風越のいま 2024年3月14日

自分らしい自分を見つけていく

岩瀬 直樹
投稿者 | 岩瀬 直樹

2024年3月14日

6年生からの4年間を風越学園で過ごしてきたコウタ(9年生)。思い返してみると初年度の2020年は、年下の人と過ごしていることが多かった。最初の頃はなかなか没頭することに出会えず苦労しているようにも見えていた。

そんなに目立つタイプの人ではないが、ここ最近、探究を淡々と楽しんでいる姿、アウトプットデイで自分の考えを真っ直ぐに自信を持って伝えている姿をみることが多く、変化を感じていた。卒業を前に、コウタは自分の経験をどう感じているのだろうか。ちょっと声をきいてみた。

岩瀬

コウタ、もうすぐ卒業だねー。どんな4年間だった?

コウタ

いろいろな変化があった4年間でした。最初の年は、自分からプロジェクトをやるっていうことはしなかったんです。まだその時は、面白さとか、プロジェクトをやる意味ってなんだろうって思ってたから、自分からはやろうとしませんでした。

あとは、一部の人としか話しませんでした。特に目立っている人とは関わらなかったです。年下の子と過ごすことも多かったし、同じ学年の人とは授業以外ではほとんど関わっていなかったですね。

プロジェクトの面白さがわかっていなかったから、マイプロの時間は、勉強したり、パソコンいじったりと、ある意味無駄な時間を過ごしていましたね。充実してなかったです。

あとは、前に通っていた学校とは授業の仕方が違うから、勉強できているのかなあ、大丈夫かなあと不安な1年でしたね。

岩瀬

そんな感じのスタートだったんだね。7年生(風越2年目)になってからはどう?

コウタ

7年になる時に、新しくリンタロウとハルマキの二人が入ってきて仲良くなったのが大きかったなと思います。それをきっかけにいろんな人と関わる機会が増えました。きっかけをくれた2人です。

7年の最初の「人間とチョコレート」のテーマプロジェクトも大きかったって思い出しました。プロジェクトの中でみんなと話したり、協力して学んだり、関わるようになりました。アウトプットデイでは、チヒロくんと一緒に発表したんです。ぼくが、チヒロくんと一緒にやりたくて、自分から声をかけました。6年の時の僕だったら自分から声かけることはなかった。7年生になって変わったなと思います。

コウタ

8年生になってからは、マイプロで自分の好きなことをプロジェクトにできました。ぼくは夜景が好きで、そのことを調べたり、集めたり。夜景について気になったことを思いっきり探究できました。夜景の建物って、ひとつひとつ違う綺麗さがあるんですよ。ビルや建物が並んでぎゅっと集まって見える美しさが本当に好きで。

積極的になったのは、いろんな人とつながって日々の生活も充実してきていたのもあると思います。自分の意思ではじめて、とりあえずやってみた。自分の調べたことから面白いことがどんどんつながっていって、ひたすらいろんなことをしました。その中で、「自分、プロジェクトできるな!」ってやっと実感できました。

岩瀬

自分、プロジェクトできるな!って感じたんだねー。そこから9年生につながっていったんだね。

コウタ

はい。9年生になった時にも大きい変化があって。僕、7,8年の頃って勉強があまり好きじゃなくて勉強や授業に意欲的に取り組まなかったんです。

9年生になって「さすがに勉強しないとまずいな」と思ってようやく取り組むようになって。数学はもともと苦手で、計算もできなかったけど、他の9年生に聞いたりとか、問題をがんばって考えてみたりとかしているうちに、問題がちょくちょく解けるようになって自信がついてきました。漢字コンテストもなかなかできなくて困ってたけど、あきらめずに自分に合う学び方を探してやっていたらできるようになっていきました。

そういう学びに少しずつ積極的になっていったのが僕にとっての大きな変化です。

その積極性は「そつたん」(卒業探究:9年生はそれぞれテーマを自分で選び約1年かけて探究する)にも活きたと思います。ぼくは海洋プラスチックをテーマに探究したんですけど、校外学習に行ったり、専門家とつながったり、アウトプットデイで海の現状を伝えたりと、興味あることに向かっていったことで積極的になった、という感じがしています。特にヘリーハンセンで働いている古賀さんにはマイクロプラスチックについて詳しいことを教えて貰いました。古賀さんはぼくのそつたんをずっと支えてくれて、最後のアウトプットDAYにも僕の発表を見に来てくれました。

9年生(のコミュニティ)も、みんなが仲良くて、自分にとって大切な仲間って感じ。一緒にお泊まりしたし、受験の時も一緒に苦しんだし、そつたんもみんなでがんばったし。

長く一緒に過ごして慣れてきたからというのはあるし、ちゃんと一人ひとりをいい人って知ってるし、どんな人かもよく知っているから仲間って感じです。

いろんな人と関わるようになって明るくなったと思います。

これまでは初めて会う人とは話すとかできなかったけど、今は全然平気。自分が明るくなったなあと思うし、積極的になったなあと思います。人と話すこともあまりしなかったけど、今の9年生と出会えたおかげで自分が積極的になったなあと思います。

岩瀬

どうしてそういう変化が起きたんだろう。

コウタ

なんでだろう。考えたことなかったなあ。

自然にそうなっていったからなあ。

まあ、関わる楽しさ、関わることで得られることを知ったから、ですかね。

そつたんのときも、発表見てくれた人の中にパタゴニアの人がいて、海に落ちているもので服を作っていることを教えてくれて。それは人と関わったからこそ得られた。関わることで僕の知らないことを知っている人と知り合えるようになったということですね。海洋プラスチックのことでも、いろんな方ともつながれた。

積極的に関わることでつながって、つながることで探究が深まる。そういうことを知れたからこそ、変わっていったのかもしれないです。

風越に入って人のことを大切に感じるようになりました。関わることで広がっていくことも感じています。

岩瀬

コウタも最初はプロジェクトに向かえなかったと最初に話していたけど、もし以前の自分に声を掛けられるとしたら、なんて声を掛ける?

コウタ

プロジェクトをやってない不安に関しては、まず動いてみるといいし、気になったことをとりあえず調べてみるといい。ちょっとしたことから始めればいい。何も興味ない人なんていないと思うから。

勉強に関しては、危機感をもつことが大事(笑)。あとは、自分に合った勉強のやり方を見つけるのが大事。ぼくはテキストで学ぶのが一番良かった。それを日々試してみるといいんじゃないかと思います。

でも、そうやってずっと不安だったり慌ててると疲れちゃうから、うまくいかない時期があっていいんじゃないかなって思います。「今はそういう時期かな」というのはあっていいと思いますね。普通の学校だと、もったいない時間は過ごせないじゃないですか。全部授業が入っている。無駄な時間があったからこそ、いろいろ気付けることもあるし、無駄な時間を過ごしていていいのかなーと考える時期があっていいんじゃないかな〜って思います。

風越はプロジェクトの時間をもっと増やしたほうがいいと思います。僕みたいに変われる時間が増えるから。プロジェクトの時間が増えれば、やることがなくてゲームする人も減ると思います。だってプロジェクトの方がやっていて圧倒的に楽しいから。ゲームやっている人は暇だからやっているわけだからゲームをやる暇がなくなるはずです。

岩瀬

なるほどなー。コウタは「夜景」だったり「海洋プラスチック」だったり、自分の「〜したい」というものに出会えたんだよね。改めてきくけど、コウタにとって「探究」ってなんだろう?

コウタ

うーん。「自分の興味あることを自分なりに活動したり学んだりすること」かな。ぼくは探究が中心の学校でよかったなって思っています。探究があったからこそ、海洋プラスチックに関心が持てた。自分の本当に好きなことを見つけられたなって。

この探究は高校に行っても社会に出ても続けようと思っています。

あとは、人につながったり、人に発表したりするなかで、自分が積極的になっていけたのも探究があったからこそ得たものです。勉強は自分でできるから。さっきも言ったけど、僕は自分なりに勉強法を見つけたから、それはそれでやっていって、残りの時間も風越の時間を大切にしながら探究をやっていきたい。

自分っていいなあーって90%思っています。

積極的になった自分が好きっていうのと、プロジェクトを頑張っている自分が好きですね。


自分の好きに出会え、そこに向かっている自分が好きというコウタ。自分の変化を実感して、その自分を肯定できているんだな。好きなことに出会い、自分が好きになっていく。

風越はカリキュラムを「子どもの経験の総体」と定義している。

わたしたちは、カリキュラムとは「子どもの経験の総体」と捉えています。子どもは授業等の意図された時間の中だけで学んでいるわけではありません。森やライブラリー、ラボなどの環境、活動によって変化する集団、異年齢の子ども同士の関係や日々のスタッフの関わり、たっぷりある昼休み時間でのあそびもカリキュラムです。時には地域の人や専門家に出会いながら、風越学園に集まる人たちと街のようなコミュニティで経験することも、その一つです。

コウタは自分の変化を「自然にそうなっていった」と話していた。好きなものに出会ったり、さまざまな人と出会ったり、コミュニティの中でいろいろな関わりが生まれたり、時には無駄な時間を過ごしたり。「これ」とは具体的には言えない、本当にさまざまな経験がコウタに影響して、コウタ自身をかたちづくっていったんだろうなあと思う。

4年という時間は、コウタが「じっくり、ゆったり、たっぷり、まざって」自分らしい自分を見つけていくプロセスだったんだろう。

人は長い時間軸で成長していく。なのに私たちはつい「点」で見てしまいがちだ。その瞬間のその出来事にフォーカスして不安になったり不満を覚えたり。

その瞬間の「気になりごと」は、実は大人の側の問題で、私たちの不安を投影しているだけなのかもしれない。一見ネガティブに見える時期も、長い時間軸でみると、その人にとっては大切な経験になっていく可能性があるんだ。

9年生のマユは、風越に入学してからの3年間、「ほとんど否定されなかった」と言っていた。否定されないから、自分の考えや意見をちょっとずつ出すようになる。出してみると友達やスタッフが受け取ってくれるから、もっと出せるようになる。そうやっているうちに、自分から出していったものがつながっていってどんどん面白くなっていって、学び続ける私になったと。コウタも「無駄な時間があったからこそ、いろいろ気付けることもあるし、無駄な時間を過ごしていていいのかなーと考える時期があっていいんじゃないかな〜って思います」と言っていた。本人にとっては必要な時間なのかもしれないのに、大人は不安になってそういう時間を否定してしまいがちだ。

人には力がある。
こどもこそがつくり手である。
そのことを信じていこうとあらためて思えたコウタの言葉だった。
卒業、おめでとう、9年生。

#2023 #9年 #わたしをつくる

岩瀬 直樹

投稿者岩瀬 直樹

投稿者岩瀬 直樹

幸せな子ども時代を過ごせる場とは?過去の経験や仕組みにとらわれず、新しいかたちを大胆に一緒につくっていきます。起きること、一緒につくることを「そうきたか!」おもしろがり、おもしろいと思う人たちとつながっていきたいです。

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