風越のいま 2022年1月22日

「ベテラン」のその後。

勝山 翔太
投稿者 | 勝山 翔太

2022年1月22日

あすこま(澤田)が書いた、「ベテラン」という記事。


前期である2年生の子どもたちが選んだ絵本の読み聞かせを、僕が5・6年生にしに行った日の話だったのだが、そこにはこんな続きがあった。



「絵本、他のが良かったのかな〜。シゲタサヤカとか。落語絵本もそうだけど続けて読むと面白いからな〜。ねぇりりー、今度はいつ読みにいく?」

読み聞かせが終わったあと、そうシモンが言った。この日読んだ絵本はシモンの選書だったのだが、読んでいる最中から5・6年生の反応が気になっていたし、どうやらその反応に満足できなかった様子。

「でもさ、もっと後期に絵本読んだ方がいいよ!だってあんまり笑ったり、隣の人と話さなかったもん。今度は私たちで読もうか?」とスミレとアイ。後期に行けた嬉しさとワクワク感がありつつも、オススメの本の面白さが伝わらないんだ!?もっとこの面白さを共有したい!という気持ちが言葉となって子どもたちから溢れ出していた。

他の2年生たちも、「さぁ、次は何を読もうか。」「絶対笑わせてやる!」と熱も冷めずに意気込んでいる。そこで、しばらく朝と帰りのつどいで「後期に伝えたい読み聞かせしたい本」をテーマに話を続けることにした。家からオススメの本を持ってくる日もあれば、ライブラリーで発見した本を持ってきたり、面白かった作者の本を読み返したりした。

5日ほど悩んだ末に、選んだ1冊はシゲタサヤカさんの『おいしいぼうし』。

シゲタサヤカさんのシリーズは食べ物や料理が関係したものが多いのだが、食べ物をテーマにしていれば5・6年生にも面白さは伝わりやすいんじゃないか、それにキャラクターの気持ちが溢れ出すように描かれているシーンが絶対に面白いはず!ということで決まった。

この絵本は、タイトルから気になってしまう不思議な「ぼうし」をめぐるお話で、ある日、不思議なぼうしを拾ったおじいさんとおばあさんがついつい、いい匂いに惹かれて味見でペロリ。その夜、二人のもとに『ぼうしをなくした』という持ち主がやってくるが、その時には帽子はもうほとんどない…。困ったおじいさんとおばあさんはどうやってピンチを乗り切るのか・・・とストーリーは展開していく。

ついに読み聞かせ当日。読み聞かせに行ったはずなのに、一番前を陣取る2年生。誰に向けた読み聞かせの時間かわからなくなってきました。

お話がはじまり、おじいさん、おばあさんのやりとりで笑う2年生たち。次第に話に引き込まれ、シゲタサヤカさんの世界に浸っていく。そして、ついに子どもたちオススメのシーンの帽子の持ち主の泣きながらのセリフ…さぁ、5・6年生の反応はどうでしょう。

「ん〜あんまり笑わなかったね。面白いのにな〜。もっと違う本ならいいのかな?帰ってきたワカコがつぶやいた。もっと盛大に笑ってくれるイメージだったのか、まだまだ不満気な様子。

キズキ「面白い本を読めば、お父さんとかお母さんは笑うでしょ?じゃあお笑いとかそういう本読めばいのかな」

シモン「わかった!シゲタサヤカ全部読んだらいいんだよ。そしたら誰が出てくるかわかるし」

アイ「う〜ん。でもさ、やっぱり笑わないってことは、私たちと面白いって思うところが違うんだよ。今度さ、逆に後期に読み聞かせしてもらおうよ。後期の人が面白いって思う本だって絶対あるはずだよ。だからさ、どんな本が好きかわかれば違う本選べるかも!」

レノン「じゃあ、絵本じゃなくて『エパミナンダス』はどうかな?」

マユ「あっ、いいかも。あれ面白いもんね」

アヤナ「他の本ももっとみつけてみようよ。なにがいいかな〜」

まだまだ本の面白さが伝わっていないと納得のいかない2年生。もはや、5・6年生をどうやって笑わせるか、面白がらせるのかに挑戦しているようにも見える。早速、3度目の選書がはじまっていた。

エパミナンダスは『おはなしのろうそく』の中の一話。いくつもある話の中で特に人気のある話だ。「また読んで!」とリピートも多く幼児からも人気なので悩んでいる様子。

よし、これならいいだろう!と決めた本はコチラ。
桂文我の『いちはちじゅうのもぉくもく』。

「でっち」が活躍する落語を絵本にしたシリーズ3作目。どの話でもでっちは間が抜けていたり、忘れっぽかったりして、笑いとツッコミなしでは語れない絵本。2年生に向けて落語絵本を読んだ中でリピーターが多かったシリーズでもある。

他に予定があったため、今回は代表してアイ、ワカコ、アヤナの3人と僕で5・6年生のところへ行くことになった。さて、5・6年生の反応はどうだったでしょう・・・。

アイ「めっちゃ笑ってたねー!!」

アヤナ「なんでかな?なんで笑っていたのかな〜」

ワカコ「ああいう愉快な絵本って面白いんじゃない?それに、やっぱ漢字だったり言葉で遊ぶのが面白いのかな。お兄ちゃん笑ってたもん。」

アイ「言葉が面白いってことかな?」

アヤナ「今度はさ、『おしりつねり』とか、桂文我の他のシリーズがいいのかも。それかやっぱり『エパミナンダス』もいいんじゃないかな」

ワカコ「みんなが素直になれる本がいいんじゃないかな?元気がないときは笑える本がいいと思うな。」

アヤナ「やっぱり5・6年生が選んだ本も私たちに読んでほしいね。面白くて笑えるような元気になる絵本!」

アイ「うん!とりあえず、これなかったみんなにも笑ってたよ〜って教えてあげよ!」

あすこまからも「いい選書だった!」と言われたことを伝えると満足気な2年生。5・6年生や後期の人たちにも面白いって思える本や思い出の本って絶対あるはず。今度はそれを知りたい、そして一緒に本の面白さを伝え合いたいという気持ちが芽生えているようだった。

後期のみなさん、ぜひ、みなさんからのオススメの一冊、お待ちしています。

#1・2年 #2021 #5・6年 #ライブラリー

勝山 翔太

投稿者勝山 翔太

投稿者勝山 翔太

長野県生まれ。
身体や絵、色などで表現したり、つくったりすることが好きですが、これといって決まったスタイルがあるわけではありません。そのときの自分が「心地よい」とか「よりよい」と思うカタチで表現するようにしています。 風越学園にくるまでは“健康”というキーワードを軸に、ちがった分野の世界をわたり歩いてきました。学生時代からのテーマは『究極の健康づくり』、自分らしくいることで幸せな毎日を過ごしたいと思います。
ダンスを通して子ども〜大人まで伝えたり関わったり、舞台に作品を出したり、自分自身も大小様々な大会に現在もチャレンジしています。かたまった表現にならないように新しいものに出会ったり、こわしたり、つくることが好きです。

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