この地とつながる 2020年7月8日

田んぼの草取り

斉土 美和子
投稿者 | 斉土 美和子

2020年7月8日

田植えを無事に済ませたら 稲が早く根づくよう水の水位を浅めに保ち、田んぼ全体が温まるように朝晩、水の入り口を調整します。田んぼの水が温められると稲は根を伸ばして葉っぱを増やし始めますが、同時に雑草の種も芽吹き、ぐんぐんと育ちます。小さなうちに駆逐しないと、じきに雑草の方が育って栄養分を吸い取ってしまうため、田植えが終わると同時に田んぼの草取りを始めます。

「うちの実家も田んぼやってるのに、田んぼの草取りって仕事があるって知らなかった。」とスタッフのよだちゃん。今は田んぼ専用の除草剤っていう便利なものがあるし、田んぼを作っている方々も高齢化しているから無農薬でお米を作っている所は少ないでしょう。私の田んぼの周囲で自家用に米を作っている田んぼも、草一本生えていないきれいな田んぼばかり。でも早朝や夕刻には、鷺や鴨・キジなど鳥たちが一心に我が田んぼでエサをついばんでいて、ここには生き物が豊富に生息していることがわかります。ヘビやトカゲ、きつねやテンなどの動物にも出会います。
ホーム「か」の20人が6月に田んぼに草取りに来てくれた日、「うわー!すごい数のオタマジャクシ。ここに素足で入るの?」「ギャー!」とあちこちで元シティガールたちの悲鳴が上がり、「どう考えても一歩歩くごとにかなり踏んでるよね、見ないようにしよう。」「隣の田んぼより、ずっといっぱいるよね。」とそのことに気付く人も。その後7月初め2回目に草取りに来るともう慣れたもので、悲鳴はなく「こないだのオタマジャクシたちが小さなカエルになってる。かわいい!」「えー、カエル無理!」と言いつつ黙々と草取りに励んでくれました。

「この稲の葉っぱ、白く食べられているけど誰が食べたのかな。」「この泥の塊みたいな点が虫?黒米の葉は食べられていないね。うるち米ばかり食われてる。」と何人かが気づき、生き物博士のシンノスケ(編集部注:本城ではない)に聞いてみる。「これは葉虫(正確にはイネクビホソハムシ)の幼虫で糞を泥に見せかけて背負って擬態してる、黒米の葉の方が渋いから食べないのかな?」

この辺りでは、おじいちゃんたちがカイガラムシとかドロオイムシといって「すぐ殺虫剤まいとけ」と言われるのだが、ドロオイムシという名前にはそんな背景があったのか。
「これはガムシの幼虫、あ、ヤゴがいた!これはモノアラガイが交接(交尾)してる最中だ。2つくっついてるでしょ?これはゲンゴロウの幼虫、あ、ベニセセリだ、サワガニ!獲らなきゃー。」と草取りしている間もシンノスケ師匠は忙しい。次々に生き物の生態をレクチャーしてくれます。大人も知らないことがたくさん。
たとえドロオイムシに少しばかり葉っぱが食べられても、大量発生してこの田んぼでお米が全滅になったことがないのは、食物連鎖が起きていて天敵の誰かが適宜食べてくれているからでしょう。しかしこの虫を駆逐する殺虫剤を散布すれば他の虫も死んでしまうため、いったん何かが大量発生すると、またそれに対する殺虫剤散布…と永遠に薬剤を撒き続けなくてはならない。まさにイタチごっこ。田んぼにたくさんの生き物がいれば、自然に循環が守られるのに残念なことです。循環に目を向けたら、生き物のみならずこの国の森林・自然環境破壊やそれに伴う農業や食料自給率問題など、果てしなく学びは拡がりそう。
夕刻、みんなが黙々と草を抜いてきれいになった田んぼを眺めました。緑の列が整然と美しい。
たかが田の草取り、されど草取り。
「田んぼでお米を作る」ことが大きな目的ではあるけれど、様々な視点を持つ後期の子どもたちと仕事をすると、改めて田んぼでどんなことを感じてもらえるかな、ここでどんな気付きが生まれるのかなと楽しみな気持ちになりました。

草取り後、スッキリ

#2020

斉土 美和子

投稿者斉土 美和子

投稿者斉土 美和子

浅間山の麓に来て20年。たくさんの命に出会ってきました。淡々と生きる命、躍動する命、そして必ず限りある命。生きるって大変だけど面白い。そんな命が輝く瞬間を傍らで見ていたい。一緒に味わいたいです。

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