だんだん風越 2021年8月24日

学園説明会「”つくる”ってどういうこと?」(前編)

かぜのーと編集部
投稿者 | かぜのーと編集部

2021年8月24日

8月4日(水)、5日(木)、7日(土)に学園説明会を開催しました。

残念ながら今年もオンラインでの開催。今回は、私たちが大事にしたいと思っている『つくる』『まざる』『「  」になる』とは、あらためてどういうことか。実際に起きているエピソードをもとに、岩瀬(校長・園長)と本城(理事長)とスタッフが話をしました。

この記事では4日「”つくる”ってどういうこと?」の回で話された内容の一部を前編・後編にわけてお伝えします。まずは、青木将幸さん(青木将幸ファシリテーター事務所・軽井沢風越学園 評議員)に聞き手になっていただき、岩瀬と本城が話しました。

 

青木

青木:今日のテーマは「“つくる”って、どういうこと?」ですけど、風越学園のホームページにも「子どもも大人も、つくり手である」という言葉がでてきますよね。それだけ「つくる」ということを大事にしているのだろうと思うのですが、風越学園における「つくる」ってどういうことなのか、お二人の言葉から聞いてみたいなと思います。

岩瀬

ホームページに載せている文章は、こちらですね。

岩瀬

僕にとって「つくる」を言い換えると、「自分ごとにする」とか「当事者になる」ということで。 たとえば、家に帰って誰かが作ってくれた晩ごはんができていて食べる時に「今日ちょっとしょっぱくない?」などと作ってくれた人に注文つけたりするけど、自分がご飯を作る時は「ちょっとしょっぱいな。どうしようかな」と自分ごとになって考えて、手を動かすでしょう。そうやって自分の手の中にある感じって、人を幸せにするなと思うんです。生きることのエネルギーになるというか。 そう考えた時に、学校って子ども時代の結構な時間を過ごす場所だからこそ、そこで自分ごとにしてやってみるとか、当事者になってやってみる、という経験がたくさん積み重ねられるといい。風越学園のカリキュラムは、子どもたちの経験の総体だと考えています。

本城

風越って、チャイムがならないんだけど、その割に時計が少ないんです。それを不便だと感じた何人かの子どもたちが去年「時計プロジェクト」を立ち上げて、2〜3ヶ月かけて自分たちで時計の設置場所を考えて、発注し、設置する、ということをやったことがあって。今年の5月に地域の方向けの学校見学会をしたときに、設置したある女の子が「この時計、私たちがつけたんです」と見学者に紹介をしたんだよね。学校の見学会で時計の紹介なんて誰もしないと思うんだけど、その子にとっては学校づくりの大事な一つだったんだろうなと感じた出来事でした。

青木

人に話をしたくなるのは、たしかに自分ごとになっていることかもしれないね。

本城

つくるよりも買ってきたり、借りてきたり、誰かに任せてしまったほうが楽なことも多いとは思うんです。つくるってすごく時間のかかることだし、過程の中で何かを壊すことや、苦しみ、痛みを伴うような行為でもあるから。だから、つくることって苦しいなと思うことも正直あります。

青木

たとえば、どういう時に苦しさを感じるのでしょう?

岩瀬

いわゆる学校って枠組みがカチっとしています。学年があって、学級があって、時間割があることが当たり前で、その枠の中でどう工夫しようかなと、大人も子どもも考えている。だから、そもそも教室に入って机についた時に「なんで授業を受けなくちゃいけないんだっけ」という疑問は生まれづらかったりするんです。授業は受けるものだから、って。 でも風越学園で試みようとしていることは、その枠組みは本当にそれでいいんだっけとそもそもを考えるところからスタートします。。しかも、つくったもののせいかや学びの手応えは遅れてやってくる、それこそ数年後とかにグッと現れることもある。そんな中でつくり続けることって結構エネルギーのいることで、スタッフはずっとそこに向き合ってつくっているなあと感じています。

青木

人によっては枠やレールがなく自由にしていいよって、ラッキーと思える人もいるけど、不安になる人もいると思います。どういうふうにして、子どもも大人も乗り越えているんだろう?

本城

たとえば風越学園って、子どもも大人も固定の席がないんです。朝来て、必ず行かなくちゃいけないところがない。もちろんロッカーはあってそこに荷物は置けるけど、置かなくてもよかったりする。そうすると、最初戸惑う。でもその中で、調整していくっていうのかな。自分はどこの場所がいいだろうとか、他の人との関わりの中で確かめていくような感じがあるなと思います。それは席だけじゃなくて、いろんなことで。 はっきりとここが好き、これがいいという人はそこにいくだろうけど、そうじゃない人は関係によってだとか、時間をかけて自分のちょうどいいところを探していく。それを僕は、自由の不便さだと思うんだけど。選択肢が多い不便さというか。

岩瀬

それは子どもやスタッフだけじゃなくて、保護者の中でも起こるよね。たとえば、風越学園って進路はどうなるんですか?とか、子どもが自由にやっているけどこれで大丈夫なんですか?、家で全然勉強しないんだけど宿題ないんですか?って聞きたくなる。本来学校ってこうあるべきものという前提や今までの当たり前とは異なる状況からくる不安だと思うんだけど。 僕は、不安が起きることはしょうがないと思う。でも、その不安の声をどこに向けるべきなのかを考えて、「そもそもその不安はどこから来るのか。その不安をどうしたいのか」を子ども、保護者、スタッフの三者でやりとりできるといいなあと思っていて。それが風越学園を自分でつくっていくということだと思います。 そして、それってめんどくさいし、人によって大事にしていることが違うからぶつかることもあるけど、その先に学校というか子どもが育つ場の面白いカタチが見えてくるんじゃないかなと思う。泥臭く積み上げていくしかない。「これっていいな」、「子どものこんな姿が素敵だな」とか「この瞬間って見たかった未来の感じがでてるな」ということを、子どもも保護者もスタッフもそれぞれが持ち寄って、「じゃあ自分たちが大事にしたいことはなんなのか」ということが言葉になっていくと、もしかしたら風越“らしい”と言われるものができるのかなと思う。 ただそれは同時に、何年もかかることだなとも思うから、風越学園にいくと子どもも保護者も幸せになるというよりも、もっともっと一緒に泥臭くつくる感じかなと。

青木

見えないもの、何を信じているのかって結構大事だなと思っていて。「子どもこそがつくり手であると信じています」と言い切っている。それがすごいなと。

本城

「信じています」とホームページの文章では言い切っているけど、「信じたい」というところもあります。本当に信じて大丈夫かって、迷います。それが正直な感じかな。でも、信じたいと思ってる。子どもたちもそうだけど、僕ら大人も一人ひとりがつくり手だと信じたいという感じかな。

岩瀬

後期は「わたしをつくる」という自分で自分の学びをつくる時間が結構あるんだけど、ぐわーっと没頭している人もいれば、やることないなみたいな人もいて、そういう時は揺れるよね。もう少し枠組みあったほうがいいのかなとか。風越学園ではいわゆる強制力が働きにくいから、大人からやってみたら面白いよと提案するものももう少しあったほうがいいのかなとか。どう関わったり、向き合ったりするかって難しい。正解があるわけじゃないし。 だからこそ、子どもがつくり手であるってどういうことなのか、もう少し具体的に言葉にして共有して、日々体現できているかなとお互いに関心を持ち続けられるといいなと思っています。それは保護者も含めて。

青木

なるほど。今までの話って子どもとスタッフのつくるの話が主だったけど、保護者のみなさんとのつくるについても聞いてみたいです。

本城

風越学園にはPTA的な保護者会みたいなものがないし、コロナでなかなか学校に来づらい状況もあったので、どう関わるかと保護者の方々も模索しながらの1年半が過ぎているという感じだと思います。 でもその中でも、森の日と題して保護者の方と森の整備を一緒に行ったり、保護者の方を中心にお弁当の販売を週2回やってくださっていたり、放課後のことに取り組んでいる人がいたりします。どう関わろうかな、どうつくり手になろうかなということを模索しながらも、その芽が出てきているなと感じます。

岩瀬

放課後の話をすると、今のところ風越は、子どもたちは16時半まで残っていいことになっているんだけど、スタッフは次の日の準備やその日の振り返りなどもあって、子どもたちと関わるのは難しく、子どもたちはただ学校で時間を過ごしているだけだったんだよね。おおよそ豊かな放課後とはいえない状態。 そのことを発信したら保護者の方が受け取ってくれて、どうしたら豊かな放課後がつくれるのか考えるワーキンググループを立ち上げ、もう3ヶ月くらい動いてくれている。「豊かな放課後は子どもと保護者とでつくる」と再定義して、我が子だけではなく、ここにきている子たちが幸せなこども時代を過ごせるにはという気持ちで動いてくださっている方がたくさんいるんだよね。 でも、これも本当に大変なことで。ワーキンググループメンバーの保護者たちは「まるで仕事みたいだ」と言っているけど、一つひとつやっていくことで、その熱が他の人にも伝わり、風越を一緒につくるってどういうことなのかが具体の姿で見えてくるんじゃないかなと思います。その入り口にいるなという感じがする。

岩瀬

実際の放課後の様子を見た保護者から、「もっとお互いを大事にする文化をつくりたいよね」というような発言もあったんだけど、それってすごいなあと思うんです。先生どうにかしてよ、あんな子どもたちの様子でいいんですか?、にならないで、そういう文化をつくっていきたいよね、一緒につくっていこうよっていう保護者の存在は本当に心強い。

青木

学校の責任だ、ではなくて、どうやったら解消できるのか、どうしたらよりよくなっていくのかを保護者も一緒に考えて、つくるんですね。

本城

僕は、“保護者”というふうに、あまりバクッとは捉えていなくて、顔とお名前とどんなことをしているのか、どんなことに興味を持っているのか一致している人が多いです。だから、ちょっと困っていたり、あの人の話を聞いてみたいなとかいう時は、「保護者に」というより「Aさんに」、「Bさんに」と声をかける。Aさんの子どもと話すよりも、Aさんと話すことのほうが多かったりするくらいの関係があるから、保護者とつくっていくという感覚と共に、AさんとBさんとつくるみたいな感覚も持っています。

青木

夏休みに入って、今スタッフのみなさんはどんなつくるの中にいるのでしょう?

本城

少しゆったりした時間をとれているので、研修やワークショップをしているのだけれど、その中の一貫したテーマは、「わたしたちは今どこにいるのか?そしてどこにいきたいのか?」。それって、自分がつくったものを見てみて、やってみてどうだったのか、ここからどうしていきたいのかを、繰り返し繰り返し確認しながらつくり続けていくということだと思っています。

本城

その一方で今ちょっと思っているのは、つくると言った時に、「何のために」「どんな質感の」「どんな風に」というようなことが、まだあやふやなんだよね。 たとえば、工場と工房でつくるものってあると思うんだけど、工場だと、最終的に何をつくるのかが決まっていて、大量生産で材料も作り方も品質レベルも決まっている。工場でつくるものも社会にとって大切なものだけど、風越学園のつくるは、そういうものなのか。そうではなく、工房のように何をつくろうかと考えながら、手元にある材料でつくっていくのか。また、つくったものをどう取り扱っていくのか。これからつくるということをもっと手元に手繰り寄せる必要があるなと。その結果、つくるという言葉が変わっていくこともあるかもしれないなというのはちょっと感じています。

岩瀬

「つくる」って動詞だから、目的があるはずなんだよね。なんのためにつくるのか、なにをつくるのか、とか。そこがふわっとしているから、もっと具体にしていく必要はあるというのは僕も思っている。 でも、動詞である良さもあると思う。動くベクトルや意思みたいなものがあるから。でもなんのためにをもっと語れるといいよね。

青木

風越は開校前からつくり続けているから、すでにつくられた文化、つくられた部分というものもあると思うんだよね。それを改めて手元に手繰り寄せて、これから入ってくる新しいメンバーも自分ごとにしていくプロセスも大事なんだろうなと感じています。

岩瀬

たしかに。部活動というかサークルに近いものだけど、やってみたいという子どもたちの声がいくつもあがり、バレーボールクラブなんて小3〜中2までが一緒になってやっているんだよね。春休み中に自分たちで合宿を企画して、保護者に声かけてやったりしてる。 でもできた部活に新しいメンバーが入るか入らないかというのは、つくるとは違ってくる。そうすると、これから風越学園に入る人たちは、もしかしたら子どもも大人もマインドが違ってくるかもしれない。だから、僕らスタッフも子どもも、毎年4月に何をリセットしてもう一度ゼロからつくるのかというのは意識したほうがいいのかもしれないですね。当たり前にしていかないというか。 今もうすでにそういう動きはあって、夏休みのスタッフのやりとりとかは、0から考え直すというのをあちこちでしているので、それがどんどん加速していくんじゃないかなと思います。

本城

つくるということを大事にするというのは、そのあとの育てる、育っていくということも意識していくことだし、いわゆる断捨離みたいなこともバッサバッサとやっていくということでもあると思うんです。それをしていかないと、つくり続けるということができないんじゃないかなと。

青木

やっぱり余白がたくさんあるということが大事だよね。

本城

学校って余白がないことが安心・安定を生むこともあるかもしれないけど、風越学園はそうではないので、一年の、一週間の、一日の見通しが持てた方が安心だという人には少し不便かもしれません。苦しみながらもそこを楽しめることが大事かも。

岩瀬

夏休み前、あるホームが学校に泊まりたいと動き出して、保護者に連絡がいったのは、前々日だもんね(笑)。予定じゃないことで動くことが山のようにある。

青木

だいぶ予測不可能な学校。でもそれも含めて一緒につくるということなのかもしれないですね。


前編は、以上です。

後編は、こちらからどうぞ。

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かぜのーと編集部です。軽井沢風越学園のプロセスを多面的にお届けしたいと思っています。辰巳、三輪が担当。

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