風越のいま 2020年6月17日

「やることがいっぱいありすぎる」(馬野 友之)

かぜのーと編集部
投稿者 | かぜのーと編集部

2020年6月17日

(書き手・馬野 友之/2023年3月 退職)

オンラインで朝の集いをしていた頃、「この後、12時までこのZOOMの部屋を開けておくけど、ミーティングをしたい人たちはいるかな?」と聞くと、ほぼ毎日「はーい、ミーティングやりたいです!」と答えていたのは、「動物国際チーム」のメンバーでした。

このメンバーは、世界の様々な絶滅危惧種の動物について調べたり、捨て犬の保護をするために、自分たちにはどんな活動ができるかを考えたりするチームで、4月21日に結成されました。

それでは、4月24日のZOOM会議の様子を、ちょっと見てみましょう。

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さんちゃん:あのさぁ、私たちのチームのバッヂを作ろうと思って、こんなデザインを考えてきたんだけど、どうだろう?

ちいちい:うん、いいと思うよ。そういえば小諸の方で、動物を保護している団体があるらしいよ。

こうたろう:うーん、野生のものを人間が飼うのはどうなんだろう。人間が飼わなくても、自然界で生きて行けるようにしたいなぁ…。

さんちゃん:世界の異常について、ノートにまとめたんだけど、ちょっと見てもらえる?

チー:うん、いいよ。

さんちゃん:うちらは、こういう問題を解決していくために、どういう活動をしていけばいいのかな?エコバックや、チラシのデザインも作っていきたいな。日本人以外にもみてもらえるように、他の言葉でも書いてみたい。

こうたろう:いやぁ、やることがいっぱいありすぎるね。あ、この世界に動物を残しておきたい。この世界から動物が消えたら困るよね。

・・・(しばらく続く)
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僕は、「やることがいっぱいありすぎるね」と、ちょっと嬉しそうに子どもが呟いたこの一言が、すごく好きです。やることがいっぱいありすぎる、でも、それをやってみたい。風越で過ごしていく中で、やりたいことがありすぎて日本一忙しい小中学生たちにどんどんなって欲しいと思います。

こちらは、5月13日のミーティングの様子。動物国際チームからここまでのことを同じホームのメンバーに共有

動物国際チームのミーティングでは、調べてきたことをまとめたノートをお互いに見せ合って発表したり、質問したり、まるで大学のゼミのような雰囲気で進んでいきます。本やインターネットで調べて分かったことを、仲間に伝えたくて伝えたくてしょうがないんだというエネルギーが、画面越しにも伝わってきます。

事前に予定していた1時間を30分超えて、そろそろミーティングが終わるかなと思ってZOOMを閉じようとしたら、「私も調べて分かったことをみんなに話したいんだけどいいかな?」「うん、いいよ」「実はみんなに見てもらいたい動画があって、それを共有するね。」とまたはじまり…気づいたら2時間を超えるミーティングになっていることもありました。1度も休憩を挟むことなく、ずっと前のめりに話していて、本当にすごいエネルギー!

分散登校が始まってからは、「実際に学校にいる間にできることやろう!」とまず保護した犬を学校で飼うための、犬小屋づくりにとりかかりました。

最初は、ダンボールで模型作りから始めて、そして次に木材で製作することに。

カーブをうまく切るためのコツをざっきーに教わり、犬小屋のドアになる部分を作っています。

順調に進んでいるように見えた犬小屋づくりでしたが、途中で、犬を保護するために必要になる譲渡金を調べたところ、約5万円ほど必要ということが判明!このままでは犬小屋ができても、犬を飼うことはできないぞということが分かりました。

1年間でホームで使える予算も限られているから、それの大半を使うわけにはいかない。でも、プロジェクトも諦めたくない。そこで、募金箱をつくって資金を集めることにしました。

実はこの募金箱のアイデアとデザインは、オンラインの頃にさんちゃんが「絶滅危惧種を救うために募金箱を置こう」と考えていたもの。「この募金箱をコンビニとかに置いて募金を集めていけばいいんじゃない?でも、コロナのこともあるから難しいかなぁ」と一度お蔵入りになったものが、ここで改めて活かされることになったのです。

毎日登校できるようになったので、募金箱はスムーズに完成し、いよいよ資金集めをしようという段階になりました。

しかし、学校の受付に募金箱をおいてみたり、何のための募金箱なのかを説明するためのチラシを作ってみたりしてみても、なかなか自分たちが思うように募金は集まらない。その時初めて、4月からずっと動いてきた動物国際チームが、「次は、どうしたらいいんだろう…」と、困っている様子をみたかもしれません。

そんな子どもたちに声をかけてくれたのが、リソースセンターのとのちゃん。毎日、受付の募金箱を確認しにくる子どもたちの様子が気になっていたようで、一緒に動物国際チームの活動をしてくれることになりました。

早速、とのちゃんも交えてミーティング。そのあと、さんちゃんの親戚が犬保護団体「restartdog LIAN(リアン)」から犬を引き取って飼っているので、親戚を通じて連絡をとってもらい、次の週にはZOOMでお話を聞かせてもらうことになりました。

チー、ちいちい、さんちゃんは、「動物アレルギーがある子がいるのに、どうやって犬を保護したらいい?」「どのようにお金を集めていけばいい?」など、事前に考えた質問を聞いていきます。



子どもたちの質問を受けて、スタッフの方は「犬の譲渡金に必要なお金を得ることができても、犬小屋をたてるお金、その建物のエアコンなどの維持費、予防接種、食費などそのあとにもお金がかかることはたくさんあるよ。保健所からひきとった犬は、病気をもっていることも多いから、病院に通わなくちゃいけなくて、そこでもお金がかかってしまうこともあるよ」と教えてくれました。

聞き逃さぬよう、メモをとりながら話を聞く姿は、真剣そのもの。

実際に活動している方からのリアルな話を聞き、知らなかったことを知れた喜びもある反面、このあとどうやって進んでいけばいいんだろう、と、また目の前に少し壁が現れて困っているような印象を受けました。

その翌日、とのちゃんと改めてミーティング。


「みんなの目的って何だろう?」「その目的を達成するための手段は他にはないかな?」「何が犬にとって幸せなんだろう?」と、とのちゃんがいくつかの問いをメンバーに投げかけていきます。

特に「目的を達成するための手段は他にはないか?」という問いは、今まで考えたことのない視点で、どのようなものがあるか案を出すことに戸惑いっている様子でしたが、子どもたちの思考はグッとスピードを上げて深まっていっているようでした。

「募金がうまくいかない」という壁に直面し、それをなんとかしようとする過程で、新しい仲間や専門家にも出会えたことで、このチームのプロジェクトがまた違う段階へと進みそうな予感がしています。

先週のチーの学習計画表には、赤いペンで、「ラボ(チラシ)」という言葉が囲われていました。この赤いペンで囲ったのはどういう意味なんだろう?と右上を見てみると、「※⬜︎ はすごい大切」の文字。

4月24日から始まった動物国際チームプロジェクト。オンラインのときも登校できるようになってからも、このプロジェクトにたくさんの思い入れを持ちながら取り組んできたことが、この「すごい大切」という言葉にこめられているような気がして、思いがけず、心にぐっときました。

きっと、これからもうまくいかないこともたくさんあると思うけど、いろんな人を巻き込みながら、「やることがいっぱいありすぎる」と、充実感を持ちながら進んでいって欲しいと願っています。

#2020

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かぜのーと編集部です。軽井沢風越学園のプロセスを多面的にお届けしたいと思っています。辰巳、三輪が担当。

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