風越のいま 2020年11月21日

わくわく星 湯川ふるさと公園の旅

斉土 美和子
投稿者 | 斉土 美和子

2020年11月21日

とうとうこの日がやってきた。11月5日、わくわく星(ホームとは別にある年齢や発達段階の近い子どもたちのグループ。3つの惑星がある)のみんなで、湯川ふるさと公園へのお出かけ。片道3.3キロは、年少さんもいるこの星の子どもにはけっこうな距離だ。惑星での活動が始まってから、思えば毎週のように校外へ出かけてきた。

行きつけの風越アイスパーク、その手前の芝生広場は私たちの早弁の定番地、起伏のある芝生は、ごっこ遊びや木登りにうってつけ。そこで自分たちのごっこ遊びをたっぷり展開するたび、惑星の仲間がぎゅっとまとまる感覚があった。行ったことのない道から行こうと西門から出かけたら迷子になり なかなか行き着かなかったこともあったっけ。

何度か散歩を重ねて「今度は御厨(みくりや)さんへ行きたい」というカエデの発案で少し遠出の旅へ。初めて歩道のない車道を一列で歩いたときはドキドキ。金色の稲穂が出迎えてくれた御厨でたっぷり遊んでみんな大満足。この旅はみんなの大きな自信になった。「みくりやまで歩けたんだからさー、俺たちどこまでも行けるよね。」、とシンジ。

初めのうちは近場のアイスパークでさえ「疲れた、学校まだ?」と言い、残暑厳しい泥川の帰り道は「もう絶対一歩も歩けない!」と大泣きだったマルちゃん。この涙を笑顔に変えてくれたのが、帰り道に見つけた「宇宙人からのプレゼント」のダイヤモンド、氷砂糖。「くたびれたー。」の時の元気玉になった。

釣竿作りが流行し、「川を探しに行って釣りをしよう」と宛てもなく別荘地を行き迷子になりかけた時、「学校に帰れなかったらどうしよう。」と心細い顔で涙のカイシン。初めてのことには慎重で怖いと口に出すこともできず固まっていることが多かったが、「きっとなんとかなるさ~。」と変な歌を歌って踊るシンジを見て泣き笑い。「どうにかなる。」の思いを、友だちからたくさんもらってきた。

車が来る通りでは2人組で手をつないで行こうと声をかけるが、その度に少々もめごとが起きる。女子たちは「私とつなぐって言ったじゃない。」「〜ちゃんとはつながない方がいいよ、私とつなごう。」と耳打ちし、「つながないならもう遊んであげないからね。」とひそひそ話のやりとり。ルカは「誰もつないでくれない」と大人を頼るが、カエデの「僕がつないであげるよ。僕がいるよ。」の言葉に「優しいなあ、ありがとう。」
男子同志でつなぎたいのに一人余って困っているシンジが、ユイに「今日はゆいちゃんとつないでみるかな。」「いいよ!」と珍しく男女ペア。
「わたしの弟、こうたっていうんだー、まだ小さいの。」「あれ!うちのお兄ちゃんもこうただよ、一緒じゃん、すげー!同じだよ。」
偶然の出会いに盛り上がり、こんな場面でも仲間との距離が縮まっていく。

最初のうちは「私は行かない」とかたくなにお出かけを拒否していたカナメ。初めてのことには自信をもてず、やりたくないと裏返しに強い口調になって仲間を困惑させていた。でも御厨に行くみんなに「私はどうしても行きたくないの、ごめんね。」と気持ちを話し、見送ることが出来てからは変わってきた。自分の弱さを出すことには勇気が要る。それを乗り越えたとき「自分を素直に出しても受け容れてもらえる」仲間に助けられていく。

そんなカナメ。風越山に登った時は「私、来たことあるから案内できるよ。」と張り切り、下り坂でミキが「怖いよ、降りれない。」と困っている時にはおしりで滑れば怖くないよ。こうやってね。」とひらひらのお気に入りのスカートが泥だらけになるのも構わず、一緒に下ってあげていた。

出かけるたび、みんなで季節の移り変わりも肌で感じてきた。
灼熱の泥川の帰り道はびしょぬれでもへっちゃらだったが、ついこの前 川にどぼんと落ちたカオル「やべー、もう帰りは足冷たいなあー。」
アイスパークへの通いなれた道「あれ?こないだ黄色かった葉っぱが赤くなって、虹色の絵になってる。」と壁面の蔦の紅葉に気づくサラ。

こんな小さなお出かけをくりかえし積み重ねてきた、わくわく星のみんな。
「今度はどこへ行ってみようか。」との問いに必ず登場してきた「ふるさと公園へ行きたい!」の声。「ここから歩いて行くとだいぶ遠いんだよ。」と説明しても、ハジメ「きっと大丈夫!力がたまってきてるから。」本当にみんな自信にあふれた顔になってきた。
そして毎日のように「あといくつ寝たらふるさと公園?」と楽しみにして迎えた当日、雲ひとつない秋晴れ。最高の天気!「エイエイオー!!」とカオル隊長を先頭に、気合を入れて歩き始めた。

実は先週の太陽の森への散歩で、先頭を走って行ったカオルは車道を一人で渡ってしまいヒヤっとする場面があり、みんなで渡らないと危ないこと、自分の身体は自分で守ってほしいことを話し合っていた。今日はとっても遠くへ行くから誰かに先頭の隊長になって飛び出さないように守ってほしい、カオルやってもらえる?と提案すると、「いいよ。」の一言。誰よりも足が速く、高い木もするする登るカオルに仲間も一目おいている。実際、飛び出して行きそうな子に両手を広げ前へ行かないよう守ってくれていた。その隊長の後ろを、紅葉の美しい道中ひたすら歩いた。

以前は先頭と最後尾がうんと離れてしまいいつも先頭は後続を待ち、最後尾常連のマル、シンジ、ルカはもう歩けない、学校まだ?の繰り返しだった。
それが今日はどうだろう。カエデは「あ、先に行っちゃったから急がなくっちゃ。」ヒノキは「まだ全然疲れてないよ。」とずっと小走りで追いかける。列が長くならず何ともまとまっているのはすごい。

真っ赤な紅葉の木の下は赤い絨毯のよう。サラが「赤の世界だ。」と地面を指す。

黄色い桑の葉を「羊が食べるの?お土産にしよう。」とたくさん集めてくれたアオイ。

途中、事件は起きた。休憩してしばらく歩いてあと一歩で公園・・という所で、カイシン「剣がない。」昨日丁寧に作って明日の冒険に持っていくんだ、と今朝から大事に持ち歩いていた鬼滅の剣。どうやら休憩した場所に置き忘れたらしい。カイシンのことだ、きっと涙になるだろう、戻るしかない?みんなでどうするか話し合う?色々と瞬時に頭の中で考える・・。その時、シンジ「ぼくの剣あげるよ。」みんな「え。いいの?」「それ大事なヤツじゃん。」シンジも剣を作っては大事に持ってきていた、それをカイシンにあげるという。「家にいっぱいあるからいいんだよ。」泣かないで小さな声で「ありがとう。」と言ったカイシン。

そして、とうとう公園に到着!!「やったー!」

芝生で転げ回り、早速早弁。そして遊具の方へ。ルカが「僕んちこの近くだから、すべり台の方へ行くのわかるよ。」と言いつつ、みんなで道に迷う。ルカ「こっちじゃない?」タイスケ「いやこっちだと思う。川の向こうだよ。」分かれ道や地図があるたびに話し合い。もう何でもとりあえず話し合うのは見慣れた光景。みんな自分の声だけでなく友だちの主張にも耳を傾ける習慣がついてきている。そして念願の遊具のところにも無事に到着。すべり台を堪能してからいつのまにか女子たちはごっこ遊びが始まっている。男子は小競り合い、女子は叩き合いの喧嘩もしながら、それでも折り合いをつけて遊ぶ姿があった。

イチョウの葉が一面に落ちている芝生では「黄色の取り放題だね。」と花束にするシンジ。

ここまで、お出かけを重ねてきて、ケンカもうまくいかないこともたくさん経験してきた。小さなささいなことの積み重ねが、やがて大きな力になっていくことを実感した一日。やっと来ちゃったなあ。そしてなんとも余裕だったなあ。

公園にお迎えに来てもらったけど、往復だっていけたかもしれない。(事実、焚き火料理の買い物にツルヤに行こうと、その2週後には同じ距離を往復した!)
誰も「もう歩けない。」って言わなかった。
全員でひたすら自信に溢れて歩き通した、わくわく星のお出かけ。シンジが言ったように、これからもどこへだって行けそうな気がする。


ゆっけが書いた後日談を2つ、紹介します。

「カイシンの剣のその後」
湯川公園への遠足の翌日、自宅で赤い剣を作って登園したカイシン。母によると、「カイシン自分で剣をつくって、これはシンジにかえす。シンジが大切にしていた剣だから」と自分用の新しい剣を作ったそう。登園早々、シンジを見つけて剣を渡したカイシン。シンジの思いを受けとって、またカイシンもシンジのことを思って・・・。
自分の持ち物にこだわりがある2人。でも、仲間のことを思う時、自分のこだわりよりも大切なことがあることに気づく。2人の内面の成長を感じる一コマでした。

「遠足翌日のつどい」
わくわく星になったばかりのころ、個性豊かなわくわく星人は自己主張の塊だった。自分のことは意気揚々と語るけれど、人の話は聞かない。つどいでは、「自分の話を聞いてくれる仲間の話も聞こう」と繰り返し伝えた。そして、つどい後に全員で一つ遊びをすることを取り入れ、「みんなで遊ぶと楽しい」を積み重ねた。最初は、必ず誰かしらが「やりたくない」と言ったが、「じゃぁ、応援団でお願いね」とその場にいて仲間が遊んでいる様子が見える位置にいてもらうようにした。次第に、見ているうちに一緒にやってみたくなり、仲間に加わってくるように。

そして、遠足翌日のつどい。
「スタッフのよっしーにゲームで挑もう!」と何をするか相談した時。「バナナおに、だるまさんがころんだ、リレー、鬼滅ごっこ」の4つが候補にあがった。先週同じ状況になった時、決めきれず、各種目の代表がジャンケンして決めたことがあった。今回は、「4つ全部やろう!」と子どもたちから提案あり。
「他にアイデアある人いないかな?4つやろう!が嫌な人はいる?」と問いかけると、シンジが「シンちゃんはリレーはやりたくない」と。「どうしてリレーはやりたくないの?」と尋ねると、「だって、草で滑ると転ぶでしょ」と。すると、カナメやルカが「転ぶのがいやなの?草だから転んでも痛くないよ」など、シンジの不安に寄り添う言葉を届ける。「リレーだけ応援団になる?」と聞くと、「そうする!他はやるよ!」とシンジ。(そんなシンジですがやり始めたら、リレーも参加。笑)
シンジがおちゃらけじゃなく、みんなの前で自分の不安をしっかり言葉にしたことにもびっくり。それぞれが思いを伝えあい、全員で聞き会えたこともびっくり。マルヒノキが集団遊びをする気持ちで相談会に参加していたのもびっくり。子どもたちが決めた集団遊びが持続したのもびっくり。

さらに関係が深まり、不安な気持ちを吐露できる仲間になってきた様子。強がっていた人は角が取れて穏やかに。小さな拘りから抜け出せなかった人は、「ま、いっか」と一旦手放すことができるように。仲間を認め、認められ、素直な自分が出せるようになってきたように感じる。

斉土 美和子

投稿者斉土 美和子

投稿者斉土 美和子

浅間山の麓に来て18年。たくさんの命に出会ってきました。淡々と生きる命、躍動する命、そして必ず限りある命。生きるって大変だけど面白い。そんな命が輝く瞬間を傍らで見ていたい。一緒に味わいたいです。

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