2020年10月5日
夏休みが終わり、8月24日から久しぶりの学園生活が再開しました。
夏休みの間に、生活・あそび・まなびについて見直し、私たちが大切にしたいことにもう一度立ち返りながら、スタッフ間でミーティングを重ねました。
その結果、1,2年生はホームを越えた繋がりを持てるよう、スタッフの配置を変えることにしました。セルフビルドの時間は、「ホームの子を中心にみる形」から、「スタッフが場につく形」にし、その場であそび、まなぶ子どもたちをホーム関係なく見とることにしました。
また算数は、テキストを使って自由進度で学んでいたところから、野外で体験したことをテキストを使って学ぶ形に変更しました。
幼児も異年齢で構成していた「ホーム」から、近い年齢同士で構成した「惑星体制」に変更するなど、大きな変態がありました。
そんな中、わたしの気になりごとは、6月の通常登校が始まってから、同じホームなのに、幼児と1,2年生でホームが分断されつつあることにありました。
そんな気になりごとをユーミンに相談し、
「朝のつどいが一緒にできないなら、帰りのつどいを一緒にする?」
「1,2年生がしている言葉の時間に、幼児もそこで一緒に絵本を読んだりして、ゆっくり静かに過ごす時間をとる?」
「水曜日は1日まなびもないから、遠足行こうか?」
など、いくつかアイディアを出し合いました。
そして、2学期初日にみんなで朝のつどいをして以来、なかなか機会をつくれずにいた9月14日(月)。「ミチの誕生日をお祝いしよう」とホームのみんなで風越公園に遠足にいくことにしました。
ここでは、後日ユーミンとした、遠足についてのふりかえりとこれからのことについての対話も書き残しておこうと思います。
ふっしぁん:久しぶりにホームのみんなで過ごしてどうでした?リク(2年)は、ミチ(年少)と手を繋いで歩いたり、ミチと一緒にお昼ご飯を食べたり、主役がミチだってことを意識してたのかな?って思ったんですけど。
ユーミン:そうだね。スミレ(1年)は準備の段階からミチとコナ(年少)の手を引いて、トイレに行くように促したり、水筒を持ってないコナのことを本人以上に心配したりしてたよね。
ふっしぁん:スミレのお姉さんスイッチというか、そんな風になるのはミチとコナだからなんですよね。
ユーミン:他のホームの幼児に対してとかはならないの?
ふっしぁん:その子が困っていたらなるかもしれないけど、ミチとコナに対しては無条件にお世話したいというか、助けたいという感じがあるなあと。やっぱり同じホームとして、スタートしたからじゃないかな。
ユーミン:そうか。体制がガラッと変わるから、ホーム「う」として何かできないかなーって話していろいろ案は出したけど、何もできないままのこの前の遠足だったじゃん?それであの日、ミチがトウイ(2年)の名前を間違えるということがあったんだよね。あれ決定的だったなーって。子どもたち同士で認識はあると思うんだけど、人間関係ってこっちが環境を整えないとすぐ希薄になるというか、大事にしたい人間関係ならなおさら環境作りって大切なのかもって思ったよね。
ふっしぁん:トウイもサク(年長)とハク(年長)を呼び間違えたりね。
ユーミン:惑星体制になって場所も変わってやっぱり(1、2年生から幼児の存在は)遠い感じする?
ふっしぁん:遠いなーっていう物理的な距離よりも、気持ち的な距離なのかな。朝のつどいを一緒に過ごしていた時は、年少から2年生まで合わせて「ホーム」って感じだったけど、今は1,2年の子どもたちもホーム「う」って言ったときに、1,2年生のみのホームという印象が付いている感じは否めないかな。
ユーミン:そうだよねー。1,2年生はどんな感じなの?学びの時間は5つのホームを混ぜて構成したラーニンググループで活動しているけど、いろんなホームの人と過ごす時間が増えたことで、なにか変わった?
ふっしぁん:ラーニンググループのおかげでって感じはあまりないかな。どちらかというと50人ランチがきっかけでいろいろ起こっているかなー。幼児が惑星単位でお昼ごはんの時間を過ごすようになったのを機に、1,2年生も1カ所でお昼ごはんを食べるようにしたんですけど、食べ終わった人から芝生の傾斜のところで自然と混ざって遊ぶようになったんですよね。その分ホームを越えたトラブルも増えたんですけど、夏休み前はホームを越えた人とのトラブルってあまりなかったんですよ。
そう考えると、いろんな関係性ができ始めているのかなって思うじゃないですか。でもトラブルを機に関係性が深まるかというとそうでもないんですよね。それっきりになってるというか、立場が固定化されている感じがするというか。トラブルのきっかけはいろいろだけど、その後に関わりがないと、そのトラブルでの「◯◯に嫌なことされた」っていうネガティブな気持ち?がその後も残っていく気がする。
でも、ホームだったり、一緒によく遊ぶ仲間内だと、嫌な気持ちを抱えたままでも、なんとなく関わっているうちに、別の感情が湧いてきて、気付いたら一緒に遊んでたみたいに、常に相手との関係性がアップデートしている気がして。
ユーミン:なるほどねー。同じホームの人やよく遊ぶ仲間同士だと、少しずつ関係性が築かれていくし、その中で相手の人間性も知っていってるんだろうね。人間性を知っていれば、多少トラブルになったときとかトラブルになりそうなときでも今怒っているなーとか、今何か言いたいことあるんだろうなーとか感じたり、許せたりすることがあるじゃん。それが相互承認って言うのかな。
あとは年齢が同じってことに甘えが出るのかもしれないね。もちろん幼児も3歳・4歳・5歳って自分の年齢はわかっていて、みんなで誕生日をお祝いするからホームや惑星の子が何歳っていうのもなんとなく知っている。でも、その年齢の違いをはっきり理解しているわけではないじゃん。だから年齢が同じだからとか、違うからとかそんなに関係ないっていうか。
でも、大人もそんな感じがするけど、自分の価値観とかが基準になると、相手との価値観とかが違った時に、え?こいつ大人なのに、何言っちゃってんの、アリエナイってなる感じが、すでに小1・2年生でも起きているのかな、って感じ。自我が確立した、とも言えるかな。
ふっしぁん:オンラインでじっくり、ゆっくり関係性を築いてきた同じホームの人の存在って大きいなって思いますね。ユーミンが言うように人間性って言うんですかね。相手の様子や表情で、何かを察することができて、かつ相手に寄り添うことができるというか。もちろんみんなじゃないけど、ホームの仲間に対してはそういう感度がより育まれつつある感じがする。だからトラブルが起こっても、数分後にはおしゃべりしてるとか、遊んでいるとか。きっと、他のホームとの関係づくりももっと丁寧にしていく必要はあるんだろうなーって思いますね。
ユーミン:なるほどねー。
ふっしぁん:今って、幼児のみんなはほとんど惑星単位で生活してるんですか?
ユーミン:午前はね。午後は、セルフビルドっていうか、各々がしたいことをしたい場所でしてるって感じかなー。
ふっしぁん:この前、グラウンドに行った時に、ホーム「あ」のヒカリちゃんが「わたし、月のうさぎなんだけど、お昼ご飯、一緒に食べる?」って声をかけてきたんですよね。そのあと、一緒にご飯食べて、しばらく昼休みも一緒に過ごしてたんですけど、夏休み前のヒカリちゃんは、ポロポロ涙流して、ゆっけさんの後ろを歩いている印象が強かったから、「え、本当にあのヒカリちゃん?」ってびっくりしたんです。もちろん惑星になったことだけがきっかけじゃないと思いますけど、安心して学園生活を送る中で、自分を出し始めてるなーって。
ユーミン:あの日ずっと、ふっしぁんの後ろついて歩いてたよね(笑)確かに惑星だけがってことじゃないけど、朝のつどいで人間関係を深めるっていうのはどの惑星でも意識してやってるかなー。だから小学生もラーニンググループで朝のつどいするとちょっと変わったりするのかなー。
ふっしぁん:1,2年スタッフの間でも、朝のつどい混ぜてやってみようって話は出てるんですよね。あと水曜日の朝は、とっくんが風越ミーティングでいないから「え」と合同でやったり。少しずつ生活の場面でも混ざって、丁寧に関係つくっていけたらいいなー。
ふっしぁん:この前、帰りのつどいのときに、「学校始まってもうすぐ1ヶ月経つけど、ホームでもいいし、ホーム以外でもいいし、何かやりたいことある?」って聞いたんですよね。そうしたらアオバが、「お化け屋敷をやりたい」って。
おばけも妖怪も好きだから、そうか〜って思ってたんですけど、意外にも他の人たちも「やりたい!」ってなって、どんなお化け屋敷をしたいのか発散する時間をとったんですよね。そしたら、めっちゃアイディアが出て、それなら「お化け屋敷大作戦」やろうって今ホームで話しているんですよ。ちょうど10月14日に2回目のアウトプットデイがあるから、そこでお客さんも呼んじゃう?って。
ユーミン:じゃあ、一緒にする?幼児も1,2年生と関わりたいと思うんだよね。風越公園に遠足行く話を先週の水曜日くらいからしてたんだけど、すごく楽しみにしていたし。やっぱり一緒に遊びたいし、関わりたいんだなあって。だから、帰りのつどいの前くらいから一緒にお化け屋敷大作戦して、状況見て帰りのつどいも一緒にできそうならする?
ふっしぁん:そうしますか!毎回ここに来たら、お化け屋敷大作戦できるっていう風にしてね。
ユーミン:帰りのつどいで投げかけてみるね。まずは小学生を驚かせて、「え、そっちもおばけつくってたの?」っていう流れで。「やろう、やろう!」って大人が投げかけるよりは、そっちの方が自然かな。だからもうどんどん進めてもらってOKだから。
この対話の翌日、ユーミンは帰りのつどいでおばけの絵本を読み、子どもたちと一緒におばけづくりをしました。1,2年生もセルフビルドの時間を使って、お化け屋敷大作戦を少しずつスタート。
その週の木曜日には、ホームベースで1,2年生が帰りのつどいをしている時突然電気が消え、火の玉を持ったユーミンと「う」のみんながサプライズで登場。お互いがつくっているおばけ紹介をしました。
そして金曜日の午後、1,2年生がおばけ作りをしているところに幼児のみんなも合流しました。1,2年生が段ボールや色画用紙を切ったり、折ったり、貼ったりしておばけステージを作ったり、提灯を作ったりしている中、幼児のみんなは真っ白な画用紙に思い思いのおばけを描いていました。(ユーミンはこの時どんな印象をもったのかな。)私の中にはこれといったエピソードはあまりなく、ただ各々が描きたい、作りたいおばけを描きつくる。たまに他の人のしていることに目線をむけて。
「何描いてるの?」
『これはね、◯◯っていうおばけなんだよ。』
「へえー。」
その後もお化け屋敷大作戦を橋にして、幼児と1,2年生の関わる場をゆっくり継続しています。
4月に開校し、新型コロナウイルスの関係でオンラインで始まり、5月から分散登校が始まり、6月から通常登校になり、気づけばあっという間に半年が過ぎていました。「ゆったり」スタートした4,5月に比べ、6月以降は子どももスタッフも慌ただしい日々を送っているような気がします。
夏休み、みほさん、はるちゃん、ぽんと夏休み明けどうしたいのかを話すなかで、みほさんから「風越って失敗する学校じゃなかったのかな?」という話がありました。確かに日々試行錯誤はしている。でもそれは、誰かの心の奥底からくる「〜したい」ではなく、不明瞭な何かを打破できない結果からの不安からくる「〜しなければ」だったような気がします。1日の生活の中に「学ぶ時間」を構成的に入れた時も、学ぶ時間を午後から午前に変えた時も、今回のセルフビルドの変更も、少なくとも子どもからの声ではなく、子どもの様子を大人が、大人の目で、大人の欲望・関心で解釈した結果にすぎないなーと感じています。
ユーミンと対話をした後、1,2年スタッフとも対話をする機会をもちました。とっくんが「方法の段階であれこれ変えてきたけど、その前に僕らの中にある思いとか、葛藤とかを出さないと同じことの繰り返しな気がする。」と言っていました。その葛藤についてまだKAIさん、ちかさん、とっくん、もんちゃんとは話せてないのですが、少なくとも幼児期と学童期という間にある必ずしも「年齢」では区切れない育ちにあるとわたしは考えています。そしてそれは、1,2年スタッフだけで考えて納得できる話でもないような気がします。
いま便宜上1,2年生としている子どもたちが48人いますが、幼児のみんなとたっぷりあそび浸る環境の方が合っているなーと感じる子もいれば、後期の人たちとプロジェクトをしたり、もっと高度なあそびができたりするかもなーと感じる子もいます。初年度、子どもたちの実態がほとんどわからないなかでスタートする上で、便宜上年齢で分けることは致し方なかったかもしれません。ただ、半年がすぎて、一緒に生活するなかで、子どもたちの実態を知りつつある今、今の2年生みんなが来年から「後期」になるのかな?いやーちょっとそれは違うんじゃない?そんな気持ちです。
ユーミンとの対話を機に、わたしの気になりごとが「幼児と1,2年生でホームが分断されつつあること」から「どうして幼児と1,2年生という年齢で分断してるのかな?」「便宜上とはいえ、学年・年齢で分けることに固執していないかな?」ということにシフトしています。そして、すぐにこれといった答えが出そうにもないような気もしています。答えを出すためには、捨てなければならない信念や固定観念もありそう・・・。AでもBでもない第三のアイディアを出すために、これからももっと対話を積み重ねていく必要があるなー。子どもたちとも大人とも自分とも。
山口県出身。学生時代の6年間を熊本県で過ごし、2018年に長野県へ。
これまでに出会ったヒト、モノ、コトともう一度ていねいに、出会い・出会いなおしていきたい。自分ともね。