だんだん風越 2022年5月26日

つなぎ、整え、多様で創造的なカオスな場をつくる

西村 隆彦
投稿者 | 西村 隆彦

2022年5月26日

ラボの熱気が戻ってきた!

昨年度はラボだけでなく、新型コロナウイルス感染防止対策で、異学年が居合いながら学ぶ場が制限されていたことの影響で、異学年が混ざりながら暮らしや学びを共にする時間が大きく減ってしまいました。その結果、子どもたち自身で駆動するプロジェクトや動きが小さくなってしまったことがありました。

今年度は「12年のつながり」をカリキュラムの柱の一つとし、幼児から9年生まで、風越学園で過ごす12年間の子どもの時間をつなぐ役割として、ラボやライブラリーや森が場をつくっていくリエゾンセンターであると再確認されてスタートしました。ただその場を共有しているだけでは混ざらない、異学年が居合えるような「場」を整えていくことが、ラボ(筆者は主に工房を担当)におけるテーマの一つです。

僕自身は、これまでの経験で「デザイン」という視点や切り口はありますが、専門の「教科」があるわけではありません。もともと既存の領域を深掘りしていくよりも、別々のものをどう繋いでいくのか?その繋ぎ方や、グラデーションの作り方、間にある名前のない領域や、その隙間からこぼれて落ちてしまうような微細な変化にも気づける受け皿になりたいという思いがあります。昨年度から風越学園で過ごす中で、子どもたちが自分ごととしてつくることや探究する力を深めていくには、「ひとりで居ること」と「だれかといっしょに居ること」とが矛盾せず、両者が互いを支えあう「包む場」が必要なのでは?という仮説を持つようになりました。それは、昨年度のコロナ対策で、大人が管理しやすいように学年別に集団を分けたことで、「場」の持つ熱量が減ってしまい気づかされたことでもありました。

「時間」を整えること、「場」を整えていくことと

一時、学年別でバラバラになった「わたしをつくる」の時間(子どもたちがそれぞれのプロジェクトを持ってラボに訪れる)も、今年度の1学期は、3、4時間目を中心に各学年で揃えるように設定しています。

1年生から9年生まで混ざって居合う工房の様子を見ていると、異学年で同じ場を共有するからこそ出来る創造的でカオスな場の空気や「やってみたい!」を感じます。手を動かしてみたり、自分の活動をしていたかと思えば、隣の人の活動を眺めたり話しかけたり、やることがないとぼやきながらも、誰かの側を離れなかったり…。

自分でプロジェクトをつくって、問いや計画を立てて進められるように…。自分で学びをつくるプロセスは、理想を言えばそんな感じですが、その前に、たっぷりと友だちや他の学年の子の様子を眺めたり、ちょっと手伝ってみたり、無目的に素材をいじってみたり、釘やノコギリややすりでひたすら切ったり削ったりという経験が大事なのではないか…。アナログでプリミティブな体験をたっぷり楽しみ、自分が関わることで手の中でカタチが変わっていく。その共通体験を伴って、次のツールを手にしていく。はじめからひとりだけで完結する便利なツールを手渡していくのではなく、その場に居合える仲間を感じている。そこが混ざっている場であると、次々と「やってみたい!」の熱量が繋がっていくように感じます。

「クリエイティブ・ライブラリー」

「やってみたい!」という熱量があるときに応えることができる場を工房で開いていくことと同時に、プロも使う DTPやDTMや映像編集の可能なソフトウェアやPCを中心に、3Dプリンターや大判プリンターなど、ものづくりのツールを利用できる「クリエイティブライブラリー」という場も開設しています。

「風の子新聞」を出版している風越出版社は、子どもたち主導でクリエイティブ・ライブラリーを活用しているプロジェクトの一つです。昨年度からInDesignやPhotoshopなどプロフェッショナルも使用するDTPアプリケーションを利用し新聞を作成しています。

驚いたのは、そのアプリケーションの習得するスピードの早さ。それまでは手書きイラストや写真や作成した文章を切り貼りして作成していました。十分に手を使いながら試行錯誤して作っていたからこそ、アプリケーションをツールとして割り切って完成に向けて使いこなしていく様子は、コンピュータを使っているにも関わらず勢いと緊張感、手作業の良さが残るような、風越学園の子どもたちでないと作れないオリジナリティ溢れる新聞になりました。

風越出版社の活動を見ていると、ひとりではなく仲間と一緒に「つくる」良さを感じます。異学年のメンバーが集まる風越出版社もコロナ対応で活動する時間が大きく制限され思うように進められない時間があったようですが、新たな仲間も募集しながら次の発行の準備を進めているようです。

つくり手になっていくには、場と時間を整えることに加えて、探究し続けるには、「やってみたい」を出発点に共有できる「仲間」も必要。その仲間が異年齢になると、馴れ合いのような場でなく「ひとりで居ること」も「だれかといっしょに居ること」の大きくてやわらかな繋がりになり、そこから「やってみたい!」を試せる安心できる場になっていくのでは?と感じます。

どうすればそんなやわらかな集団がつくれるか?せっかく「12年をつなぐ人=リエゾンセンター」になったので、放課後や長期休みでも「木工クラブ」的な、部活やサークル活動のような場を開けないかと考えています。異年齢で「やってみたい!」という気持ちをお互いに尊重して、もっと楽しめる場になれば。そんな遊びと学びの循環もデザインしてみたいと画策してます。

「ラボでの活動は遊んでいるようで何を学んでいるのか?」と問いかけられることがあります。答えや正解に向かって動くだけではなく、手元でつくり、壊しながら自分たちの中から湧き上がったことで遊び込んでいく。遊びながら学びのチャンネルが開いて繋がり循環している状態を、イタリアのデザイナーで絵本作家のブルーノ・ムナーリは太極図で現しました。同居し循環しながら、ふたつをつなぐ境目で創造がおこっている。学びと遊びの二項対立でなく、遊びと学びがつながりあう太極図のような柔軟な二項へ変えるにはどうしたら良いのか?その境目で新たな第三項が見えるのか?

この問いかけは「12年のつながり」や暮らしや循環する場をつくるという体制になったからこそ、ラボから多くの人を巻き込みながら深めていきたい視点でもあります。

また、デザインジャーナリストの藤崎圭一郎さんは「優れたデザインは矛盾を美しく見せる力を持っている」と語っています。これは、風越で「デザイン」を思い描く時、いつも心を寄せる言葉でもあります。

同年代と異年齢、遊びと学び、暮らしと学び、つくることと壊すこと、アナログとデジタル、授業や放課後、ひとりで居ることも、誰かを感じながら居られることも…、あえて矛盾が矛盾のままに同居できるように。そうした創造的なカオスをつくっていきたい。風越の12年をつなぐ人として、場の可能性を探る1年にしていきたいと思います。

 

#2022 #ラボ #わたしをつくる

西村 隆彦

投稿者西村 隆彦

投稿者西村 隆彦

熊本県水俣市生まれ、福岡市育ち あたらしいものずき
これまで暮らした街:水俣・福岡市・長崎市・大阪市・東京都・久留米市・鶴岡市・御代田町。たくさんの街に移り住み、”デザイン”を土台に気になる領域に片足を突っ込みながら様々に変様してきました。これまで自分の中でもバラバラだったモノゴトや経験が、風越という場で「こうありたい」という思える自分に繋がって、どんな風に変様できるのか…、自分でも楽しみ。

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