2023年6月3日
風越学園の4年目がワクワクに満ちたものになりつつある。今回はホームスタッフとして、ホーム5の今年度始まって1ヶ月半のこれまでの記録とこれからのことを書いてみた。
今年度に入って、自分はホーム5に移籍した。去年、ホームは2年連続固定でやってみようとスタートしたので、他の子どもたち・スタッフは同じホームのままだったから、なんだかちょっと、お邪魔します、って感じ。
どんなホームなのかな〜と端っこに居ると、つどいではひたすらにケイドロしまくる。あと自分たちで「集まりが悪い」と言っていたのも覚えている。エネルギッシュな子たちが多い一方で、じっくり話すという感じにはなかなかならず、新たにホームに参加した新入生や新5年生は、どう感じているんだろう?とも感じていた。ただ年度当初の自分は、移籍してきたばかりだしなあと、手をこまねいている感じも、正直あったなあ…。
そんな4月末、「ホームを良くしたい」という子ども・スタッフの思いに応える形で、ゴリさん(岩瀬)が「ファシリテーション講座(通称:ファシトレ)」を開いた。
ホーム3の課題意識から始まったこの講座だけれど、どのホームも感じている課題でもあり、その輪が広がってきている。
ホーム5からも、ユロとユリが初回から参加していた。ユロは、初回の後、早速他の子と話し合って、つどいの場所にベンチを用意し、早く来た子が得をするように、かるたを準備して翌日を迎えていた。
それ以外にも、ミニホワイトボードを準備して話し合いを進めやすくしたり、カードゲームを試したり、一人ひとりのアイディアが活かしやすいようにふせんにやりたいことを一人一枚ずつ書いてくじにしたりと、「準備8割!」を合言葉に、ホームの雰囲気を良くする試行錯誤を繰り返している。ちなみにこのふせんのくじは、ホーム1のアイディアだそう。ホームを越えていい取り組みを取り入れ合うの、すごくいい動きだな〜。
そうやってガンガン前に立つ人がいると、その分人任せな人が増えてしまうかな?と心配もしたけれど、そうでもなさそう、というのも嬉しいところ。ファシトレに参加する子が増えていることもあってか、ファシリテーターの土台というか共通理解を持っている子たちが増えてきていて、前に立つ人をサポートする動きや、小さく分かれて話し合う時にすっと前に出られる人が出てきている。
今年度から、毎週水曜はマイプロの日になり、帰りのつどいでは普段は別々につどいをしている3年生・4年生も、5年生から9年生にまざって振り返りをする。以前はこういう場こそスタッフが考えないと始まらない、という感じだったけど、ファシトレを経験した子たちにとっては、絶好の「本番」。場作りも工夫しながら、すこ〜しずつ、3年生・4年生とも混ざって話すのが自然になってきたんじゃないかな。
自分のプロジェクトを知ってくれる人がいる、面白がってくれる人がいるって、すごく後押しになる。だからこそこういう場作りも丁寧にしていけたら、それはきっとマイプロの盛り上がりにもつながっていくんだろうな。
そんなこんなで5月末、はじめてのホームの日(月に一度ある、一日ホームで過ごす日)を迎えた。ホーム5は、やっぱりこの日もたっぷり遊びたい!という様子。でも、いつもの場所でいつものように遊ぶのではなく、せっかくのホームの日、お出かけしたり、普段と違う時間を過ごすことで、いつもと違う人とも混ざれるのではないか、とファシトレに参加しているメンバーを中心に話して、当日の流れを限られた時間の中で決めた。
当日は、朝少し学校で過ごした後、風越体育館に出かけて、まずは1時間半、5年生から9年生で、たっぷり楽しんだ。ポートボールにしっぽとり、ドッジボールと、競技自体は普段と変わらないものだった。でも、たとえばしっぽとりが停滞してきたら、フィールドを狭くしたり、しっぽを取られた人が外からしっぽを取れるようにしたりと、トキを中心に盛り上がる工夫も凝らしていた。
後半は、そこに1年生から4年生も合流。ドッジボールから始まって、手つなぎ鬼、手つなぎリレーなど、初めてホームで出会う子たちと混ざって、1時間たっぷり遊んでいた。
この時間は、ヒコ・ユリ・コハク・メイが、計画してくれた。たっぷり体を動かせたらみんなで楽しめるよね、でも走力の差はあるから、手をつないで走れば学年関係なく楽しめるかな?距離もぐっと近づくかも!など、工夫して計画してくれていた姿が頼もしかった。
当日も、スムーズに進行できるよう、小さい子にも丁寧に声をかけてくれていた。それ以外の時間にも、それぞれに計画してくれた人たちの思いが詰まった時間だった。この日はやらなかったものの、他にもやってみたいことのアイディアはたくさん出ていたから、次回以降、あせらずじっくりやっていけたらいいな。
一つ、印象的だったこと。5年生から9年生で遊ぶ時間の最後、ドッジボールをするかどうかでちょっと議論があった。「ドッジボールは一部の人しか楽しめないんじゃないか」という意見に対して、「どんなことをやっても、全員が100%楽しめるなんてありえない」という人も。さて、どうする。答えはもちろんないけれど、でも諦めちゃいけないところだなと感じる。
この時は、話し合っていると時間が来ちゃうということで、リンタロウのアイディアで、ルールを工夫してドッジボールをすることになった。この臨機応変さはさすがだなーと思うと同時に、「全員が100%」という理想にどこまで迫れるか。今のいい流れは大事にしつつ、もっといい感じになれるし、なろうよ、という気持ちは、(肩に力が入りすぎない程度の控えめさで)持っておきたい。
最後に、ホーム5のこれからについて。僕自身は、まず大前提としたいのは、「楽しい」に常に軸足を置き続けること。「もっと早く集まってほしいな〜」「もっと全員が混ざれたらいいな〜」そんな瞬間はこれからもあると思うけれど、「一人ひとりが楽しめているか?」を大事にし続けたい。
まだ全員が自分を出せているわけではないと思うけど、ファシトレの力も借りながら、一人でも多くの人が、その場に自分のアイディアや感じていることを出せるようになっていけば、少しずついい方向に変わっていけるんじゃないか。
そういう動きをつくるためにも、ゴリさんがファシトレの初回で言っていた、「ファシリテーターって、場をつくる責任を最後まで手放さない人。だから、早く来て迎えるとか。そこを諦めないの、大事」ってところを、改めて大切にしていきたい。ちょっとの準備や心がけでできることを、ホーム全体の当たり前にしていくためには、まず自分から。
その先で、「うわ、楽しそうだけど、できるかな?」と思っちゃうような、ちょっと大きなことに、ホームのみんなと楽しくチャレンジしてみたい。ここは、この記事を子どもたちにも読んでもらって話したいところ。どう思う?
最後にちょっとホーム5から離れた余談。ファシトレの流れがいいなーと感じている大きな理由の一つは、それが風越にいる人たちのコミュニケーションを生んでいる点。ファシトレとホームでの実践とがつながっているから、「ファシトレこんなことしたよ」「ホームこんな様子だったよ」が、スタッフ同士で生まれやすくなっている。子どもたちとホームについて話すことも増えたし、子どもたち同士でも、ファシトレの場が、ホームや学年を超えて同じ目標を持った仲間が集まる熱量高い場になっているから、新しいつながりが生まれて、他の場所でチャレンジする土台になっている。
「学年でもいいコミュニティつくりたいんだよね」という声がちらほらいろんな子から聞こえるのも、すごくうれしいこと。ファシトレでのお稽古やホームでの実践が、自分たちの手でコミュニティをよくできる、そのための技や経験、仲間やパッションを得る場になっているからこそ、なんじゃないかな。
これまた余談だけど、最後に紹介したい。ファシトレが始まって一週間、typhoon(保護者と子どもとスタッフで使っているオンラインコミュニケーションプラットフォーム)のファシトレチャンネルに、卒業生のシュウゴから一枚の画像が届いた。
ファシトレが生んだ越境的なコミュニティは、元々あるいろいろなコミュニティに新しい風を吹き込んでいる。風を読みながら、流れに乗って、楽しい方向に飛んでいこう。