風越のいま 2021年3月23日

「出会う」から「自分らしく」へ 〜表現プロジェクト〜

かぜのーと編集部
投稿者 | かぜのーと編集部

2021年3月23日

「出会う」から「自分らしく」へ

6月からはじめた、後期の表現プロジェクト。「つくる・描く」「音楽」「スポーツ」それぞれの世界に出会った1〜3ターム。技能を身につけることが目的ではなく、子どもたちが自分の世界を広げたり、探究のきっかけをつかんだりする場になることを願って活動してきた。

本年度最後の4ターム。自分らしく思い切り表現してほしいと願って、表現プロジェクトのかたちをかえた。3ターム目までは「つくる・描く」「音楽」「スポーツ」の全てをラーニンググループごとに経験したが、4ターム目はやりたいことを自分で選び3〜7年生までが混ざり合い、そのチームごとに表現の内容を決めることにした。本来、表現の方法は、教科で切り分けることはできない。子どもたちが教科の枠を超えてプロジェクトとして取り組むことは昨年度から願っていた姿でもあった。

ひっきーこぐまと相談し、アウトプットの大枠は「つくる・描く」「奏でる」「踊る」「演じる」の4つに定め、全体を貫くテーマを「いい感じ」とした。「いい感じ」をどう扱うか、どんな「いい感じ」なのは各グループに任せることにした。

子どもたちがやりたいことを十分に広げることができるように、外部の人にも協力してもらうことにした。「つくる・描く」は書家のさおりさん、「奏でる」は作曲家の平間さん、「踊る」はダンサーの山崎さん、「演じる」は演出家のまんぼさん。専門家の皆さんとのコラボレーションが楽しみだ。

自分で選ぶ

1月15日、そうぞうの広場に後期の子どもとスタッフ全員が集まった。4ターム目の表現の始まりの日。自分の表現したいことを自分のやり方で表現してほしいことを伝え、「つくる・描く」「奏でる」「踊る」「演じる」の中から一人ひとりが自分がやりたいことを選んだ。

それぞれの「いい感じ」

それぞれのグループに分かれて、全8回の活動が始まった。アウトプットは3月16日。

「つくる・描く」
前半の4回はスタッフの提案する、つくる・描くを楽しむ時間。スタッフの提案とは言っても、それぞれのテーマは一人ひとりの子どもが自分ごととして手元で扱えるような、遊びや設定が中心である。

第1回目は「アートカードで遊ぼう」。アート作品の印刷されたカードを見て、互いの感覚の違いを感じる遊び。例えば、選んだカードを自分たちの体で表現し、それがどの作品を表しているのかを当てる、という具合。違学年で自分と他の人との違いを感じることができた出会いの時間であった。

第2、3回目は紙とホッチキスだけを使った造形遊び、「高くしよう」。高くする方法は色々あるし、高くする中で色や形を工夫した表現も生まれる。どうしてももう一度やりたい、という要望から2度に渡る活動となった。あの手この手を使って高くしたうち、一番高いものは8m、アウトプットデー当日まで崩れることなく立っていた。

第4回目の「イロんな線を描こう」は書家のさおりさんをお招きし、墨と身辺材を使って線、形、余白などの面白さを味わいながら、思い思いの線を絵に表した。こうして、平面にも自分で表現することの楽しさを味わうことができた。

後半の4回は、子どもたちが計画し表現するターンとなるが、きっかけは「Is This Kazakoshi?!」。アウトプットデーで他のチームと共に発表することになるそうぞうの広場を、つくったり描いたりすることを通して、びっくりするような場所に変えること。期間は全4回、予算など含めた投げかけで子どもたちに手渡した。すると、この空間を風船で埋め尽くしたい、カラーテープで埋め尽くしたい、いや、宇宙をつくるんだ、いやいや、ペットボトルのタワーをつくるなど、様々な意見が乱立する中、テーマを「Space&Universe」としたら、すべての意見を取り入れられるということになり、他のチームには極秘裏にプロジェクトが進められた。

やがて、活動が佳境に差し掛かる発表前日に事件は起こった。つくる・描くチームが大規模に装飾を始めていたそうぞうの広場に、踊るチームのステージが運び込まれ、あっという間に誰もが目を奪われるダンスが始まった。「つくる・描くでつくったものが、完全にただの背景になっています。」とスタッフに訴える、カズアキ。確かにこれらの作品は背景にするためにつくったものでは無いはずだ。とはいえ、これはスタッフが決めることではない。「それはみんなで話し合ったほうがいいんじゃないの?」と返す。

しかし、明日がアウトプットデー当日。翌朝、子どもたちの大激論が始まった。つくる・描くチームでは作品をダンスの背景にしたくない派と、逆にダンスとコラボすることでより良い世界になっていると考える子どもたち。互いの意見の折り合いはつかないまま、数名の代表とダンスチームも巻き込んで議論が始まる。お互いの主張を尊重しつつも、発表までに残された時間はわずかのため、一歩も譲り合うことができない。その間も作品づくりは急ピッチで進められ、ダンスのリハーサルは始めることができない。膠着状態の続く発表20分前、作品とステージにわずかに間隔を取り、ダンスチームはつくる・描くチームのつくりあげた作品の中で発表することをリスペクトすることをアナウンスするという、お互いを尊重する折衷案が取られ、なんとか発表にこぎつけたのである。

「奏でる」
コロナ渦で、合唱や合奏をすることは厳しい。それでは、と今回講師としてかかわってくださったピアニストで作曲家の平間亮之介さん(りょうさん)と考えたのが、iPadの「ガレージバンド」というアプリを使っての作曲だった。

「曲がどのように作られているのか、しっかり理論も学んでほしい。」というりょうさんの熱い思いもあり、初めの数回で作曲の基礎を学ぶことに。今回は、コード進行を決めて、そこにリズムを付け、旋律を乗せるという手順で曲を作ることにした。子どもたちへの課題は、8小節のまとまりのある音楽をつくること。

まずは「コード」の理論を学んだ。基本のC、F、Gの3コードに、Am、E7を加えた5つのコードを並べて進行をつくる。多くのヒット曲がこの5つのコードでできていることを、りょうさんに実際に演奏してもらいながら理解していく。特にみんながびっくりしたのは、昨年の大ヒット曲「香水」の分析。コードの循環に、5つの音しか使っていないシンプルなメロディが乗っていることを知り、「自分たちにも作れるかも知れない!」という期待が高まる。音色を選び「いい感じ」のコード進行を求めて、いろいろなパターンを試して入力していく。

つくっている途中に何度もりょうさんに聴いてもらい、アドバイスをもらう。りょうさんのちょっとしたアドバイスや調整で、ぐっと曲が素敵になって笑顔を見せる子どもたち。出来上がった曲は、十人十色でどれも素敵だった。

「踊る」
初回は音楽に合わせて体を動かし、踊ることの楽しさを味わった。

2回目はアウトプットデーに向けて、ダンスの構成の話。1曲目と最後はみんなで踊る。その間に、ロックダンス1チーム、ブレイクダンス1チーム、フリージャンル2チーム(BTSとNiziU)を踊ることになった

3回目からはウォーミングアップの鬼ごっこのあとに、リズムに合わせて体を動かし、振り付けをしていった。

チームごとの練習では、迷いながら時間をかけて、どうやったら動きがおもしろくなるか、自分たちでふりをつくったり構成を考えたりした。表現以外の時間も使って、動画を見たり大人にコツを聞いたりして練習し、見事に自分たちでダンスを完成させた。

初めてダンスに取り組む子もはじめから気持ちが開放されていたと思う。それは風越という土壌があったから。仲間が認めてくれる、聞いてくれる、見てくれるという安心感があったからなのだと思う。

「演じる」
集まった8人のメンバーは、1回目からアイスブレイクで盛り上がった。楽しさが口コミで広がり、2回目を迎えるときにはメンバーが15人に増えていた。

学年も男女も混じり、終始楽しそうなメンバー。1回目、2回目は「表情あて」や「いい感じの〇〇(場所)」などのアイスブレイクを楽しみ、3回目は「演じるということはどういうことか」を体感するために、ジブリッシュ(デタラメ語と身振り手振りで〇〇したいということを伝える)をした。

4回目で劇団を発表し、その劇団でプレース・スカルプチャー(指定された場所のいい感じの雰囲気を体で表現する)を行った。

5回目に劇団名を決定し、本番で表現する場面をくじ引きで決めた。「かかあれてっぴー」グループは『屋上』、「twelve&cat’s」グループは『海水浴場』、「こるききとん」グループは『無人島』に決定

6回目はその場で起こるストーリーを、「はじめ⇒事件⇒どうなった」に当てはめて考えた。決めているのは大まかなストーリーだけなので、セリフなどはその場の雰囲気で言う。

7回目・8回目はストーリーは変えずに、即興で演じてブラッシュアップしていくと、子どもたちから自然とフィードバックが始まった。意見が対立することもあったが、そのたびに話し合い、一つの作品に仕上げていった。セリフがないからこそ、その場で感じて、その時の思うままの表現で伝えることができた。

「スタッフの本気の合唱」
3月3日、スタッフで歌を歌う機会があった。今年はコロナもあり、子どもも大人も歌を歌う機会がなかったので、「たまには本気で歌ってみよう!」ということで「チェリー」と「糸」を歌った。

歌っていくうちにひっきーの音楽科の血が騒ぎ出し、ビシビシとしごかれるスタッフ。私たちはそういう時間も嫌いではない…というか結構好き。ひっきーのしごきのおかげでメキメキ上手になり、せっかくなら「スタッフもアウトプットデーで発表しちゃおう!」と決まった。

「練習するから全員集合!」と急で強引な呼びかけにも、快く集まってくれる風越のスタッフ。子ども達に「大人の本気を見せよう!」と前日の朝と放課後はパート練習からステージ練習まで特訓。そして迎えた当日の朝、音楽室には全スタッフが集合し、声出しをして本番を迎えた。

表現すること 受け止めること

シンノスケのアナウンスで表現アウトプットデーの本番が始まった。

「つくる・描く」のコウキ、シュウゴ、おかしょー、ハンナ、ユマから作品に込められた思いが語られた。テーマは「Space & Universe」。つくる・描くのメンバーはそうぞうの広場を、造形的にワクワクする場にしてくれた。会場のあちこちに、思いの込められたインスタレーションが配置され、空間全体が一つの宇宙になるよう創造されている。この空間で、踊ったり歌ったりできることに感謝したいと思った。

続いて「踊る」。電話のベルが鳴りミサトが「ダンスが始まるよー」と言うと、観客から歓声が湧き上がった。オープニングのメンバー全員でのダンスは迫力とチームの連帯感を感じ、圧倒された。続くグループごとのダンスは、「step and step / NIZIU」「Breakin」「Dynamite / BTS」「Lockin」とジャンルの違うダンスで構成されていたし、曲の繋ぎも楽しくて引き込まれた。踊っているみんなが本当に楽しそうで、見ているこちらの体も自然に動いて、笑顔になった。リリーとシンタロウさん(カオルのお父さん)のプロフェッショナルなダンスはとにかくかっこよくて、憧れを持った子どもたちも多いだろう。

ダンスのストーリーは「先生が授業を始めようとしたけれど、子どもたちはそれぞれに自分のやりたいことを表現して過ごしていた。子どもたちは、大人が思うよりもずっと自由に過ごしているのだということに気づいた大人も、思わず一緒に踊りだしてしまう。」というもの。誰かと一緒に自分がやりたいことをやっている空間が踊るグループの「いい感じ」なのだと思った。

ルーム3・4に移動して「演じる」。観客からお題をもらうと、泳いでいる様子や餌を上げている様子を表現するメンバー。それを見て観客が「海」や「プール」と答えていったが正解にたどり着かない。そこでサイトが水槽を覗き込むような表現をすると観客から「水族館!」という声が出て正解!どんなお題でも即興で堂々と演じる姿に、これまでの積み重ねを感じた。

その後、3つの劇団からの発表。気持ちが開放されていないと、こんな姿にはならないのだろう。見ている観客からは度々笑いが起こっていたし、演じるメンバーと観客との自然なやりとりが面白かった。終わったあとに、「来年は演劇部を立ち上げたい!」というカノ。それを聞いていたメンバーも、「私も入る!」と盛り上がった。

あさまテラスでは、35人の「奏でる」のメンバーのGarageBandの作品が展示された。自分が作曲した曲のイメージに合わせたジャケットが並ぶ。その様子は音楽ショップのようでかっこいい。ひとつひとつの作品に個性があって、題名やジャケットの雰囲気とあっているのはもちろんだが、その子らしさが出ているのが面白かった。

「違いはあるけど、どの曲もいい感じだねー」と言うと、「これはきっと◯◯の和音を使っているね」というメンバー。りょうさんから教えてもらったことが生かされていると思った。

本番前にほとんどのスタッフが図工室にスタンバイしていた。予想以上のやる気にびっくり!しんさんの掛け声で気合を入れてステージにのぼる。ユーミンの伴奏と、ひっきーの笑顔につられて楽しい気分で歌い出す。スタッフがひとつになれた瞬間だったように思う。子ども達もスタッフの本気の歌を全身で受け止めてくれていた。スタッフにとっての「いい感じ」は「ひとつになること」だったんじゃないかなと思う。

最後は「にこバンド」。バイオリンのニコ、クラシックギターのカノ、ベースのこぐま、ピアノのひっきー。曲は「情熱大陸」。子ども達が食い入るように見つめる中での演奏。終わった後は拍手喝采だった。小さい子達の憧れの目が印象的だった。

教科の枠を超えて様々なコラボレーションが生まれ、子どもたちが自分の好きや得意を大切にして没頭する姿。これは昨年から思い描いてきた光景。

ゴリさんが「いい感じだね。みんな本当に没頭していて。なんか、僕らが去年から描いてきた光景があってさ、ジーンとしちゃったよ…。」と言ってくれた時、諦めなくてよかったなと思った。

開校一年目の年を締めくくる活動となった表現アウトプットデー。自分らしく表現できるのは、仲間が認めてくれる、聞いてくれる、見てくれるという安心感があるから。一年間で大人も子どももみんなでそういう学校をつくって来られたのだと思う。来年度はどんな場がうまれてくるだろうか。

文:石山 れいか

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かぜのーと編集部です。軽井沢風越学園設立準備のプロセスを多面的にお届けしたいと思っています。辰巳、三輪が担当。

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