スタッフインタビュー 2019年3月17日

もやもや もやもや(臼田亜由美)

片岡 亜由美
投稿者 | 片岡 亜由美

2019年3月17日

臼田亜由美、通称は「すぅ」。昨年度の呼び名は「ダーマン」だったので、次年度も変更の可能性があります。認定子ども園や児童養護施設での仕事を経て、現在は病院の重症心身障害児の療育活動をしながら、2017年秋から幼児向けの体験会「かぜあそびの日」のスタッフとして関わっています。

ーどうして幼稚園の先生に?

音楽の仕事がしたくて音大に進学したんだけど、ピアノの先生に音楽で仕事に就けるのは1割以下よって言われて。何かしらの資格をとろうと選択肢に挙がったのが幼児教育でした。大学の幼児教育の先生が、愛育養護学校の校長でもあった西原彰宏先生で。先生の授業で使った教科書の一番後ろに倉橋惣三の書いた文章が載っていて。子どもの表現や行動をこんなふうに読み取る大人がいることにびっくりしたし、幼児ってこんなに感性が豊かなんだ!って魅力的に思ったのが興味を持ったかな。言葉がまだおぼつかないなのに、表現がすごく豊かなことがおもしろく感じて、この子どもたちの感性を大切に育てていきたいなと思いました。

ーその頃の印象的な子どもとの出会いはありますか?

大学4年のときに愛育養護学校で週1回実習させてもらっていたときに関わっていた小学3年生の女の子です。下半身に麻痺があり言葉も話せず、最初はまったく彼女のことがわからなかったから、どうしていいかもわからない状態で。でも周りの先生から、私が話しかけてることはちゃんと届いていると教わって、その子のちょっとした動きや変化を感じ取って、その子の代わりに言葉で表現するようになりました。正確には反応がわからないので、どこまでやるかは、いつも葛藤があったけれど。

 

不要な言葉をかけない

ー子どもたち一人ひとりの感性が生まれ出るには、どんな大人の関わりが大事なんだろう。

こちらが不要な言葉をかけないこと、かな。子どもが泣くか泣くまいか葛藤しているような感じのときとか、ちょっと勇気を振り絞って進んでみようかなっていうときに、大人が「どうしたの?なんか悲しいの?」とか、「こっちを通ればすぐにいけるよー」とか、「手を繋いでいこうね」とか言っちゃうのはちょっと違うかなって思う、私はね。

ー子どもたちとのやりとりや、スタッフとのやりとりを見ていると、すぅにとってぴったりくる言葉を選んで話してるな、と思うことがよくあります。すぅ自身とちゃんとつながっている言葉が出てるというか。自分でも意識してることはありますか。

えーー、めっちゃ嬉しい。意識はしてるかもしれない。とりあえず子どもの正面には立たないけど、目線が合う姿勢になるように気をつけています。かぜあそびの日で会う保護者には、園とかぜあそびの日での子どもの様子の違いや、子どもが園で困っていることについて話を聴くことが多いです。でも私自身が子育てした経験はないので、保育者の視点でなるべく笑顔でゆっくり話すことを大事にしています。

ーどうして軽井沢風越学園に?

前に勤めていた認定こども園の園長先生に、軽井沢に新しく幼稚園と小・中学校ができると教えてもらいました。でも、まさか受かるとは思っていなくて。採用合宿でも幼稚園教諭としては私一人だけで、あとはみんな小・中学校の先生たちでした。よく考えたら、これまであんまり先生たちと接することがなかったな、学校の先生と幼稚園教諭や保育士は違うんだなぁって感じて。何にこんな囚われているんだろうというか、なんでもみんなで一緒にやらなきゃいけないという価値観がすごい伝わってきたかな。

ー義務教育学校(小・中学校)の内定者ともスタッフ研修を一緒に企画したりして接点が生まれつつあると思うけど、その後の印象はどうですか?

学校の先生と一緒にやったスタッフ研修の準備が、すごい作業的だったの。どんなことを学びたいのか?ということが一番大事な気がするんだけど、そこはあんまり追求せずに、当日うまく流れていくようにやるのが一番大事、というのに違和感がありました。学校の先生って、そういうものなのかな。段取りをうまくやろうという前に、どんなことを学びたいのかについての吟味が大事なんじゃないかな、ともやもやしました。

ーそれが幼稚園と義務教育学校の違いのように感じているということ?

そうだと思ってたんだけど、最近4月からの認可外保育施設「かぜあそび」の準備をしながら、またもやもやすることがあって、幼稚園と学校の違いじゃないのかもしれないなって。
段取りを組んで、それが期日までにちゃんと終えられるように進めていくことに疑問を持ってしまうというか。たとえば、4月以降に備えて子どもたちの制作スペースを拡張しようという話があって。でも私としては、そこまで環境を提供しての制作って必要かな?みたいなもやもやがあります。平らな場所をつくったからといって、子どもたちが集中できるとは限らないし、与えられた空間でベストなものをつくれるとも限らない。決まりきった環境におもしろみを感じなくて、違和感があったのかもしれない。そういうことをきちんと言語化して議論できない自分の幼さにも、もやもやするし。そんなもやもやの中、他のスタッフが「かぜあそびらしさ」という言葉を出してくれて、そこが原点だよなぁって思いました。

 

子どもに余地のある環境づくり

ーすぅの考える「かぜあそびらしさ」って?

決まりごとがない、押しつけがましくないことかな。失敗も含めてスタッフみんなで共有するとか。空間と環境は最低限整えるけれど、それ以外は子どもたち発で遊ぼうよっていう感じ。
春からの認可外保育施設で大切にしたいことの「じっくり・ゆったり・たっぷり」にも通じるかもしれないけど、私自身は「しなければならない」とか「今はこうするべき」みたいなのに追われて生きてきました。そうしないと生きていけなかったんだけど、そうではなく、その子のペースで活動できる空間、環境が保証されていることが、かぜあそびらしさなのかなって思います。

ー「じっくり・ゆったり・たっぷり」を支える大人の役割として「過不足なく関わる」というのがあるけれど、その言葉についてはどんなふうに受け取っていますか?

過不足ない関わりには個人差があると思うけど、私はあえて、関わりすぎないことが多いかもしれない。子どものことを見てはいるけど、声をかけたりとかはあんまりしないというか。子どものことを一人の人間として見てるのかな。何かができないから私がやってあげようとかは特に思わない。できなかったら助けるよ、とかは言うけれど、最初からやってあげる権利はないと思っています。だって、子どもが飛躍できる、成長できるチャンスだと思うから。子どもだけじゃなくって、人ってその一時の感情に引きずられるところがある気がしていて。だから感情を受け止めすぎずに、こんなのはどう?、と他のことを提案することが多いです。

ーどんな小学校だったら、幼児のときの感性がそのままのびのび育っていくんだろう。

まったくわからない!でも私がやりたいのは、義務教育学校で超真面目な授業してるときに、幼児と一緒に遊びに行きたい。そのときに、スタッフがなんて反応するかで、幼児は義務教育学校への見る目が変わるだろうなって思う。大きいお兄さんお姉さんがいるところは、自分も入っていい場所なんだって思えるか、ここは入っちゃいけない場所なんだと思うかで、大きくなったらこうなるんだってイメージが左右されると思うから。

ーなんで、わざわざまじめなシーンでやりたいの?

スタッフの人間性が問われるから。で、終わったあとに、あの人、子どもにあんなこと言ってきましたよってみんなに広めたい(笑)。それくらい、余白があっておもしろいといいなと思う。

ー幼稚園教諭っていうよりは、ガキ大将っていう感じだね(笑)。

インタビュー実施 2018/10/28、2019/3/7

#2018 #スタッフ

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今しかできないこと、今だからできること、当たり前ではない今日を、子どもたちと共に生きて学んで経験していきたいと思います。

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