軽井沢風越ラーニングセンター 2023年7月4日

余白を残すドキュメンテーションと共同リフレクション

竹内 克紘
投稿者 | 竹内 克紘

2023年7月4日

私とほりけん(堀内)は、テーマプロジェクトの様子をドキュメンテーションに記録し、記録したことから、ラーニンググループ(以下、LG)のスタッフと振り返りを重ねている。どんな目的で、どんな試行錯誤をしてきたのか、ここまでの歩みを記録したい。

1ドキュメンテーションづくりの一歩

風越学園での研修で、初めて「ドキュメンテーション」に取り組むことになった。

まずは、評議委員でもある大豆生田敬友さんの書籍から学んだ。

ドキュメンテーションは、「保育者(教師)、子ども、保護者を結びつけて、相互の学び合いを引き起こし、次の保育を展開してくための重要なもの」であり、「(ドキュメンテーションを)題材として『話し合う』ためのツール」である。

4月27日、科学者の時間を参観し、ドキュメンテーションを書き始めた。5月1日、ごりさん(岩瀬)とほりけんから、そのドキュメンテーションについて、フィードバックをもらった。私が書いたドキュメンテーションは、一人の子どもがどのような学びをしたのかを、はっきりと表現していた。慣れ親しんできた授業記録の書き方が表れていたと思う。ごりさんから、「こうした記述は、記録者が子どもの学びを確かに捉えるための研修として有効だけれど、”話し合うためのツール”としては弱い」という指摘をいただいた。

フィードバックによって、これまでは主に自分の学びとして授業記録を書いていたことに気づいた。そこで、ドキュメンテーションに取り組むことで、記録者と読み手の対話を促す授業記録にチャレンジしようと考えた。対話を促すためには、読み手が解釈する余白を残すことが必要だから、「どのようなドキュメンテーションの構成や文法が、その機能を果たすのか」という問いをもつことになった。

このフィードバックをもらった日。次のようなリフレクションを書いた。

【5月1日のリフレクション】

科学者の時間を観察して書いたドキュメンテーションの検討。

ごりさんとほりけんに指摘してもらい、個を追って詳細に書くことにこだわっていた自分に気づく。

〈日本版「保育」ドキュメンテーションのすすめ 大豆生田 敬友〉77ページ

「ファジー(あいまいさ)」が許される。「興味があったのかどうかわからない」と書くこともできる。読み手に「どう思いますか?」と問いかけることもできる。「対話」を引き出すことが大きな目的。「読み手と一緒に評価できる部分も残しておける」評価でもある。

子どもを観察していて、「不思議だな」「素敵だな」と感じると、「こんな学びがあるかな」と考察したくなる。対話を引き出すことを大切にするならば、自分の考察を書くのではなく、「まず、読み手に問いかける意識」で書くのがいいのかもしれない。ここぞ、という場面を切り取りながらも、解釈を押し付けないようにしよう。

これまで学んできた授業記録の書き方。その文化で育まれたことの良さも課題も自覚しつつ、今までの感覚を残しながら、ドキュメンテーションの文化も、自分の体に染み込ませてみたい。自分の考えが強く出すぎていたのかなぁ?今日は悲しくなった。今までとは違う文化に身を置くことは、とても新鮮で、とてもストレスでもある。だからこそ、自分を更新できることもあるのだろう。

2ドキュメンテーションの蓄積

5月15日には、つくる・えがくの授業を参観し、ドキュメンテーションを実践者のこぐま(岡部)と共有した。5月18日からは、5・6年生のテーマプロジェクトを毎時間参観し、ドキュメンテーションをスタッフと共有している。6月15日段階で9時間分の授業を記録した。

5月1日のフィードバックをもらって以降、次の3つを意識するようにしている。

①写真による記録を中心にして、子どもの姿が見える構成とすること。
②ドキュメンテーションの機能を果たすための文法は、発話、行為、事実といった「見えるもの」を中心とした記述とすること。
③子どもや保護者とドキュメンテーションを共有すること。

6月2日。ラーニングセンターの研修の一コマで、ごりさん、ほりけんとドキュメンテーションに関する考察をした。この日までに実践したことから、ドキュメンテーションの機能を果たすために必要なことを考えた。

6月2日 考察の様子

ここまで、ラーニンググループスタッフとの共同リフレクションに役立つものにしたいと思い、ドキュメンテーションの構成や文法を中心に試行錯誤してきた。書く回数を重ねると、単なる記録者としてドキュメンテーションを書くのではなく、実践者として授業の場に身をおくことが大切ではないか、ということが見えてきた。構成や文法の工夫に加え、授業にいたるまでの経緯を理解し、その授業の面白さや難しさを共有した記録者として、ドキュメンテーションを記述しようと考えた。

6月6日、5・6年のスタッフの打ち合わせに参加した。その時のリフレクションには、こう書いていた。

【5月6日のリフレクション】

ドキュメンテーションに書いた話題を提供した。実践者として、自分もこの場面で子どもたちの前に出たかったけれど、出られなかったことの後悔を伝えた。一緒に実践をつくっていきたい、このLGに貢献したいという気持ちを伝えた。

ふりかえりの場面から、子どもの意識を話題にした。子どもがそれぞれの強みをいかして活動すると、協同する学習へと向かうはず。お互いの強みを意識した活動計画について話した。

あすこまさん(澤田)から「どんどん参加しましょう」というコメントをもらった。続いて、パワーがタイガとのやりとりを想起して発言した。

自分はパワーに「貢献意欲に働きかけたんだね」と伝えた。パワーは「それぞれのよさを発揮してほしいです」と話していた。 

実践者としての感覚共有は、共同で子どもの学びを考える土台になると思う場面だった。自分の実践者感覚から生まれた問いを提供することで、実践者と同じ問題意識に立てるようになるのかもしれない。

3共同でテーマプロジェクトの再設計をする

6月12日、5・6年のLGスタッフで、テーマプロジェクト「おにぎり」に関わる話し合いがあった。

6月12日 5・6年LGスタッフの話し合いの記録

このテーマプロジェクトは、あず(栗山)パワー(力久)の二人が中心となって設計し、実践している。あすこま、わぶちゃん(福岡)ニシム(西村)は、同じLGのスタッフとして、子どもの姿を捉えながら、実践や再設計に関わり続けている。この日も、スタッフ全員で検討を重ねていた。

ホワイトボードを見ると、14:10のところに「チームビルディングをする」とのメモがあり、さらに目的や方法のスケッチが残されている。

LGと率直な意見のやり取りをかわしたあずは、この日の検討について、『設計者二人というよりも、LG全員でつくっていく』ことの実感を深めたと話していた。

4翌日の授業

6月13日のテーマプロジェクト。これまで、一緒に塩おむすびをつくっていたグループを解散し、新しいグループをつくることになった。どのようなグループづくりをしていくのか、チームビルディングの時間が設けられた。

【 6月13日 ドキュメンテーション(一部抜粋) 】

チームをつくる 

新チームの発表。「色々な人がいると思うけれど、チームでやることを伝えたい」とパワーが話した。

パワーは、「みんなに関わることだから、みんなで聞いてほしい。」と話し、チームでやることの良さや難しさについて語った。リサーチしてまわる友の姿や、話し合いでは順序を立ててくれた友の姿を伝えていた。

おかつが話に入って、サトミの行動に、周りの人が乗っかっていったエピソードを話す。その後パワーが、おかつが使った「強み」という言葉にふれて自分の考えを語った。「『強み』って日本人独特な考え方。普通にできるってことも大事にしてほしい。」という話、共感した人も多かったかな?このやりとり、どう聞いていた?


パワーから提案があったように、各グループで、チームの方針を考える時間となった。

トキが「ここでいいや」と言って場を決める。レイが「トキちゃん書いて」とはっきりとお願いする。でも、記録はソノがすっと始めている。「さりげなく起きているけれど、こういうことが普通にできるってことが、それぞれがチームに貢献していることなんだよね」と伝えると、トキが「そうなんですよね」と話していた。

「コウスケくん、調理得意だよね」とメイ。「ストップ」というコウスケ。でも、メイは「これでどう?」と提案を続ける。決めていくことも、チームでの活動で大事になる。提案して結論を促す役割も、大切だよね。

青床に行くと、2つのチームで発表しあう場がつくられようとしていた。

わぶちゃんも入って、2つのチームが輪になっていた。真ん中には、グループのビジョンを記入したプリントが置かれていた。聞きあうことを大事にした空間づくりに必要なことって、どんなことだろう。今日の学習が机を外してスタートしたことと関わって、考えてみたくなった。

「話すのがちょっと苦手って書いてあったけど、いいチャレンジだったよ」と、あずがリクに伝えた。リクは読んでいた本を置いて、この話し合いに参加した。さらに自分が、チームの中でどんな活動をしていくのか、自分の言葉で語った。そんなリクにかけたあずの言葉。リクはあずの言葉を聞いて笑顔だった。

話し合いの輪の外にいたアラタにも、あずは声をかけていた。「おにぎり、にぎりまくるぞ」と話すアラタがいた。

5対話を促すドキュメンテーションって、どんなもの?

授業後に、なるべく時間を設けて、あずやパワーと話をしている。(毎時間とはいかないけれど)話すときは、ドキュメンテーションを間に置く。写真があることの利点として、同じ場面を想起しやすいことや、実践者が初めて出会う子どもの姿がわかりやすく伝わることがあると思う。また、授業の記録を文章にしてある利点として、場面や、気づきや、問いが整理されているから、短い時間でも質の高い話ができると思う。「風越のドキュメンテーションが、対話の質に、どのような影響を与えるか」これから見えてくることが増えていきそう。

あずとパワーに、ドキュメンテーションの効果を尋ねた。ドキュメンテーションを読むことで、授業では気づかなかった、子どものキラリと光る姿に気づくことがあるらしい。

この気づきが、チームビルディングの活動につながったと教えてくれた。それぞれの子どもが、自分が自然とできることや、苦手だなと感じることを持ち寄って、互いに貢献したり支え合ったりしながら、活動してほしいという思いをもったと聞いた。プロジェクトの再設計につながる気づきが、ドキュメンテーションを介したコミュニケーションによって促されたのかもしれない。

実践者は、学習活動における子どもの姿に、ワクワクしたり、魅力を感じたりする。時には「あぁ、ちょっと至らなかったなぁ」と後悔する。そんな実践者の感性に響くドキュメンテーションを書いてみたい。心が動く時には、認識が編み直され、何か新しいことに気づく自分がいると思うからだ。

あずは、ドキュメンテーションについてこんなことを語ってくれた。

「子どもの姿を残すこと。その姿から語りあうこと。そして、動き出すこと。ドキュメンテーションが無いと、大人の視点だけのふりかえりになりがち。ドキュメンテーションには複数の子どもたちの動きや気づきが記録されている。特に見えていなかった子どもの姿には、気づかされることがある。『次は、こんな風にしてみよう』と動き出すきっかけになる。」

余白を残したドキュメンテーションが、読み手である実践者の次のプロセスにつながっていく。書き手も実践者と共同して学びをつくっていく。そんな動きのある輪の中に身を置くことが、ドキュメンテーションをつくる魅力の1つだと感じている。

#2023 #軽井沢風越ラーニングセンター

竹内 克紘

投稿者竹内 克紘

投稿者竹内 克紘

長野市生まれ 県内色々な場所を渡り歩き、佐久市に落ち着きました。
浅間山と八ヶ岳を見上げながら、四季折々の風景を楽しみながらお散歩するのが大好きです。
風越で、自分と仲間とでつくる幸せのあり方を、考え続けていきたいです。

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