軽井沢風越ラーニングセンター 2023年6月8日

子どもたちに出会うまでの10日間(堀内 健)

かぜのーと編集部
投稿者 | かぜのーと編集部

2023年6月8日

(書き手・堀内 健/2024年3月派遣終了)

 3月31日(金)。私のもとに送られてきた風越学園からのメッセージです。(一部省略)

【4月3日(月)〜4月5日(水)の予定をちょこっと共有します!】
新入職のみなさん、こんにちは!
お引越しなどでバタバタしている日々かと思いますが、いかがお過ごしでしょうか。
さて、「月曜日から一体どうなるんだろう・・」と不安に思う方もいらっしゃるかと思いまして、週明け3日間の予定を共有いたします!
なんとなく雰囲気だけでも感じ取っていただけたら幸いです。
■初日は校舎で過ごしますが、外で動いたりする時間もありますので、運動したり汚れても大丈夫な服装・靴等のご用意をお願いいたします
■2日目は外の施設「ライジングフィールド軽井沢」で終日過ごす予定です。
軽井沢の中でも、千ヶ滝地区というちょっと標高高め・気温低めの浅間山の麓に位置する場所ですので、初日同様に動ける服装と靴+防寒対策もお忘れなく・・!
■3日目は再び校舎で過ごす予定ですが、まだ詳細未定な部分も多いので臨機応変にお願いします!
この週末、ゆっくりとエネルギーをためて、月曜日に元気いっぱいでお会いできることを楽しみにしております

1日目の外で動く?汚れても大丈夫な服装?2日目の「ライジングフィールド」で終日過ごす?動ける服装?防寒対策?3日目は、校舎で過ごすが、詳細未定で臨機応変?「風越学園。いったいどんな学校なんだろう」という”?”で、私の頭はいっぱいでした。
 でも、そんな”?”も3日間過ごせば、風越学園の大切にしていることが見えてくるんです。そして、子どもに出会うまで10日間で私が感じたスタッフが大切にしているであろうことをちょっとだけ紹介します。

初日。私服で風越学園に初出勤。本当にこの服装でいいのだろうか?と正直ドキドキしましたが、玄関に入るとビシッとした服装の人は一人もおらず、今日はオフなのか?と思えるオフィス(職員室)の風景がありました。ようへいが「ほりけんさんの本名って、ほりうちけんじゃないんですよね?なんて呼んだらいいですか?」が、風越初のコミュニケーションでした。「あああ、これがこの学校の文化なんだ」と、安心した反面、これって公立校でできるのか???と考えてしまいした。
 出会いのとき。新しく入ったスタッフの紹介は、他己紹介でした。私のメンバーは、さんだーひなこでした。約30分間。初対面でしたが、楽しく話をすることができました。その後のプレゼンでは、各グループともおもしろ楽しく、新しく入ったスタッフを紹介しました。風越のスタッフみんなが私達を受け入れてくれる、温かい拍手がたくさん聞こえてきました。

他己紹介が終わると、グランドに移動して、王様しっぽり取りゲームをしました。その後、残留スタッフが炊き出しで昼食会を開いてくれました。理事長のしんさん(本城さん)自ら焼きそばを焼いてくれて、とてもリラックスした時間が過ごせました。出会って約5時間。こんなにいい雰囲気ができたのも、ゆっくりたっぷりな時間と、スタッフの温かさのおかげだと思いました。固くならず、自然な感じで声をかけてくれるスタッフ。私のことを早く知りたいと質問をして、話を盛り上げてくれるスタッフ。すごく大切な時間が流れていました。

2日目。軽井沢ライジングフィールドにおけるプロジェクトアドベンチャー(PA)を行いました。「なんで、こんなことをするのだろう?」の答えは、やってみることでわかりました。アンディからの課題をチームでクリアーしていく。アンディは、ルール説明をするだけで、解決方法はチームで考え出していく。一人でできないことも、チームで考えれば解決できる。そんな課題解決プログラムは、出会った仲間の気持ちを繋いでいきました。このPAは単に課題解決のものではありませんでした。その課題を解決したときに、”どんなことが周りで起こっているのか”、”どんな関わりからどんなことを感じたのか”、”私の行動は誰の何がそうさせたのか”、”相手の行動は私の何がそうさせたのか”などと、見えない心の中を言語化するものでした。チャレンジ中は解決方法だけを考えてしまうし、そのあとも解決方法について考えてしまいますが、ここで一つ踏み込むことで、より人と人とのつながりについて考えることができたと思いました。方法論はイメージできるけれど、人の心の中をイメージするのは難しいですが、言葉にしてもらうことでイメージができます。その時、どんな気持ちだったのか、あのときの言葉がけの意味はそういうことだったのか、仲間と話すことで、私には気付けないことをたくさん聞くことができました。

3日目。初めて、学園内で一日を過ごしました。風越学園のカリキュラムについての話し合いでした。しんさんの「幸せな子ども時代は一人ひとりのもの」という言葉や、ごりさんの「一人ひとりの子どもが本当に幸せになるとはどういうことかを真ん中に考えていきたい」という言葉を聞き、風越の大事にしたいことについて、それぞれのスタッフが意見を交わし合って、テーマプロジェクトやマイプロジェクトについて考えていました。その後の学年でのカリキュラム・時間割づくりにも参加させてもらいました。
 この日の私は、当事者ではなく、客観的に話を聞いていました。まだ、風越学園の事を知らない私が、何か言えるような立場でもなく、むしろ聞いていたかったというのが本音です。普段であれば、思ったことをすぐに言ってしまう私ですが、この日は我慢しました。でも、我慢したからこそ、色々と考えることができた1日でした。
 私のベースには、信州大学教育学部附属松本学校園での幼小中一貫校を目指す研究があります。その研究は、幼稚園児の姿から本校(学校園)で育みたい資質能力を見出し、それを中学校まで育み続けるという12年間の学びを考えるものでした。それがベースにあるからかもしれませんが、風越学園のやろうとしていることがリンクすると同時に、なんとなくの違和感もありました。それは、まだなんだかはっきりしませんが、どんなふうに子どもを評価するのかがこの場の話題だけでは、わからなかったからかもしれません(附属松本ではだいぶ悩んで年代ごとの評価基準をつくってきたので)。しかし、ごりさんに「今までの経験は横に置いておいて、今ある風越学園の姿にどっぷり入ってみるのがいいかな」とアドバイスをいただいたので、風越で私の感じたことを大切に過ごしたいと思いました。

4日目。いよいよ私のミッションが明確?になる日を迎えました。これまでの3日間は、楽しいのだけれど、私はいったい何をするのかがわからず、不安でもありました。
 午前中は、軽井沢風越ラーニングセンターの話を聞きました。ラーニングセンターは、教員プログラムを開発中で、私もそのプログラムを一緒に創っていく一人だということをなんとなく伝えられました。このプログラムを創っているごりさんたちは、すごくたくさん考えているだろうけれど、でもあまりその大変さは言いません。言わないのは、きっとまだまだ未完成だから、大変だなんて言ってられなくて、まだまだがんばらなきゃって思っているからなんだと思います。だから、私たちに「一緒にがんばりましょう」って言ってくれたのだと思うし、私も共に風越の学びのつくり手になれるようがんばりたいと思いました。
 午後は、私のすべき方向性について話してもらい、少し見通しがもてました。基本的に夏休みまでは、観察者。でも、クラスに入り、どっぷりつかりながら客観的にものごとを見るということでした。夏休み以降は、実践者としても子どもたちと関わるようなので、それまではしっかり様子を見て、何を大切にし、どんなことをしたらいいのか考えたいと思いました。そして、この4日目を境に、毎日のリフレクションがスタートしました。

5日目から”はじまりの日”まで。この日からは、風越の23年度カリキュラムにどっぷりつかる時間となりました。各ラーニンググループ(LG)でこれからの学びについて考える時間でした。テーマプロジェクトやLGでの年間計画、学びの設計がされていました。私が、その中でも一番驚いたのが、カンファレンス(公立で言う校内支援会議)です。一人の子どものことについて、多くのスタッフが関わり、そのスタッフから見える子どもの実態を出し合い、そこからその子の良さを見出し、さらに今後どのような関わりをしていくのかという話し合いでした。私もこれまで校内支援会議には参加してきましたが、学級担任・特別支援学級・管理職と多くて7~8人程度でしたが、風越では公立で言う専科・図書館司書・事務職員までもが加わり、さらに普段関わりの少ないスタッフも話を一緒に聞き、対象の子を見ようとしていました。こういう環境って、本当に素晴らしいし、こういう時間がもてるのも時間を創る風越だからできるのかもしれないと思いました。そして、何より多くの人に大切にされている子どもたちは、幸せだなと思いました。

いよいよ前日(4月10日)。
 子どもたちを迎えるはじまりの日の前日になっても、絶えず更新しようとしている風越のスタッフの思いのすごさを感じた1日でした。校舎内の会場レイアウト1つでも、しんさんが「そこに座る小さな子どもや中学生をイメージしながら・・・」という言葉で、机やいすの高さ、机の場所、ソファーの位置などなど、スタッフはいろいろと考え、その場その場で話し合いながら決めていました。「ここはどう?こっちにしたほうが、子どもたち喜ぶよね。」などと必ずスタッフ同士で声を掛け合い、確認して行っていました。こういうやり方一つとっても、子どもを真ん中において自分たちで創っているという感がありました。

 そして、一番驚いたのが、時程を考えていた時です。学校の時間割りを決めるときに、子どもがいるなんていうことは想像もつきませんでした。どうも、子どもたちの中で、これまでの時間割に問いをもっていたようで、有志の子どもたちがスタッフのミーティングに参加してきたのです。まさか時程を考えるときに子どもたちが関わるなんてと思いましたが、実際に一緒に話をしてみると、子どもの生の声が聴け、子どもってこんなこと考えているんだ、と私が思っていた以上のことを話してくれました。大人が決めた時間割に対して自分の考えを言えるということは素晴らしいことだと思いましたし、こういう意見を大人がどのように受け入れ、子どもたちがやりたいことをやれる時間をつくっていくのかが、共につくっていくことなのだと思いました。

 ここに参加した子どもたちは、スタッフと一緒になって新年度初日の「はじまりの日」の企画を考えていました。模造紙を貼り合わせ、そこに自分のイメージをそれぞれ描く。そして、そのイメージを語り合う。お互いのイメージを共有し、そこからさらにイメージを膨らませる。具体的な形になるまでに、何度も何度もイメージを共有し、言語化していく。そこから見えてくるものをじっくり形にしていく。このやり取りを子どもが中心となって進めていました。ほんの少ししか見ることができませんでしたが、これがこれから日常の中で見られるのかと思うと、ワクワクしました。どんな子どもたちがいるのか、どんな子どもたちと出会えるのかと、子どもたちと会うのが楽しみになりました。

 子どもたちと出会うまでの10日間。スタッフとたっぷり話をして、学校のこと、子どものことをじっくり考える時間がたくさんありました。初めて風越に来たスタッフも、きっとこのゆったりとした時間はとても貴重だったと感じたと思います。多くの学校は、4月5日か6日頃入学式になります。学校のことも、一緒に働く同僚のことも、子どもたちのことも、カリキュラムのこともよくわからない中で、3日〜4日間の準備期間でスタートしなければなりません。風越のようなゆったりとした時間がもしあれば、新しい職員も初任者ももう少し安心して、子どもを迎えられるんじゃないかなと思いました。

#2023 #軽井沢風越ラーニングセンター

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かぜのーと編集部です。軽井沢風越学園のプロセスを多面的にお届けしたいと思っています。辰巳、三輪が担当。

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