だんだん風越 2022年5月25日

あてもなく追いかけていると

片岡 利允
投稿者 | 片岡 利允

2022年5月25日

4月。軽井沢にも、小さな緑が少しずつ顔を出しはじめたころ、3,4年生では、テーマプロジェクトのスタートとして、まずは自分たちの身の回りの世界のモノ・コトを面白がるべく、Feel度Walk(フィールドウォーク)という方法で、毎日のように野に飛び出した。

「Feel度Walk」とは、一般社団法人みつかる・わかる代表理事市川力さんが考案した、身の回りのモノ・コトを面白がる歩き方である。感度を高めながら歩き、歩くことで感度が高まっていく。

Feel度Walkでは、「何となく」気になることを、「とりあえず」集めて、「あてもなく」追いかけ、「ひたすら」記録する。これをただただ繰り返していく。

3,4年生は、12年間のなかでも、まだまだ身近な体験から学ぶことをベースにしたい時期。自分(たち)が「発見」したことを、自分(たち)なりに表現するということをたっぷり経験してほしい。そんな思いから、「発見と表現」という大きなテーマでスタートすることになった。まずは「発見」のトレーニングとして、Feel度Walk、というわけだ。

迷子になった!

Feel度Walkをはじめて2週目のある朝、ハナがグループのみんなに提案を持ちかけた。

「ちょっと聞いてー。今日さー、ハナの家の裏山の向こうに行ってみたいんだけど・・・」

前回から川に行きたいという人もいるが、話し合いの末、行った先に川があるかもね!なんて話になり、ひとまずはハナの提案に乗っかってみることに。いざ、出発!

あちこちで「なにこれ?」「ちょっとこれ見て」と見つかったものや思いつきをおしゃべりしながら歩き、ハナの家に到着。

「こっちー!ここから向こうは人の敷地だからね!」

さっそくハナの案内で裏山をのぼっていく。狭い道なので自然とぎゅっと固まって列を作り、登っていくご一行。

「うわー、なにこれ!これ芋虫みたいにグニャングニャンになるー!」

「見て見て!これ、こすったら白くなるよ!」

「見て見てー!この木の皮すごい!めっちゃ分厚い!」

こんな調子で、少し歩いては立ち止まり、少し歩いては立ち止まりを繰り返しながら歩いていく。「少」し立ち「止」まりながら「歩」くことで、発見の感度がより高まっていくのだろうか。

 
「うわ!フンだ!」

アヤナが鹿のフンを発見。近くで覗く人、ちょっと離れて眺める人。誰かの分析によると、どうやらフンはまだ新しいそう。近くに鹿が暮らしているのかな、なんて言いながら通り過ぎる。

登り切ると、次はくだっていく。

「えー、これどこに向かってるのー。」
「本当に迷子になっちゃったじゃんー。」

そうそう。今日の出発前に、「Feel度Walk」のコツ、「あてもなく」追いかけることについて話をしていたときに、こんなやり取りがあった。

ショウタ「とっくん!あてもなく追いかけてたら迷子になっちゃうじゃん!」
とっくん「迷子になるってことはさ、知らないところを歩くってことでしょ?それって、絶対新しい発見があってことじゃない?」
ショウタ「うん。」

この時、納得もしていた人たちは、本当に迷子になっちゃうなるとは思ってもいなかったよう。いよいよ、ここから面白くなってきたぞ。

引き続き、迷子。360度が森、森、森。だんだん不安になってくる人たち。

「えー、どうするのー。」
「戻ろうよー。」

こうして、「迷子上等!」と自分たちで言い聞かせながら、あてもなく進んでいく。すると・・・

「見て見て!鹿の角!!!ほら!!!」

なんと、鹿の角を発見。しかも近くにもう一本。一同、大興奮。これは大発見だと言わんばかり。

2本の角でこんな感じかな?と角の持ち主のことを想像してみる。大きさはどれくらいかな?死んじゃったの?とイメージを膨らませていく。さっきのフンの主ももしかしたらこの角の主と同じかもしれない。

「いろんなものを拾ったから、博物館みたいにしたいね!」
「Feel度博物館だー!」

ということで、帰ったら博物館をつくることになった。歩きながら、次の「〜したい!」が湧いてきた。

そうこうしているうちに、見覚えのある道路に出ることができ、安堵の表情。歩くと少しずつ変わっていく風景。ちょっとした手がかりをもとに歩いていく。目印になるものを探し、よく観察しながら歩くのも、また「発見」する観察眼を磨くトレーニングだ。

戻ってきて、見つかったことは「ひたすら」記録する。この日、思いがけず見つかった鹿の角は、「次貸して貸して!」と半ば取り合いのような勢いで順番に回されては、輪郭を縁取ったり、じっくり観察してスケッチしたりして記録されていった。

その後も、追いかけていく

その翌朝。家で気になって鹿の角のことを引き続き調べてきたイブキ。「全然メモとかしてないけど」なんて前置きもあったが、そこには、自分なりに調べてきた鹿の角のことが書かれていた。他にも、シュウゴやアラタも気になって調べてきたらしい。

続いて「フィールドはくぶつかん」開設に取り掛かる。これまでの数週間、歩きながら食べてみた野草たち、ゴルフボール、テニスボールらしきボロボロのボール、いつの時代のラベルだかわからない錆びたファンタの空き缶などなど。集めてきた自然物や人工物など雑多なものをこうやって広げていく。博物館として「表現」する。

「これアウトプットディで出せばいいじゃん!それでさ、メタメタマップを壁に全部貼ってさ!」と提案するアイ。「発見」してきたことは「表現」したくなる。「表現」の場として博物館というのは、仲間とイメージを共有しやすく、それぞれの「発見」をいかすことができ、どうやら良さげな感じだ。

一方、僕はというと、同じようにその後も追いかけたくなり、子どもたちが博物館をつくっている姿をみて、博物館についての感度が高まっていた。 4月のはじめに佐久市の旧中込学校を訪れたところ、昔の教科書の中に「博物学」とかかれたものが展示されていた。それがなんとなく気になっていたことを思い返し、ふと思い立って、町の博物館を調べるなかで行き着いた「軽井沢町歴史民俗資料館」に、週末立ち寄ることにした。

一通り見学したのち、館長さんに見学にきた経緯を話をしてみると、

「そういえば、昨年度、風越の井手さん(ゆっけ)という方も下見に来られましたよ。申請をすれば、無料で見学することができますよ。」

と教えてくださった。

週明け、急いでみんなに伝えると興奮気味に「行きたい!!!」と珍しく満場一致。GW前になんとか!と思い、翌日、ゆっけといっしょに見学することになった。ホンモノの博物館を目の当たりにし、一人残らず全員が1時間ほど展示物にかじりついていた。

この先には何があるんだろう

こうして、あてもなく追いかけた先に発見があると、まだまだこの先に何かあるのではないかと期待して、さらに追い続けたくなる。さて、この先には何があるんだろう。こうやって、前に向かって歩みを進めていくことこそが、「プロジェクト」なのではないかとさえ思う今日この頃。プロジェクト(project)の語源は「前に投げる」。

そうすると、「探」究という手探りの感じより、「追」究のような道(未知)を追っていく感じなのかもしれない。あてもない未知を追い続けた先に何が究まっていくのか。これからの1年がたのしみだ。

#2022 #3・4年 #カリキュラム #探究の学び

片岡 利允

投稿者片岡 利允

投稿者片岡 利允

奈良県公立小で4年勤めたのち、準備財団時代の2019年から軽井沢にきました。風越では、開校時からかざこしミーティングを立ち上げたり、幼小を接続したり、読み書きを楽しんだり、野に出て発見を面白がったり、ギターを弾いて歌を歌ったり、ガヤ芸人だったり。現在は、週3マン。自分のいかし方はたらき方を暗中模索中。(2023年4月更新)

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