2021年5月17日
4月中ごろ、理科室をブラブラしていた5年生のサンちゃん、アミ、ユウマ。たまたまそこにあった『もしも原子が見えたなら』という科学絵本が目に入り、ヒマだったら一緒に読んでみようよ、と誘った。とにかくこの絵本はおもしろいのだ。教員になって2年目の時に出合い、当時担任していた小学校1年生と楽しんだことを思い出し、アミたちも興味を持つんじゃないかなと思った。
途中おしゃべりしながら読み聞かせ。「えー!水も空気も全部原子でできてるの?」「水がこんなツブツブなんて想像すると気持ち悪い!」そんなやりとりをしながら2日かけて読み終えた。絵本を真ん中に楽しそうにおしゃべりしているテーブルに、通りかかったサキ、メイ、ソウスケも加わり、思いがけず、4.5年生の「原子分子プロジェクト」がスタート。
原子は何種類あるのか、人は何個の原子でできているのか。読み聞かせ+おしゃべりの中で生まれた問いをライブラリーで調べたり、原子・分子のカードゲームやカルタをしたり、中学生の科学の教科書を読んだりと探究は進んだ。楽しそうに探究している姿に誘われるように、毎回来訪者やお手伝いの人が現れた。
プロジェクトは、模型を作ったら楽しそう!というサキの提案で分子の模型作りへ。
実は模型作りはぼくも想定していて、事前にこぐまに相談していた。その昔1年生と大量に入手した発泡スチロール球で模型をつくったことを思い出し、「どうすれば発泡スチロールでつくれるか」と相談、発泡スチロール用のカッターで試しづくりをして大変だけれど何とか作れそうだ、と準備万端でいたのだ。
だから模型づくりの話が出て、想定通り!と喜び勇んで発泡スチロールで試しに作った原子模型を見せたのだが・・・反応はイマイチ。「紙粘土でつくったほうがかわいくない?」と言うサキ。図工室に移動して試してみたらその通り。簡単に作れて、しかもかわいい。分子模型づくりをしていると、通りかかった人たちが「やってみたい!」と気楽に手伝いにきた。紙粘土恐るべし。サキはぼくの想定を軽やかに超えていった。
さて。アウトプットデーが近づき、「原子分子プロジェクト」は、一緒に話し合った結果、今回はまず展示をすることにしたようだ。
アミ、メイは分子模型一つひとつの説明カードづくり。図工室のマーブリングされた紙に刺激されて、カラフルな紙づくりから始めた。時間がないから既製のカードを使えばよい、と考えていたぼくは浅はかだった。おもしろいことをよりおもしろく変えていこうとする構え、みたいなものが2人にはある。
サンちゃん、サキは模型づくり続行。ブドウ糖分子までつくれるなんて思ってもみなかった。発泡スチロールだったら、水分子が限界だったろう。
ユウマとソウスケは、「原子とは?」の説明スライドづくりをすることに。理科室でスライドづくりをしていると、そばで8年生のカイトが何やら実験を始めた。カイトは一人で原子分子の探究をしていた。そこにユウマ、ソウスケが吸い寄せられていく。
「ゴリさん、赤ケツくんが詰まった缶(酸素の実験用スプレー缶のこと)がある!」。
カイトは酸化銅を純粋な酸素と銅をつかって作りたいらしい。気がつくと二人は、スライドづくりをほっぽり出して、実験の手伝いを始めていた。自分たちのプロジェクトと地続きのところにカイトの探究があるのだということに、心が動いているようだ。
どこまで理解できていたのかはわからない。原子のツブツブはイメージしていたかもしれないな。今はそれくらいでいいんだと思う。
別々にやっていたことがたまたま理科室で同期して、思わずからだが動き出す。開かれた空間と関係による想定外の出会いから生まれていく熱みたいなもの。この熱はきっと何かにつながっていくのだろう。
そんなこんなで、あっちへ行ったりこっちへ行ったりと想定外を楽しみながらアウトプットデーに向けて動いています。
幸せな子ども時代を過ごせる場とは?過去の経験や仕組みにとらわれず、新しいかたちを大胆に一緒につくっていきます。起きること、一緒につくることを「そうきたか!」おもしろがり、おもしろいと思う人たちとつながっていきたいです。
詳しいプロフィールをみる