風越のいま 2022年11月28日

さがしものはなんですか

遠藤 つぶら
投稿者 | 遠藤 つぶら

2022年11月28日

新しい環境、はじめましての子どもたち、そして新しい仕事。私は図書館で働いた経験は全く無く、風越学園で初めてライブラリーの仕事をスタートした。

貸出のシステムってどうなっているの?
本の登録ってどうやってするの?
本の並び方ってどうなっているの?
本当に1から様々なことを教えてもらった。

少しづつできることが増える一方で、毎日悩んでいるのがみんなからの相談を受けて、資料を探すお手伝いをするレファレンスという仕事。印象に残っているレファレンスを書き残しておく。

4月中旬。1年生の女の子3人がカウンターに小走りでやってきた。

子「ナメクジ見つけたの!ナメクジの本が見たい!」
私「ナメクジの何が知りたいの?」
子「えーっとね、飼い方とか、どこにいるかとか!」

この辺かな〜と棚を探す。が、ナメクジだけの本は無い。私がカタツムリの本をパラパラと見ていると『ナメクジはカタツムリの仲間です。進化の途中で、カタツムリから貝が無くなったので、ナメクジとカタツムリも貝の仲間です。』とのこと。

(じゃあ、カタツムリの飼い方を参考にできればいいかな〜?)と頭によぎったけれど、この【カタツムリの仲間】ってところを私がいきなり教えていいものなのかどうか迷う。子どもが行き着いた方が良いのか?でも1年生で読み取れるかな?とワタワタ。

とりあえずナメクジが載っている部分のページを見せて、「ちょっと探しておく!」と保留にした。最初に子どもが言っていた飼い方やどこにいるのかという情報はすぐに手渡してあげられなかった。

その後、みっちゃん(大作)に相談。「ナメクジ飼ってる人見たことないな〜。ナメクジの本もないな〜。じゃあ、似ている生き物を参考にしてみよっか!何が似てる?→カタツムリ!ってなると繋がれるかもね。で、カタツムリの本を観ながら、ここにカタツムリとナメクジは仲間って書いてあるよ!って教えるかな〜。」と。

なるほど。ナメクジと言われたからナメクジの本を!と探していた私。視野が狭かった。子どもと会話しながら情報の近くまでそっと近づくこともできたかも。何よりも興味の初速を潰してしまったことが悔しかった。

5月。年少さんの貸出の日。ある女の子が大人が読むのも難しそうな文字だらけの本を持ってきた。

私「文字しかなくてすごく難しそうだけど・・・。なんでこの本にしようって思ったの?」
子「ここ(表紙)に動物がいるから。」
私「じゃあ、中にも動物さんがでてくる本一緒に探してみようか?」
と、一緒に絵本を見てみることに。

こんなのどうかな?と、動物の書かれている絵本をいくつかペラペラと見てみるが、なかなか決まらない。そんな時、ちかさん(奥野)が「じゃあ、ちかのおすすめ教えてあげようか!」と声をかけてくれて、ちかさんのおすすめ絵本をみると「これにする!」と、にこにこ笑顔で本がきまった。

それはきっといつもちかさんが子どもたちの興味がある本、生活に関わりのある本を読んでいるから「ちかさんの選んだ本なら面白いかも。」という安心感があったのだろう。でも、「安心感とか信頼関係って時間が必要なのでは?でもライブラリーでは子どもと過ごす時間ってほとんどないよな?じゃあどうすればいいんだろう?」の悶々が頭のすみっこに誕生した。

5月下旬。4年生の男の子。【たんていものでさ、絵があって、シリーズのやつ!】と相談を受けた。

『ミルキー杉山の名探偵シリーズ』(杉山亮 / 偕成社)を読破したらしい。その他にも、『ハリーポッターシリーズ』(J.K.ローリング / 靜山社)を読破しているとのこと。結構厚い本も読めるのだと予測を立てて、江戸川乱歩の少年探偵シリーズを勧めてみる。

子「絵がない。怖いのやだ。」
私「探偵じゃないけどおばけレストランシリーズは?」
子「だから怖いのやだ。」
私「ヒックとドラゴンシリーズは?」
子「映画で見た。読みたくない。」
私「ダレン・シャンシリーズは?」
子「怖そう。絵がない。」
と・・・全然決まらない!手にも取ってくれない。

頭のすみっこから「信頼関係がないから?どうする?」がひょこっと出てきた。なにかに迷った時、みっちゃんの姿を思い浮かべてみる。

ベンチに座って一緒に味見読書していたな。何冊かもってきて、これはこういう本でって1冊ずつ丁寧に説明していたな。子どもが「この本にする!」と本に出会うまでじっくり時間をかけてその子に寄り添っていたな。今この子が求めている本ってじっくり読みたいやつなのかな。じっくり読む本の合間に読む休憩本なのかな。



多分この時探していたのは休憩本。
じっくり読めるやつではなく、さくっと読めそうな本を探してみる。

ロアルド・ダールのシリーズ、『ぼくのつくった魔法のくすり』(評論社)。「絵は少ないし、文字も小さいんだけどね。」と前置きしつつ、隣に行って一緒に本を見る。あらすじを紹介して、最初のページを少し声に出して読んでみる。途中のページも少し声に出して読んでみる。今までよりじっくり時間をかけて本と一緒にいる。すると、「じゃこれにする。」と手にとって、ラーニンググループ(学びの集団)へもどっていった。

そりゃもう。心の中でガッツポーズ。次の日「どうだった?」と詰め寄りたくなるくらい嬉しかった。しなかったけど。

数日後、「なんかおもしろい本ないー?」とやってきた。

私「これは?」
子「やだ」
私「こっちは?」
子「読んだ。」
私「んー。何がいいかなー。」
子「みっちゃんに聞きにいこー。」

・・・そりゃ1回で信頼関係は築けない。うまくいったり、いかなかったり。おすすめした本を読んだら、また次の本を探しにくる。私のこの子へのおすすめ本探しは11月の今もまだ継続中である。

4月から8ヶ月。レファレンスはまだまだとても難しい。

探究に使う本ってどんなのがいいんだろう。今この本を読んでいるけど、発展した本ってどんなのだろう。これ私から言っちゃっていいのかな。どうやって寄り添うか、どんな言葉をかけるのか。信頼関係とか、安心感はすぐに与えられるものではないから一回一回のレファレンスに時間とエネルギーを使って考える。

風越のライブラリースタッフは私が出会ってきた「図書館の先生」では全くない。一緒に算数もするし、国語もする。鬼ごっこもする。ずっとなってみたかった「図書館で働く人」、初めての「図書館で働く人」なのに、すごいところに飛び込んでしまったなぁと思ったこともある。

でも、毎日ワクワクしている。

「図書館で働く人」はどんなことができるのか。今日はどんなレファレンスが来るのか。あのときどんな風に声をかければよかったのか。今日はこんな風に本と繋げられたかも。今日あの子が手にとっていった本はどうだったかな。次は何を勧めてみよう。

悶々と、落胆と、よし!を繰り返しながら、少しづつ、この人に本のこと聞いてみよ〜!の存在になっていけたらいいな。

#2022 #スタッフ #ライブラリー

遠藤 つぶら

投稿者遠藤 つぶら

投稿者遠藤 つぶら

長野県出身。とぼとぼ散歩、行ったことのないお店に行く、友達と喋る、旅行がすき。子どもたちが「これやりたい」「こうなりたい」をみつけていく過程を一緒に歩んでいきたい。

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