毎日うろうろ 2021年9月14日

「起きたことからスタートでいいんじゃないかな」

岩瀬 直樹
投稿者 | 岩瀬 直樹

2021年9月14日

異年齢が行き交いながら活動していた生活から、近しい年齢のラーニンググループ単位、20人弱の固定化されたメンバーでゾーニングされた範囲で過ごすことになって4週間目に入った。例えば7、8年生は20人くらいの2つのグループに分かれて、他のグループや他の学年と交わらずに活動している。異年齢のホームの活動も一時休止中。

前回も書いたが、この状況の中で新しいかたちにチャレンジしている。さまざまな新たな実践が生まれ、スタッフの中では手応えを感じている人が多いし、子どもの様子やコミュニティの充実にも表れているように見える。感染状況にかかわらず、もう少しこのかたちを続けたい、という気持ちになってきているスタッフも多い。

では、学校の一番のつくり手たる子どもたちはどう考えているだろうか。
月曜日の6時間目にあたる時間。大きな机ゾーンでマイプロジェクトに取り組んでいた8年生のカイトと、7年生のノイにミニインタビューをしてみた。

左がカイト(8年)、右がノイ(7年)

岩瀬

ノイ、8月に学校始まってからのこの体制、どんな感じ?

一番実感したのは、7、8年だけってそんなにうるさくないんだよね。落ち着いている。こないだ、久々に(異年齢の)ホームの帰りの集いをZOOMでやったら、3、4年生めっちゃにぎやかで(笑)。にぎやかっていうのは、まあちょっと話聞けない子とか、「ミュートしたくないー」とか、いろんな人がいて、でもいい感じににぎやかっていうか。いい感じにうるさいってかんじ。懐かしかった

岩瀬

7、8年生での生活はどんなかんじ?

7、8年生も2つのチームに分かれているから、すげー生活しにくい。マイプロジェクトの話し合いもZOOMでやらなくちゃでやりづらい。本当は直接話したいし、その方が効率がいい。例えばさ、みんなで見たい本があったとして、俺がこっちで見ていることをすぐに一緒に共有できない、みんなで一緒に見れない不便を感じる。一緒の方が集中するしね。

岩瀬

なるほどねー。カイトは?

そうだなー、今の方がいい部分もあるし。悪い部分もあるけど、悪い部分大きめ。
いい部分は、やっぱり落ち着く。いやよくはないのか。どうなんだろう。7、8年で落ち着くのは当たり前かもしれないけど、あのにぎやかな感じもありっちゃありかなーって思う。

(ノイ)今はやっぱり自分の勉強に集中できる。自分(ノイは7年生)が上の学年に教えるということはあまりないから。他の人の学びを気にすることが減った。前は下の学年の子に教えてたりしてたから。今集中できるのもいいし、教えるのも良かった。どっちもどっち的な感じ。

岩瀬

教えるのも良かったんだ

教えるのは、聞かれて、自分がほとんど忘れてたりしたものがあったりして、例えば6年生に質問されてわからない時ってあるのね。そうしたら6年生の教科書みて、ちょっとだけ思い出して教えられる。一つきっかけがあると思い出せる、それでこれまでのことを振り返れるし、また新しい記憶として学び直すという感じ。本って積んでいくと一番下の本って読まなくなるじゃん。教えて思い出すと、それを一番上に置き直す、みたいな感覚はある。あとは、他の学年とのコミュニケーションがなくなったのが嫌かな。 7、8年は、1学期もラーニンググループで土台でもテーマプロジェクトでも一緒だったから、今はこれまでよりちょっと多くなったくらい。逆に5、6年と話す機会がまったくなくなった。6年と話すのとか、すごい新鮮な感じで「あー!そんなこと思ってるのか!」みたいな。友達関係の話とかしてるの聞いてるのも楽しかったから、そこがなくなって寂しい。あと例えば、5、6年とは国語の授業を一緒にやってないから、担当しているあすこまさん(澤田)の国語のやりかたのことを聞いたりすると「あーこんな感じなんだなー」って知るのが楽しい。全然違うから。

(カイト)今はなんかぎっちりしていて、決められている感じが苦しい。一番は環境かな。もうちょっとあそこでやりたい!みたいな場所とかあるし、あと、いつも見えている人が一緒になっちゃう。周りの環境が一緒すぎて、刺激がないから、ダラーンとなっちゃう。 1学期はその辺でやってたら、いろんなスタッフが声かけてくれて違う視点をもらえたけれど、今は受ける視点がすくない。例えば、スタッフによってけっこう考え方が違う人がいるから、今は流動的なスタッフが少なくて7、8年担当のスタッフだけだから、その中でも関わるスタッフが限られていて、もっと色んな人からフィードバックもらいたいなって思う。

俺は、いい悪いでいったら、けっこうどっちもどっちかなーって思う。わけられてると関わる人数が減るから、今まで仲良くなかったけど、話すことが増えて、結果仲良くなる、というのはあるから、いいと思う。 でも、より多くの人と接するの大事。異学年で学んだりするのが風越の良さだし、他のところと違うところだから、自分的には前の方がいい。風越は私立だから公立とは違うけど、今は普通の学校と一緒だから、幼小中一貫の意味がないし、良さがだせてない。せっかくいるのに。

ぼくは前の方がいいかなー。7月まで、異年齢の自由進度の算数・数学でむーちゃんが中心で進めてくれてたんだけど、なにかあると「みんなどう思う?」「今のはどう?」って、みんなに聞いてくれてた。それがつくってる感じがしてた。例えば「勉強中のイヤホンがどう」とか。スタッフの中でも意見分かれたんだよね。いろんな子いるからいろいろ起こるんだよ。そういうところがおもしろかった。

しんさん(本城)がこの間、「工場と工房」(*)という話をしてくれたんだけど、今は制約とかがあって工場が多い感じがする。でも、今のうちに自分で工房のことたくさん考えておいて試しておきたいかな。いつもに戻った時に、どうやって「工房」を大事にしていくかを、今考えておきたい。

今は制限はあるけれど、個人的には2学期になって工房の割合が上がったかなって思ってるの。自分の中では「わたしをつくる」(マイプロジェクトの時間)が工房感があって好き。 例えば、この間ゴリさんに「自分の筆箱を作りたい」って言って説明したじゃん。あんなのを考える時が「工房感」があって、充実というか、楽しかった。遊んでいて楽しかったじゃなくて、なというか広がっていく感じ。そう考えると、今の環境でも、ちょっとしたことで工房感あげられるのかな。でも今の環境では限度はあるかな。すぐにライブラリーに行けちゃうとか、詳しいスタッフにきくとか。そういう自分で動ける感じにしたい。

岩瀬

今、ホームも止まっているけれどそれはどう思う?

(ノイ)ホームは異年齢で、小さなコミュニティの中でかかわれるのがいい。ホームがあることで居場所ができるというか。帰りの集いもいろんな人がいてわちゃわちゃしているし、あまり有意義に使えないこともあるんだけど、7、8年の狭いコミュニティにいる感じより、異学年の中でいることがおもしろい。異学年といえばホームだから。

(カイト)ホームは必須かなと思う。なんだろうな、去年の話になるけど、ホームプロジェクトでカレーやってたとき、いろんな学年から自分にはないような考えが出てくる。それがおもしろい。 すごい広い学年がいるから、「みんなができるように」、「みんながたのしめように」「スタッフも楽しめるように」という、いつもにはない考え方ができることが、他のことに活かせそう。この発想はホームがあるからだし。

岩瀬

この状況が落ち着いたら、元に戻す、という考え方もあるけれど、新しいかたちをつくっていくというのもありだと思うんだよね(確かにー)。ふたりはなんかアイデアある?

(ノイ)今の状況から、普通に戻しても、何かしらの変化があるはずだから、戻しても大丈夫なんじゃない?なんか変わってるはず。きっとこれまでよりも進むと思う。しんさんも言ってたけど固まらないでずっと変化し続けることが必要。今足りていないのはホームで過ごす時間だから、ホームプロジェクトはたっぷりやったらどうかな。

(カイト)僕も近いけど、まるっきり配置的に元に戻しても、何かが変わっていて、そこからがスタート。気にせず戻してみて、そこで起きたことからスタートでいいんじゃないかな。物理的なものはいつでも変えられるから、物理的じゃないもの、気持ちみたいなものは、1回戻して始めてみて、そこで何を感じるか感じてみたいな。人がどう動くんだろう、とか、どんな気持ちになるのか、とか。同じにしようとしても、何か変わっているはずだから、それを感じてみたい。

例えば、掃除への気持ち、みたいなもの変わってると思うし。今は自分の場所だけだから一生懸命やる人が多い。 これが全体の掃除になったときに、みんなが使っているからみんなできれいにしよう、みたいになるかも。

そんな変化を見てからもう一回考えてみたいな。やってみなきゃわかんない。新しいもの生まれそうだと思うよ。

早く朝、みんなでまざってドッチボールしたい!!(笑)

子どもこそがつくり手。
当事者の話をきくのはやはりおもしろいし、頼もしい。

(2021年9月13日 インタビュー実施)

*「工場と工房」…夏休み明けに7,8年生向けに「みらいをつくる特別編」というワークショップが開催された。工場でつくられたもの、工房でつくられたものを手にしながら、その特徴をとらえ、似たようなことが風越の中でも起きてるんじゃないか?と本城から投げかけられた。7,8年生は一人ひとりが、「今の風越の工場と工房の割合」と「わたしが理想とする風越の工場と工房の割合」を表現し共有した。

#2021 #7・8年 #異年齢

岩瀬 直樹

投稿者岩瀬 直樹

投稿者岩瀬 直樹

幸せな子ども時代を過ごせる場とは?過去の経験や仕組みにとらわれず、新しいかたちを大胆に一緒につくっていきます。起きること、一緒につくることを「そうきたか!」おもしろがり、おもしろいと思う人たちとつながっていきたいです。

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