だんだん風越 2020年5月10日

コミュニケーション・プラットフォーム typhoonとは何か

本城 慎之介
投稿者 | 本城 慎之介

2020年5月10日

2016年6月から本格的に始まった学校づくりのプロセスの中で、僕自身のかなりのエネルギーを割いたことの一つが、コミュニケーション・プラットフォーム「typhoon」の開発です。2017年11月に、システム会社であるテクマトリックス(株)との最初の打ち合わせを経て、2年半くらいかけて開発をしてきました。

世の中には、教職員の業務効率化を目的としているものや学習コンテンツを届けるためのシステムがいろいろとあります。ではなぜ、独自のシステムを開発しようとしたか。それは、大人が中心つまりスタッフや保護者が便利になるためではなく、子どもを中心とした子ども自身が学びのコントローラを持ち続けられる土台のシステムをつくりたかったからです。
typhoonでは、子どもが自分の予定を管理したり、活動を記録したりすることができます。いずれは、地域や外部の人にもアカウントを発行し、子どもから○○について相談に乗ってほしい、一緒に○○をやりませんか、といった連絡ができるようなプラットフォームを目指しています。また、風越学園を卒業した後も在校生やスタッフと関わりを持ち続けることができます。

風越におけるシステムやオンラインの活動は、遊びや学びが豊かになるためのツールのひとつです。日常生活の中での実体験、たとえば森を歩いた時の様子や、読んだ本についてやりとりしてみたり、撮った写真をみんなに共有したりという動きが、すでにtyphoonで起きています。今後も、これだけ解けば良いというようなプリントや、一斉授業の再現のようなコンテンツをスタッフが配信する予定はありません。子どもは、子ども自身の力で、自分のものにしたり、よりよくしていく、そうやってつくっていける存在であると信じるのが、僕たちの子ども観です。

4/1から保護者、4/16からは主に後期の子どもたちが使い始めています。この状況だからというのもあるかもしれませんが、それを差し引いても、ここまで活発にtyphoonが子どもたちにも保護者にも使われたのは想定外でした。
次の図は、4月27日までのチャンネルへの投稿数です。1年生~7年生の子どもたちの72.6%は、1回以上投稿をしています。

また、スタッフが子どもと保護者の双方とやりとりしていることを考慮すると、スタッフ・子ども・保護者の投稿数の割合に、大きな差はありません。利用者が均等に使い始めていて、3者にとってコミュニケーションを促進する有効なシステムとして機能しつつあると考えています。

一方で、typhoonは出会いを求めたり、つながりを楽しむためのSNSではありません。子どもたちが学びのコントローラを持ち続けるために、子どもの学びを深めたり、広げたりするためのコミュニケーションができているかどうか、スタッフや保護者は心に留めて利用する必要があります。
家庭での時間が長い現状、保護者のみなさんが家での子どもの様子を伝えてくださり、どんな遊びや学びにつながっていくといいだろうと一緒に考えることができていることは、スタッフにとって、とても心強いようです。学校から子どもたちや保護者への連絡に使うこともありますが、一方通行の情報提供だけではなく、双方向性のあるやりとりは今後もより工夫し続けていきます。

以下は、4月にスタッフの馬野がテクマトリックスの開発メンバーに送ったメッセージです。

おはようございます。ちょっとした報告です。
毎日、後期のスタッフ16名程度で20分ほど、子どもたちの帰りの会が終わった後に1日をふりかえるミーティングをしています。そこで、typhoonの「記録」や「活動」についての話がありました。
「まだまだ、typhoonの機能で使いにくいところもあるから他社のサービスを積極的に使っていこう」という意見も出ましたが、スタッフの山﨑から、「他社はいつサービスをやめるかわからない。いま僕らの手元にはせっかくtyphoonがあるんだから、そこをよりよくしていくのが、大事だと思う」という話がでました。
そして、依田からは、「使いにくいから使わないは、違うと思う。どんどん使っていって、テクマトリックスさんとよりよくしていくのが、いいと思う」という話も出ました。

僕からは、「typhoonは日本、世界初の学びの個別化に対応したプラットフォームで、それは風越のものだけではないと思う。typhoonをよりよくしていくことが、きっとこれからのいろんな日本の公立の学校にとって役に立つことだと思う。
テクマトリックスの皆さんもそういう気持ちでやっていると、ミーティングに何度も出て感じている。いつか、このプラットフォームが広がっていくから、そういう気持ちでどんどん使っていこう」という話をしました。
そうだねそうだね、とスタッフのみんなは力強くうなずいてくれました。ということで、これからもまた、皆さんにたくさんお伝えすると思います。どうぞよろしくお願いいたします。
                        

もちろん、まだまだ改善の余地はいろいろとありますが、typhoonを育てるコントローラは自分たちの手元にある、というのはすごく大事なことだと考えています。子どもたちからも、ここをもっとこんなふうに使えるようにしたいという声が、今後出てくることを期待しています。

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本城 慎之介

投稿者本城 慎之介

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何をしているのか、何が起こっているのか、ぱっと見てもわからないような状況がどんどん生まれるといいなと思っています。いつもゆらいでいて、その上で地に足着いている。そんな軽井沢風越学園になっていけますように…。

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