2021年11月19日
1年生のキョウは朝ふらっとライブラリーに来ては、スターウォーズの本ない?クワガタの折り紙の本ない?などライブラリーを信頼してくれているひとり。カウンター的なテーブルの内側で気がつくと本を読んでいることもある。
ある時、ごりさん(岩瀬)が家から持ってきた昔の硬貨が、テーブルに飾ってあるスナフキンのぬいぐるみの膝の上にのっていたのを見つけたキョウ。早速キョウは「これなぁに?」と冷静な眼差してたずねてきた。待っていましたよ、と思いつつ、「それ、ごりさんの家にあったみたいだよ。オフィスにいるから聞いてみたら?」と。
ごりさんのところに聞きに行ったキョウは本で調べてみたら?と促されて、また私のところにやってきた。「みっちゃーん、このお金って江戸時代に使われていたものかな?」とピンポイントで聞いてきた。歴史好きでもあるしな、と思いながら、いっしょに歩いてライブラリーの探究エリアに向かう。まだまだ私に連れて行ってもらう段階でおっけーと思っている。
キョウの父母と話すと、「キョウはみっちゃんへの信頼がある!」と言ってくださるのだけど、キョウは「みっちゃんよ、ぼくの期待にどこまで応えてくれるのだい?」とばかりに、まだまだ探っていると思うなぁ〜。それでも昨日は忍者の本の袖に載っていた本がライブラリーにあるかどうかたずねてきた。100%絶対じゃないけれど、信じてみたいという気持ちのあるキョウとの関係を築いていきたい。
ふたりで探究エリアに行き、明治・江戸あたりの書架に向かったけれど、書名から推測できるような本はない。キョウは完全に私を頼りにしている。まだ漢字も読めないしね。それでもパラパラ本をめくることで思いがけない気づきがあったり、あっこれか!って、知りたかったことを発見することがあるからね。「キョウもいっしょに探してね。」と声をかけてはみるが、みっちゃんよろしく〜って雰囲気。まぁ気長にね、とついつい甘やかしちゃう気持ちが出ちゃうのをグッと堪えて、それっぽい本を取り出してキョウに渡して、「ほらほら,こうやってパラパラと写真だけでもいけるから探してみてや。」
まぁそんな風にじっくり頁とにらめっこして探せるほどの忍耐がある子はおらんので、私は私で本を探していると『21世紀こども百科歴史館:増補版』(小学館,2002)に載っているのを無事発見!
「おーごりさんに見せるか」と、本を抱えてスタスタ歩いていく。えー、私への一言なんて期待しておりません。あくまでキョウが知りたくて発見したことを伝えたいのは、ごりさん。オフィスに戻ってごりさんに伝えると、「寛永通宝のコピーをつくりたい!」と言い残して、ラボのこぐま(岡部)のところへ。キョウはそのあと、こぐまとやりとりをしてトレーシングペーパーで硬貨をなぞったようで、「みっちゃん、これあげるー」とプレゼントしてくれた。
キョウがこの日、ライブラリーで偶然出会って惹かれた硬貨と本とスタッフとの出会いはこれでおしまい。
ごりさん、この後こっそり硬貨を2枚追加してたっけ。キョウが惹かれるのか、ほかの誰かなのか、それがいつなのかはわかりませんね〜その時をスナフキンはそっと待っているのではないかな。
あるとき、ゆうこりん(依田)に連れられて3・4年生のカナエ、ナツキ、ケイイチロウ、ソラ、タツがカウンターにやってきた。ナツキが持っていた炭らしき木の棒、「炭を作ったつもりなんだけど、これが本当に炭かどうか確かめたいんだけど。」と言う。ゆうこりんは、「そんな本あるかな〜???」ってなんだかたのしそう。
内心、そんな方法がドンピシャで載っている本あるかな〜と思いながら、探究エリアの科学分野のあたりに向かう。時間がかかりそうだなと思ったので、「どこでやってるの?あっ理科室、じゃぁ本見つけたらもっていくよ。」と返事をした。このときは子どもたちを本探しに巻き込まない。
直球で見つかるわけがないので、木が炭になるということはものの燃焼、化学変化だな、とキーワードを変換して探してみると3冊見つかった。『炭と墨の実験』(さ・え・ら書房、1997)、『変身のなぞ:化学のスター!』(玉川大学出版部、2013)、『化学変化のひみつ』(PHP研究所、2016)。
頁をめくると、やはり燃焼のところに「炭の不思議」とか「炭の燃焼」が小さく載っている。しめしめと思いながら、理科室に行ってみるとゆうこりんと子どもたちは実験をしようとごそごそしている。「なんか本に載ってたよーいっしょに読んでみようよ。」と私が読んだり、用語を補足したりする間、みんなじーっと見て・聞いている。かなえはそのあと自分でも本を確かめるようにして読んでいた。「確かめられるんじゃなーい。」と、ゆうこりんもうれしそう。
早速、実験装置をつくる。実験前の割り箸の重さを図る→アルミホイルに穴をつくる→割り箸にアルミホイルを巻きつける→燃焼させる→穴から煙が出てきて、マッチの火を近づけると・・・火が出てきたーーーーーー!一番驚いていたのはゆうこりんと私だけど、子どもたちも一歩進んだ手応えを感じたようす。実験の最後まで見守って、お役はごめん。このあと、まだまだ炭の探究は続いていて、先日はとうとう自分たちが作った炭で野菜を焼いたそう(この探究の様子は、ゆうこりんが記事にしてくれるはず)。
ゆうこりんは、きっと、このタイミングと思って、子どもたちをライブラリーに連れてきたんじゃないかな。私はほとんど前の活動を知らなかったけれど、短くやりとりしながら必要最低限の情報を届けていった。
たいち(井上)はいつも突然に平静を装って近づいてくる。「来週月曜日、アドベンチャーキャンプで7・8年生が半分いないんだよね〜。みっちゃんと何かって子どもたちに伝えていいかな〜。」ときた。「いいけどさ、聞いてたけどさ、いま金曜日の5時なんだよね。」と嫌みを言い残したのは半分冗談で、どんな教材で、何を考えてもらいたいか、そのとき、どんな資料と出会うといいだろうか、土日でぐるんぐるん考えた。結局、この前の週に5・6年生に向けて準備したけれど扱わなかった「きのこ」を題材にすることに。(この前週に校外アドベンチャーで浅間山登山をした際に、ガイドのたいちょうと、きのこの話で盛り上がったんですよね。世界で一番大きい生物はきのこだと。)
私がすることは、子どもたちの活動・思考と教材を結びつける資料を真ん中に置いて、学びの場をつくること。7・8年の子どもたちは植物が気孔を通じて呼吸することを知っているはず。これは前提として理解しておくことだけど、念のため理科の教科書で確認しておく。90分の展開、形態、準備物を練り上げていこうとした。グループ決めは科学者の時間で使っているクジを使わせてもらおう。個人の思考とやりとりを残して、グループでもやりとりできるように、ミニホワイトボードを用意しておこう。
あとは・・・資料だね。きのこの分類がわかるもの、呼吸の仕組みがわかるもの、胞子にひっかかる人もいるかもしれない。写真絵本、図鑑、専門書と理科の教科書など、入門的な本から発展的な本までを20冊ほど準備した。ただ・・・呼吸しているかどうかを確かめる実験装置が直接載っている本はないな。よいよい、本で全部わからない方がいい。一部の子どもたちは前のテーマプロジェクト「マスクメーカーwithコロナ」の時に、なかなかひどいネット検索をしていたから、今回は検索エンジンを工夫することも大事にしよう。そんな風にして子どもたちとの時間を迎えた。
当日の朝、自宅の庭ににょきにょき生えているきのこ数種類も袋にいれて、いざ。7・8年ラーニンググループのざっきー(山崎)、りんちゃん(甲斐)、きくちゃん(菊原)も準備から入ってくれて心強い。
「私たち人間は鼻や口から呼吸するよね、じゃあ植物はどうやって呼吸しているんだっけ?」という投げかけとやりとりに始まり、「それじゃ、これはどうかな???」と言って隠しておいたきのこを登場させる。じゃじゃーんというような演出は中学生には要らない。ただ、そこからいくつかのやり取り、みんなが使える道具を明示したあとは、「きのこは呼吸をするのか。するとしたら、どうしたらそれを確かめられるか。実験装置をつくろう!」という問いに対して、「じゃぁ、またタイミングみて声かけるね。」とだけ伝えて、あとは子どもたちに委ねた。
すると、ひとりで考えたり、手を動かしたりする人がいたり、他のグループの様子を見に行く人がいたりする。へぇ〜、これきっと、普段の科学者の時間で大切にされていることなのかもしれないな、それに実際に他者に学ぶことが大事にされるっていいなと受け止めた。
フウダイとカリンは、自分のホワイトボードに知っていることを書くとすぐに用意しておいた資料を探しにいった。わかったことをどんどん追加して書き留めている。途中、フウダイは、独り言をつぶやいたり、頭を抱えたり、同じグループの人とおしゃべりしたりしながら・・・唸り声が聞こえるような感じがする。ホワイトボードには、「気孔」「胞子」といったキーワードがずらっとならび、これまでの知識と課題に必要なことを模索しているようだ。
シュウゴとコウタときくちゃんは、そもそも呼吸ってなんだろう?きのこは何科なんだろう?と、ライブラリーから辞典や図鑑をひっぱってきて調べ始めている。ほぉ〜そこから確認したいんだね。
ナナミ、マユ、ノイは植物の呼吸を確かめる方法を思い出しながら、記憶の限りをたどって、しめじを袋に入れると石灰水をそのまま入れて、酸素ボンベを取り出すと袋のなかに・・・。ありゃありゃ、教科書見たほうがいいね、それは。
学びの中盤にさしかかり、いよいよ本に載っていることだけでは解決できない、実験装置もつくれない、という状況に。そこで、Chromebookをはじめて開き、検索エンジンでの検索のコツをミニレッスン。検索語の選び方や組み合わせ、絞り込みなど。ただ、実はこちら、あとからざっきーに話したら、デジタル・シティズンシップで話題にしていたそうで。やや異なるアプローチだったようだけれど、事前に知っておけたら焦点化しやすかったなと。次に活かそう!
Chromebookでの調査がはじまって割とすぐに、ある子が「ここにきのこは呼吸するって書いてありました、はい、おしまいっ。」と実験装置を作らずおしまいに。きのこの臭いがとっても苦手だったんだねと思いつつも、結果に対する不安あるいは興味関心の低さを飛びこえて、どんな事でもプロセスのなかで自分自身に起きることの可能性を実感してもらうにはどうしたらいいだろうか。。。前期から後期に大きくなるにつれて、心の声を外に出さなくなることはある。逆に声に発せられることが、本当の心の声とは異なることもある。予め学びを準備することがあれば、出来事が起きて瞬発的に考えることもある。そのどの時においても、私は子どもたちのどんな姿から状態・変化を見つめることができるのかな。どうしたらプロセスの価値を信じられる人となれるだろうか。
ちなみに、「図書館の先生」というと、本好きで作業的な仕事が多いとイメージされていたり、実際そういう作業的な基盤づくりが不可欠だけれど、私は根本的には子どもの学びや育ちのことをがっつり考えています。
さて、この日の90分ではとても終わらず、次はたいちにバトンタッチ。何日か後に、たいちにどうだった〜と聞くと、「ノイとマユ、フウダイとカリン、イイナは、その次の日も実験を続けて、すっきりして帰っていったよ〜。」とのこと。
一から十まで責任を持つことはできないポジションだけど、頼れる仲間にアイディアをぶつけて、やりとりをして、その一部をお任せする。本当は全部見るべきと思うけれど、そうすると体を3つくらいに分けないと無理。そんなやりとりがスタッフ同士でできて、学びや遊びがどんどん生まれていくっていうのも、この風越では大事だろうな。
今年度新しく迎えたスタッフのあっきー(木村)は、数年ぶりに小学校に戻ってきた。それが風越だったものだから、期待よりも不安がいっぱいいっぱいあったことと思う(この間の試行錯誤は、あっきーが記事にしてくれるはず)。
そんなあっきーが担当する、テーマプロジェクト「保存食」をテーマにした子どもたちのなかのケンケンとタイガが「ドライトマト作りたいんだけど本あるかなー。」と走り込んできた。そんなきっかけで、ドライトマトを一緒に作ることになった。
ところが、3・4年生が読んで分かる干し野菜の本がなく・・・、そうするとケンケンはYoutubeで作り方を調べて、もう記憶している!という言葉を信じて、まずは本人がやりたい方法でやってみることを応援することに。ここでは情報源がどうこうではなく、やりたい!という気持ちに乗っかってみよう(このあと、急いで3冊購入しました)。
湿気が多い軽井沢でできるのかな?と半信半疑(今年の梅の天日干しは4日間の晴れ間を縫ってやったぞ)ながら、まずは一緒にやってみる。そこから子どもが何を気づいていくのか、つぶやきをもらさずみつめていこう。
乾燥前後の重さを図っておいた方がよさそう、とキッチンに計量器をとりいくケンケン。包丁でトマトを切るケンケン、種をとるタイガ。交代しながらようやく作業が終わるとケンケン「どこに干す?オフィスか?!」ふたりはかけ出していくとそこにいたごりさんに「湿気でだめになっちゃうから、17時にとりこんで、8時にまた出してほしい!」とお願いする。オフィスの窓際を探しているとまっちゃん(松澤)がとことこやって来て「オフィスって一番寒くて湿気が溜まるんだよね〜。」という。ええっ!となって校舎中を探し回った結果、2階の庇がいいんだって。タイガは「鳥に食べられないかな不安。」と言い残して帰った。私がなんとなく人を繋げることもあれば、子どもが自然と人を巻き込むことがある。
その後、2日間雨が続いて天日干しできなかった結果、見事にトマトはカビました。2人の興味が続くかどうかはわかりません。アウトプットデイ後、あっきーにどんな感じかたずねてみると、ふたりともまたやってみたい、今度は甘いのを作ってみたいとのこと。
ところで、「みっちゃん仕事増やしてしまってすみません。」、「また来週の月曜にと思っているんですけど、来れますかね?」あっきーとのやりとりは最初はそんな感じ。「保存食」と言っても、ドライトマトのほかに昆虫食、ジャムを探究する子どもたちがいる。少しでも手が回るなら、という気持ちもあったけど、あっきーと同じ場を共有することで、つくることの不安や壁を一緒に越えられるかもしれない。おこがましいけど、気になっちゃったもんだから仕方ない(やっぱり、ここはあっきーに記事にしてもらおう)。
それから1ヶ月が経った頃、ノブシゲと何人かが、またカウンターにドライトマトっと駆け込んできた。あっきーにどうなった?と聞いてみると、子どもたちは他の人にも関心を寄せていたから、みんなでドライトマトを成功させることにしたとのこと。「へぇ〜それは嬉しいね。関係性や安心な環境があるからだね。」と伝えた。オフィスでトマトの本を広げるあっきーに声をかけたら、「いやぁ〜実は「探究通信」を書き始めて。」と画面を見せてくれて、プロジェクトのはじめにみんなで読んでから活動をはじめているそう。それを聞いて本当に素敵ーと思ったままを伝えた。その後もライブラリーのカウンターにそっと「探究通信」が置かれてあって、嬉しく読む。今あっきーがどんな気持ちでいるかはわからないし、私もどんな人なのかわからないこともいっぱい。子どもに繋がるしごとを通して、ゆっくりとお互いに頼り、頼られる関係になれたらいいじゃないか。
ライブラリーの要である蔵書は,不十分な分野もたくさんあるし,整理も追いついていない。子どもたちをガイドするサインも未完成。でも,環境のせいにはしない。今まさに生きている子どもたちに瞬発的に反応したり,ときにじっくり作戦を練ったりしている感じ。今日も4年生の2人がオフィスに私を探しにきては、「雲をつくりたいんだけど・・・。」と相談にやってきた。これはなかなか歯ごたえあるなぁ笑。この後どうなっていくのか、気を配りながら今日も動き回る。
不確かな信頼を出発点に、子どもたち、スタッフの探究を橋渡しするライブラリーでありたいな。
本は親子をつなぎ,友だち同士をつなぎ,自分自身をエンパワーしてくれる。ライブラリーでは,せんせいと子どもたちがどんな風につながっていくのだろう?自由な読書と学びと連動したメディアの活用の可能性を探り続けてきた,動ける(からだを動かすことがすき)司書教諭です。
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