賛同の声と連絡先の公開が続いた。
「もし今、自宅療養中で買い物行けない、ご飯作れない、
と困ってらっしゃる方は、ヘルプを出して」
こういう人たちとその動きに支えられている。地に足つけて進んで行こう。
”いままでにあなたがいったなかで、いちばんゆうかんなことばは?”
ぼくがたずねると、馬は答えた。
”たすけて”
(チャーリー・マッケジー『ぼく モグラ キツネ 馬』,飛島新社,2021年3月)
記事はこちら >> https://kazakoshi.ed.jp/kazenote/now/21362/
今月公開した、他の300文字作文記事
・「遊んでいる場合じゃないんですけど」>> https://kazakoshi.ed.jp/kazenote/now/21244/
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【4】風越のいま 『「ベテラン」のその後。』勝山 翔太
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あすこま(澤田)が書いた、「ベテラン」という記事。
前期である2年生の子どもたちが選んだ絵本の読み聞かせを、僕が5・6年生にしに行った日の話だったのだが、そこにはこんな続きがあった。
「絵本、他のが良かったのかな〜。シゲタサヤカとか。落語絵本もそうだけど続けて読むと面白いからな〜。ねぇりりー、今度はいつ読みにいく?」
読み聞かせが終わったあと、そうシモンが言った。
この日読んだ絵本はシモンの選書だったのだが、読んでいる最中から5・6年生の反応が気になっていたし、どうやらその反応に満足できなかった様子。
「でもさ、もっと後期に絵本読んだ方がいいよ!だってあんまり笑ったり、隣の人と話さなかったもん。今度は私たちで読もうか?」とスミレとアイ。
後期に行けた嬉しさとワクワク感がありつつも、オススメの本の面白さが伝わらないんだ!?もっとこの面白さを共有したい!という気持ちが言葉となって子どもたちから溢れ出していた。
他の2年生たちも、「さぁ、次は何を読もうか。」「絶対笑わせてやる!」と熱も冷めずに意気込んでいる。そこで、しばらく朝と帰りのつどいで「後期に伝えたい読み聞かせしたい本」をテーマに話を続けることにした。
家からオススメの本を持ってくる日もあれば、ライブラリーで発見した本を持ってきたり、面白かった作者の本を読み返したりした。
続きはこちら >> https://kazakoshi.ed.jp/kazenote/now/21354/
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【5】風越のいま 『「スタッフのはたらき」って?』かぜのーと編集部
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昨年5月から、ほぼ毎月1回、オンライン授業見学を実施しています。
なかなか個人の見学をお受けできない情況を受けて、今年度新しく試みていることの一つです。第8回・1月14日のテーマは、「スタッフのはたらき」。本城・岩瀬に加え、スタッフの馬野・岡田の4人が2つの映像を見ながら交わしたやりとりの一部をご紹介します。
本城)「スタッフのはたらき」って聞くと、どんなことやどんなシーンを思い浮かべる?
馬野)ちょうど今、5,6年生の子どもと、1対1の面談をしているので、一人ひとりとやりとりしながら、こんなことやってみたら?、とかこんな本を読んでみるとどう?、などとその子の興味・関心と関連して何かを伝える、みたいなことが思い浮かびますね。あとは、環境づくりかな。スタッフから直接的に伝えるわけじゃないけれど、ある環境・設定を置くことでスタッフからのメッセージやはたらきがあると思っています。
岩瀬)スタッフがそこにいる、というのも一つのはたらきかけだよね。たとえその場で子どもに声をかけなくとも、常に相手に何かの影響を及ぼしているなぁと思う。スタッフのはたらきとは、その影響にどれくらい自覚的であるか。自分の存在が、その子にどんな影響を与えているのか。今の居方がどんな影響を与えているかを常に想像しながら、どれくらい敏感でいられるかが大事なんじゃないかな。
風越学園みたいに、子どもが自分の学びのコントローラを持つことを大事にしようとすると、スタッフがただ見ているだけ、任せる、みたいになりがち。その子が本当にコントローラを操作していて試行錯誤している経験になってることもあれば、実はスタッフにほっとかれている、関心ないんだなと子どもが思うこともある。
本城)何かする、しない、どちらも影響力があるよね。話を聞きながら、初めて僕がゴリさん(岩瀬)の教室に行った16,7年前くらいのことを思い出しました。当時は埼玉県の小学5年生の担任をしていたんだよね。教員であるゴリさんの動きよりも、教室の子どもたちのことがとにかく印象に残っていて。あの教室を見ているからこそ、ゴリさんと学校づくりを一緒にしたいなと思ったのでした。スタッフの「うごき」と「はたらき」って、似てるけど違うところがあるな、ゴリさんの教室ではゴリさんのうごきというよりも、「はたらき」が作用してたんじゃないかな、と思い返していました。
続きはこちら >> https://kazakoshi.ed.jp/kazenote/now/21295/
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【6】風越の教室に入ってみた 『「個に応じている学び」なのに
なぜ「学びに向かいにくい子ども」が出てくるのだろう?』 赤木 和重
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神戸大学の赤木和重と申します。今年度もそろそろ終わりに近づいてきましたねぇ。
年度末が見えてきたこともあり,今回は,少し大きな話をしようかなと思います。
私の専門は,発達心理学です。特に,発達障害など社会的にマイノリティの子どもたちの発達に関心を持って研究してきました。そのこともあって,風越学園では,ウェルネスのスタッフの方々と雑談も含めて,話すことがよくあります。
ウェルネスのスタッフと話すなかで,繰り返し出てくる話題があることに気づきました。
それは,「学びに向かいにくい」子どもたちのことです。「学びに向かいにくい」とは,具体的には,「土台の学び」といった学習の時間に参加せずに, 1人でブロックをして遊んでいる」とか「複数の子どもで,教室から離れて特に何をするでもなく、ふらふらして話している」といった状態をさします。
もちろん,このような学びに向かわないこと自体を否定するつもりはありません。誰でも勉強したくないときはあります。それに勉強しないかわりに何か熱中していることがあれば,OKだと思います。
ですから,単純に「学びに向かわないのはダメだ!なんとかしないと!」とは思いません。スタッフも思っていないでしょう。
ただ,それでも,この「学びに向かいにくい子がいる」事態は,丁寧に考える必要があります。その理由の1つは,(全員でないにせよ)子ども本人が「学びに苦しんでいる」からです。
続きはこちら >> https://kazakoshi.ed.jp/kazenote/akagi_report/21375/
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【7】風越のいま 『1人1台端末のその先へ』山﨑 恭平
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以前、かぜのーとで「デバイスの付き合い方」について書いてから1年以上が経ちました。今年度も子どもたちはChromebookを1人1台手にして、日常的に使っています。新型コロナウイルス対応として、アウトプットディやかざこしミーティングの一部Zoom実施など、子どもたちが企画する場面でも当たり前の選択肢として、オンラインコミュニケーションが入ってくるようになりました。
先日も、学内のポスターに使われているイラストについて
「この素材は許可とっているの?出典は書いたほうがいいでしょ」
「どこからもってきたんだっけ?」と4年生同士が会話をしていました。
昨年度から月に1回実施しているデジタル・シティズンシップのワークショップでの学びが馴染んできています。
3年目となる2022年度の子どもたちのデジタルデバイス(以下、デバイス)の環境について何を大切にしていくのか、デジタル・シティズンシップの学習を検討しているメンバーを中心に、前期・後期スタッフで議論を重ねました。その結果を踏まえて、保護者、スタッフに次のようにアナウンスしました。
開校から2年目、子どもたちの学びの姿を通し、私たちの大切にしたいことを改めてスタッフで検討する機会を持ちました。新3年生の時点でのChromebookの個人所有を見送り、軽井沢風越学園のライブラリーやラボ、森といった環境や地域の人などの学びのリソースをもっと活用し、実物から学ぶ原体験をさらに豊かにすると同時に、適切にデバイスを活用するためのデジタル・シティズンシップを含めた準備を行なっていきます。
また、新3年生も含め全学年に対し、共有機を整え必要に応じたICT利活用の機会を設定するとともに、その利活用場面や環境を丁寧に設計していきます。
新3年生がChromebookを個人所有しないというのは、捉え方によっては大きな方向転換のように受け取られるかもしれません。しかし、実はそうではありません。この背景にはスタッフの「デバイスに振り回されない善き使い手になってほしい」という願いがあります。
開校から2年ほど子どもたちとともに実践してきて得た仮説として、「豊かな原体験が少ないと、活動の中での選択肢が限られるため、結果的にデバイスに依存的になる」ということを考えています。だからこそ、創造的なICT利活用の充実も含めた、原体験の充実という次のステップに進もうとしています。ここでいう原体験とは「その人の成長を支える経験全般」であって、実物以外も含むあらゆる対象からの学びと考えています。
続きはこちら >> https://kazakoshi.ed.jp/kazenote/now/21406/
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【8】風越のいま 『いつでも遊んでいて、いつでも学んでいる 』井手 祐子
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新型コロナウイルスの感染が広がり、休校になった今週。オンラインで行われた朝のつどいに、西1年生の子どもたちが集まった。
つどいの中で、「今日、どんな風に過ごすの?学びはどうする?」と子どもたちに聞いてみた。すると、「ビーズをする」「お散歩に行く」「映画を見る」「10時半〜11時半まで学びをする」「ドリルを今日全部終わらせる」など、1日の計画をホワイトボードに書いて見せてくれる子どもたち。
「えー!決まってない」「分からない」と言う子がいないことに驚いた朝だった。
おまけに、「自分で学ぶのが難しいようなら、一緒に学ぶ時間を作ろうか?朝のつどいの後、zoomを繋ぎっぱなしにしてやってもいいよ。」と提案してみたが、「大丈夫!自分で学べる〜!!」と、頼もしい声が。この自信に満ちた感じが、なんとも西1年生らしい。
新型コロナウイルスの感染状況に翻弄されて、学びの場所やグループ単位が幾度となく変更することになったこの1年。特に1年生の子どもたちは、2階のルーム→キッチン→土間・YY→ライブラリーの青床と、空いている場所を探して、数ヶ月おきに移動してきた。そんな環境でも後期の人たちの昼休みと
自分たちの学びの時間が重なり周りがザワザワしていても、見学の人たちに囲まれても、変わらず自分の学びに向かう子どもたちの姿があった。学びの時間より前にやってき勝手に自習し始める人がいたり、家でも学びたいと自らプリントを持ち帰ったりすることも。「そろそろ時間だから終わろうか」
と声をかけると、「えー!!もっと続きがやりたい」といつまでも学び続ける人がいるくらい。
そんな学びを自分のモノにしてきた子どもたちだから、学びの場が自宅になるくらいは、大した変化ではないのかもしれない。
続きはこちら >> https://kazakoshi.ed.jp/kazenote/now/21417/
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(あとがき)
ついに押し寄せてきた今週の学年閉鎖。
オンラインで繋がりながら明るいほうへ、楽しいほうへと思考と工夫を重ねるスタッフ、淡々とやるべきことを前進させるスタッフ、少し先の未来を見据えながら今も同時につくるスタッフ、それぞれなりのやり方で踏ん張っている様子。
何より、保護者のみなさんに支えて踏ん張ってもらっているからこそ、です。ありがたい。でもくれぐれも無理しすぎぬように、と各地の同じような状況のみなさんにも思います。
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