スタッフインタビュー 2024年7月23日

幼小のつなぎを考え続けたい。(林 里紗)

林 里紗
投稿者 | 林 里紗

2024年7月23日

公立小学校で5年教員を務め、2022年度から風越学園に参画したふぅ(林)。真っ直ぐに前を向き、歩みを続けるふぅの姿は、参画以来変わらない。その背景と歩み続ける先には何があるのか。じっくりと話を聞きました。(編集部・三輪)


幼小のつなぎをやりたい

私、元々幼稚園の先生になりたかったんです。でも、大学で幼児教育の勉強をする過程で「子どもが好き」という気持ちだけではなれないなと感じる幼児教育の奥深さ、子ども理解の難しさみたいなものにぶち当たって。たとえば、幼稚園の実習で『子どもが〇〇を楽しむ』みたいなめあてを立てたりするんですけど、「私には目の前にいる子どもが今、本当に楽しんでいるのかどうかはわからないよな」、と思っちゃったんですよね。 「めあてを達成したかどうか、どうやって分かるの?」というか…。

それで、当時は小学校以降の教育の方が、マルバツが明確だったり、点数が出たりするからもしかしたら私には合ってるのかも…と思うようになって、小学校の教員になることに決めて大学院に進んだんです。そこで、公立学校を辞めて大学教員になったゴリさん(岩瀬)と出会ったりして。

でも、大学院で従来のカタチではない教育をいろいろ知ったり、これから目指す教育のことを考えたり学んだりしていくと、小学校以降も正解がないようなことが大事になってきているということがわかって、 「それってめちゃめちゃ幼児教育でやってるじゃん!幼児教育が基礎じゃん!」ということに気がついたんですよね。そこからやっぱり自分のベースには幼児教育というか、答えのない教育を持っておきたいと思うようになりました。

_ 大学院を卒業後、風越を一度受けたけれどそこでは参画せず、公立校で5年働いてからもう一度受け直したと聞きました。

そうなんです。新卒で受けた時はタイミングが合わず、結局公立校で働くことにしました。でも、公立校で1年生の担任もやらせてもらう中で、やっぱり幼小のつなぎとか幼児教育で大事にしてることを、小学校でも大事にできることが絶対肝だなって確信を持って。そこから、「幼小のつなぎをやりたい」という気持ちをさらに強く持つようになったんですけど、それを単発の活動ではなくてカリキュラムに落とし込むのが公立学校ではすごく難しくて。そのチャレンジができる学校にいきたいと思って、改めて風越を受け直しました。

2回目で入れてよかったなって、今はすごく思ってるんですよね。一度目は、風越への興味や新しい学校が立ち上がるということに参画したいという気持ちが大きかったんですけど、風越って大人も「これがしたい」ということがないと苦しくなっちゃう場所だなと思うので、多分辛くなっちゃっていたんじゃないかなあ。

今は「幼小のつなぎをやりたい」ということが明確なので、うまくいってもいかなくても、ずっとそれを探究できているからいいと自分で思えているのでよかったなと。

点、まざる、つなぐ。

_ 幼小のつなぎをやりたいと思って3年前に風越へ参画して、主に1,2年生をずっと担当してきているけれど、実際どうですか?

私が入ったのが風越開校3年目だったんですけど、ちょうど前期・後期がなくなった年で。(編集部注釈:風越学園は2020,2021年度、カリキュラム上、
幼稚園年少から小学2年生までを<前期>、小学3年生から中学生までを<後期>としていた)

参画する前は、2年間で培われたものをベースとして1,2年生のカリキュラムの枠みたいなものを作っていくんだろうな、せめて0.5ぐらいはベースがあるかなと思っていたのに、入ってみたら0からでいいよと(笑)。でもそれが本当に難しくて、1,2年を一緒に担当したいくらちゃん(依田)えっちゃん(片岡)と、もがき続けた1年でしたね。

2022年、 風越参画1年目のふぅ。

でもその1年目の結構しんどかった時期に、山崎繭加さん(華道家/風越理事)と話をさせてもらう機会があって「枠作りをしたいんだけど難しいんですよね。」と言ったら、 「枠というよりも、点みたいなものかもね。」と言ってくださったんです。“これかも”と思える点が少しずつ見つかって、それがつながる時が来るかもしれないねと。 そうなると、多分これは3年とかのスパンの作業じゃなくて、10年ぐらいかかる作業なんだと気がついて(笑)。そこからその点を探し続けている感じですかね。

_ 私は月に一度風越に来校しているのですが、来る度に「1,2年生、また変わったな」と感じるんです。やっていることが変わったな、過ごし方やチーム編成が変わったなとか、常に変わり続けているなと。

ずっと探している感じなんだと思います。

_ ずっと探している。その中でも見えてきた点や光みたいなものはあったりするのでしょうか。

風越に入る前は幼稚園がそのまま延長するみたいな状態が良いと思っていたんです。特に、大人が手渡すものは少ない方が理想だと思っていたんですけど、この3年間で大人が準備するものや手渡すもの、大人の関わりみたいなものの重要性が自分の中で割と上がってきている感じはあるかな。

あとは、昨年度上手くいったことは残しながら変えたいところは変えてっていうのはできてるかなと思うし、今年はまた大きく変えて1〜4年という括りでやることになったので、新しい点が見えてくるかもという気はしています。

_ 大きな変化ですよね。どうして1〜4年を括りにすることにしたのか気になります。

去年1,2年のスタッフと3,4年のスタッフで話す機会があった時に、大事にしたいと思っていることは一緒なんだけれど、1,2年も3,4年もそれがなかなかうまくできていないということがわかったんです。だったら1〜4年を一緒にして、何が起こるのかやってみようよって。

あとは、 元々「まざる」ということを大事にしたい学校だったのに、どんどん分けていたよね、というのも改めて考えて。まざるとめんどくさいことも色々起きるけど、もう1回それをやってみよう!、みたいな感じで動き始めたのが最初ですね。

_ ふぅはそのことについてどう考えたり、感じたりしていますか?

私は、1〜4年構想は、私がつくりたいと思っている幼稚園のように遊びや暮らしなどの活動から学びへとつなげていくカリキュラムの第1歩だなと思っているので、1,2年生以降にも広がる可能性が見えてきてよしよし…という気持ちです(笑)。3,4年生になるとがっつり時間割で組まれているなーとずっと思っていたのもあったので。

じゃあもっと早くやればよかったじゃんと思うかもしれないけれど、去年、一昨年では出来なかった動きでもあると思うんですよね。ある程度スタッフメンバーも揃ってきたから、こういうのいいよねって考え始められて、この流れが生まれたっていうのはあるかな。

_ 今年だからこそのチャレンジという感じがあるんですね。大変そうではあるけれど面白いというか、やってみようという感じが結構あるのかな。

そうですね。でもこれもこの1年で終わるというより、3年計画ぐらいだよねということは話していて。今年一年でうまくいくはずないし、続けてみないと見えないものも色々あるはずだから。

大人の役割ってなんだろう?

_ この3年間で大人が準備するものや手渡すもの、大人の関わりみたいなものの重要性が上がってきている、という話をしてくれたけれど、ふぅの思う大人の役割ってなんですか?

私、唯一子どもと面白がることだけは得意だなと思っていて。子どもがなにか始めた時に、「うわー、めっちゃおもしろいじゃん!!」みたいに、そのわくわくした気持ちや場を子どもたちと共有するのがすごく好きなんです。そしてそれは、間違いなく子どもの活動にいい影響というか、エンジンになると思うので、そこはいつも意識はしてるかな。

あとは、幼稚園のスタッフ経験があるちか(奥野)ゆっけ(井手)と今年1年生を一緒にやらせてもらってたんですけど(編集部注釈:4,5月は2〜4年とは過ごさず1年生だけで丁寧に人や場との関係性を築く時間をつくっていた)、 子どもの「やりたい」を引き出したり、つなげたりする環境を整えるのが本当にうまいんですよね。自分にはその引き出しがまだ全然ないんですけど、すごく大事な役割だなと感じています。

今、とっくん(片岡)まっつー(松江)たけさん(竹内)と「とってみよう」という1〜4年生のチームで過ごしていて、子どもたちは毎日川へ行って色々とっているんですけど、そこで私たちがずっとやっているのは、子どもを見て起きていた芽を見つけていくこと。そこ(子どもの姿やそこで起きたこと)から、活動のさらなる広がりやテーマ学習につなげていくのが、私たちの役割の一つだなと思っています。

_ 子どもからはじまること、子どものやりたいこと。ふぅが大切にしていることが改めて見えてくる気がします。

「なにやってるの?!」「なに始めたの?!」みたいな、子どもたちから生まれたものが1番好きで。それこそ、さっきも国語の授業でひらがなをやっていたけど、ああいうこちらから教えるのは別に好きじゃないんですよ(笑)。

_ でもやっているということは、やらないといけないことでもあるということですよね。そこはどうやって自分で折り合いつけたり、バランスとったりしているんですか?

それこそ1年目は、ひらがなや漢字については、長い目で見ればそれぞれが育っていく中で自然な流れで身につけていくはずだから、わざわざ授業としてやらなくていいんじゃないか、って思っていて。1,2年生スタッフでも悩みながら相談して、漢字ドリルやテストのようなやり方はしないでいこうとしたんです。でもそうすると、3,4年生で結局困るとか、5,6年の実践と合わないということがやっぱり出始めて。どうしても自分の中に抵抗感はあったんですけど、やらなきゃいけないのも半分ぐらい理解できるから、より良い形を模索しながらですが、今は漢字の時間を取り入れることにしました。

あとは、スタッフがやらなくていいと思ってる反面、子どもはすごいやりたがっていたというのもあって。1年生になった子どもたちって、ひらがなしたい!漢字したい!計算したい!んですよね。それをずっと、まあまあまあって待たせていて、じゃあ明日からやるよって言ったら、子どもたちが「やったー!!!」みたいな。 すごい状況だなと思うんですけど(笑)、その気持ちを変に抑える必要はないなっていうのは2年間で感じるようになったかな。

やらないんじゃなくて、子どもたちの「やりたい」の気持ちがある状態が続いて、楽しくできるやり方を考えるのが1番いいなって。

幼小のつなぎの先へ

_ 最後に、毎日がチャレンジだとは思うのですが、ここから特にチャレンジしていきたいなと思っていることがあれば聞かせてください。

風越って、苦しいと楽しいが共存するなとよく思うんですけど、初年度は「くるくくるくるくるたのしい」ぐらいの感じで(笑)、結構しんどかったんです。でも、去年ぐらいから「くるくるたのしい」ぐらいに変わり始めて、 今年は本当に楽しいんですよ。

多分、3年目で自分に余裕ができたのもあるし、 スタッフとの協働も自分が上手になってきたのもあるんだと思うんですけど、「外とつながりたい」という気持ちが湧き出てくるようになりました。今年から、自分の記録用に毎日書き残していたものをスタッフにも見てもらえるように開き始めたのも、そういう気持ちがあってです。

あとは、風越だからできることをしたいっていうよりは、『幼小のつなぎのより良いあり方を考えて、その種を公立校にも広げたい』というのは風越に入る前からずっと思っていたので、10年かかるなと思ったからこそ10年経ってから「こういうのができました」って出すよりも、「今こんな感じなんだけどどうかな」っていうこの段階で外に出してつながっていきたいな、幼小のつなぎを考える仲間を広げたいなと思っているので、今年は実践ラボを開きたいです。

_ 「幼小のつなぎ」というけれど、風越の12年という枠の中でそれはどう捉えていますか?1,2年生という立場にずっといて、どういう風に見えているのかな。

それこそ風越に入る前は、前期・後期のつもりで来ていたので、幼稚園から2年生ぐらいまでのことを考えていたんですけど、今年は1〜4年構想になったし、自分の考えたい範囲というか視野が広がってきている感じはします。幼小のつながりという言葉の方が通りがいいのでそう言っているけれど、そこだけじゃないというか・・・今はまだうまく言葉にできないですけど。

_ じゃあまた3年後ぐらいにインタビューさせてもらって、その続きが聞きたいです。

ぜひ、お願いします。

インタビュー実施日:2024年6月13日

#2024 #スタッフ

林 里紗

投稿者林 里紗

投稿者林 里紗

お散歩すること、甘いものを食べること、そもそもを考えること、人の考えを聞くこと、子どもたちとおしゃべりすることが大好きです。

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