2021年5月31日
みなさん、こんにちは。ファシリテーターの青木マーキーです。
2021年5月26日のこと。軽井沢風越学園(以下、かざこし)の全校集会にあたる「かざこしミーティング」を見学しました。前回見学したのは2020年10月末のことだったので、実に7ヶ月ぶりです。
爽やかに晴れたこの日は、前期・後期で分かれてのミーティングで、僕は後期の皆さんがあつまっている様子を見学。前回訪れたときは、スタッフのとっくんが進行していたのですが、どうやら、今回から子どもたちによるファシリテーター・チームに完全移行したもよう。とっくんが一言も発さずに、横で見守っています。
「もうちょっと、前のほうに詰めて座ってください」と、こどもファシリテーターから声がかかります。
「みんな立ってください。まずは、じゃんけんの遊びをしよう」というと、全員立ち上がります。遊びから入るって、ステキ。全校集会は、整列と前ならえと、校長の挨拶から入るものだという思い込みを、この子たちは持たないで育つんだろうな。
じゃんけんは、勝ち残りシステムで、最後の優勝者には賞品があります!とルール説明がなされ、みな、はりきって参加。見学オジサンは3回目で負けましたので、おとなしく座ります。最後まで勝ち残った人には「みんなに、何か言える権利」がプレゼントされました。誰かがすかさず「そんなんだったら、負けてよかった」と突っ込みます。あな、おもしろし。
続いて「お知らせタイム」なるものが始まりました。チーム、個人にかかわらず、大人こどもに関わらず、皆さんにお知らせしたいことがある人は、どうぞ!と進みます。すると
・黒曜石のことを調べているので、いっしょにやりたい人はどうぞ
とか
・今夜は皆既月食なので、夜、8時ごろ月をみましょう
とか
・このあいだ校舎内に鳥が迷い込んだけど、みんながあんまり注意して騒ぎ立てると、鳥も脅えて逃げられなくなるから、やさしく見守りましょう
といったアナウンスがされました。
スタッフからも
・最近ニラが安くなってきたので、おいしいニラの食べ方があったら教えてください
とか
・誰かが話しているときは、その人に体をむけて、丁寧にきこう
とか
・工具類を使う「匠」の制度を来週から見直します
といった、アナウンスがされていた。大人も、子どもも、言える、というのがよい。
よくみると、ファシリテーター・チームの誰かが、それらをホワイトボードに板書している。うん、どういうお知らせがあったのか、これがあると一覧できて、よい。板書はいつも、有効だ。声は消えてなくなるが、書いた文字はなくならないで、残る。皆さんにお知らせをきちんと届けるにはよい方法だ。
ファシリテーター・チームには、男女あわせて7−8人が関わっているように見えた。声の大きな子もいれば、そうでない子もいる。進行は、必ずしもスムーズでないときもあるが、壇上で、お互いに相談したり、足りないところをカバーしたり、声が小さいとなると、マイクを持ってあげたりして、支え合っている、いいチームだ。
お知らせタイムが終わると、後半はミーティング。分科会に分かれて話し合うらしい。「おかしのゴミが捨てられている問題」「よりよい放課後にするには?」「修学旅行に行こう」「学力向上」など、集まったテーマは10を超えていた。どうやら継続して審議しているらしく、すでにそのテーマに名前を連ねている子と、今回から、分科会に合流する子がいるらしい。ファシリテーターが「じゃあ、もうどの分科会にゆくかが決まっている子は、テーマの子の後にならんで、決まってない子は、前から見て、行きたいテーマを選んで」と指示をだす。
世の中の全校集会が情報伝達のみの一方通行になってしまうのは、グループ・サイズが大きいまま進行するから。かざこしでは、「関心別分科会」をつくって、6−10人ぐらいの小グループで話し合っていた。会議を参加型にするためには、グループ・サイズを変えるのが、とても有効だ。かつ、自分が関心のある議題にゆくことができれば、自然とモチベーション高く話せる。スタッフは、皆が分かれた様子を見て、1人ずつサポート的に入っていた。
今回からの工夫なのか、全グループに「ミーティングの進め方」と「議事録シート」と、ミニホワイトボードが配られていた。見ると「お互いの顔が見えるように座れている?」「話し合いの記録が見えるように座れている?」など、会議の場づくりのコツや、「ミーティングが終わったら、次までにやることを確認する」「議事録シートをファシリテーター・チームの人にわたしたら、それぞれ次の時間へ」といった手順が書かれている、すばらしいシートだ。たっぷり45分ほどの分科会の時間がとられて、校舎の好きな場所にちらばって話し合っていた。
僕は「放課後をよりよくする」というテーマの分科会を見学させていただいた。「見学してもいい?」ときくと、僕が何者かを名乗る前に「どうぞ、どうぞ」とウエルカムされた。このあたり、さらっと受け入れていただけるのは、かざこしの素晴らしいところ。
「放課後をよりよくする」の分科会では、かざこしミーティングのファシリテーター・チームとはまた別の子がファリテーターや記録係りを担当していた。3年生から中学2年生までの異年齢が「放課後、もうちょっと長く遊べるといいよね」「もうちょっと、って、どれぐらい?」「16:30までだと、ほんと短いもんね」「できれば18時まで使いたいなぁ」「それじゃあ、長すぎるよ」「よし、じゃあ17:30でどう?」「お、それぐらいだといいね」「でも、それってスタッフにとって負担が大きいんじゃない?」「●●ちゃんのお母さんが、代わりに見に来てもいい、って言ってるよ」といった意見を、ばんばん出してゆく。「よし、じゃあ、全スタッフにアンケートをとって、放課後子どもをみるゆとりがあるかどうか、聞いてみよう」とか「放課後残っている子どもにアンケートをとって、どれぐらい残りたいか、残って何をしたいかを聞こう」「保護者にもアンケートをとって、協力してもらえそうな人がいるか聞いてみよう」という流れになった。アンケート大作戦だ。「じゃあ、次回のミーティングまでに、誰かアンケートをつくりたい人」というと何人も手があがり、その子たちは別途集まって草案を練ることになった。
あっという間に、結論にいたり、かざこしミーティングの終わりの時間がやってきた。途中、ファシリテーター・チームがまわってきて「がんばってね」とか「終わったら議事録をHB7の部屋へ」といったアナウンスをしていった。
僕は、爽やかな気持ちになったり、勇気づけられる気持ちになったり、驚いたりしながら、よい時間を過ごせました。かざこしで日常的に行われているのは「私たちの学校を、私たちがつくっている」というプロセスなんだなぁ。ありがとうございました。
補記:
僕はあまりに、うれしくなって、毎朝更新している「会議が上手になるラジオ」で「ファシリテーター・チームへのお手紙」を、読み上げさせていただきました。聞いてみたい方は、以下のリンクへどうぞ。
https://www.himalaya.com/episode/138399273