2023年6月9日
風越学園には、3才から15才までの異年齢で構成する「ホーム」がある。日常的に1日の始まりの時間をホームで共に過ごしている。この時間の過ごし方は、ホームのメンバーであるスタッフと子どもたちが話し合って決め、様々な活動に取り組んでいる。決めた活動を、子どもたちは時間いっぱい楽しんでいる。とても素敵な姿だと思う。
4月から加わった私は、ホームの子どもたちや、そこでの活動に、「どう関わったらよいのか」と悩んでいた。私が関わっていたホーム3では、一週間の計画を立てて活動している。活動に加わりながらも、私には身の置き場がない感じがした。動き出すきっかけがつかめず、不安を感じる日もあった。
一緒にホーム3を担当するニシムとモイに相談すると、「どんな関わりをしていこうか、考えながらやっている」と教えてくれた。一緒に、色々やっていければいいな、と思った。
ある日、ホーム3の9年生が、ごりさんを講師とした「ファシリテーション講座」を企画したことを知った。ごりさんから「4人集めたら、やろう」と言われた9年生のノイは、仲間にかけあって、参加者を3人集め、実現させたという。
ノイは、「ホーム3では、特定の遊びが多くなっていた。どう関係づくりをしていくかと悩むことが増えていた。」と教えてくれた。関係が固定化し、広がらないことに課題をもつが、どうしていいかと悩んでいたのだろう。ホームが、誰にとっても素敵な場になるようにと、子どもが動き出していく姿を、「素敵だな」と思った。
ファシリテーション講座の第1回目。都合がつかず参加できなかったのだが、ホーム3の中学生と、スタッフのもいが参加した。講座の翌日、ごりさんは、ホーム3の様子を観察し、フィードバックしてくれた。フィードバックを食い入るように読む中学生。講座に参加したメンバーから、「いいね」「もっと、こうしよう」という声が上がる。
「この輪に加わりたいな」と思った。「子どもやスタッフと一緒に協働したい」という価値を大事にしつつも、それが実現しないもどかしさ。不安は、そこから来ていたことに気づいた。風越学園では、「協働」を形にする文化がある。協働の場にいつでも参加することができる。それぞれの価値を自由に形にすることができる場がある。参画する文化を、一緒につくっていくことを大事にしている。「一歩踏み出してみるしかないよね」と思った。
私は、3回目と4回目のファシリテーション講座に参加した。ごりさんから「おかつさんも、場に影響を与えている」というフィードバックをもらった。それ以降、「教師の振る舞いが、場に与える影響」ということを、意識してホームに参加している。
ホームについての打ち合わせはスタッフだけではなく、9年生とも打ち合わせをする。「おかつさん、○○時から、打ち合わせいい?」と9年生から声をかけられることもあるし、「来週は、どんなスタートをしようか?」と自分から相談をもちかけることもある。輪になって15分ほど、打ち合わせをしたり、さっと立ち話をしたりする。時間の長短はあるが、コミュニケーションの回数が多い。それぞれが、都合を合わせて関わろうと努力している。
ホームの輪にいる時の表情、話し方、座り方…。肯定的な場になるように、自分の居方を考える。講座に出ている子どもたちは、「ファシリの帽子を被ろう」という合言葉がかかると、自分の居方を探ろうとする。よりよい場をつくるために、スタッフも子どもも、学んだことを実践している。
そして、ホームでの活動を進めるファシリテーターとなって、中心に立つ子どものチャレンジがある。学んだこと、準備したこと、色々な経験を総動員して臨む。感想を聞くと「緊張した!!」と伝えてくれる。「そうだよね」と私も思う。爽やかな充実感を共有できることが、とても嬉しい。
異年齢の集団であるホーム。異年齢だからこそ、みんなで1つのことを考えたり、行ったりすることって難しい。安心できる同年齢の仲間と固まっている方がいいこともある。でも、異年齢がまざって一緒に何かに取り組んだ時、異年齢だからこそ生まれる豊かさがあるはず。だから、関わりあうことに、積極的に取り組んでいるのだろう。
関わりを生むことの難しさを知っているから、小さなコミュニケーションを重ねて準備をする。場においては居方に心を配る。そして、ファシリテーターとなって場に立つ経験をする。こうしたチャレンジが子どもたちから生まれているのが、すごいと思う。チャレンジの根っこには「自分も貢献しよう」という意欲がある。この意欲は、一人でなく、つくり手であろうとする仲間の存在があるから、一層強くなるのかもしれない。
ある日のファシリテーション講座の後、4人集めた講座が大きくなっている事実についてノイにどう感じているか聞くと、「感動します」と答えてくれた。私も同じ感覚をもっている。「一緒にやろう」という呼びかけに、「自分も貢献しよう」という仲間が集っていく。共同体って、こうして、ゆっくりと、でも確実につくられていくのだろう。行く末に、私もしっかりと関わっていこう。
スタッフも、子どもも、共につくり手となる。協働する者となって、風越という共同体に貢献しようとする文化がある。その文化を、今日もみんなでつくり続けている。魅力的だなと思う。学校で、子どもたちと教員が、よりよい共同体をつくっていく文化は、どのように育まれていくのだろうか?
長野市生まれ 県内色々な場所を渡り歩き、佐久市に落ち着きました。
浅間山と八ヶ岳を見上げながら、四季折々の風景を楽しみながらお散歩するのが大好きです。
風越で、自分と仲間とでつくる幸せのあり方を、考え続けていきたいです。