2021年9月5日
新型コロナウイルスの感染状況が拡大する中、8月24日の学校スタートは大幅な制限の中からスタートすることになった。
オープンな校舎の中で、異年齢が行き交いながら活動していた生活から、近しい年齢のラーニンググループ単位、30人弱の固定化されたメンバーでゾーニングされた範囲で過ごすことに。
まざらず、流動性の少ない毎日。まざることの意味と価値を探究してきたぼくらにとっては、空間を分け、メンバーを分け、と難しいスタートになった。
夏休み、スタッフはこれまでの歩みをていねいに振り返り、ここからどう進んでいくのかを徹底的に対話し、学び、準備してきた。まだうまく言葉にできないけれど、チームとしての質感が変わってきている感じ。あるスタッフが8月の研修が終わって夏休みに入る時に「ごりさん、組織ってこんな感じで変わっていくんですね。自分たちでつくっているっていうか。嬉しいっていう気持ちを伝えておきます」と話してくれたんだけど、うん、確かにじんわり変わってきている実感がある。
新しい体制、実践を準備して、スタートは後期全員2泊3日の野外キャンプで、さあスタートだ!というときにこの状況。うーむ、なんとも出鼻を挫かれた感じだ。しかたない。
8月23日に、本城から示された大きな方針のもと、オンライン含めて出勤している全てのスタッフが関わって【新型コロナウイルスの感染症予防対策について】を策定した。細かい分担をしたわけではなく、それぞれが自分がかかわるところを決めて動き、1日で一気につくりあげた。
命を守ることと日常を守ることをいかに両立させるか。それぞれの想いがのったものができたと思う。そのプロセスでこの制限された状況をマイナスとだけ捉えるのではなく、新しいカタチをつくるチャレンジにしていこうという熱も生まれた。今、スタッフのアイデアや想いが日々の実践に溢れている。校内をうろうろしていると毎日新しい実践や動きに出会い、ワクワクしてしまう。そんなスタッフが心強いしありがたい。夏休みのたっぷりとした時間は、どんな状況になってもぼくらの土台になっている感じがする。
例えば3、4年生は、メンバーがしばらく固定されることを強みとして、継続的なプロジェクトを始めた。その名も「会社をつくろう!」。
「自分(たち)がやっていて楽しい」ことと、「誰かの役に立ったり、誰かの笑顔に繋がること」を条件に会社(≒プロジェクト)を立ち上げる。これまで「プロジェクト」と言われてもピンと来なかった人たちも、会社をつくる!というメタファーで、プロジェクトのイメージがついたらしく、一気に動き出した。
生き物会社の人たちは、朝登校してくると「昨日の続き」を始める。「昨日の続き」が生まれるのは、「〜したい」の情熱が生まれている証拠だ。
プロジェクトメンバーのリクとアラタに聞いてみた。
「生き物会社ってどんな会社なの?」
『生き物を育てたり、特徴を見てもらったりして、その生き物を好きになってもらう会社。うちの会社はみんな社長。今はメダカが生まれて、カブトムシを飼っている。これからはエリマキトカゲとゴールデンハムスターとジムグリ(蛇)を飼う予定なんだ。』
「そうなんだねー(ぼくは蛇が苦手なので勘弁してほしいが・・・)。どうやって好きになってもらうの?」
『生き物の仕草とか見てもらって、観察してもらって、好きになってもらう。ハムスターはみんなかわいがってくれそうなー。』
「これからどんな予定なの?」
『飼育ケースを作ったり、エリマキトカゲのは俺の家の虫かごを改造して作ろうかなって思ってる。ふれあい室とか作ろうかなー。会社活動ちょーグッド!楽しい!』
そう言って、生まれたばかりのメダカを見せてくれた。
さらに3、4年生では会社ごとに「自分たちの学習計画」を立てて学んでみることにもチャレンジ中。全面オンラインになることも見据えて、自分の学びのコントローラーを自分で操作する練習でもある。
自分たちで決めたからか、びっくりするぐらい熱心に取り組んでいる人が多い。算数をやっている横で、会社活動で生き物の世話をしている人がいても、気にせず集中している。自分で決めるということの力と「〜したい」が日常の真ん中にくることの力がかけ算になっているように見える。
5.6年生も、7.8年生も、改めて「自分の学びを自分でつくるとはどういうことか」という問いに向き合い、一緒に新しい学び方、カリキュラムに挑戦し始めている。(7、8年生、スタッフと生徒が一緒にカリキュラム改訂に入っている。そのダイナミックな動きはスタッフの誰かが書いてくれるはず。)
廊下ですれ違った8年生と「始まって1週間たったけどどんな感じ?」ときくと、「今は制限されてるけどさ、その中で、いろんなこと極めることはできると思うんだよね。そうしたら戻った時に全然違うと思うんだよ」。
確かに確かに。自分のコントローラーを自分で徹底的に操作してみる絶好のチャンス。大人も子どもも、この状況の中だからこその新たなチャレンジ。
「分ける」で試したことの先の「まざる」では、どんなことが起こるだろうか。
制限を創造性とユーモアで軽やかに超えていこう。
幸せな子ども時代を過ごせる場とは?過去の経験や仕組みにとらわれず、新しいかたちを大胆に一緒につくっていきます。起きること、一緒につくることを「そうきたか!」おもしろがり、おもしろいと思う人たちとつながっていきたいです。
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