スタッフインタビュー 2022年9月17日

子どもたち一人ひとりに大切にしている瞬間がある。(勝山 翔太)

勝山 翔太
投稿者 | 勝山 翔太

2022年9月17日

毎日子どもたちと一緒に、遊び、つくり、踊る、勝山(りりー)。時よりその姿は、わくわくしている子どものように見える。そんなりりーにこのスタッフインタビューでは、「どんな子どもだった?」という質問から話を聞いてみることにしました。(編集部 三輪)


やっと保育者になれた。

いつも動きまわってて、やんちゃな子どもだったと思う。虫や土、泥が大好きで、卒園のアルバムに「ポケットにはいつもミミズとダンゴムシが入っています」って書かれてた(笑)。

僕が保育者になりたいと思ったのも、当時の担任の先生の影響が大きいんだよね。今でも覚えているのが、園のすぐ横に臥竜山っていう山があってよく遊びに行ってたんだけど、天気のいい日にふと空を見上げたら、葉っぱがゆらゆら揺れていて。葉っぱ同士が重なり合うと色が変わって、その黄緑と緑のグラデーションがすごくきれいでずーっと見ていたら、先生が隣りで「なんでだろうね」って一言だけ言ったんだよね。

そんなふうにいつも見守ってくれる人だったんだけど、先生がそこにただいてくれているだけで、自分を肯定してくれるような気持ちになってさ。

___ それで保育者になったんですね。

それが、保育科のある大学に進学したんだけど、いざ就活してみたら就職できなかったんだよね。その理由が、園に男性更衣室がないから。

___ !!! たしかに女性の多い業界ではあるけど、そんな理由で働けないなんて。

保育園や幼稚園で働くのは今じゃないのかもしれないと思って、大学で身体の勉強もしていたから、トレーナーとして病院の整形外科で働いて。患者さんの術後のリハビリのトレーニングや再発予防の身体づくりの手伝いをしたり、病院の中だけではなくて地域に出ていって、0歳からお年寄りまで、さまざまな年齢の人の健康づくりのサポートをするような仕事をしてたんだよね。

僕たちくらいの年齢の人を診ていると、学生の時に怪我したものをそのままにしていましたとか、元々あまり動いてこなくてその健康習慣のまま大人になってしまった人とかが多くて、もっと前の段階をケアしたほうがいいんだなーって思うようになって、そういう視点を持って次は中学生とか高校生を診ると、成長期で大切な時期だけど、身体の使い方やケアの仕方を知らないんだなということに気づいて。そこから動きをつくる生活習慣みたいなものが気になるようになって、どんどん探究していったら、小学生、幼児期・・・ってどんどん年齢が下がっていって、結局、また関心が子どもに戻っていった。

そこから、保育者を養成する大学で講師として働いたり、認定こども園で運動あそび専門の先生として働いたんだけど、身体を介した関わりだけではなく、もっと子どもと深く関わりたいなと思って。担任をやらせてもらえないかと頼んでみたんだけど、やらせてもらえなかったんだよね。ここでも理由は男だから。他がみんな女性の先生だったから、一人だけ男の担任ということはできないって。

でも、そんな時に知人が「風越学園って学校ができるんだって。ゼロからつくれることって人生の中でそうそうないことだよね」と話してくれて。一回見てみたいなと思って話を聞きに行ったら、すごいわくわくしたんだよね。それで、しんさん(本城)昔のブログを読み返したりしたんだけど、それもめちゃめちゃ面白くってさ。風越学園で働きたいって強く思った。

___ 男性だからという理由で一保育者として子どもと関わることができない人生だったりりーにとって、しんさんみたいな人がいるということは、すごく希望のあることだったのかな、と話を聞いていて思いました。

うん。実際、かぜあそび(風越学園設立準備前に行なっていた認可外保育施設)で働くようになってからも、しんさんの影響ってすごく大きかった。でもそれは、男性だからということよりも、一人の人として。うまく言えないけど、しんさんっているようでいない、みたいなところあるじゃん。ぽたっと落として滲ませていくような関わり方というか。よく「過不足ない関わり」って言うけど、近くにいたと思ったら遠くにいて、でも遠くにいたと思ったら近くにいて。あと、火を起こしたり、料理をしたり、木を切ったり・・・暮らしを外さないで保育をしているのも、影響をすごい受けているなって思う。

やっぱり気になる、身体のこと。

___ 「動きをつくる生活習慣のことを考えていったら、幼児期の子どもたちまで遡ることになった」と言っていたけれど、実際風越で子どもたちと毎日過ごすようになって、何か感じていることはありますか?

やっぱりいつも子どもたちの身体のことは気になっています。園の中(室内)でしている子どもたちの身体の動きと、森や屋外で過ごす子どもの身体の動きって違うんだけど、今の風越の過ごし方が子どもたちの身体にとってより良いのかは分からないままで。

___ 自然の中にいたほうがいろんな身体の動かしかたをしそうだし、活動量も多そうなので、そっちのほうがより良さそうな気がしたのですが、そうじゃない部分も大きいかもしれないと?

森や自然の中って、偶発的に起こることが多い。その中で起こる感情の揺れ動きや出会いから身体を動かしていくことはすごくいいと思う。その一方で、こちらから身体の動きのバリエーションや身体の使い方みたいなものは手渡しにくい場所だなーと思っていて。

___ りりーの中に、もう少し手渡したい感があるということなのでしょうか。

そこはすごい揺れている。手渡したい感じもあるんだけど、しっくりこないというか。今までも、集いの時間に身体を使う遊びを提供してみて、それが文化になるようにしてみたいなーとか、体育館に子どもたちを集めて運動遊びみたいなことをやったり、芝生ででんぐり返しをしたこともあるんだけど、なんか違うんだよね。

1年目とかのほうが「もっと必要だ」とはっきり思っていたんだけど、今は「この人たちは今、幸せに暮らしているからなぁ」って。すごく悩んでる。

___ 悩みながらも、何か見えてきたことはあったりしますか?

自分のやりたい身体のことって、ラボが大事にしている考え方が近いなって思うようになってきた。やるとしたら、その場を全部大人がホールドしてやっていくんじゃなくて、子どもたちがそれぞれ自由になっていくために、その年齢や発達にあったものを手渡してみたり、やりたい人が足を運べる“場”を目指してみたい。

でも、ラボも保育の中にはまだそんなにつながってこないんだよね。だから、僕から身体のことを手渡すのはまだ早いかなって思ったり。こんなふうに気持ちが行ったり来たりするのを繰り返しているけど、手放さずに考え続けられたらなと思ってる。

森とつながる暮らしって?

___身体のことは昔から変わらずりりーの軸にあることだと思うのだけど、風越に入ってりりーに起きた変化や新たな関心事があれば教えてください。

去年の幼稚園のカリキュラムのテーマは「暮らしをつくる」で、今年は「森とつながる暮らしをつくる」をテーマにしたんだけど、暮らしってそもそもなんだろうなとか、森とつながるってなんだろうみたいなことを、今すごく考えながら保育している。自分の中でも大きなテーマになってきていて、そこは変わってきたかな。

今年、長野市から小諸市に引っ越してきたことも大きいかもしれない。家も森の中にあるから、そこでも森とつながる暮らしをしてみようと思って、木を切ったり、畑をつくってとにかく何かを育ててみたりするんだけど、外から持ってきたもので無理やりやってみると、森も家も含めたその空間が循環していない感じがするんだよね。

というのも、森って元からそこに暮らしている動物や育っている植物がいて、人間がいなくても循環してるでしょ。そこに僕たち人間が入っていって、森とつながる暮らしをするっていうことは、そこで人間が暮らすことによって、その場所が続いていったり、よりよくしていく仕組みみたいなものを、生み出さないといけないと思うの。

風越では今年度、外環境づくりのパートナーにパーマカルチャーデザイナーの四井真治さんを迎えて、校舎前芝生エリアに太陽光パネルとポンプを活用した循環する小川と池をつくり始めていて。ここからもっともっと面白くなっていくと思う。

四井さんと一緒に行なった川づくりの様子。

___ 子どもたちの姿からも、森とつながる暮らしを感じることはありますか?

今年、年中の子どもたちと過ごしているんだけど、森に住む生き物、命との出会いはすごく大きかったんじゃないかな。特にかたつむりともぐらとの出会いは、子どもたちにも印象的だったと思う。

___ カタツムリの話は以前保護者の内沼カンナさんがかぜのーとに書いてくれましたよね。

そうそう。六月に森の中で大きなカタツムリに出会って、ニコちゃんと名前をつけてみんなで飼って。いなくなっちゃう事件とかもあったんだけど、卵も産んでさ。カタツムリの卵って孵りにくいって言われているんだけど、夏休みの間、何人かの子どもたちが持って帰った卵から赤ちゃんがうまれて。子どもたちの中に、森の生き物と仲間として過ごす気持ちがうまれているように感じる。

インタビューをしたこの日も、ニコちゃんの虫かごを見せてもらうと、新たな命が。

もぐらは、わこさん(斉土)の田んぼに行ったときに、たまたま死んじゃっているもぐらに出会ったんだよね。そうしたら子どもたちは、「どうしてこんなふうになってしまったんだろう」とか、「もしかして家族がいたかも」って、このもぐらに寄り添おうとするんだよね。そのあと、集いの時間に『もぐらはすごい』(アヤ井アキコ著 / アリス館)という絵本を読んだら、そこからさらに出会ったもぐらの世界に思いを馳せる子どもたちのやりとりがあって。

言葉のないものや命に出会ったり、向き合ったり。森とつながる暮らしをしていくと、そういうシーンがいっぱいあるんだなって。その中で、子どもたち一人ひとりが大切にしている瞬間がありそうだなって、子どもたちの姿を見ていると思う。

どんな環境が住みやすいかな?とやりとりをしながら、ニコちゃんファミリーのおうちの掃除。

今、森の入り口に居場所みたいなものを作っているんだよね。森の中で暮らすのとでは違うなとも思って。

___ 森とつながって暮らすことと森の中で暮らすことは違う、と。

森って層があると思うんだ。森とつながるには入っていきたいけど、奥のほうまでいくとなんか入りづらいじゃない。命を感じるというか。だから、まずは入り口をつくって森を少しずつ知っていけるといいかなと。そこから森のいろんなところにつながっていくということを、ここからやってみたいなって。

でも、それがいいかも分からないんだよね。森は木陰があって、自分たちで遊び、居場所をつくっていけて、保育はしやすいんだけど、ずっと人間が居続けるとそこは裸地になっちゃうでしょ。そこには、見えない根っこがあるけど、踏み続けていたらその木は死んじゃう。

それって、循環ではなく消費しているだけになっちゃうから、森に入ることと同時に、もっと土に目を向けたり、地球の原理原則に出会うみたいなことを、子どもも僕自身もできたらいいなと思う。

インタビュー実施日:2022年9月6日

#2022 #スタッフ #幼児 #森

勝山 翔太

投稿者勝山 翔太

投稿者勝山 翔太

長野県生まれ。
身体や絵、色などで表現したり、つくったりすることが好きですが、これといって決まったスタイルがあるわけではありません。そのときの自分が「心地よい」とか「よりよい」と思うカタチで表現するようにしています。 風越学園にくるまでは“健康”というキーワードを軸に、ちがった分野の世界をわたり歩いてきました。学生時代からのテーマは『究極の健康づくり』、自分らしくいることで幸せな毎日を過ごしたいと思います。
ダンスを通して子ども〜大人まで伝えたり関わったり、舞台に作品を出したり、自分自身も大小様々な大会に現在もチャレンジしています。かたまった表現にならないように新しいものに出会ったり、こわしたり、つくることが好きです。

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