2022年12月26日

第68号(2022年12月26日発行)

2022年12月26日

こんにちは、軽井沢風越学園です。

開校して3年め、12月9日に初めての学校公開日を設け、約150名の教育関係者のみなさんに風越学園の現在地を共有しました。
3年めならではの積み重ねと、3年めだからこその難しさや葛藤の両方が伝わっているといいなと願います。今月号の記事も、そんな両方を紹介しています。

かぜのーと 第68号(2022年12月26日発行)
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【1】『風越の3年間とこれからを考えつつ読む、仙田満『遊環構造デザイン』』
澤田 英輔
【2】『感覚的なことを積み重ねること〜田んぼや外環境の活動から〜』
斉土 美和子
【3】『変化の激しさに試されているのは誰か』山﨑 恭平
【4】『#002 「学校づくり、誰と取り組みたいですか?」』本城 慎之介
【5】『小さな島の大きな第一歩』筒井 明以(大賀郷小学校)
【6】『フックをかける ~流動的なカリキュラムで学ぶということ~』赤木 和重
【7】『俺たち、もっといい感じになれるんじゃない?』井上 太智
【8】『保護者と一緒に学校をつくるって、どういうこと?』辰巳 真理子
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【1】#校舎
  『風越の3年間とこれからを考えつつ読む、仙田満『遊環構造デザイン』』澤田 英輔
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いま話題の県立石川図書館。その設計者である環境デザイン研究所の仙田満『遊環構造デザイン(放送大学叢書)』を読んだ。著者の仙田さんは、軽井沢風越学園の設計者でもある。僕がこの本をこの時期に手に取ったのは、風越学園での人の動きを決めるオペレーションシステム(OS)とも言える「校舎のデザイン」について理解を深めて、それにマッチした教育活動をしたいと思うようになったからだ(どうしてそう思ったのかも、後ほど記す)。

考えながら、過去を振り返りながら書いたらとても長文になった。これは別に風越を代表する見解ではなく、あくまで1スタッフの個人的所感であることは強調しておきたい。僕と違う感じ方をしているスタッフも、きっといるに違いない。

訪問者がまず目を奪われる、風越の校舎。特に一階のライブラリーを中心としたエリアは開放的で本に囲まれていて、いかにも居心地が良さそうだ。

でも、「作家の時間」「読書家の時間」のために一階で授業をしている(この授業はライブラリーですべき、というのは僕の譲れない信念の一つだ)僕は、このライブラリーの授業場所としての使いにくさも知っている。開放的な空間とは、子どもが飛び出しやすい空間でもある。壁がないエリアでは、小さな子の走り回る姿や声も見聞きして集中が削がれる。一人ひとつの独立した椅子や机がないと、どうしても姿勢もだらっとしてしまうし、仲良し同士集まっておしゃべりをしやすい。壁が少ないので、掲示物も作りにくい。こうした問題に対して、手を変え品を変えて授業できるように整えるのが僕の仕事の一部になっているのだが、その都度、「普通の学校の普通の校舎」がいかに授業しやすかったか、思いを馳せる。
四角に仕切られた教室空間。2つに限定された出入り口。前方と後方がはっきりしたレイアウト。正面の大きな黒板。後ろのロッカー。一人ひとつの、道具箱も入れられる机。正面や背後の掲示物。こうした空間デザインや道具が、間違いなく僕たちの授業を支えていたのだ。そして、学校にはこの校舎のデザインとマッチした仕組みもある。それが、一時間ごとに区切られた時間割や、そのベースとなる年間指導計画であり、教授内容を具現化した教科書である。学校の基本的生活がそれに沿って進行することを子どもたちに告げるチャイムもある。さらには、基本的にはずっと固定された教室で過ごす「学級」という集団を使って、僕たちは授業をする。その学級集団の日常に風穴を開けて祝祭性をもたらし、その過程で学級集団の機能を高めるために、各種の学校行事も配置されている。

学芸大学の渡辺貴裕さんは「パワード・スーツ」という表現をされていたが、まさに僕ら教師の能力を増大するさまざまな仕組みによって、僕たちは「教師」として振る舞えたのであった。風越学園には、この大部分がない。この中で授業をするのは、これまでの授業ベースの発想から言えば大変なことである。経験の浅い若いスタッフは、基本問題に習熟する前にいきなり応用問題を解かされるようなものだ。また、風越にはそれぞれの現場で名を馳せた実績あるスタッフも少なくないが、熟達の腕を持つ彼らでさえ、かつての実践と同じことを風越でやろうとしたら「パワード・スーツ」の助けがないため以前ほどの成果を出せず、「こんなはずではないのに」と不全感を抱くのではないか。風越学園は、ぶっちゃけそういう空間である。

続きはこちら >> https://kazakoshi.ed.jp/kazenote/dandan/27369/
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【2】#この地とつながる
  『感覚的なことを積み重ねること〜田んぼや外環境の活動から〜』斉土 美和子
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軽井沢の晩秋はあっという間のかけ足で過ぎていく。田んぼの稲刈りを終え、脱穀、堆肥撒き、畑仕舞い・・。いつの間にか景色はすっかり冬になっていた。

今年の田んぼのお米はまずまずの出来であった。夏のひどい暑さ、雨がゲリラ的に一気に降るような異常気象はあったものの、はぜかけで天日干ししている間に台風が来なかったことは唯一の幸い。お米はもとより馬や羊たちの餌になるワラが、乾いた良い状態で収穫・保存出来たことがなによりうれしい。人間の食べるお米はツルヤ(地元スーパー)で買えるけれど、無農薬のワラは売っていないから。

今年の春から、風越学園の庭にも田んぼが出現した。
それは本当にひょんなことから始まった。

学園の1年生が私の追分の田んぼに種もみ蒔きに来た日、僕たちもやりたいと9年生のオカショーと8年生のキヨも田んぼへやってきた。全部の苗床に種もみを蒔き終わったのに、まだ少しだけ種が残っており「学校でもこれを種まきして田んぼを作ればみんな毎日お米を見られるんじゃない?」と言い出したのだ。

あれよあれよという間に学校の芝生をはがし、二人で田んぼを掘り始めた。

続きはこちら >> https://kazakoshi.ed.jp/kazenote/liv/27501/

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【3】#デバイス
『変化の激しさに試されているのは誰か』山﨑 恭平
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 毎年、秋から冬にかけてChromebookなどのデバイスに関する記事を書いています。他に書くことがないわけでもないのですが、定期的に振り返ることで見えてくることもあるかもしれません。1年目の記事では、デバイスをうまく活かせる場面もある一方で課題も多く、最終的に一部の時間でのWi-Fiオフという判断をしたという話でした。2年目の記事では、デバイスの活用に関して、どんな姿を目指したいのかという話。

 3年目の2022年は、これまでの記事で書かれてきたような日常的な活用はさらに広がっていきました。学外の人とつながりながら自分の学びを広げていく人もいれば、新型コロナウイルスに関連したオンライン学習という状況でもスタッフが用意した機会だけでなく積極的に仲間やスタッフとつながる機会をつくる人もいたりと、デバイスを人とのコミュニケーションのために使うことは特別なものではなくなりました。こうした、これまでの延長としての活用は学校のいろんな場面であります。

 一方で「状況」や「状態」というといいのでしょうか。子どもたちのデバイス活用の「公」と「私」の境界は、徐々に溶けているように見えます。

記事はこちら >> https://kazakoshi.ed.jp/kazenote/now/27524/

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【4】#開校までの歩み
『#002 「学校づくり、誰と取り組みたいですか?」』本城 慎之介
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2000年に鈴木義幸さんと出会い、月に一度くらいのペースでコーチングの時間をつくっていた。
何かを始めるとき、動くとき、変えるとき、止めるとき、鈴木さんのコーチングの時間で、ぐっと自分自身を探っていた。

2016年1月初めのコーチングで、「死ぬまでに、学校づくりに真剣に取り組まないと後悔する」と僕は話していた。僕の話しを受け止めて、鈴木さんは問いかけた。

「本城さん、学校づくり、誰と取り組みたいですか?」

どんな学校をつくりたい?と質問されると思っていたので、辞書のページをめくるように記憶を辿り、いくつもの顔と名前を浮かべていった。

「岩瀬直樹さん、かな。よく知っている人ではないんですけど。」

そう、よく知っている人ではなかった。この時までに会ったのは2回だけだった。

記事はこちら >> https://kazakoshi.ed.jp/kazenote/history/27212/

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【5】#軽井沢風越ラーニングセンター
『小さな島の大きな第一歩』筒井 明以(大賀郷小学校)
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八丈島という小さな島を皆さんはご存じでしょうか。東京都心から南に約290kmのところにある伊豆諸島の1つです。私はその八丈島の大賀郷(おおかごう)小学校で教員をしています筒井明以(つついめい)と申します。

ご縁あって、今年度本校は軽井沢風越ラーニングセンターと連携させていただき、研究を進めてきました。本校は全校児童99名、教職員18名の小さな学校です。素直でかわいい子供たちが大自然の中ですくすくと育っています。そんな本校の研究主題は「学ぶ楽しさを知り、何事にも主体的に取り組む児童の育成~UDL(学びのユニバーサルデザイン)の視点から~」です。子供たちが「学ぶって楽しい!」と心から思えるような授業作り、自立した学び手を育てるための工夫を行っています。岩瀬先生や風越学園のスタッフの方には、私たちの研究について、一緒に悩み、考え、ご指導をいただきました。

昨年度末、今年度の研究はUDLの視点で異年齢学習をやってみようと決まった時、どんな講師の先生だったら私たちの研究を理解してくださり、価値付けてくださるだろうかという話になりました。私はすぐに岩瀬先生!と頭に浮かびましたが、風越学園の校長先生になられ、お忙しくされているだろうし、こんな遠い小さな島に来てくれないだろうなと思っていました。ダメもとで校長に相談したところ、「ちょっと調べてみる!」と校長は早速風越学園のHPにアクセスしていたようです。「メールしてみた!」とその日のうちに校長から話があり、あれよあれよと「一緒に学びましょう!連携しましょう!八丈島行きます!」となりました。私の学級経営の寄りどころは岩瀬先生の著書でした。まさか、一緒に研究ができるなんて!と飛び上がるほど嬉しかったのを覚えています。

続きはこちら >> https://kazakoshi.ed.jp/kazenote/klc/27482/

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【6】#風越の教室に入ってみた
『フックをかける ~流動的なカリキュラムで学ぶということ~』赤木和重
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風越学園の開校年度(2020年度)から,訪問させていただいて,2年半が過ぎようとしています。最近は,保護者の学習会にも呼んでいただけるようになったり,スタッフからも,子どものことなどで,ふらっと,お声かけいただくことが増えてきました。ときどきとはいえ,継続して訪問することで,つながりはじわじわと深まっていくなと感じています。ありがたいことです。

今回(11月1日~2日)の訪問でも,スタッフの方々といろいろと話ができました。私の専門(発達心理学)の関係で,子ども理解や子どもとのかかわりかたの話題が中心です。スタッフのお話を聞いて,あれこれ頭をひねりながら応答します。スタッフから教えてもらうことがほとんどですが,考えを深めたり,違う視点を持ってもらえれば,うれしい限りです。そんな感じで,スタッフとあれこれ話をしながら,はたと気づいたことがあります。私が普段,公立の幼稚園や小学校で仕事するときと,コメントの内容が違うことに気づいたのです。真逆かも…と感じることさえでてきました。

どうなってんのワタクシ?と,自分に驚いています。フシギです。そこで,今回は,「普段とは違う逆方向のコメントをしてしまう」ことへの考察を通して,風越学園のありかたを考えます。内省的な話になってしまいますが,お付き合いくださいませ。

続きはこちら >> https://kazakoshi.ed.jp/kazenote/akagi_report/27544/

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【7】#スタッフインタビュー
『俺たち、もっといい感じになれるんじゃない?』井上太智
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「ハッピーに発表することを意識してみて。発表する側も、聞く側も。」これは、授業で全体発表をする子どもたちに向けて、たいち(井上)がかけた言葉だ。その後、ちょっとふざける人がいるくらい和やかに行われた発表を見て、スタッフインタビューでたいちが伝えたかったことはこういうことか、と体感しました。(かぜのーと編集部・三輪)

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最近、無意味な時間をいっぱいとりたいなーと思っているんだよね。忙しい中で集まっているからひんしゅくを買うかなと思ったけど、昨日もスタッフミーティングでは、みんながただただ話したいことを話す場をつくったり、子どもたちとの授業でもチェックインの時間を結構大事にしている。そうすると、推しのアイドルが・・・とか、最近お小遣いが足りなくて・・・って話が出てきてさ。普通に授業を始めていたら出てこないでしょ、そんな話。そういうどうでもいいことがおもしろいなと思うし、今の自分にとってすごく大事なんだよね。

__ 無意味な時間やどうでもいいことが大事。どうしてたいちがそう思うようになったのか気になります。

自分はどちらかというと、場や関係性に関心が高いタイプの教員だと思うんだけど、風越学園にきて、一人ひとりを見ていこうという視点が強くなってから、個と集団の両方を行き来するようになったんだよね。そうすると、一人ひとりのストーリーや文脈がつながりあって大きな組織になったり、コミュニティになったりするんだということを改めて感じるようになって、じゃあ出発点になる“自分”ってすごく大事じゃんって。

でも今風越には、苦しさを抱えている子どもも大人も結構いるんじゃないかなと正直思うんだよね。子どもも大人も幸せであってほしい、幸せでありたいと願っているコミュニティのはずなのに。だから、学びがどうとかいう前に、まずはその人がその人らしくいられる場に
したいなあって。

続きはこちら >> https://kazakoshi.ed.jp/kazenote/staff_interview/27465/

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【8】#保護者
『保護者といっしょに学校をつくるって、どういうこと?』辰巳真理子
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毎年1〜3月頃は、年度末に向けてなにかが盛り上がっていく子どもたちやスタッフを横目に、私はやや冬眠モードで次年度に向けた仕込みをしています。開校2年目である2021年をふりかえって、何か打ち手を考えたいなと思ったひとつが、保護者コミュニティの耕しでした。
開校から2年経っても出会えていない保護者が多い。新しく出会う機会が限定的で関係性が固定化してしまっている。
困ったときに助けあえたり、ちょっとしたやりとりで解決できるようなコミュニケーションがオンラインのコミュニケーションプラットフォームだけでは起きにくい。
子どものトラブル時以外で保護者とスタッフがなにげなく出会って話せる機会が少ない。
なにかしら学校づくりに関わりたい気持ちのある保護者は多いが、「子どもを真ん中に」を優先すると、遠慮気味になる。
子どもだけでなく、大人も「〜したい」が大事にされる・「わたしをつくる」機会があると、子どもの「〜したい」に伴走するヒントがあるのではないか。

こんな問題意識や仮説をスタートに、どうしたら気軽に学校で新しい大人の関係性を紡いでいけるか妄想し、2022年6月から始めたのが「裏風越」です。

続きはこちら >> https://kazakoshi.ed.jp/kazenote/now/27426/
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(あとがき)

来年度のことを考え始める季節になりました。これまで、どんな時間軸の中で来年度を捉えるか、スタッフによっていろいろでしたが、ひとまず2028年度の在りたい姿から考え始めています。どんな未来をつくっていくか、自覚的でありたいものです。
よい年末年始をお迎えください。

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発行元 学校法人軽井沢風越学園
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