2021年2月19日
風越学園でリソースセンターのスタッフとして働く傍ら、コーチングや児童養護施設で暮らす子どもたちに学びや体験を届けるNPOで事務局長をするなど、多方面で活動をする外崎(とのちゃん)。
「今の自分の人生ですごくよかったなぁって思ってます」と笑いながら語ってくれた彼女は、いま風越でどんなことを感じ、考えているのか。2年前に風越に参画した経緯まで遡り、たっぷりと話を聞いてみました。(編集部・三輪)
元々、個人事業主でいくつかの仕事をしていたんですけど、その中でお世話になっている人が「風越学園という新しくできる学校で事務局のスタッフを探しているみたいなんだけど、一回話聞いてみる?」と辰巳さんにつないでくれて。話を聞いてみたらすごく面白そうだったから、すぐ行こうと決めて、そこから2ヶ月くらいで軽井沢に引っ越ししてきました。2019年の5月のことです。
__ 仕事を変えるだけじゃなくて、住む場所も変えるって大きなライフチェンジだと思います。当時、悩んだり、葛藤はなかったですか?
実家が埼玉にあって、軽井沢まで車で1時間半位で行けるから、小さい頃によく遊びに連れてきてもらっていたんです。だから、異世界な感じではなかったっていうか、場所として安心感があったかなあ。
私、7年前に一度ガンを経験していて。そこで人生がガラッと変わったんですけど、治療して5年はとにかく安静にしていようと実家で暮らしていました。5年経ったらどこかに旅立ちたいなという思いがあって、そのタイミングともちょうどドンピシャだったんですよね。だから、迷うことなく行こうと思えた。
__ さっきも「面白そうと思って、すぐ行こうと決めた」と言っていたけど、どのあたりがとのちゃん的に面白そうと思うところだったんだろう。
『自由と自由の相互承認』という言葉に引っかかったんです。その時期ちょうどコーチングのコーチもはじめて、「人間を理解したい」という深い欲求が私の中にすごくあって。子どもの中では何が起きているんだろう、自由と自由の相互承認が子ども同士の中でどうやって起きていくんだろうということに興味を持ったし、それを身近で感じられるのは自分自身も楽しいだろうなと思いました。
あと、その相互承認が起こっていくためには、お互いを知りたいという興味関心が生まれる必要があったり、そもそも取り巻く大人たちの関係性が大切だろうなと思って、そういう環境づくりを私もしたいなと思ってジョインしたって感じかな。
__ 実際入ってみて、どう?
最初は教員スタッフとの接点って、お金のこととか実務面ばっかりだったし、カリキュラムのことや指導要領の話をしていても正直よく分からなかったから、入り方や関わり方に躊躇していた感じが結構あったかも。
でも、開校して6月頃から子どもたちの分散登校が始まって、実際に子どもが来ると自分の感覚が変わっていったんだよね。自分自身が子どもの時以来、初めてこんなにたくさんの子どもを一斉に見て(笑)、なんか不思議な感覚もあって。
そこからは、「これやろう」とスタッフと言って始まるというよりは、子どものやりたいことに乗っかっていったら、スタッフともつながっていったんだよね。より子どもともスタッフとも混じっていっているのが、最近の感じかなあ。
__ とのちゃんの仕事の内容的には、オフィスにいてパソコンに向かうことが多いのかなと思ったんだけど、どうやって子どもたちとはつながっていったんだろう。
始まりは、オフィスの横にある受付に保護犬の募金箱を置いて欲しいという、チー、ちいちい、さんちゃんとの出会いだったかな。
設置した募金箱に自分たちでお金を入れにくるから気になっちゃて、「どうしたの?」って声かけたの(笑)。そこから、「みんなの目的って何だろう?」「何が犬にとって幸せ何だろう?」みたいなことを一緒に考えるようになって、関わり始めたんですよね。
今は、7年生のユヅキのセルフビルドの伴走をやったり、うまっちと一緒に「スタートアップジュニア」という社会課題解決のプレゼン大会に出る子どもたちの伴走をしています。
__ 教員ではないとのちゃんが、どういう心持ちで子どもの隣りにいるのか気になりました。
最初はすごく意識していたんだよね、自分は教員ではないって。子どもたちの中に入っていけないとまでは言わないけど、みんなは教員としてプロであるというのは思うから、そこに自分が同じことをしようと思っているわけではない、というか。
でも、ナナメの関係性だからこその視点やちょっと引いて見れる視点は、リソースセンターだからこそできるのかなとも思いはじめて。というのも、リソースセンターのメンバーは、本当にいろんなバックグラウンドがあるから、それぞれが持っている知識とか人脈みたいなものを注げ込めるといいんじゃないかなぁって思うようになったんですよね。それこそ、私たち自身がリソースだなと。
__ ナナメの関係性。もし、子どもたちとの関係性に名前をつけるとしたらなんて名前をつけるだろう。
そうだなー、最初にパッとでてくるのは「友だち」。オフィスで隣りに座って、子どもたちとキャッキャしてることがよくあるから(笑)。それに、こういう道筋でやるといいよと教える人というよりは、一緒に保健所に行ってみたり、自分も動きたいなという気持ちがあるかなあ。それこそ保護犬については、私自身も興味があるから、対等な立場で一緒に学んでいるというか、こんな発見あったねということを一緒に話す人みたいな感じなんですよね。
あと、私はその子の成績とかを知らないし、知らなくてもいいやとも思ってて、算数の出来を伸ばしてあげたいとか、国語力をあげてあげたいみたいな感覚というよりは、その子が何に興味関心があって、どういう時にエネルギーが生まれて、みたいなことを横で見守っている人でありたいなと思っています。
__ 子どもたちと関わる中で、印象に残っている出来事ってありますか?
こないだ、スタートアップジュニアのプレゼン動画を撮ったんですけど、冬休み明けたらすぐに動画撮ろうというスケジュールだったので、特に準備したりしてこないだろうなくらいに思ってたんです。
でも蓋を開けてみたら、それぞれが町の農協までアンケートを取りに行ったり、アウトプットディで集めた生ゴミを使って家で肥料をつくってたり、鹿肉でジャーキーをつくってみるみたいなことをやっていて。子どものことをなめちゃいけないなというか、可能性は他人には決められないなって思ったんですよね。自分だけがその可能性をつくっていけるし、人にどう思われてても、本人がどう動くかでその人自身はつくられていくんだなということを感じました。
あと、ココロちゃんがプレゼン動画撮る時に「練習したくない」って言って、1回も練習せずに撮ったんです。その撮った動画は真面目風なものだったんですけど、その後にもう1本、遊びの中でYouTuber的な感じでふざけて撮りだしたんですよね。「カノでーす!ココロでーす!」みたいな感じで。そうしたらそれが楽しかったみたいで、その延長線上でプレゼン用の動画も撮りだして、それがもうエネルギーに溢れすぎてて。「ココロです!よろしくねぇ!!」って(笑)。
結局それを採用して送りました。自分のエネルギーが出ているということを意識しているわけではないと思うんですけど、ちゃんと自覚しているというか、感覚として分かって選べているんだろうなというのは見ていてすごく感じました。
私自身、周りの人のことが気になって、結構八方美人なところがあったりするから、そういう子どもの姿、純粋にいいなあとも思っているし、影響受けているかも。
__ 子どもたちから影響を受けている。
うん、風越にきて自分自身変わったなというのはなんとなく感じていて。今このタイミングで言うべきなのかとか、こんな些末な発言してもしょうがないかなとかって、自分にばかり矢印が向いてしまうことがよくあったんだけど、少しずつそれを手放せてきている感覚があるんですよね。
今年の2月から業務委託で働かせてもらうことにして、このあいだ「働くをつくる」っていうテーマでスタッフ向けにも話をさせてもらったんです。その時も、最初は「みんなにとって意味あることを話さなくっちゃいけない」みたいなマインドがあったんだけど、それは一旦置いておいて話せたんだよね。
自分の中のものをぽんっとピュア度を高く出す、と言えばいいのかな。それが前よりできるようになってきたというか、大事にしていきたいなという気持ちが大きくなってきているなぁと感じています。
それこそ働き方を変えたのも、一日、一週間、一ヶ月、一年を自分でデザインしていきたいみたいな感覚が強くなったのがあるのかも。365日、ずーっと動いていたいというか(笑)。
__ そのエネルギーはどこから湧くんだろう。とのちゃんの中でこうありたいという自分像があったりするのかな。
成長し続けたいというのはすごくあって。元々は、自分にできないことがいっぱいあったから、出来る人がやればいいじゃんみたいな考え方が自分の中には結構大きくあったんですよね。
でも、自分も周りもちょっとずつ出来ないことが出来るようになっていくということが増えていったら、それだけで世界ってよくなっていくんじゃないかなって思うようになって。だから、やりたくなければ別にやらなくてもいいとは思うんだけど、心の中では出来たらいいなと思っているのに、出来ないって決めつけてやめるみたいなことはしたくないなと。
__ そんなとのちゃんが、今、特に熱を持って取り組んでいることは何ですか?
学校経営や運営に関わるリソースセンターの仕事は、責任持ってやりたいなと思っていて。でも、自分の心が動くのは子どもたちと接して、一緒に笑いながら動画撮ったりしている瞬間だなあって。
来年の体制を考えて、ゴリさんとスタッフ一人ずつ面談しているんだけど、そこで「ホームを持ちたい」ってゴリさんに相談したの(笑)。
__ !!!すごいね、最初は「自分は教員ではないから」ってちょっと離れたところから子どもと関わる人って言ってたけど、ホームを持ちたいっていうところまで変わっているんですね。
しんさんとよっしーからは「やることはやろうね」って言われてて、できるのかなっていうのはあるけど、自分がホームを持ったらどうなるかなぁって、構想ばかりしてる(笑)。
でも本当、昔は臆病というか、転職するかどうかを2年くらい迷っているような人だったから、変わったのかもしれない。それこそ人生ってパラレルみたいなところがあるから、病気になってなかったらとか、転職してなかったらって、そっちの人生だったらどうだったかなって考えることがあるけど、今の方が数百倍楽しいっていう自信があるから、今の自分の人生ですごくよかったなぁって思っています。
インタビュー実施日:2021年1月29日