風越のいま 2023年12月26日

風越ウラ日記 〜僕らがつくる小さな宇宙〜

井上 太智
投稿者 | 井上 太智

2023年12月26日

最近の理科室から眺めた今の風越を残しておきたい。
これは明日にはどうなっているかわからないお話。

4年目の風越学園には、やっとこさ良い流れがやってきている。そして特に今アツい!と注目されているのが「ファシトレ」だ。

今年度、「つくる」をキーワードにスタートした4月。その学校づくりは子どもたちがファシリテーターとしての意識をもつことでグンと加速した。アウトプットデーの企画運営、県のお仕事となる円卓会議など、大きな仕事をこなしてしまうのが風越の子どもファシリテーターだ。僕もかざこしミーティングのファシリテーターチーム(この子たちが自分たちをファシリテーターと名乗り始めた元祖ファシリテーターである。)の伴走をしている。こちらも手応えを積み重ねていて全校ミーティングが一つの形になりつつある。

かざこしミーティングは、誰もが自由に話したいことをシェアしたり、話し合うテーマをあげることができる場だ。最近のかざこしミーティングではアウトプットデーのテーマが発表されたり、ちょっとした困りごとや、お願いごとがシェアされた。そして、かざこしミーティングのメインである話し合いでは「来年度のホームどうする?」が話し合われている最中である。風越のホーム(異年齢のコミュニティ)をどうするかがまだ決まっていないのだ。だから子どもたちと話し、子どもたちと決めるのが風越。さぁ、来年度のホームがどうなっていくのか、これは僕自身も目が離せないテーマだ。

今回のアウトプットデーのコンセプト〜とちゅうをあじわう〜これもいいじゃない。

実は今回書き残して起きたいと思っているのは、子どもファシリテーターが頑張っている!という話じゃない。もうそれは多くの子どもも大人も知っている、いわばオモテ面だ。僕が話したいのはウラの話。そう。もしかすると、僕しか知らないかもしれないウラの話である。

その1 理科室から見えるホームベースには魔物が棲んでいる

どんな魔物かっていうと、授業をサボりたくなっちゃう魔物だ。
そのホームベースにはもちろん電気はついていない。
でも時折聞こえてくるのだ。魔物たちの笑い声が。
ちょっと怖いけど、行ってみることにしよう。

すると、、そこにいるのは授業中なのに数名の子どもたち。
手にはクロームブック、画面にはYouTubeかネットゲームだ。(コラコラ)
でも「やめなさい!」なんてど真ん中ストレートは打ち返されるだけだ。
最初の一言目は慎重に、そして軽めに。

「おっす!元気?」
「まぁ、元気っちゃ元気。」
「なになに?ゲーム?そんなに面白いの?」
「まぁ、面白いっちゃ面白い。飽きたけど。」
「何それ。絶対暇つぶしでやってるよね?笑」
「まぁ、暇つぶしっちゃ暇つぶし。」

やたら「◯◯ちゃ◯◯」と返してくる。
うん、これが魔物に操られている証拠だ。話し方がどう考えてもおかしい。

子どもたちは悪くない。悪いのは魔物だ、魔物。

彼らはなんやかんや言い訳をしつつ、ちょっと罪の意識もあるようで、しばらくすると「4時間目からは行こうと思っているけど〜。あ、ちょうどあと5分!」などと言い出した。程なくして、彼らはそこからいなくなった。

でもこのホームベース、なんだか彼らのアジトみたいでもあって、居場所感があるのは事実だった。

その2 理科室前で繰り広げらるバンバンバン

「バンバンバン!」
「バンバン!」
「あっぶね!今当たるところだった!」
「おい、気をつけろ!油断するな!」

3、4年生数名が二手に分かれて睨み合っている。
手には3Dプリンターでつくった拳銃だ。もちろん、弾は飛ばない。

ゴロゴロゴロ!一人の子どもがゴロリと理科室に転がり込んでくる。

「はい、理科室で寝転がらないで〜。ガラスが落ちているかもしれないよ。」といつも通り対応する。「あ、ごめんなさ〜い」と彼は出て行く。

しかし、次の瞬間には、すぐさま姿勢を低くして向こう岸の相手を狙っていた。

現実と空想の世界を一瞬でワープする君、やるじゃないか。

しばらくすると「今、当たった!」「当たってない!」「絶対当たった!」「いや、当たってないもんね〜」と言い争いが始まった。結構、本気の言い合いだ。

僕からすると、見えない弾を当てる方も、避ける方も凄すぎる。

あ、感心している場合じゃないよな。もう少し良い遊びを考えようぜ。彼らにはとりあえずこの記事をおすすめしたい。ここに出てくるお兄さんたちももう立派な中学生。見えない弾を操る君たちも、いつかきっと大きく育つはずだ。

その3 理科室の床には…

G(水澤)、ちょっと相談があって。」
「うん、何?」
「やっちゃいました、、」
「やっちゃったか。笑」
「はい、完全にやっちゃいました。」
「で、何をやっちゃったの?」
「理科室の床、、溶かしちゃいました。」
「あら〜、そうか〜。それはやっちゃったね〜。」

理科実験中、上昇気流を再現しよう!とガンガン燃やす子どもたち。一瞬気になったものの、声をかけるのが遅かった。片付けの時に、バットをどかして子どもたちはびっくり。床がジュワーと音を立てながら溶けている。子どもたちは平謝り。でも今回悪いのは、子どもでも、魔物でもなくて、完全に僕だ。いやぁー、、反省。

Gのいつもと変わらないニコニコ笑顔だけが救いという状況だ。

「じゃあ、今度見積もりとってみるね。」
「ありがとうございます、、」とやりとりしていたが「あれ?でもこれ、直しちゃいけない気がする、、」という気持ちが湧いてきた。

うん、これは子どもたちの生きた証…。
そうだ、これはアートだ!

落ち込む子どもたちに話をする。
「よし、風越に名を刻もう。これはアートだ。」

「え?どういうこと?」一瞬拍子抜けしたような子どもたちだったが、切り替えが早いのも風越あるある。「歴史でやったよね。みんなの責任ってことで名前は円状に書かないと。」

2023.12.8 4人の子どもたちの名が風越の歴史に刻まれた。(updraft=上昇気流)

その4 科学者の時間は、何にでもなれる

「来週の科学者の時間なんですど、9年生と茅刈りできますかね?」と9年コウタロウ。
「おぉ、やるか。じゃあ、茅刈りがなぜ科学者の時間の学びと言えるのか考えておいて。イントロダクション、活動、振り返りね、よろしく!」
「はい、わかりました!」

コウタロウはマイプロ、卒たんと茅葺き屋根の居場所を作り続けている。その経験を仲間と共有したいというのだ。

軽井沢の歴史を交えながら、茅葺の魅力と自分の想いを伝えていくコウタロウ。

なんかハマる!

背丈ほどのススキを担いだ行列。これが風越9年生の背中。

一人一人の「気づき」「体験」「じっさいにやってみる」を大切にしたい。だからこの時間は一緒につくる。byコウタロウ・・・こうして一つの授業が完成する。

そして、7年ユロ。
「今度の科学者の時間なんですけど、馬と過ごす時間を企画してもいいですか?」
「おぉ、やるか。じゃあ、馬と触れ合うことがなぜ科学者の時間の学びと言えるのか考えておいて!」以下略…。

幼児と一緒につどい。進めるのはユロだ。

これは馬の気持ちになってみる体験。進め!って紐で操られる気持ちってどうよ?

馬のカエデちゃんは瞳が綺麗だった。

馬と触れ合い、馬と共に生きる暮らしに触れた。
ユロの大切にしているものを感じ合い、分かち合う時間だ。
こうして一つの授業が完成する。

科学者の時間は、何にでもなれるジョーカーだ。僕たちの経験を豊かにしてくれるものなら大いに切り札として使ってほしい。

その5 雨ときどき、竜巻。その後、台風。

科学者の時間は、自分の問いを深めていく時間だ。
土台の授業なんだからオモテだろう、どう考えても。でも、僕は極めてウラに近い時間を追及している。舞台は金曜1・2時間目、8年生気象分野。

子どもたちの立てた問いはこんな感じ。
「前線を見えるようにするには?上昇気流をつくりだすには?」
「雲はどのような条件で発生するのか?」
「雲、雪を人工的に降らすには?」
「竜巻を起こすには?」
「台風をつくるには?」

どのグループも気象現象を再現しようぜ!という方向性。
まぁ、手を動かした方が面白いよね。
実際どんな様子なのかといいますと…

上昇気流を感じたい!

おお!台風だ!

温められた空気が冷やされて…雨が降ってきた?

それぞれのグループで問いを深めて行った後は、シェアタイムで終わる流れ。

この日、理科室には雲が発生し、上昇気流が立ち上った。もちろん雨も降ったし(見える人には見えた)、台風っぽいものも出現。極めつけは竜巻発生装置でおきた竜巻だ。うまく行かなくていい、馬鹿馬鹿しくていい、でも楽しくないのはイヤなんだ。

さぁここまで、これが僕のウラ話。みんなのウラ話も聞いてみたいな。
誰が見てもすごいと言われることや、わかりやすいものじゃなくていいじゃない。
自分しか知らない物語を重ね合わせて、僕らの風越を面白がれたらいい。

 

#2023 #ラボ #わたしをつくる

井上 太智

投稿者井上 太智

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ドキドキするチャレンジも楽しんでいけますように!

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