だんだん風越 2020年5月17日

かわること、かわらないこと、かえること、かえないこと

片岡 亜由美
投稿者 | 片岡 亜由美

2020年5月17日

年少から小学2年生までの異年齢ホーム「う」を担当している藤山(ふっしぁん)と臼田(ユーミン)です。

ホームが決まった3月末から、子どもとどう接していくか、どんなホームになるか、なったらいいかを話したり、4月16日にオンラインでの子どもたちとの生活が始まってからも、毎日雑談しつつ振り返りや感想、相談などをごちゃまぜに語り合う時間をとってきました。だけど「とりあえずやってみなきゃわからない」が根底にある私たち。

ホーム「あ」「え」が分散登校初日の5月11日。私たちホーム「う」の分散登校を数日後に控え、この1ヶ月を振り返りながら、今後について話すことにしました。

ふっしぁん: オンラインでの様子はこれまでもちょくちょく話してたから、今回は今後についてのこと話しますか。

ユーミン: 分散登校始まるけどさ、いざオフラインで会えるってなったときの不安や感情ってどんな感じ?わくわくのほうが大きい?

ふっしぁん:今は不安はあまりなくて、やってみないとわかんない!って感じかな〜。もちろん感染のリスクのことを考えると、細かな心配事や神経質になってしまう部分もあるけど…それを除けばあまりないかな。

ユーミン: 私も不安は持ってなかったけど…。オンラインだと自然と目線があってる感じがするじゃん?それに慣れすぎてて、オフラインで会ったときに子どもたちに目線を合わせれるかなっていう不安は出てきた。変な感じに知り合っちゃってるから、その先入観で子どもの今をちゃんと見とれるかなって言う気がしてる。

ふっしぁん:その先入観って例えばどんなものですか?

ユーミン:出会ってるし、知り合ってるんだけど、その子の全体像は見えてない。例えばケンくんはオンラインで元気な印象があったとするじゃない?いざ分散登校して、駆け回ってたとしたら、それを見て「元気な子」という印象をその駆け回ってる姿とイコールで結びつけちゃう感じがするんだよね。本当は、環境に慣れてないが故の行動なのに、っていうことがあるかもしれないなと。

この子はこういう感じなんだ!がオンラインで出会って、知り合ったことで変に出来上がっちゃってる感じがするんだよね。

ふっしぁん:それはオフラインで出会って、知り合ったときと、どう違うんですかね?

ユーミン:オフラインだと「あぁ〜こういう時に、このポジションで、こんな言葉を使うんだな〜」と、その子の行動の前後や環境が見える気がする。子どもが困ってても、迷ってても(どんな感情のときでも)、オフラインであればそのことを知っていながら「知らないふり」ができる。

でも私たちも子どもたちもオンラインで会う時は、スイッチが入ってる感じがする。仮面を被っているっていうか…。その仮面を被った状態を基準にして、出会いたくないかな〜。

ふっしぁん:なるほど。このような状況下になって、オンラインで出会えて、知り合えたことは嬉しいけど、オンライン上で得た子どもたちの情報に惑わされないようにしなきゃとユーミンは思ってるってことですかね?それ、私にはあまりなかった視点だな。

私はどちらかというと、たとえオンラインでも出会えることができてよかったと思ってたから。そもそも風越って一人ひとりとの「出会い」で考えると、どこがスタート地点だったか分からないな〜って思うんです。開校前から、設立準備期間中のイベントや内覧会とかで出会ってる子もいるんですよね。もちろんいつ「はじめまして」だったかはその子によって違うけど全て繋がってるような気がしてて、オンラインもその延長線上にあるイメージ。

だから、私はオンラインでのその子との時間も、新しい姿が増えていく感じで捉えていたから、ユーミンのように「惑わされないように」っていう考え方はなかったな〜。

ユーミン:いい意味でその先入観を壊していきたいと思ってるの。例えば、芸能人で実際に会ったら、「この人こんなに背が高かったんだ」とかあるじゃん。まあそれは見た目の話だけど(笑)、子どももオンラインでの私やふっしぁんへの先入観を持ってると思うんだよね。

あとはオンラインだったらさ、子どもが困ってるときに笑ってやり過ごすしかなかったみたいなこともあったんだよね。実際に会ってそういうことがあったら、まあ笑うかもしれないけど、それだけじゃなくて手を差し伸べてあげたいよね。

ふっしぁん:なるほどな〜。でも初日は戸惑っちゃうかもしれないな。オンラインでつないでた期間に、子どもたち一人ひとりのその子「像」みたいなのが、無意識に出来上がっちゃってるかもしれない。ユーミンが言うようにそれはお互いかもしれないけど。

ユーミン:まぁオンラインで映ってる自分と、直接あった自分の違いを楽しむ私たちでもいいよね。オンラインってどうしても「言語重視」になっちゃうけど、言語重視だから知れたことと、直接会って身体や表情があるから知れたことと、それぞれを楽しんだらいいかな。

ふっしぁん:実際に私たちに会って、一緒に生活したり、遊んだりしたら、子どもたちはどんな感じだろう?やっぱり何かしらギャップがあって、戸惑いがみられるのかな?

ユーミン:経験からすると、私が「え〜やだ〜」とか結構言うから、そこで戸惑うんじゃないかな、とは思うよね。

ふっしぁん:え?子どもを前に「え〜やだ〜」って断るんですか?

ユーミン:結構すぐ言うよ。子どもに「森に行こう」とか言われたら、『え〜森?』とか言うこともあるな。ふっしぁんに対して子どもが戸惑うことはありそう?

ふっしぁん:戸惑うか〜。意外とコイツちっちゃいんだな、とか?(笑)まぁそれは冗談として、何に対して戸惑うんだろう…。わかんないな。

ユーミン:「戸惑い」って新しい環境とか、新しいものにつきまとってこない?

ふっしぁん:確かに。環境に限らず、「新しいその人」もありえるかも。

ユーミン:そうね。

ふっしぁん:そう考えると、結構このままじゃないかな?どうだろう。強いて言えば、今はつどいとかしてても「ふっしぁん、ふっしぁん」って画面越しに声かけられることが多いけど、それが少なくなりそう。

あとは私自身が、子どもたちと話したり、関わったりするときは「友だち」として接してしまうから、今はまだ子どもたちは私のことを「いち大人(スタッフ)」として見ているし、話を聞いてほしいという感じがあると思うんだけど、会うと「いち友だち」みたいな位置付け?関係性?に変わる気がする。学校に来れるようになって、子どもたち同士が会う頻度が多くなると、次第に横のつながりもできて関係性が濃くなるだろうから、より私も友だちの一人になっていく気がする。

ユーミン:それは、ふっしぁんとしてはどうなの?

ふっしぁん:大人だし、スタッフだけど、集団の中の一人として見られたい。同じホームの人、として見られたいな〜って思うから嫌じゃないかな。むしろ自然。話戻すけど、なんでユーミンはそんなに「え〜やだ〜」って断るんですか?

ユーミン:森に行こうと言われたら、森とかは大人と一緒に行かなきゃだからそりゃ言ってほしいと思うけど、なんでもかんでも誘ってくる人いるじゃん?まあ私も一人の人としてその場にいるから、気持ちは主張したいと思っている。

ふっしぁん:でも森に行くときもあるんですよね?

ユーミン:あるよ!「森に何しに行くの?」とか言っちゃうけど。森が好きとか嫌いとかじゃなくて、その場にいる一人として自分はどうするのか吟味している感じだから。

ふっしぁん:実際に分散登校始まって、そういうことがあったら、子どもは「ユーミンは冷たい大人だな」っていう印象を持つのかな?(笑)

ユーミン:「え??こんなおとな、にんげんもいるんだ」っていうことは思うかもね。

ふっしぁんユーミン:ま、分散登校もやってみなきゃ、わかんないね。

そして迎えた、分散登校。「やってみなきゃわかんないね」がどうだったのか、その後改めて話をしてみました。

ふっしぁん:分散登校2日間、どうでした?

ユーミン:目線を合わせるのが、一苦労だった。3歳から8歳までの人に合わせた、それぞれの言葉とニュアンスと発信を考えないとだから、すごく頭を使った感じがする。

ふっしぁん:そうですよね。年少から小2の間って、言葉もだけど、ぐんと成長すると思うんです。だから、つどいで読む絵本を選ぶのにすごく悩みました。簡単すぎると上の子たちはつまらないかもしれないし、挿絵が少なかったり、内容がちょっと難しいと年少の子はわかんないかなーと。あと読むスピード?も悩みながら、子どもたちの反応見ながら手探りで2日間やってみました。

ユーミン:今日の「はんぶんこ(TERUKO 作 / Discover21)」は、前日の子どもたちの姿からきた選書でしょ?この本にしようって思ったのはなんでなの?

ふっしぁん:絵本を選んでたら「はんぶんこ」っていう、平仮名5文字で、幼児の子でも聴き慣れていそうな言葉が目に止まったんです。読んでみたら、大きなクッキーをもらった主人公が、お腹すいて困っているお友達に「はんぶんこ」する。それも1回じゃなくて、何回も。

そのとき、昨日のチカちゃんとエイジ君のやりとりが浮かんだんです。チカちゃん最初は、「お母さんにあげるから持って帰る」と言って摘んだ花を私に見せてくれた。でも、同じものを探したのに見つからなかったエイジ君が「1つくーださい」と言ったら、「2つあるから良いよ」とあげたんです。きっとチカちゃんは、探しても見つからなかったエイジくんを知っていたからあげたと思うんです。

そのエピソードをホームのお友達に紹介したいな、と思っていたのもあって、これを朝読もうと決めました。あとは、主人公のお友達が「オシャレぞう」「傘さしキリン」だったり、最後にお友達からお返しにもらった物が「よるのほしジュース」「ふねのはいったうみゼリー」とか、想像する面白さがあって、これなら上の年齢の子たちも想像しながら楽しめそうだなと思って。

ユーミン:読んでみて、どうだった?

ふっしぁん:途中で「みんなだったらはんぶんこする?」と聞いたときに、「全部あげる」「えーあげたくなーい」って言ってて、自分に置き換えて考えてるなーと思った。あと「よるのほしジュース」のところで、「あぁーなんか飲みたくなったー」と言ってる子もいて、その世界に入ってる感じもしたかな。

ユーミン:ホーム「う」の子どもたち、結構絵本、好きな感じだよね。


ふっしぁん:そうですね。帰りのつどいでも、ユーミンの読みきかせを食い入るように聞いてましたね。ユーミンはどうですか?絵本の選書に限らず、分散登校に関して。

ユーミン:この2日間担当が帰りのつどいだったから、ちょっと落ち着いて、次の場所に行けるような本っていうイメージで選書した。だから、ふっしぁんほど深く選書はしていないかな(笑)。私が帰りのつどいで絵本を読んだときは、おとなしい子たちが発言してる感じがしたんだけど、その姿から子どもに対する考えや経験が、私たちにあるからこそできる選書だし、それは分散登校で、実際に会って、いっしょに遊んで、生活したからこそ、子どもたち一人ひとりのいろいろな側面が見えてきたということだと思った。

あとは、そうだなー。これまではオンラインだったけど、それでも知り合ってたし、一人ひとりの個として存在していたわけで、こうして会ってみると、やっぱりオンラインでもつながっててよかったなーと思った。

ふっしぁん:それは多かれ少なかれありましたね。オンラインがない状態で4月に始まってたら「初めまして」だらけで、不安、寂しさを感じる子もたくさんいたのかなーと。保護者の人も、初日の送迎時に同じホームの子に「あー〇〇ちゃんね。おはよう」「〇〇のお母さんだよ。よろしくね」と声をかけていて、声をかけられた子もすごく嬉しそうにしてました。

ユーミン:来週からもオンラインと分散登校が交互であるけど、今週どちらも経験したからこそ、これまでとは違った子どもたちとの関わりができそうだね。


これまでさまざまな環境で出会ってきた、ホーム「う」の私たち。

これからもさまざまな環境で出会っていくだろう、ホーム「う」の私たち。

環境が変わることでうまれる(その子への?)不安や戸惑い、(その子の?)変化を、その子の「新たな一面」とまた出会えたんだ、と思えるといいな。

そもそも環境が同じでも、毎日その子の「新たな一面」に出会っている。そんなことにも気づいた時間になりました。

私たち自身も、ホームの一員でいたい。「子ども・大人」であっても、「ともだち・一人の人」として関わり合いたい、ということが改めてみえてきた気がします。

ふっしぁん&ユーミン
(2020.05.11 / 05.16談)

#2020 #ホーム #前期 #異年齢

片岡 亜由美

投稿者片岡 亜由美

投稿者片岡 亜由美

今しかできないこと、今だからできること、当たり前ではない今日を、子どもたちと共に生きて学んで経験していきたいと思います。

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