だんだん風越 2020年6月14日

「かざこしミーティング」という「文化をつくる」ことへの挑戦

片岡 利允
投稿者 | 片岡 利允

2020年6月14日

自由になることを学ぶ

「風越は自由なんでしょ?なんでもやっていいんでしょ?」という声を耳にする。それに対して、ぼくは「自由になっていくことを学ぶところではあるが、何でもいい自由なところではない」と言いたい。

通常登校が始まって2週間経つが、順調に問題は起こっている。あえて「順調」というのは、人が集まって生活を共にするということは、そういうことでもあるから。

たとえば、Chromebookがゲーム機として使われていたり、トイレが汚れたままになっていたり、ラボの道具が貸し出したまま返ってこなかったり…。問題が起きることは悪いことじゃない。ただ、「自由だから何やってもいい」のままだと、あっという間に問題は広がっていき、同じ場で過ごす人たちは次々に「不自由」を被ることになるだろう。

だからこそ、ぼくたちは“よりよい風越”を目指していくということを常に考えていかないといけない。それが自由になっていく、ということでもあると思う。

他のスタッフと「風越の生活」について話し合う時も、大事にしたいことは躊躇なく子どもたちに伝えていくけど、それだけじゃなくて、日々の生活の違和感から日常的に対話を行い、子どもたちが自分たちの“よりよい”生活をつくっていくことが重要だよね、というところに行き着く。

はじめから校則のようなものを示して行動を制限していくことは、「自由になることを学ぶこと」とは程遠い。だからと言って、何でもオッケーとすることも「自由になることを学ぶ」ことから遠ざかってしまう。

そこで、通常登校がはじまる前の週に、「生活の土台(ベース)をつくる」についてまとめたものを、スタッフに提案した。その中には、生活のきまりについての考え方だけでなく、生活について話し合う場である「風越ミーティング」についても簡単に触れていた。この時点では、ざっくりとした枠組みしか提示できず、ゴリさんから、風越ミーティングについて「この仕組みで本当にいいのか再検討しましょう」とのコメントをもらった。

そのときに思った。「これだ!」と。

風越ミーティングが、生活をつくる、いや、風越をつくるためのカギを握る場になるに違いない。いち早く形にしてやる!本気でいいものをつくってやる!と、スイッチが入ったのを鮮明に覚えている。

「かざこしミーティング」とは

大人も子どももつくり手である、自分たちでつくっていく、そんな民主的な学校を目指していく上で、「風越ミーティング」はとても重要な場になってくるに違いない。そんな確信があった。

ゴリさんからのコメントをもらい、まずは自分のなかにある「風越ミーティング」の具体をブワーッと書きなぐってみた。しかし、ひとりで考えていても、自分の経験や知識の枠の中でしか思考することができず、どこかで見たことのあるような残念なものしか出てこないことに気づき、がっかり。

そこから1週間と少し、スタッフと共に、CDP(カリキュラム・ディベロップ・パートナー)のまーぼー(古瀬正也さん)に相談してアイデアをもらったり、ゴリさんにフィードバックをもらったり、しんさんアンディに助言を求めたり、各ホームの時間の使い方について聞き取り調査をしながら考えに考え抜いた。

最後は、こうして考え抜いた「かざこし(ここからはひらがな表記)ミーティング」のイメージを、教員仲間のはるくん(石橋智晴さん)にビジュアライズしてもらった。スタッフや子どもたちにできる限り描いた情景を共有できるように。それがこちらのイラスト。


「かざこしミーティング」で大切にしたいこと。それは、「日常的な対話」「多様なプロセス」「オープンな広場」の3つ。

「日常的な対話」とは
話し合いたい人が、話し合いたいことを、話し合いたいように、話し合えることが日常であることを大切にしたい。そうして、日常的な対話を大切にすることが、みんながつくり手になる文化をつくっていく。よりよい風越をつくるための対話が日常的に活発に行われていくような文化をつくるための場にしていきたい。

「多様なプロセス」とは
様々な質感の議題があげられるであろうこの場では、構成されるメンバーによっても話し合いのプロセスは多様であり、必要に応じて選べることを共通認識として持つ。また、多様なファシリテーションを体験できる場でもある。

「オープンな広場」とは
風越学園の中で行われている話し合いについては、常に可視化されていて、オープンであることを大切にする。誰でも意見し、参画することができ、当日参加できなかった人たちにも情報は開示される。

これらを具現化するために、まずはキックオフイベントを開催することにした。イベントのプログラムは、まーぼーにもらったアイデアをベースに、OST(オープン・スペース・テクノロジー)を活用して考えた。

話したいことを持ち寄って、話し合いたいことに人が集まり、分科会を開いてスタッフのファシリテートのもと話し合いをする。あくまでもキックオフのゴールは「話したいことを話してもいいんだという実感を得られる」ことであり、「話し合いって楽しいな、面白いな、ワクワクするなと感じられる」ということ。

これだ、というものを出せた感があった。(放課後、ゴリさんに共有した時、やわゆかゾーンでふたりで大はしゃぎした。笑)

キックオフ前日

キックオフの前日。子どもたちも参加は自由なので、参加者を募るにあたって、ぼくから「かざこしミーティング」について伝える時間を設けることにした。ここまでの2週間あまり、考えに考え抜いてきたからこそ自信はあった。大事な第一声、ちゃんと自分の思いを熱量を遠慮せずにそのまま伝えたくて、始まる前に壁に向かってリハーサルもした。いい緊張感だった。


時間になると、後期の子どもたちがぞろぞろと体育館に集まってくる。そして、いよいよ子どもたちに伝えるとき、はじめに「大事なことを伝えたいから、ちゃんと受け取れるような準備をしてほしい。」と伝えると、みんなの眼差しが変わった。本気の度合いはちゃんと伝わるんだと思う。

風越学園はどういうところなのか、何もないところからつくることができるチャンスの1年目であること、“よりよい”風越をつくっていくことが“よりよい”自分をつくっていくことにつながること、そして「かざこしミーティング」について、思いを出し惜しみせず子どもたちに全力でぶつけた。しんさんから「伝わってたね」と聞いて、ほっと胸をなでおろす。


その日の別の時間には、前期の子どもたちにも同じく「かざこしミーティング」について伝えた。前期の子どもたちからもワクワクが伝わってきた時間だったなあ。

放課後には、当日ファシリテーターを担当するスタッフで集まり、「かざこしミーティング」について、当日のスタッフの役割について伝えた。他のスタッフの協力なしに、いい場はつくれない。ホーム担当だけでなく、事務局メンバー、校長・理事長も総出で場をつくる。そういうこともメッセージとして伝わっていくだろう。本気でよりよい風越をつくるための場なんだというとのメッセージが。

「かざこしミーティング」のはじまり

そして迎えた当日。集まったのは後期から約40名、前期から約10名。

はじめに、みんなでひとつの大きなサークルをつくり、今日のこの時間が終わった時に、「話し合いって楽しいな!ワクワクする!もっと話したい!」と思える時間にしようというゴールイメージの共有をしてからスタート。

まずは、アジェンダを出す。それぞれが「よりよい風越をつくるために話し合いたいこと」について、紙に書き出していく。


「そうじについて話し合いたい」「たのしいことをしたい」「森を守りたい」「部活動」などなど、いろんなテーマを発散して、他の人の書いたことを聞きあう。一人ひとりの関心事や課題意識が見えて、これだけでも十分価値のある時間だなあと思った。

そこから今日のアジェンダを決める。話し合いたいことを選んで、テーマの紙を持ってメンバーを募り、集まった人たちで分科会を開く。分科会ごとの話し合いはスタッフがファシリテートしていく。話し合いの場所を選ぶところからスタート。

前期の子どもたちが中心に集まった「たのしいことをしたい」チームは、思い思いに書き出していくところから。


アンディがファシリテートする「そうじ」チームは、話し合いを進めていく上で大事なことを丁寧に確認したうえで進めていく。まさに、話し合いについて学びながら進んでいってる。

「部活動」チーム。話し合いのグランドルールが共有されているからこそ、安心して話し合える場になっている。そういう体験の積み重ねがはじめは重要なんだろうなあ。

ホーム「け」の7年生だけで構成された「ファンスタディ」チーム。子どもたちだけで話し合いを進めていけるところはどんどん任せる。スタッフはそれに伴走する。

「風越の自然をどうやって守るの?」チームもグランドルールのようなものを共有するところから話し合いをはじめていた。時間のギリギリまで話し合い、最後は具体的なアクションを決めるところまで話し切る。アクションにまでつながること、話し合いのための話し合いにならないこと、進んだという手応え、そういうことは、今後より話し合いを活発に行っていくためにはとても大切なことだなあ。

「流しそうめん」チーム。現状、食べ物を扱うのは無理そう。でも、本来の目的は「仲良くなる」ということ。流しそうめんはそのための手段である。

そういったことを確かめながら話し合った結果、まずはコロナがおさまる前に、スーパーボールやぷよぷよボールをつくってそれであそぶところからはじめて、コロナがおさまったら「ながし食べ物プロジェクト」を開催する、ということに。手段に囚われず、目的を見失わない話し合いのプロセスを体験できたことはすごく学びになっただろうなあ。

最後に共有タイム。それぞれの分科会ごとに説明する人が残って、他の分科会の話し合いについて聞きにいく。本気で話し合ったからこそ、他のチームでの話し合いも気になる。

クロージングで、ここからあちこちで「よりよい風越をつくるための話し合い」が日常的に行われていくことへの期待と、今後みんなからファシリテーターチームを募集することについて話をして会を閉じた。

キックオフのその後、第一回かざこしミーティングに向けて

キックオフで行われたミーティング中の記録は、関係者が目にするであろう場所に掲示した。

どこでどんな話し合いをしていて、どんなプロジェクトが動いているのか、そういったことがオープンになっていることがとても重要なこと。ただ、その方法は今後さらに検討していく必要はありそう。

キックオフのその後の様子をこまめにスタッフに聞いてみると、「あのあと、すぐに次のミーティングやるから来て!って頼まれたよ」「typhoonに部活チャンネルが立ち上がったよ」「たのしいランドをつくるためにまず場所を決めにいくよ」などなど、確実に日常に繋がっていっていることがわかった。うんうん、これこれ!といった感じ。

こちらは、「そうじ」チームの後日のミーティング。


校舎内の清掃関係を担当しているGにも参加してもらい、具体的な話し合いを前に進めていっている。このように、「かざこしミーティング」の場に居合わせなかった関係者に後日話し合いに参加してもらうようなことも、ひとつ大事なプロセスだろう。

キックオフとその後数日で、「かざこしミーティング」で大切にしたいことの「日常的な対話」「多様なプロセス」「オープンな広場」の3つが具現化され、実現しつつあることの手応えを感じている。

はじめが肝心だなあと思う。今まさに動き出していることが、ちゃんと日々のアクションに繋がり、変わった!つくれた!という実感を持てるところまでやり切れるかどうか。そこまで責任持って大人が伴走するということも重要なことだろう。


次は、いよいよ第1回かざこしミーティング。キックオフを終えて、ここまでの振り返りと今後のことについて、CDPのまーぼーとアンディとミーティングを。

考えれば考えるほど、大人の世界でも同じことが起こっていて、同じ壁にぶち当たっているなあと思うと、なんだかホンモノをつくっている感じがしていていい。考え抜くとそうなってくるんだろうな。コドモダマシなんかいらない。

そして、形が見えてくると、こんな国になったらいいなあって思えてくるし、これ町っぽいよなあってなってくるし、結局は学校ってそういうところなんだろうなあとも思う。

子どもたちにも、キックオフの前日に伝えたが、2020年開校の1年は、ここにいるぼくたちにとって、おそらく一生に一度の挑戦。一日一日の積み重ねが、風越を、自分をつくっていくことになる。そして、「かざこしミーティング」は、その“よりよい”風越、“よりよい”自分をつくるために、日常的に行われるべきこと、つまり、「文化をつくる」ということへの挑戦なんだ。

とはいえ、「文化をつくる」とはどういうことなのだろうか。ここからどうなっていくのだろうか。新しいことへの挑戦に胸を躍らせる日々を、みんなで迎えに行こう。

片岡 利允

投稿者片岡 利允

投稿者片岡 利允

「自立」「信頼」「共創」が人生の軸。「思考より試行」でとにかくやってみるタイプの人間です。あと、シンガーソングライター。関西人です。

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