2021年2月21日
前回の対談記事から5ヶ月。遠距離の恋人同士のような日々を過ごし(笑)、実現した3回目の対談。「大袈裟」とユーミンは笑うかもしれないけど、まさにそんな日々だった。
前回の対談記事(9月)の頃以上に、幼児と1・2年生の間の溝は深くなっていた。子ども間の溝というより、子どもたちに関わる大人間の溝のような気がしていた。ホームの子のことをユーミンに相談することも少なくなっていき、なんだか遠い存在になっていた。
遠い存在になったのは、自分の勝手な思い込みや先入観であることはわかっていたけど、なかなかそこを打破できずにいた。心の中で、もう一度ユーミンと対談記事を出せたらいいなと思いつつ、そのためにはちょっと勇気がいる気もしていた。
年明けの1月6日から3日間。前期スタッフみんなで来年度にむけてのカリキュラムや体制をどうするかの話し合いの場をもった。前期で大切にしたいことは何かにもう一度立ち返り、その上でそれぞれのスタッフが大切にしたいと思っていることを言葉にしていった。自分の勝手な思い込みや先入観がそうさせていることは分かっていても、そこで発言することは私にとってとても勇気のいることだった。それでも言葉にして、話し合いを積み重ねたことで、勝手な思い込みや先入観が少しずつ薄れていき、見えない溝も少しずつ埋まっていく感覚があった。
その4日後、子どもたちとの生活が再スタートした。
今ならユーミンと対談できそうだなと思っていた頃にユーミンから「最後の(たぶん)かぜノート、書きたいものある?もしなければ、また対談で記事にしませんかー?最近、会えてそうでふっしぁんに会えてないので、一応伝えておーく。」とslackを通してメッセージがきた。
片思いだと思っていたのが両思いだと分かった瞬間の喜びたるや・・・(笑)。そんなあれこれがあって叶った今回の対談。毎回のごとく、テーマは特に決めず、その時思ったこと伝えたことを紡いで記事にしました。
ふっしぁん:ユーミンにとって風越学園の保育は、開校前に実施していた月1回のかぜあそびから数えるともう3年目じゃないですか。どんな感じですか?ユーミンとしてなんか変わったこととかあります?
ユーミン:私は基本、目の前にいる子どもにしか焦点を当てられないから、その子から考える関わりをしていて。だから、月1で会える子と毎日会える子で関わりは変わってくるけど、こういうカリキュラムを大事にしたいから、こういうことをしようじゃなくて、この子には今これが必要そうだからこうしようって感じでやっちゃうのは変わらないかな。
ふっしぁん:スタッフのうち、ゆっけさんやちかさんって月1のかぜあそびの時からいましたよね?そのメンバーで1年目、2年目、3年目ってやってきてどうです?自分一人でするのと、共に関わる人がいるのって、まぁ良し悪しがあるじゃないですか。大人のスタンスだったり、声の掛け方一つにしても。すごくよくわかるなーって共感できることもあれば、いや、それ違うなーってこともある。
ユーミン:もちろんあるよね。自分と違うなーって。でもそれがおもしろい感じだったかな。子どもも大人も会う回数は少ないけど、月1の時もおもしろかったよ。
プランは決まっていないけど、すごいダイナミックだったし、つどいをする人とか事前に決めてはいたけど、当日子どもの様子見て、「今日はつどいしなくていっか」みたいな感じで。あーでも、お昼ご飯の担当だけは必ず決めてたね。そこに力を入れている感じが好きだったな。
遊びがテーマというよりも、自然の中で暮らすことに重きを置いてたかな。ちかとかゆっけとか慎さんは、そういうの慣れてるじゃん?富士山とか熊とかと共存してる人たちだから。だからすごくおもしろかったなー。あと、すごい甘えさせてもらってたかな(笑)。でも3年一緒にやってると、言葉になってなくても、相手の思いが分かったり、こちら側の思いが伝わったりはあるかな。だから子どもの見取りを共有しやすくなったかな。
それこそふっしぁんも設立準備財団の頃から入ってたじゃん。その経験が今に活きてるとかはないの?
ふっしぁん:あの時の経験か・・・。経験っていうよりは、人が増えたことは自分にとって大きな変化ではあったかなぁ。1年目は慎さん、ゴリさん、KAIさん、よっしーさんと、ざっきー、ぽん、私でしょ?管理職と社会人1年目の私たちだけの関係しかなくて、1つ1つ何を相談するにもハードル高いなーって思ってた(笑)。ざっきーやぽんとは雑談するけど、上の人たちとはできないみたいな。
ユーミン:今のほうが雑談しやすい?
ふっしぁん:しやすいかな。でも、これはかぜのーとに書けるかわかんないけど、特に慎さんやごりさんとは最近になってやっと、雑談っぽく話せるようになったかな。
ユーミン:それはさぁ、ずっと「雑談したいなー」って気持ちがあったの?
ふっしぁん:「雑談したいなー」っていうよりは、自分の発した言葉に対して、評価されずに話したいなっていうのがあったかな。評価っていうと堅苦しい感じがするけど、自分が発した言葉に対して、相手が「風越学園のスタッフ」としての私をどう思うかな?を一つひとつ気にせず話したいっていう気持ち。ずっとそこを気にせずに話すことができずにいて、気軽に話せないから、徐々に距離も生まれていくじゃないですか。その距離から勝手な妄想や思い込みも生まれて・・・(笑)。
ユーミン:そうなんだー。しんどいね。
ふっしぁん:そうそう。でもそれも12月の面談のときぐらいから打破できて。あの面談で思っていることを全部話せて、それから前よりも気軽に話せるようになったかな。
ユーミン:それは面談のときにこのことについて話そうって準備して行ったの?
ふっしぁん:いや、あのときテーマが「自分の専門性と文化への貢献の二軸で考えて話す」だったじゃないですか?正直、その二軸で話すの気が乗らなくて、面談当日も全然乗り気じゃなかったんですよ(笑)。それでまぁ面談の部屋に行ってすぐに、「他の人たちは、この二軸で話してるんですか?」って聞いたら「そういう人もいるけど、そうじゃない人もいる」って言われて。
ちょうどその頃、幼児と小学生に境界ができていることをすごく悩んでたんですよね。もちろん、年齢や発達による差はあって当然。だとしたら何がその差を生んでるのかな?ってところで、子ども同士じゃなくて、スタッフ間に溝があるなーってところに行き着いて、スタッフ間ってことは自分もその溝をつくっている一人だったし、前期スタッフに吐き出すことも出来ず溜めていたんですよね。ちょうどそのタイミングで面談だったから、溜めてたものが全部言葉になって出ちゃったのかも(笑)。
ユーミン:じゃあ本当最近なんだね。
ふっしぁん:そうそう。実際、風越に所属して丸3年になるけど、1年目の8月から3月までは佐久の公立小学校に修行に行ってたし、昨年度は西部小学校に修行に行ってたから、実質まだ風越の人になって1年半ぐらいなんですよね。最近やっとなんでも話せる関係性に少しずつなってきてるのかな〜。
ユーミン:なるほどね。まぁでも「なんでも話せる」ことが必ずしもいいことではないよね。多様性っていうか、多様な見方をしちゃうところが風越にはあるよね。よくもあり悪くもあるんだけど。信念があればブレないと思うんだよね。でも「一方で」っていう言葉が風越はいっぱいあるなーって思う。もちろん子どもの育ちにはいろいろあるんだけど、それで結論を逃げてる場面とかあるんじゃないかな〜。いろんな見方をすることは大事なんだけど、「自分は今こうしたい!」をスタッフももっと出していいと思う。
その点では、ホーム「う」は「したい!」を貫いてると思う。最近年度末の記録を書きながらtyphoonの記録を見返しているんだけど、オンラインの時から楽しいことしてたなーって思うんだよね。
ふっしぁん:Zoomでかくれんぼとかしてましたもんね。
ユーミン:そうそう。誕生日の子に写真撮ってメッセージ送ったりとか。オンラインも幼児と小学生で別々だったけど、「動物が好きなアマネちゃんって子が誕生日だから、お家にある動物の何か持ってきて写真撮ろう」って提案してみたりさ。見えない人に思いを馳せるってことを最初っからやってんじゃん!って思ったりね。全体で活動してて、もうちょっとだなーって思うことあんまりないんだよね。まぁ振り返りが雑っていうのもあるかな(笑)。どう?
ふっしぁん:「う」の人たち1、2月誕生日の子が多くて、最近よく誕生日会してるじゃないですか。コナの誕生日の時に質問コーナーでコナが固まってたから介入したほうがいいかなと思って、結構介入したんですけど、その翌週くらいにカズハの誕生日会があった時には、もう大人が入らなくても勝手に場がまわってて、その次のしんじの誕生日の時もみんながその場をまわしてて。もちろん「そろそろ終わるか」っていう声かけはするけど、誕生日会の流れが子どもたちの中に出来はじめていて、大人がずっと介入する必要が無くなってきたなーを感じてるなー。
ユーミン:主役に向けての質問が、本当にその子を理解した上での質問なんだなーって思う。コナの時はさ、「好きな果物」の質問めっちゃ多かったじゃん。「2番目に好きな果物はなんですか?」「3番目に好きな果物はなんですか?」って。自分も質問したいっていう気持ちももちろんあるだろうけど、相手が答えられる質問を投げかけてて、やっぱり相手のことを知らないと出来ないから「いいじゃん」って思うね。
ふっしぁん:質問する側の質問にも変化が出てきてるのも感じますね。ハジメの誕生日にハクが「好きな時間は何時ですか?」って質問してて、「好きな時間」なんてそれまで全然出なかったのに、しかも質問された側も「3時!」とか答えてて(笑)。「好きな時間」があるんだって、面白いなと思ったし、ハッピーバースデーを歌う→ロウソクを消す→質問タイム→プレゼントタイムっていう大きな流れが違わないからこそ、見えてくる変化がある気がする。
ふっしぁん:惑星が始まって、ユーミンが担当しているかぜのとおりみちには「う」の子が3人いるじゃないですか。ホームだけでいた7月までと、近い年齢同士で過ごしてきたそれ以降とどんな感じです?
ユーミン:惑星が決まる前のまだホームしかなかった時は、もう手は繋がないって決めてたんだけど、夏休み明け惑星体制が決まって、それぞれの惑星に旅立って以降は、逆に「おかえり」って温かく迎え入れるようになったかな。だから、手を繋ごうと手を伸ばしてきたら繋ぐしね。
ふっしぁん:ホームだけの時期と惑星始まってからとちょっとユーミンのスタンスが変わったって感じなんですね。
ユーミン:そうだね。惑星でのびのびしている人に対しては、あえて私が「ちょっとそれどうなの?」って言ったり、ふらふらしている人がいたら私が迎えに行くみたいなこともあるね。その時々でポジションは変わるかな。
ふっしぁん:子ども自身は、惑星スタッフとホームスタッフと違いあるのかな?
ユーミン:自分のホームのことはよくわかんないけど、他のホームの人たちを見ていると違う感じするよ。ホームスタッフに対してはちょっと甘える一面がある子が、惑星に行くと生き生き引っ張る一面を見せてたりね。もちろんそれは子どもによって違うけど、いろんな一面を出せるって意味では、惑星にしてよかったのかなって思うよね。1・2年もさプロジェクトやってんじゃん?
ふっしぁん:そうですね。曜日によるけど、月曜日と金曜日は午前中にプロジェクト+土台の学びだから、朝のつどいで会って、その次会うのがお昼ご飯ということも結構あって、そうすると自分のホームの子に対して「おかえり」感はありますね。ヤヨイちゃんとか「今日朝のつどい以外ふっしぁんと会ってなーい」って言ってくるぐらい、子どもたちもそんな意識なのかな?複数のスタッフが見ていることの安心感はありますよね。
ユーミン:そうだよね。
ふっしぁん:さっきユーミンが言った惑星での姿とホームでの姿が若干違うように、1・2年生もホームスタッフには見せない顔をプロジェクトスタッフに見せてたりしますね。1・2年生の場合は、荷物置いたり、つどいをしたりするHB(ホームベース)がホームごとだし、朝・帰りのつどいもホームでしているから、全体で見たときにやっぱりホームスタッフやホームの仲間に対して気心が知れているっていうのはあると思うんですよね。
ユーミン:月一のかざこしミーティングのとき、兄弟ホームで鬼ごっことかしっぽとりそかするじゃん。そのとき「う」の兄弟ホームの「く」の人たちって特にアクションないじゃん。なんかその感じがいいなというか、それでいいじゃんって感じがしたんだよね。
ふっしぁん:なるほどね。変に年下扱いしないっていうかね。
ユーミン:そうそう。だけどスタンプラリーのときは、どこの兄弟ホームよりも早く旅立って行ったじゃん?めっちゃ張り切って「行こう行こう!」みたいな人はいなくてさ、「じゃ行こっか」みたいな寄り添って行ってくれて、それがすごく嬉しかったっていうか、本当にその子ども同士を見合うっていう感じが嬉しかったな。
ふっしぁん:他の保育園や幼稚園を知らないけど、風越の保育って「自分(たち)で」できるようになるために、大人は手をかけすぎないじゃないですか。幼稚園の子を見ているユーミンや愛子さん、みほさん、ゆっけさん、わこさん、リリーは自然にそれをしているけど、自分がそれこそ1年目?月1のかぜあそびに1回入ったときに、「保育ってなんなん?」に陥ったんですよね。
ユーミン:はいはいはいはい。
ふっしぁん:何をどうすればいいのかっていうのが、本当に分からなくて。自分が子どものころとかね、近所の子や親戚の年下の子たちと遊んだことはあったけど、ただ遊ぶとも違うじゃないですか。きっと後期の人たちもかざこしミーティングとか兄弟ホームとして前期の人たちに関わるときにまずは「年下の子」「お世話」みたいな関わりになっちゃうよなーって思うんですよね。その子のことを思った上で、じゃあ自分はどうその子に関わったらいいのか、または関わらないのかっていうのが、スタッフもだけど後期の人たちも問われる気がする。
今年はまだ前期と後期は交流会止まりだけど、もっと日常的にかかわって行った先に、この風越学園で生活を共にするものっていう関係性になるのかなー。
ユーミン:手をかけないほうがいいんじゃないかっていう発想は一般的にはあまりないじゃん。手をかけてなんぼみたいなね。手をかけないほうが育つってことが感覚的にわかるのは日常的に子どもたちと関わって、探究して初めてわかると思うんだよね。ほら、スミレちゃんとかさ、ホームみんなで遠足行ってた夏頃は、年少の子たちの持っていく物まで細かく面倒見てて、水筒がないってなったら「コナちゃんの水筒がないから私取りに行ってくるね。」ってその子のために自分が動くって感じだったじゃん?
でも最近は誕生日会とかでコナが遅れてきても、空いてる席を指で示して教えてあげるぐらいしかしないじゃん。それってもちろんスミレちゃん自身に考える力がついたのもあるだろうし、小さい子のことを一人の人間としてみるようになったってことかなって思ったんだよね。
ふっしぁん:それが互いに出来て初めて、年少の子から中3の子までを生活しているもの同士って言えるのかなー。
3週間前かな?慎さんが、保育に入った日にかぜのとおりみちのつどいに参加して、そのことを振り返りに書いてたじゃないですか。そこにユーミンの声かけのことだったり、子どもの様子だったりを書いてたのを読んで、「あーユーミンってそうだったよなー」って一緒につどいしていたときのこととか思い出して。
ふっしぁん:必要最低限も最低限すぎるぐらいユーミンって声かけないじゃないですか。それを思い出しながら最近の自分は口うるさい人になってるなーって自覚しちゃったんですよね。最初の頃に比べて、1・2年生の生活、時間で区切られる部分が多くなって、だから逆算した声かけが増えちゃってるなーと。
ユーミン:そうだね。だからあえてそこを意識しているかな。小学生にあがって、時間割があるかもしれないけど、その時間割さえも自分たちで作れるんだーをあえて意識してるかなー。最近かぜのとおりみちの朝のつどいの始まりとかめっちゃ遅いもん。雪とか氷で遊んでるから。それは声かけたら一瞬で集まれるじゃん。でもあえて、時計?時間?にとらわれない遊び・学びを感じてほしくて、小学校に送り出す前にあえて今そうしてるかな。
***
そうそう。ユーミンってこういう人だった。この数ヶ月忘れかけてたなー。いや、忘れかけていたというより、私の勝手な妄想や思い込みでネガティブな「ユーミン」像をつくりあげていた。
ちょっとしたことだけど、ちょっとしたことが遠距離のきっかけになる。だから、これからも何度も出会いなおしたい。子どもたちとも大人とも自分とも。
山口県出身。学生時代の6年間を熊本県で過ごし、2018年に長野県へ。
これまでに出会ったヒト、モノ、コトともう一度ていねいに、出会い・出会いなおしていきたい。自分ともね。