軽井沢風越ラーニングセンター 2023年6月9日

校内研修を観察して分析してみる 〜シャドーイングとカード観察法〜

岩瀬 直樹
投稿者 | 岩瀬 直樹

2023年6月9日

「学習者中心の学びのための教員教育プログラム」、ぼく(岩瀬)が単独で担当しているのは「観察と記録」と「リフレクション」です。
ここまで、風越で行われている授業を観察して記録したり、記録の方法そのものを検討したり、子どもの見とりを深めたりしています。
これまでエスノグラフィー(フィールドワークを用いた調査研究の方法)の論文やドキュメンテーションの文献も読み進めてきました。

この日は、ぼくが軽井沢東部小学校の校内研修に講師として行く日。
おかつさんほりけんの二人には、その研修を「実践」として観察してもらうことにしました。研修のニーズは「集団の関係性を温めるには」。90分の校内研修を観察し記録します。

校内研修の様子

校内研修そのものを「実践」として観察する機会はあまりないので、いずれ二人が研修を担当するときにつながる学びの機会と捉えました。研修担当をする私の「シャドーイング」(影になって学ぶ方法)でもあります。シャドーイングの特徴は、「観察される側の発言や行動、場合によっては感情までもを、じっくり観察することを通して学べること」です(*1)。また観察終了後、その仕事の背景や根拠になった判断などを本人にインタビューすることで学び深めることもできる方法です。みられる側(つまり私)は緊張しますが、観察される側にとっても観察の記録がフィードバックになるので気づきが得られます。

次の日、観察したことを「カード観察法」でまとめ、対話を深めていきます。
カード観察法は、共同研究者である帝京大学教職大学院の町支さんが昨年度にこのプログラムの中で実践したもので、大まかには以下の手順で進みます(この方法は昨年度、連携協定を結んでいる東京都日野市の研修でも紹介し、公立小学校の校内研修で活用されました)。

    1. 学習者を観察し、観察した事実、そこから思ったことや考えたこと、解釈したことなどを思いつく限り記述する。(同じ人を観察すると深まる)
    2. 記述したものを、何らかの軸(時系列等)で、一人1枚模造紙にまとめる。気づきや解釈など自由に加筆していく。
    3. 模造紙をもとに対話する。

模造紙にまとめた後、ファシリテーターとしての岩瀬の振る舞いとその影響、参加者の変化、研修のプログラムデザイン、校内研修を効果的にしていくには?等、3人で対話を深めていきます。同じものをみていても人によって見えること、気づきは違います。それを可視化し対話することで、新たな視点や気づきが得やすくなるんですよね。

「見えたこと(事実)」「そこから感じたこと・考えたこと(解釈)」で色を分けました。
まずは発散的にとにかくたくさん書き出すのがポイント。同じものを見たはずなのに、この段階ですでに人によって書き出すこと(見えていること)が違うんですよね。人によっては解釈の方が多くなってしまうことも。
さらに解釈はややもすると「固定的な見方のくせ」にもなりかねません。教員経験が長くなると余計にそうなりがち。だからまずは見えたことをたくさん書き(観察の重要性)、そこからゆっくり解釈の可能性を検討する。他者とやりとりする中で新たな解釈にたどり着いたり、自分のくせに気づいたり。これを繰り返すことで気づきの質が変わっていくはずです。

今回は、主にファシリテーターである岩瀬にフォーカスした観察でした。
次回は3、4年生の図工(つくるえがく)の授業を観察し「複数の学習者の学びを同時に観察して記録する」というプログラムに入る予定です。

それにしても観察され解釈されるの、緊張しました・・・・・・。

「校内研修の観察と分析」ほりけんの振り返りより

今回の研修を自分がやると考えた時、何ができるだろうか。これまでの多くの研修は、専門的な立場の人が来て、自分のペースで自分の伝えたいことを伝えたり、やりたいことをやっていくものだった気がする。なので、自分が研修をするとなると、そういうものになるのではないかと感じていた。でも、今回ゴリさんの研修を見て、ゴリさんの研修から(対話して)考えてみたり、ゴリさんの考え方を聞いたりして、研修も授業と同じで「その場のニーズに合わせて、自分のプランを更新しながらつくっていくもの」だと思った。
学習者としての自分でチャレンジして、そのものの良さを体験する事が大事なんだろう。また、ニーズに合わせて臨機応変に対応するには、参加者の表情、声、関係性を注視しなければならない。伝えることだけに意識が向いてしまうと、周りの空気を無視したものになり、せっかくの研修時間が冷めたものになってしまう。冷めたものにしないためには、参加し続ける場を作る。それって、すごく難しい。だからこそ「場数」なんだろうし、それにあった「引き出し」が必要だと思う。


*1…吉田新一郎『「学び」で組織は成長する』光文社新書,2006,p41

#2023 #軽井沢風越ラーニングセンター

岩瀬 直樹

投稿者岩瀬 直樹

投稿者岩瀬 直樹

幸せな子ども時代を過ごせる場とは?過去の経験や仕組みにとらわれず、新しいかたちを大胆に一緒につくっていきます。起きること、一緒につくることを「そうきたか!」おもしろがり、おもしろいと思う人たちとつながっていきたいです。

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