風越のいま 2022年9月21日

「発想」することは楽しい

片岡 利允
投稿者 | 片岡 利允

2022年9月21日

「発想」を活かすテーマに

今年度、「発見と表現」という大きなテーマでスタートした3,4年のテーマプロジェクト。4月は野外に出て歩き、何となく気になることを、あてもなく追い続けるということをしていた。

僕たちのグループでは、歩いて見つけた「発見」から、博物館をつくろうという「発想」が生まれ、博物館という形で発見を「表現」することになった。そうして博物館づくりがはじまっていったが、その後、5月には、一旦このグループは解散することになってしまった。

そしてまた、新たなグループ3,4年27名でプロジェクトをはじめることになった。そこでプロジェクトのテーマを考えるうえで、「テーマ」「子ども」「スタッフ」の3つを以下のような視点で捉えることにした。その結果、再び「博物館」をテーマにプロジェクトをしていくのがいいのではないか、と考えたのであった。

もともと「博物館」のアイデアは、あてもなく歩いた先に、思わぬ鹿の角の大発見をし、帰り道にグループの人たちとやり取りしたのがはじまりだった。これまでは「発見と表現」がテーマだったが、実は大事なことは、たくさんの小さな「発見」の感動から「発想」が生まれていくことにこそあるのではないか。そうして生まれた「発想」は「表現」したくてたまらなくなるのではないか。そんな直感があった。

さらに、神戸大学の赤木先生が、保護者に向けの学びの場でいわゆる「10歳の壁」をテーマに話をしてくださったときに、「9歳,10歳の時期には、9歳,10歳の時期でしか楽しめないことがある。それを存分に楽しめるといいですよね。」というようなことをおっしゃっていた。つまり、9歳,10歳の彼らにしか生みだせない発想があって、それを活かしたプロジェクトになっていくといいなと思った。

今回は、プロジェクトの全8週の様子から、彼ら彼女らからどのように「発想」が生まれ、それがどう活かされていったのかを感じ取ってもらえると嬉しい。

第1~3週目:歩いて集めた発見から生まれる「発想」

テーマのはじまり。『キュッパの博物館(オーシル・カンタス・ヨンセン / 福音館)』の読み聞かせをして、キュッパのように、まずは森を歩いて落ちているものを拾い集めてみた。

それから第1週目から3週目まで、ひたすら野に出て歩く。野に出るといろんなものに出くわす。目に飛び込んでくる。「世界一長いタンポポだ!」「エイジのフキ、キングサイズじゃん!」「静かにして!鳥の鳴き声が聴こえる」晴れの日も、雨の日も、あちこち歩いて集めた。

「キュッパみたいに並べてみるか」歩いて集めてきたものを、キュッパみたいに並べて広げてみる。それを眺める。すると誰からか子どもたちがつぶやき始めた。

「植物は枯れちゃうけど、保存の方法はどうしよう。」
「ラップで巻いたら?」
「ラミネートしてみる!」
「絵に描く!」
「花瓶をつくってそれに入れたらいいんじゃない?」

何とか枯れないようにするための方法をこれまでの自分の経験や知識をもとにして考え始める。この日は植物の保存方法についての発想を広げていくことになった。

早速ラミネートをやってみると、ペンで日付や見つけた場所も書いておけるし、葉っぱの保存には良さそう。次の日、その次の日も枯れずに発見を残しておくことに成功した。

第2週目に入るタイミングで、ここまでを振り返り、これからどうしていくかについて話し合った。

「とりあえず歩けばいいんじゃない?」
「家を立ててそれを博物館にする。キュッパみたいにさ。」
「ぐんのジャパンスネークセンターに行こうよ。」
「ぐんまの博物館と美術館のガイドブックがあるからここから探すのは?」
「そしたら博物館をアウトプットデイに出そうよ。」
「スケッチブックを注文してみました。お楽しみに。」

他の人のつぶやきに触発されて、発想の連鎖はどんどんつながっていく。やはり、これまでの経験や知識を何とか引っ張り出してこれからの活動を考えていく。はじめのキュッパの絵本のイメージもあるみたい。今後の活動や博物館づくりに向けての方向性や計画も自ずと見えてきた。

発想はテーマプロジェクト以外の時間にも渡って引き継がれていく。例えば、「わたしをつくる」の時間での出来事。

ケイシンはデジタルが得意で、スクラッチというプログラミングのサービスを使っていろんなものをプログラミングしていた。そこでケイシンの発想を活かせないかと、先ほどの話し合いで出ていた博物館のチラシづくりについて相談してみる。「ああ、それならすぐできるよ。やってみるね。」と、早速、腕まくりをする勢いで作成するケイシン。ものの15分ほどで作成し、次のテーマプロジェクトの時間のはじめにみんなに紹介していた。ちなみに、ケイシンははじめテーマを伝えた時に「えー、つまんなそう」と呟いていた。しかし、このあたりから、野外の音を録音する、博物館でも音やデジタルで何かできないか、などと自らの発想を活かす場面が増えていった。手応えを掴んでいったのかな。

スミレは、裁縫が得意。さらには絵を描くのが大好き。一人一冊スケッチブックを持って歩いてみることになり、スケッチブックが届くのを楽しみで仕方なく、持ち運ぶためのポーチをつくっていた。スミレもまた、自らの発想を活かすことで、プロジェクトの中での楽しみを見出していった。

第4~6週目:博物館見学からの「発想」と研究のはじまり

アウトプットデイで博物館を出すことになり、その前に、まずはホンモノの博物館をみんなで見に行きたい。そう発せられた想いから、博物館見学の計画も進んでいた。

風越の周りは自然がいっぱいで、僕たちの発見も自然に関わること。計画の中でユアは「私たちと言えばやっぱり自然でしょ」と言い、ソラは「ジャパンスネークセンターで危険なヘビのことについてみんなにも知って欲しいんだよ」と言う。その2人の想いは何とか活かしたい。2人の声を実現すべく、少しタイトなスケジュールにはなるが、見学の行き先は「群馬県立自然史博物館」と「ジャパンスネークセンター」に決定した。

この日は、「今週木曜日は博物館だねー」「予定や持ち物の確認するかー」ということで、みんなで思いついたことをその都度やりとりしながら当日のことをイメージをしつつ、予定や持ち物の相談をする。紙を用意していたので、それぞれ自分なりにイメージすることを大切にしながらメモメモ。

その中で、見学のことで何か確認しておいた方がいいことあるかな?という話になった。「写真の許可を取らなきゃ!」、そうだね。「自分勝手な行動をしない!」「禁止の言葉でない言葉に変えられないかなー」別な人の言葉で「みんなで行動する」に言い換えられる。「しっかり説明を聞く」「しっかりメモをしておく」「せっかくだから博物館づくりのアイデアも集められるといいね」そんな感じで「これでいけるね」と。

メモがそのまま自分のしおりに。

見学を終えて、さあこれからどうするか。案内マップ、チラシ、たなの分類、博物館の名前、問題、見つけてきたことについて調べる、見学したことを模造紙でまとめる、地図、ダンボールドーム、研究者名簿・・・。いろんなアイデアが出てきて、まずは各々、おもいおもいにやってみるか!ということになり、やりたいことでチームをつくり活動開始。と、その前に、博物館の名前はみんなで決めておいたほうがいいと誰かが言ったので話し合い、名前は「風越自然史Feel度博物館」に決定。略してKSF博物館だそう。

ただ、博物館づくりの活動を開始したものの、肝心の研究者である僕たちの研究の成果はまだ発表できるところまで来てないよね。ということにだんだん気づいていき、イブキが「何か専門分野みたいなのを決めたらいいんじゃない」と言ったことをきっかけに、個々に研究テーマを決めてブースを持つことになっていった。

「うーん」と悩むヨシヒト。向き合うヨシヒト。過去の自分の記録をさかのぼって、自分の関心はどこにあるのかを探る。他にもなかなかテーマが決まらない人たちは再び歩いて集めてくることに。最終的に、ヨシヒトは、たくさん集めてきた植物の名前やその種類について知りたいということでテーマが決まっていった。

「しかのつのには、血管が通ってるんだって!」
アラタは4月に鹿の角を見つけ、それ以降、ずっと気になっている。そのまま鹿の角が研究のテーマに。鹿の暮らしの本を手に取り、様々な視点で鹿の角についての情報を集める。

2年生の頃から続くシュウゴとセイタロウの鳥の羽への情熱。拾った鳥の羽を展示するため、ラボで木をつかって置き場をつくり、Chromebookで羽の詳細をタイピング。大事な羽。クオリティにこだわる。

「最近、アブの死骸が多いからアブを集めてくる!」
思い立ったエイジは校舎内のアブの死骸を集めてラボにあるもので標本づくり。アオバも興味を示し、一緒になってやる。ふたりとも、もともとテーマはすっかり忘れて、アブに夢中だ。「死んだら目が黒くなるんだよ」と集めたアブをじいっと見ることを繰り返す中で発見していく。

「マムシはたしか、頭がマッチ棒みたいだって言ってたんだよなー」
スネークセンターのへびのことが気になって仕方がないケンは、思い出しながら情報を紙に整理していく。

こうして、研究テーマに関する調査研究は続いていく。

第7~8週目:博物館の準備とアウトプットデイ、その場での「発想」

いよいよアウトプットデイもすぐそこになってきた。研究の行き詰まりを感じている人たちは、森へ歩きに出かけて集めることからはじめていく。「発見」なきところに「発想」も生まれない。探究はサイクルでもステップでもなく、「発見」と「発想」の繰り返しだなあと、ここまで来て感じてきた。僕も「植物を100集めるぞー!」と意気込む。

「みんな一日経ったらくるんってなるのに、これだけならないの。」
マナはシダに目をつけ、じいっと観察しながらその種類を見比べる。毎朝、新しいシダを見つけたと報告しにくるように。何やらシダの歴史を紙にまとめはじめていった。

シンタロウは、石のことが気になるが研究というよりは手を動かしたいらしい。群馬の博物館で見た展示を参考に、石の作品をつくる。実感のある石の重みに注目し、思いつきで僕が上皿てんびんを持ってきたら、これまで拾ってきた石の重さを比べはじめ、必ずしも大きいものが重たいとは限らないということに気づいていった。展示ではそれを体験できるようにするそう。

理科室では、エイジがアブを顕微鏡で観察するべくたいち(井上)に相談。お客さんにも顕微鏡で見てもらえるように、設置するそう。

ーアウトプットデイ前日。

「では、予告通りあと15分後に一度リハーサルをします!お客さんが来るからねー」

急いで最終準備に取り掛かる人たち。準備ができたところで、まずはとっくんがお客さんとして博物館を見学。一通り回ったところで、みんなで気づいたことやアイデアの共有。

「順路を決めた方がいいんじゃない?」
「お客さんを待っているときは研究の続きをしていれば、その様子も見てもらえるね」
「コメントを書いてもらうのはどうしよう」

やってみると、これまたいろいろと発想されていく。1回目のリハーサルで具体的なイメージを持って、再び最終準備に取り掛かっていく。次の最終リハーサルは1時間後。



時間になったので、リハーサルがスタート。しんでぃ、ニシム、丸尾さんに加えて、つぶら、アンディ、ゴリさん、しんさんも来てくれた。

発見してきたことを語り、質問に応じ、知らないことにドキッとして調べ直し。見てもらうこと、聞いてもらうことが嬉しい。やりとりの中で新たな発想が生まれ、さらに研究が進んでいく。繰り返し言葉にすることで血肉になっていく。
ゴリさん「いやー、熱量高いねー。」

ーアウトプットデイ当日。

アウトプットデイがやってきた。外にはお客さんが列をつくっている。ドキドキワクワクの2日間がスタート。

大きい人たちがたくさん来てくれて、いい緊張感の中、知らないことを教えてくれたり、展示に驚いてくれたり。

たくさん質問が投げかけられ、一生懸命説明する。よくよく聞いてくれる大きい人たち。

お家の人も来てくれて、関心をもって聞いてくれて。

実際に体験してもらって、その反応を見ながら、随時、展示も改善していく。

博物館づくりはいつも途上。ケイシンは、見学者がいてもどんどん改善や作業を続けていく。

コメントもたくさんもらって嬉しい限り。

あっという間の45分。コロナの感染対策もあり、10数名ずつ10分ごとで見学してもらうことになったが、どの人も「時間が足りない〜!」と言って帰っていった様子も見ていて、「2回やりたい!」「時間足りない!」と叫ぶ研究者たち。

1日の終わりに、もらったコメントを全て読み上げ、ニヤニヤしながら、また明日に備える一同であった。

ーアウトプットデイ2日目。

1日目のこともあり、準備にもさらに熱が入る。

博物館の外にはこのように時間いっぱい長蛇の列が。1日目は約60人、2日目は結局約80人ほどの人に来てもらった。人数規制も効果あってか、本当にありがたい限り。

2日目も相変わらず大きい人たちがたくさん来てくれて、緊張感もとれ慣れてきた様子。

2日目は、保護者やスタッフ、外部の方も含めて大人の方が多く、いろんな角度で質問責めにあい、説明にもさらに力が入る。

よくよく聞いていると、来る人によっても話し方を使い分けている人たち

なんだかんだ、自分の家族が見にきてくれたときが一番嬉しいし緊張もするよね。笑

友だちの家族が見にきてくれるというのも、また嬉しい。

お家に帰ってから、どんな話になったのかな?どんな話題で盛り上がったかな?厳しいダメ出しなどあったのかな?・・・気になるところ。笑

そんなこんなであっという間の2日目の展示発表の時間も終了。時間が過ぎても帰らない人もいて、その余韻もまたいい時間。

その場の「発想」があちこちで生まれた、ライブ感あふれるアウトプットデイだった。

最後の最後まで「発想」が止まらない

帰りの片付けの時間。

「えー、片付けるのもったいない」
「このまま残しておきたい」
「次は、研究テーマを変えてやってみたい!」

そんな声も多く、ひとまず、片付けは最低限に留めておくことに。ケイシンは、「そうだ!ホームページつくってみる!」と、黙々とホームページの作成に取りかかる。

そうだよな。アウトプットしたあとこそ、もっとこうしたい!もっとやってみたい!がわいてくる。「発想」はどこまでも止まらなくなる状態。見てくれる人、関心を寄せてくれる人がいるからこそ、わいてくるものがあるよね。これが次のはじまりでもあるんだ。最後の最後まで「発想」が止まらなかった。

彼ら彼女らとの8週間を振り返って、彼らの「発想」の数々、その豊かさと、何より、自分が「発想」したことを思い思いに語ることにできる喜びを存分味わえたことが何より充実していたようだった。それぞれが自分の発見や「発想」を持ち込んで、そこで自分なりに表現したいことを表現できる場であり、博物館というテーマの良さでもあった。9歳10歳の時期にも、彼ら彼女らの実態にもピッタリだったのかもしれない。僕も、もっとやりたかった。

さあ、次のプロジェクトはどうなるかな。もっともっと「発想」が盛んに生まれ、好奇心や探究の芽が盛り上がっていくことを楽しみにしている。

 

#2022 #3・4年 #アウトプットデイ #探究の学び

片岡 利允

投稿者片岡 利允

投稿者片岡 利允

歩く、書く、話す、歌う、弾く、笑う、食べる、呑む、が好きな関西人です。感性・感覚・感情・直感・重視だけど、じっくりゆったりどっぷり考えることも好き。いい循環を生む触媒のような存在になりたい。風越のはじめの1年を終えた今、「ファシリテーション」「保育」「読み書き」あたりに関心があります。こう見えてまだ20代。シンガーソングライター。

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