2022年10月18日
軽井沢風越学園は東京学芸大学と連携協定を結んでいます。その一環で、髙山綾子さん(やっこ)が9月12日から5週間の短期インターンとして来ていました。東京学芸大学教職大学院の2年生で、4月から長野県の教員になる予定です。
あっという間の5週間。1、2年生チームに入ってたっぷり学びました。やっこにとってどんな経験だったのかミニインタビューしてみました。
どんな5週間でしたか?
「スタッフとして子どもとかかわっていくってどういうことだろう」ということを自分なりに模索してきた5週間でした。ゆっけ(井手)に質問したときに、「教える人ー教わる人ではなくて、学ぶ人とそれを支援する人という関係性がいいよね」といわれて、確かにそうだなって。
例えば1、2年生は、まだ休み時間なのに13時から(授業は13時半から)作家の時間(国語)で書いている作品の続きを始めるんです。遊びと学びが境がない感じで始まるんですよね。私が専門としている算数も、なだらかに学びと遊びをつなげられたら、自然と学ぶ気持ちが高まる気持ちを持てると思うんです。そこまでいければよかったなあ。
担任の先生としての役割とスタッフの役割って違う?
算数では、自由進度の学びにチャレンジしていたよね。自分の授業はたくさん振り返ってフィードバックももらってきたと思うけど、他のスタッフはどう見えていた?
いくらちゃんのすごいところは、一人ひとりと信頼関係ができているところ。例えば私が算数でミニレッスンしているとき、そばに来ない子にスッと寄って、その子が学べるようにかかわります。場をつくったり、人と繋いだり。その学びを引き出す姿が、かっこいい。
きみどり(林)は、授業のリズムがあって、そのリズムに惹きつけられます。「みんなで学ぶぞ」という気持ちをつくっていくのが上手。
きみどり自身の気持ちも大切にしながら、きみどりも合わせた2年生みんなで学んでいきたい、という気持ちを育んでいくんですよね。ちょっと先をいく学びを支援する人で、そして一緒にいる人という感じ。
そしてとてもきき上手。きみどりが一人ひとりの気持ちを丁寧にきくから、子どもたちも相手の気持ちをよく考えるようになっていく感じがしています。
もちろんゴリさんからも影響受けましたよ(笑)。
おまけ感!一番大変だったことはなに?
「子ども」ではなく、いち個人として接することが大事かなと。最初の頃、はやく風越の一員として慣れようして、子どもとの距離を私から詰めすぎて、なんというか依存関係になってしまった面もあって。しんさんからも子どもとの手の繋ぎかたとか、読み聞かせの時の位置とかフィードバックされて、「このままだと共依存になってしまうよ」と言われ、ショックというか、考えてしまいました。
いったんそうなると関係を変えるのは大変でした。子どもたちとの出会い方も4月からは工夫していきたいです。
一番印象的なエピソードは?
でも待っていたら色んな人が集まってきて、誰かが間に入って「どうしたの?」と状況整理したり、他の人が気持ち聞いて言い換えたり、「こういう風にも思ったんじゃないの?」と気持ちをくみ取ったり、「こうしたらよかったんじゃない?」と自然と提案したりしていて。大人に報告してなんとかしてもらう、じゃない。
大人が間に相手に入らなくても「自治」できるんだって驚きました。ああ、遊びの中で学ぶということはこういうことなんだなーって。こういうことって国語とか算数とか机で学べることじゃなくて、遊んでる中で、関係のつくり方とか、自分たちでなんとかするとか、気持ちを推し量り合うとか、そういうことを学んでいるんですよね。
そういう姿を1年生たちもよくよく見て聞いて、影響を受けています。ただ聞いているんじゃなくて、自分たちの問題として聞いたり、話したりしている。自分たちでつくっていける、すごいなあと思ったエピソードです。
なるほど。風越は何を大切にしている学校に見えていた?
まず主体性については、ずっと子どものことを待つスタッフが多くてびっくりしました。それと比べると私はせっかちだったな。スタッフ側にゆとりがないとできないことだなと思います。待っていると、子どもたちの頭の中や手元でぐわーっと広がっていく。待つことで主体性、「こうやってみたい」と気づいたり、「こうしてみたい」と発信が生まれたりするんですよね。さっきのエピソードも主体性、ですよね。
次に「自由」のところ。最初の頃は集いの時間とか風越ミーティングでフラーっとしている子が気になって。でもそれをルールとか型とかにはめるんじゃなくて、そういうのも含めて、子どもたちが自分で考えていくんだなって。ルールの前に余白があるから、自分の自由を考える。例えば「今、そこにいていいのかな」と考える機会になる。それは余白があるからこそできるし時間がかかることだなと思います。でもルールがあまりないからこそ、子どもにどう声をかけていいのか悩むことも多かったです。
私自身も「主体性」を大事にしていろいろ考えたし、いろんな人に関わっていけたし、色々チャレンジできました。なにより自分が楽しかったです。ワクワクするような授業やプロジェクト、活動に出会って、前のめりに5週間過ごしたなって思います。毎日書いていたリフレクションの時間ですら、書くのが楽しかったです。
ここでの経験、自分の人生にどんな影響を与えそう?
ポジティブに考えてやっていけるんじゃないかな。風越ほど環境整ってないと思うけど、その中でやれることはたくさんありそうです。同僚と保護者の人と、目の前の子どもたちにどう育ってほしいのか、一緒に考えながらチャレンジし続けたい。
気負いすぎてもいけないけど、一人ひとりの成長のこの瞬間を一緒に過ごすという責任を感じます。自分のできることで妥協したくない。際限ない職業だけど、学び続けなきゃ。
忙しさに追われないようにしたいです。学んでいかなきゃいけないですね。
ドッチボールのエピソードが印象的。こういう場面に出会うと、スタッフのあり方が問われます。介入して「止める」のは簡単。でもそのことで結果として子どもが経験することってなんだろう。「トラブルは大人が解決してくれる」ということを結果として学んでしまうかもしれない。長い目で見ると子どもを不自由にさせそうです。
子どもが自由になっていくための大人のかかわりとは。
なかなか難しい問いです。
待つ、見守るというのは決して放置ではありません。「気負いすぎてもいけないけど、一人ひとりの成長のこの瞬間を一緒に過ごすという責任」。責任をもってその場に共にいて、どんな眼差しでその子やできごとにむきあい、どうかかわるといいのか悩み、考え、試し、振り返る。その繰り返しの中で、少しずつ過不足ないかかわりの輪郭が見えてくるのかもしれません。そんな経験をたっぷりしたことが伝わってきたインタビューでした。
どんな素敵な先生になっていくのか、楽しみです。
幸せな子ども時代を過ごせる場とは?過去の経験や仕組みにとらわれず、新しいかたちを大胆に一緒につくっていきます。起きること、一緒につくることを「そうきたか!」おもしろがり、おもしろいと思う人たちとつながっていきたいです。
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