2020年6月16日
学園ではしばらく検診関係の行事が続きます。
検診というと、クラスで1列に並んで静かに保健室で…というのが一般的ですが、スタッフの清水は、日々の遊びや学び、くらしとつながっている時間にしたい、と昨年度からずっと悩みに悩み、ほっちのロッヂのみなさんと相談を重ねてきました。
金曜の朝は、前期ホーム「お」の身体計測。なんと外での実施。斬新!
清水は『おおきくなるっていうことは』を読み聞かせ、こう語りかけます。
「前からどれくらい大きくなってるかなあ。今日は、背の高さと体の重さを測るんだけど、これから手と足がどれくらい大きくなっていくかなあ、もやってみたいんだよね。今日は一緒に測ってくれる人が来ています!」するとある子から「ほっちのロッヂの方々!」の声。よくわかっています。ほっちのロッヂから、校医のべにさん、かれんさん、さっこさんが来てくれていました。
4色の絵の具が用意され、好きな色で手形・足形をとっていきます。数字だけじゃない、実感できる変化の記録。そして3色から選べるのがいいな。
「両手にする?」というさっこさんの問いかけに、チヅル「やりたい!」。
「手の甲もぬっちゃおうかなー」のヒナタの声に、すかさず「いいねー!」
とかれんさん。子どもの「〜したい」にすっと寄り添います。
手形をとった人から、身長と体重の計測。数字をケイシンが読み上げ、それをさっこさんが記録。小数を読み上げるので、なんだか自慢げ。
「やってみたい」を大切にしたこんな検診があるんだなとうれしくなります。もちろん「やりたくない」という人もいて、その気持ちにどう寄り添っていくか、試行錯誤は続きます。
校舎の中では、後期の子どもたちが司書教諭の大作プレゼンツ、「風越ライブラリー クイズ&スタンプラリー」が行われていました。あらためてライブラリーと出会う時間。9時〜10時半まで、ホームごとに順番に行われていました。
「いってらっしゃい!」の大作の声にライブラリーに飛び出していく異学年3人の各チーム。びっくりするぐらい小さな探究に夢中。気がつくと異学年での活動が日常になってきました。
本の世界、ライブラリーの世界に誘われていく時間でした。
10時半〜12時まではセルフデザインの時間(自分の学びを自分でデザインする時間)です。この時間、かなりおもしろいことになっています。「〜したい」が同時多発的に可視化されている状態。一見、何が起きているのかわからないぐらい混沌としています。ぼくらスタッフの想定を上回って、エネルギーにあふれている時間です。
この日、ホーム「く」は「創造展」を開催中。4月のオンライン登校当初に、7年生サナの「文化祭をしたい」から企画がスタート。オンライン、分散登校、通常登校と少しずつ準備を積み重ねてきました。リハーサルは前日のみ。ほぼぶっつけ本番です。記念すべき子ども発の初行事。
個人やグループプロジェクトの紹介、自分の好きなことの披露、漫才など、主にセルフデザインで取り組んできた、それぞれの「〜したい」を紹介する舞台。ほどよく緊張しつつ、でもなにより舞台の上に立つ人がうれしそう。この様子は保護者にもZOOMで中継されました。
舞台発表の次は展示コーナーです。展示した人が来場者に作品を紹介します。
創造展の見学は自由。つまり見学している人もいれば、同じ時間に他の様々なプロジェクトに参加中の人もいるのです。例えば、ラボでは「プログラミングプロジェクト」。5年生ユウタがtyphoonで呼びかけて始まりました。年長から大人までが参加。ユウタをリーダーに、子ども、保護者、スタッフで一緒につくっているプロジェクトです。
2階に移動しようと廊下を歩いていると2年生のケイシンに声をかけられ、作り中の家の構造を教えてくれました。「この窓、鍵がかかるんだよ。Gに作り方教えてもらったんだ」。
chromebookで黙々と割り算に取り組むムサシ。この数日、時間を見つけては算数に取り組んでいるのです。「どんな感じ?」「完全にわかってきた」。頼もしい。最近はムサシに刺激を受けてがんばり始めた人もでてきました。
カイノスケは、AI型の算数・数学教材アプリをよりよくするために開発企業の方とzoomミーティング。
技術・家庭室では、6年生のコウタロウの呼びかけでスタートした国際交流プロジェクト。保護者でもあるワクワーク・イングリッシュの山田貴子さん、森住直俊さんが伴走してくれています。この日はフィリピンの子どもたちとzoomでつないで自己紹介の日。「一緒につくる国際交流」の第一歩目です。
ラボスペースは今日も盛況。
理科室では昨日までの「マッチ棒ロケットプロジェクト」に続いて、この日は水素発生に取り組んでいました。スタッフ井上、笠原は毎日大忙し。右奥ではヘビの解剖中です。「ごりさーん、解剖見に来てー!」!というお誘いに「無理…」と毎回逃げ回っています。理科室はまさに「ラボ」です。
同じ頃、ホーム「か」は初校外学習。ホームでのカレープロジェクトの一環で田んぼの草抜きに。
このように、10時半〜12時のたった1時間半の間に、あまりにもたくさんの「〜したい」が同時多発的に動いています。
毎日刻々と変わっていくので、毎日うろうろしては「今何をやっているの?」ときき、それぞれの探究をなんとかキャッチアップするのがやっと。一人ひとりの学びのストーリーを追いきれないもどかしさも感じつつ、「〜したい」から動く学びの場のエネルギーは、やはり心地いい。
出版社を営んでいる6年生ハルカは「時間が足りない!」と嘆きながら分刻みのスケジュールで校内を駆けずり回っています。いくつも掛け持ちしている人は、プロジェクトの時間がバッティングして「国際交流プロジェクト、今日は断念…。でたかったな…」と悲しんでいたり。
一方、まだ「〜したい」に出会えず、毎日あれこれ手を出してみたり、することがなくて校内を漂ったりしている人もいます。ちょっとやってみては「これじゃないな…」と離れていく人もいます。
ホームを超えた後期96人の間で同時多発で起きる活動や学び。スタッフはどう伴走したらよいのだろうか。どうすればより豊かな学びにつながるのだろうか。過不足なく関われているだろうか。丸投げになっていないだろうか。まだ「〜したい」に出会えていない人とどう関わればいいのだろうか。「〜したい」からはじまる生成的な時間と学習指導要領をどうつなげていくのか。日々悩み、葛藤しています。
でもまだ2週間。じっくり、ゆったり、たっぷり、まざって遊んだり学んだりしているうちに、変わっていくよなあとも思います。まだまだ荒削りだけれど、ぼくはこのセルフデザインの時間好きだなあ。楽しそうなんだもの。一人ひとりの手の中にある時間。もっともっと豊かな時間になっていくはず。ホームページに書かれているこの文章に一番近い時間。
軽井沢風越学園では、自分の時間の使い方は自分で決めます。1日の始まりと終わりにホームでの時間を持ち、前期の子どもたちはその間を自由に過ごします。後期の子どもたちはそれぞれに学習計画をつくるため、一人ひとりが異なる時間割で過ごします。
「学びのコントローラー」をその子自身が持ちはじめているこの時間に「新しい学びの場の種」がたくさん生まれているんじゃないか、とさえ思います。
学校づくりを始めた当初、本城と「一人ひとりがあまりに違うことをしていて、パッと見ただけでは何が起きているのかさっぱりわからない。でもそれぞれが没頭している。そんな情景が見られるといいな」と話していたのですが、その種みたいなものを感じるのです。
この時間、もっと子どもに委ねられるんじゃないか。もっととんでもなくおもしろい時間に育っていくんじゃないか。大人側の不安でこの動きを制限することのないようにしたいな。つい「学校なんだから」という常識の囚われから起きる不安で揺れてしまう自分がいるので自戒です。
この後、午後にも違うプロジェクトがあるのですから、子どももスタッフも毎日大忙しなわけです。
1週間、おつかれさまでした。通常登校が始まってまだ2週間なんて信じられない!もう半年経ったような気持ちです。それだけ試行錯誤のスピードが早いということかな。
ではまた明日!
幸せな子ども時代を過ごせる場とは?過去の経験や仕組みにとらわれず、新しいかたちを大胆に一緒につくっていきます。起きること、一緒につくることを「そうきたか!」おもしろがり、おもしろいと思う人たちとつながっていきたいです。
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