毎日うろうろ 2020年7月18日

教え子からのメールと、子どもたちに聞く“いま”

岩瀬 直樹
投稿者 | 岩瀬 直樹

2020年7月18日

10年以上前に担任をした人(既に成人)からメールが来た。偶然は重なるもので別々の年に卒業をした2人から。

それらのメールには、その1年が楽しかったこと、自分が変わっていく経験をしたこと、それが今もなお支えになっているということが書かれていて、久々のメールだからたっぷりリップサービスしてくれたんだよなと思いつつ、でもちょっとうれしかった。

楽しかった経験。自分が変わったという経験。
楽しかった経験は、その後の人生を豊かにするはず。自分が変わった、自分が伸びたという経験は「だからこの先も自分はきっと変わり続けられるんじゃないか」という自身の可能性への信頼として、ずっと下支えしてくれるのではないか、とぼくは信じている。

軽井沢風越学園の通常登校が始まって1ヶ月半。
そんな短期間で変化を感じることはないかもしれないけれど、まずは居心地がよいこと、日々が楽しいということを感じてくれているといい。その中で少しでも自身の変化の種みたいものを見つけられているといいなと思う。

かつての教え子2人からのメールに触発されて、校内をうろうろしながら何人かの人にミニインタビューをしてみた。今、どんな経験をしているんだろう。


まずは「作家の時間」に燃えていた、チサトとスミレ。

ー 風越始まって1ヶ月半たったけどどう?

チサト:作家があってたのしい!セルフビルド(の時間)好き!自分の好きなことやれるから。やりたいプロジェクトができるから。今は作家をやることが多いかなー。もう作家大好き。

スミレ:私も作家の時間がすき。読書家の時間も好き。この学校に来て笑顔が多くなった。たのしくなった。

「ゴリさん読んでみて!」  作家の時間が好きという二人のパソコンを覗かせてもらうと、2人とも3000字超の物語を執筆している途中だった。自分の作品を読んでくれる人がいる、届けたい人がいるというのは、ここまで書き手を元気づけるんだな。草稿を読ませてもらい、感想と「続きを楽しみにしているね」という期待を2人の作家のファンとして伝えてミニインタビュー終了。

2人で触発しあいながら作品を書いている3年生と5年生のコンビは、作家の仕事へと戻っていった。

ファイルを共有してお互いのを読んでいるらしい。お互いが編集者でもあるんだろうな。


続いては5年生のユキ。
こちらも作家の時間をやっているところでちょこっと声をかけた。

ー 風越始まってどう?

実際来てみたら、予想以上にたのしくてさ、友達いっぱいできたし。前は常に暇人だった。今はプロジェクトいっぱいあって暇人じゃなくなった。

ー 入っているプロジェクトいっぱいあるの?

10はあるな、少なくとも。
結構やばいんだよ。自分でもびっくりするらい。

ー 大変だね(笑)。

暇人じゃないのがうれしいの。なんかさ、暇人だとなんにもやることないのよー。うろうろしてるだけ。今はセルフビルドの時間が全部埋まってる。だって、プロジェクトいろいろありすぎて埋まっちゃうんだけど、それはそれでいいかな。なにしようかなと困るかなと思ったけど、予定ぎっしりしすぎてなーんにも困らなかった。

あとね、できなかったことに挑戦しているかんじ。例えば、表現プロジェクトでアコーディオンを初めてやってるの。0円食堂プロジェクトでは、いろいろトラブルあって、まったく意見バラバラだったり、なかなか来ない人いたり、やめようという人もいるし大変だけど、なんとかまとまって、今はね段ボールテーブル作りも順調。始めたからには最後までしっかりやらないと!早くコロナ収まってほしい。9月ぐらいには0円食堂開きたいな。

ー 自分がかわったなーと思うことある?

自分でもよくわからないけど、算数の成績上がってるし楽しい。特にファンマスね。今はがんばろうという気持ちあるよ。困ったらひっきー、かなめん教えてくれるし。がんばったらがんばったかいがあるって感じ。達成感あるじゃん。めちゃくちゃ楽しいってわけじゃないけどね。あと近くの人に「教えて」って言われると、頼りにされている感じで嬉しいな。

ー めちゃくちゃ楽しいわけじゃないって言っていたけど、何が一番好きなの?

作家の時間がすきなんだ。読んだ人からファンレターけっこうきて、うれしいの。前はね、例えば図工で観賞会しましょうみたいのあったけど、誰一人送ってくれないこと多くて。だけど、今回は送ってくれてうれしい。だから私もできるだけファンレター書いているの。

そう言ってユキは作家の時間に戻っていった。ユキは何年か前のサマースクールで一緒に過ごしたことがある。楽しそうで忙しそうで本当になによりだ。


続いては、4年生のユーマ。

ー 風越きて1ヶ月半経ったけどどう?

ぼくは前の学校では本をよく読んでた。その気になれば図書室の本、全部読めちゃったぐらい。ここはさ、本がたくさんあって読み切れないぐらいなのがいい。たくさん読んで心の世界が広がったんじゃないなー。あとは友達増えたかな。

友達がさ、いろんな友達いるんだもん。この学校で10人くらいいる。

最初は(勉強やるの)めんどくさかったのね。なんでやんなくちゃいけないのって。今はやる気出してる感じ。算数でも理科でもやる気出してるよ。

ー 算数もやる気出してるんだ。

算数苦手だけど、やるしかないって感じ!

ー なんでそんなふうに変わったの?

先生とか友達とかの影響かなー。みんな前向きな人が多いんだよね。怒ったり、泣いたりしても「大丈夫?」って言ってくれる。それがうれしい。

ー 異年齢のホームってどんな感じ?

ズームのときはみんな同年代だと思ってた。学校で会ったら「でか!」とかなった(笑)。いろんな人が混ざってるほうが好き。だってさ、別の学年の人、普通は話しかけにくいけどさ、ここでは話しかけやすい。シュウゴ(7年生)とかすごいしっかりしていて、まとめてくれたりするんだよね。


ミニインタビュー後、ユーマはセルフビルドの時間に理科室へ向かった。スタッフの曳田と2人で本を調べて「手作り電球作りやってみよう」ということになったそう。

曳田は、日々一人ひとりの「〜したい」に寄り添ったり、一緒に探したりしながら、一緒につくっている。読書命!のユーマの関心はじわじわ広がっていっているようだ。

曳田と、シャーペンの芯を使う電球の作り方を解読。理科室の道具で作っていく。

何度も実験するのだけれどなかなかうまくいかない。電源が弱いのか、シャーペンの芯が太すぎるのか。

何度も失敗するうちに、エナ、ソウスケが「なにやってるの?」と合流。一緒に実験することに。事柄(一緒にやってみたい何か)を通じて関係がつくられていく。人のよりよい関係はそうやって育っていくものだと思う。なんだなんだと前期の人も見学に来て、じわじわと人が増えていった。言葉では「個別」と「協同」を分けるけれど、子どもにとってはそこに切れ目はない。場面やものごとに応じて一人になるときもあればいっしょにやるときもある。それ自体が生きていくプロセスだと思う。だから、学校の中でも、ある意味自然に、一人になったり一緒になったりみたいなことが、自由に行き来できるのはステキだなと素直に思う。

10回近く実験してようやく…

ちょっと光った!次こそは!というところで、

「あ!今日はペットボトルロケットプロジェクト(4年生理科)があったんだ!ごめん!あとよろしく!」とユーマは去って行った。

おい!最初に始めた人なのに(笑)!

今日こそどうしても新記録を出したかったらしい。「〜したい」が同時進行してきた証拠。黙々とロケットを改良する。「〜したい」が重なる経験。それもまたいいなと思うわけです。

残ったメンバーでさらに実験は続き、そして…。


(「肝心なときにユーマがいない」とエナ(笑)。)

エナ、ソウスケはもちろん、一緒にやっていた曳田、そしてぼくも感動。その後何回かやってみたものの成功しなかった。そこでソウスケが「月曜日も続きをやろう」と、実験道具をまとめて箱に入れて張り紙づくり。

ユーマの「〜したい」がソウスケの「〜したい」に感染し、そしてより広がっていく。こうやって関係性の中から「〜したい」が生まれることもある。ユーマも月曜日やってくるだろうな、きっと。そして新たな関係が生まれるかもしれない。

ここからどんな探究が生まれていくだろう。楽しみだ。

自分の「〜したい」を見つけて、「楽しい」を自分でつくり出している人たち。自分の変化をじんわり感じている人たちに出会った1日。

もちろん、まだそれに出会えずにいる人もいる。
大人である僕たちはそんな姿に出会うと焦ってしまう。「早く没頭できる何かに出会わせたい!」と。でもまだ1ヶ月半なんだ。じっくり、ゆったり、たっぷり、まざりながら一緒に探していこうと思う。このミニインタビュー、1年かけて全員につづけていこう。

かつての教え子人とはコロナが収まったら10年以上ぶりに会おう、という話になった。その頃のことをどんな経験として残っているのだろうか。ちょっと楽しみ。

そして今軽井沢風越学園にいる人たちは、卒業の時、20歳になった時、ここでの経験をどう語るのだろう。それを遠い将来にきくのも楽しみだな。


蛇足で今日の1枚。上記の実験をしていた理科室で、1年生のワカコとアイに声をかけられた。

「ごりさん!幼虫がさなぎになりかけてる!幼虫はさなぎになるときに、下痢をしてからなるんだって。シンノスケ(5年生の虫博士)が言っていた!」
後から調べるとどうやら本当らしい。

3年生理科のプロジェクトに参加して学びを先取り(?)している2人。他の学年のプロジェクトにも関心があれば自由に参加できるゆるやかさと流動性はもっともっと大事にしていきたいな。

岩瀬 直樹

投稿者岩瀬 直樹

投稿者岩瀬 直樹

幸せな子ども時代を過ごせる新しい学校を創ります。私は公教育の可能性を信じています。子どもが持つ学ぶ力を信じています。教員の力を信じています。それらが最大限発揮される学校とはどのような形でしょうか。これまで学級で実践してきたことを出発点に、子どもも大人も「こんな学校に通いたい」「こんな学校を増やしたい!」とワクワクする学校を、一から創っていきます。

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