2022年5月25日
『ファーマーさんはみすてない』(フォレストブックス)という絵本の読み聞かせをきっかけに、「レストランを作りたい」という1,2年生の子どもたちの思いで始まった「レストランプロジェクト」。
「おいしいカレーとサラダを作って、お客さんに食べてもらいたいな。」「カレーのために、じゃがいもとにんじんを育てよう!」と畑を作りました。
多くの人が行き交う、駐車場からエントランスに向かう間の芝生に作った畑。苦労してうねを作ったのですが、どうしても踏まれてしまいます。
「何が植えられているかわかるように、看板を立てよう。」「飛び越えることがないように、柵もあるといいね。」と解決策がどんどん出てきます。
柵作り、1,2年生でもできる方法はあるだろうか。・・・そんなことを思い、ラボのこぐまさん(岡部)に相談すると、「大丈夫、できると思うよ。」と。
早速、その日のうちに、こぐまさんが子どもたちに作り方を教えてくださることになりました。
「ねえみんな、音をよく聞いてみて。はじめは優しくトントントン。釘が立ったら、ドンドンドン。最後は仕上げにこの丸い方で叩くんだよ。ほら、金づちの両側、見て、触ってみて。」
以前、こぐまさんの記事にもあった釘打ちのインストラクションです。子どもたちは真剣な眼差しでこぐまさんの手元を見つめます。その集中力といったら、目を見張るものがあります。
こぐまさんは、釘を打つ様子をただ見せるだけではなく、目や耳、指先を使って、五感を使った「コツ」を伝授していきます。子どもたちも、身体全体の感覚を使って、「釘打ち」という行為を習得しようとしていました。
インストラクションが終わると、それぞれにつくる活動へと入っていきます。これまでにも釘を打っている子どもたちの様子を見てきましたが、このこぐまさんのインストラクションを経て、釘打ちが断然うまくなりました。子どもたちは金づちを手にすると、まず目で、指先で、どちら側で叩くのかを確認したり、釘が立つまで、音に耳を傾けて優しく打ったりしています。
以前は、始めから強くドンドン打って、釘が曲がってしまったり、斜めに入って飛び抜けてしまったりしていました。金づちの先っぽを使い分けることも知りませんでしたから、最後まで釘が十分に入っていないということもありました。
ノコギリの使い方もそうでした。杭の先は、土に入りやすいように斜めに切るのですが、これがなかなか難しいことでした。ノコギリの刃も、細かい方が斜めに切りやすいこと、切ろうとしているところの正面に立って、両手で「ギーコーギーコー」と長ーく動かすこと教えてもらうことで、余分な力を入れずに楽に切れるようになったのです。
「自分でできた!」という手応えは、子どもたちのやりたい思いを加速させます。そして、「もっとやりたい。」という思いで何度も何度も取り組むうちに、「今度はこうしてみよう。」と無数の工夫が積み重なり、できあがる物が自然と一人一人にとってよりよくなっていくようです。
今回の活動は、畑の三つのうねをぐるっと柵で囲うためには、20個以上の柵が必要でした。
1日2,3時間の柵作りに、何日も取り組む子どもたちは、作り続けるうちに活動が自分のものになり、大人に助けを求めなくても自分たちで進められるし、子どもたち同士で教え合いながら、失敗を乗り越えることができるようになっていきました。
「ここに道具があるから、自由にどうぞ。」ではなく、その使い方やコツ、さらに「やってみたい!」という願いを持てるところまでを子どもたちに丁寧に手渡していくこと。それによって、子どもたちの活動が躍動し、いつの間にか自然に、道具を自由に使いこなせるようになっていく様子を目の当たりにしました。
これは、ラボで使う道具や素材だけの話ではないと思っています。私たちは、プロジェクトの中で、地域の方やその道のプロフェッショナルに学ぶという場面を設定することがあります。そういうときも、誰と出会うと学びが深まるか、どんなタイミングで出会うことがベストなのかを見極めていきます。また、少し難しそうだけど、失敗してみた方が学びが大きそうだから、あえて今は介入しないでおこうなどと、見通しをもって関わり方を考えます。このようなスタッフのかかわり方は、道具の手渡し方とつながるのではないかと思います。
今年度、私たちスタッフは、「子どもがつくり手になっていくための大人のかかわり」について、実践を深めていきたいと考えています。
子ども自身が、自分の学びや暮らしを自分でつくっていく感覚をもつことができるようになっていくために、大人はどのようにかかわったり、環境をつくったりしていくことができるでしょうか。
子どもの活動の中にある、つくり手感覚につながるチャンスを最大限に活かすために、私たち大人のつくり手感覚も、同時に磨いていく必要がありそうです。