軽井沢風越ラーニングセンター 2023年9月28日

ひろがるチューニングによる学び(中川 綾)

かぜのーと編集部
投稿者 | かぜのーと編集部

2023年9月28日

(書き手・中川 綾/23年12月 退職)

探究コーディネーターのチャレンジ

4月から定期的に風越学園に視察見学に来ている長野県のパイオニアスクール(松本市立丸ノ内中学校・開智小学校・田川小学校)の探究コーディネーターが、風越のスタッフも研修日などに実践している「チューニング」を自ら体験し、その体験を活かして自身の学校で実際にチャレンジしてみる実践が始まっています。

丸ノ内中学校では、「忠恕の時間(総合的な学習の時間)」でどのような探究学習の場をつくっていくかをテーマにチューニングを始めました。第1回目は、3年生の先生方が発表者となり、他の学年の先生方がアドバイスグループメンバーとなりました。終わってみれば、ベテランの先生から「こういう時間が欲しかった。とても良かった」という声をいただいたそうで、上條さん(丸ノ内中)からもほっとしたような嬉しい声が聞かれました。

教職員全員が参加する校内研修の時間でチューニングにチャレンジ

また、8月21日には校内研修の時間を使って、2年生の先生方が発表者となり、2回目のチューニングの時間が持たれました。その時には、開智小学校と田川小学校の探究コーディネーターである江口さん(開智小)と小嶋さん(田川小)の他に、田川小学校の探究部会主任の小林さんも参加されていました。

既に、開智小学校の重点研究でチューニングを行った際にも、丸ノ内中学校の上條さんが進行役で伺ったということがあるようでしたので、学校の垣根を超えて探究コーディネーターが関わることは自然なことになりつつあるようですが、同じ学区の小学校の先生が、中学校のチューニングに参加することによって、
「小学校でも◯◯な経験をしてきた子たちですねー」
などと、今現在中学校で過ごしている子どもたちの、過去から未来へとつながるやりとりが自然と生まれていたのが印象的でした。

田川小学校と開智小学校の探究コーディネーターが進行役で参加

新たに生まれた小中連携への期待

研修終了後の振り返りでも、
「チューニングのように、カリキュラムなどの具体的な活動について話す際、自然に小中連携の雰囲気が生まれることの意義は大きい」
ということが校長先生からも語られ、小学校(中学校)の先生がチューニングの発表者になった時に、中学校(小学校)の先生がアドバイスグループにいることで、「9年間の見通し」を互いに持ちやすくなるのではないか、という期待感も生まれました。

探究コーディネーター同士の連携が、このような形でお互いの学校同士を繋ぎ、小中学校の9年間を見通した実践に繋げていけるよう、今年1年間でカリキュラムや目標設定などを整理していく予定だそうなので、風越学園としてもサポートしていければと思っています。

深まる探究コーディネーター自身の学び

8月31日には、田川小学校で初めてのチューニングが校内研修でおこなわれました。
お忙しい先生方に気を遣って、「30分で終わりますから!」と小嶋さんは事前に伝えていたそうですが(時間が読めるのもチューニングの良いところですね)、発表者役の先生方は事前に準備をしてきてくださっていましたし、初めてのチューニングの時間に、それぞれの先生が前向きに参加していたように感じました。

今回も、丸ノ内中学校と開智小学校の探究コーディネーターと、長野県から風越学園への派遣教諭であるおかつさんが進行役として参加しました。

この日は、4グループの進行にばらつきが出て、30分間で終わるグループと終わらないグループが出ました。それ自体はさほど大きな問題ではないのですが、研修後の校長先生や教頭先生含めた探究コーディネーター同士の振り返りでは、「ファシリテーター役」としての準備不足や理解不足についても語られ、開智小学校の江口さんは、初めて会う方々とのチューニングの進行者として、どのような関わりをしたら良いのかを考えた学びのある時間になったと話してくれました。

教職員の学びの場を設計・進行する探究コーディネーター自身が、その場をつくることでまた学ぶことになる、というとてもよい時間になったと思います。

おかつさんの当日のリフレクションには、こんな風に書かれていました。

写真は、チューニング終了後に行ったふりかえり。各校の探究コーディネーター、校長・教頭、中信教育事務所の主任指導主事が参加。大人の学びを組織する立場の先生方が、気づきを交流させている。今回のチューニングでは、様々な課題が見られたけれど、それが各校の探究コーディネーター自身の気づきによって導かれていく。次回の研修実践に向けて、何をどうすればいいのか、新たな課題をもつ場にもなっていた。そうした気づきに対して、あやゃがフィードバックをしていく。
 松本市との連携では、探究コーディネーターの先生方の学びの場を大事にしている。こうした研修の機会を確実に位置づけていることが、今までの長野県の公立学校では、めったになかったことのように思う。大人の学びを組織していく先生方が、共同で省察する場面をつくっていく。このプロセスが、ゆっくりでも、確実に長野県での探究を育む土台になりそう。風越での研修の中で教師教育学を読んだり、研修を組織したり、OJTとして風越スタッフと共同したりすることは、公立の先生方との協働実践にもつながっていく。

「子どもの学びを支える教師のための学び」の場を誰がどのようにつくっていくのか。
それは「誰か」がつくるのではなく、当事者同士でつくりあげていけることで、「意味のある学び」に大きくつながっていくのではないか。
そんな風に思える2校でのチャレンジでした。

#2023 #軽井沢風越ラーニングセンター

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かぜのーと編集部です。軽井沢風越学園のプロセスを多面的にお届けしたいと思っています。辰巳、三輪が担当。

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