2020年9月4日
6月1日に通常登校がスタートし始まったテーマプロジェクト(探究の学び)。私とたいち、ざっきーが担当する5、6年Aグループ(5、6年生はAとBの2グループに分けた)では、「コマ撮り」をテーマにすることにした。私たちにとっても初めてのコマ撮り。右も左もわからないまま、子どもたちと一緒に新しい世界へ飛び込んだ。
素人ながら、一人ひとりが監督として、作品をつくっていく。手探りの日々のなかにも、私にとってはなかなか言葉にしがたい心地良さがあった。ひかちゃん(かぜのーと編集部)が風越へ来てくれたこの機会になんとか言語化しようと、私たちが「スタジオ」と呼んでいた活動場所の外に広がる原っぱの上で対談を行うことにした。
ぽん:私、アウトプットDAYでの作品上映会後に行った監督ペアインタビューで、子どもたち一人ひとりが自分の言葉で自分の作品を語っていたのが印象的で。なんかその風景がすごく好きだったんだよね。
たいち:うん、あれはよかったよねー。よかった。
ぽん:インタビューの場所、まさにこのあたりだったよね。その風景見て、一人ひとりが監督として自分ごとで作品に向き合っていたんだなって感じたんだけど、たいちとざっきーはどんなふうに感じてた?
たいち:そうだね。いや、監督インタビューよかったよ、よかった。うん、しびれた。一人ひとりが監督として、自分の言葉で語ってたよね。
ざっきー:アウトプットDAYの後にインタビューをしたのもよかったのかな。その前だと、あそこまで話せなかったんじゃないかなって。見てもらって、反応がすごく返ってきて、改めていいもの作ったなっていう実感とか自信にもつながっただろうし。だからこそ話せる感じもあったんじゃないかな。
ぽん:途中けっこう、作品づくりを個でやるか協同でやるかで、迷ったじゃん。
ざっきー:うん、迷った。プロジェクトを作り始めた時から何回か僕らの中で話題になったよね。
ぽん:「みんなである絵本を題材にして、1つの作品を作るとかもいいんじゃない?」っていう魅力的な提案を、他のスタッフからもらってすごい揺れたりとか。それでも結局一人ひとりにしたけど、二人はどんなふうに思ってた?
たいち:あの時、ぽんのすごみを一番感じたな、俺は。一貫して個なんだなっていう。いや、すごいと思った。俺はすぐごちゃごちゃってやっちゃえばいいじゃんっていうタイプだから。
一回、じゃあ協同で!ってなりかけたときあったじゃん。でも、その時も、ぽんは「じゃあ〜もういいよ!それでもいいよ!?」みたいな。なんとなく決まりかけたけど、なんか違うよねって粘る感じがあって。それは自分とあきらかに違うところで、だからこそぽんと一緒にやってよかったなぁっていうのはすごく感じる。
ひかり:ぽんはさ、なんで個がいいなーって思ったの?
ぽん:元々、映像っていう一つの表現方法に出会い、自分のものにしてほしいなっていう思いもあって、今回のプロジェクトの題材を「コマ撮り」にしたんだよね。それでまず、子どもたちとコマ撮りの出会いとして、それぞれ個で試し撮りみたいなのをして。
そうしたら、もうその時点で個のこだわりがたくさん出てたし、そこから垣間見える一人ひとりの世界みたいなのがすごいおもしろかったの。だから、そこを無理にまぜたくないっていうのはあったし、色んな世界、みたいなのがあっていいんだなっていうのを子どもたちが風越で初めてやるこのプロジェクトで、実感を通して学べたらいいなという思いがあったから、結構そこにこだわったのかも。協同の良さみたいなのももちろんあると思うから、正直揺れたりはしたんだけど。
あとは、個か協同かっていうより、大切なものがある気もして。たいちがさ、石川晋さんにこのプロジェクトについて相談してくれた時にもらった言葉。あれもけっこう後押しになったな。
たいち:それは俺も思った。個にするか協同にするか迷ってるんですよねーって言った時、晋さんが「いや、でもそれは媒体が決めるんじゃない?」って。「二人で写真撮れないじゃん」、「カメラは一人で撮るもんだよ」、みたいな。
そこから、映画ってみんなでつくるけど、あれはやっぱり監督がつくりたいものをつくるんだよねという話に俺たちのなかでもなって、誰かが監督で誰かが脚本で、みたいなのを作りたかったらそれでもいいけど、でもここでは、一人ひとりが監督になってほしいよね、ってなったんだよね。ごっこじゃなくて、よりリアルなプロジェクトって考えると、やっぱり個なのかなっていうのは思った。
ざっきー:うん、媒体の話はすごく納得したな。たしかに、プロジェクトを通して子どもたちにどうなってほしいんだろうみたいなのと、媒体の選び方は関係してくるなって。あと、やっぱり本物の監督を招いたっていうのもすごく大きかったよね。
ぽん:あー、初回ね。コマ撮りアニメーション作家・八代健志監督の本物の作品を観て、そのあと八代監督登場!みたいな。まずバーンと本物の出会いがあるっていう。
ざっきー:うん、初回に八代監督が来て、あんなにおもしろがって自分の作品を紹介してくれて。あれって、やっぱり監督だからこそできることだと思うし、この流れで子どもたち一人ひとりが監督にならないっていう選択はないよね〜(笑)。
ぽん・たいち:たしかにたしかに(笑)!それはたしかにな〜!
ざっきー:これこそが憧れ!みたいな。八代監督すげーってみんななってるのに、きみは監督になれないよって言われたら、変な感じになるなって。
たいち:プロジェクトつくるってなると、変にこうプロジェクトつくる!みたいになっちゃってさ、リアルさみたいなのが抜け落ちちゃうということが起こっちゃいそうで、そこは気をつけなきゃなって思ったよね。
ざっきー:そのリアルさっていうのが、社会に開かれたプロジェクトなのかみたいな点で考えたりもする。僕なんかは社会や大人にとってのリアルさみたいなのを発想しがちだけど、こぐまさんが、「それは子どもにとっての本物なのか?」みたいな話をしてくれることが結構あって、今回もこれは子どもにとってリアルなのかな?って考えたな。
ぽん:私、二人が子どもに伴走する姿から学んだなってことたくさんあって。その子の実現したい世界みたいなものに、その子の目線で寄り添っているなと感じる瞬間がたくさんあったんだよね。ざっきーが、ノイの作品を一緒になって考えたりしてた姿とか。
ざっきー:僕らが素人だったのが結構よかったよね。一緒になって困ってた感じがあって、でもその一緒になって悩むっていうのが、伴走にとってすごく大切なことなのかもしれない。
ぽん:たしかに、それすごいわかる。一緒に悩みまくった。
ざっきー:締め切りがあって、やばいね、どーしよう?みたいなヤバさを共有してて。とはいえ、つくらないとなーみたいなのは、お互いわかっててね。
ひかり:この3人のチームワークは、どういう感じだったの?
たいち:最高でしょ。
全員:(爆笑)
たいち:いや、ほんと最高だと思うよ。多分ね、ざっきーがすごいまとめてくれてる。さっき言ったみたいに僕とぽんは違いはあるけど、どっちかと言うと、ゆるい系、計画立てない系、感覚派タイプ。で、そこにだいたいざっきーが「そろそろ計画立てましょうか?」みたいなことを言ってくれる。
ざっきー:いや、計画立てるっていうか、僕がわからないだけ(笑)。あれ、これってどうだっけ?みたいな。
ぽん:いや、ざっきーすごく効いてるよ。ありがとう〜〜ほんと。
ざっきー:3人っていうのもよかったよね。3人だとこう、それぞれのポジションを少しずつ揺らしながら捉えられるなって。そんな感じ、しない?
ぽん・たいち:するするする!
たいち:あと、これも話題になったけど、作品はすごいいいものできたじゃん?頑張ってつくった感じもあったし。でも本当は、こう整えすぎなくてもよかったなとか、誰かの作品は途中で終わってるとかもあってよかったんだろうなーっていうのは思ったな。必死に形にしなきゃっていうのが、なんかあったよなあっていうのは、ちゃんと覚えておきたいなーって。
観にきてくれた人は、すごいねとか言ってくれたけど、それこそ子どもたちにとってはもしかしたら結構グイグイ引っ張られた結果なのかもしれないし。ほんとにそれでよかったの?みたいな気持ちは、なんかちょっと、ね。
ぽん:うん、ほんとそうだねー。
たいち:でも、ぽんは言ってたよね。出せない子がいてもありだと思ってたって。俺はもう思ってもなかったからさ。ざっきーはどう思ってた?
ざっきー:僕も、出せなくてもいいと思ってた。全然それでもいいし、途中で終わっちゃう作品とかもあってもよかったのかなとかも思うな。なんかプロジェクトって、プロジェクト毎にいったん区切るけど、子どもたちの学びは区切れないでしょ。だから、出せなかった、失敗しちゃった、うまくいかなかったみたいなのも、次に生かされて学びはずっと続いていくから。
カイ(近くにいたコマ撮りプロジェクトの子ども):ねーざっきー!ざっきー!今度こそ!(飛行機の模型を飛ばす)
ざっきー:なんか、飛行機飛ばしてるけど、そこの彼も‥ね。
ぽん:彼、ドラマがあったんだよねぇ。
ざっきー:締め切りなのに終わらなくて、休日まで使って必死にやったのに、上映会数日前につくっていた作品のデータが全部消えちゃって。
たいち:(カイに向かって)な、大変だったよな?カイな。きつかったよな。
(カイ、うなづく)
ぽん:で、その時「もうやんない。出さない。」って言ったんだよね。私、声かけられなかった。結局「やる!」って言って、もう完成している子どもたちも、大人も、総出で必死で手伝ったよね(笑)。
ざっきー:ああいう時に、自分でやるって言ってやらないと、自分の作品にはならないだろうなって思ったな。最後、カイがやり直すことを決断してくれたのは、よかったって思ったけど、やらないって言ったら、僕は本当にどこまでオッケーだったんだろうなって。試される場面でもあったよね。
たいち:オッケーだったんじゃない。俺も、どっちかっていうと元々「しょうがないじゃん」ってタイプだし。でも、意外とこの前のアウトプットDAYに関しては、なんかそういう心の余裕なかったのかなーとも思うかも。
ぽん:でもさ、カイが監督インタビューで、まず第一声「くるしみも、たのしみも、たいへんなこともあった」みたいなことを遠い空を見ながらしみじみ語ってて。なんかわかんないけど、あのみんなで締め切りに向かって進んでいる感?みたいなものの良さもあったのかもな〜とも思う。
ざっきー:そうそうそう、そういった意味で「協同」だったのかもね。なんか一体になってる、みたいな。作品は個でつくるけど、一緒にやっていくメンバーっていう感じはだんだん強くなっていって。9月に入って新しいプロジェクトがはじまった今でも、チームとしてそれがちゃんと機能している感じはある。そういった協同なのかもね。
たいち:うん。説明しがたいチームじゃない?なんか。
ざっきー:そうそう。この間もさ、夏休み明けで久しぶりにみんなで集まって、ちょっとシンノスケがその活動に乗れなくてわちゃわちゃしてたけど、ちゃんとそれをある程度受け止めてくれるメンバーがいて、シンノスケも元の活動に戻れるみたいな場面もあったりしたよね。なんなんだろうね?あの雰囲気というか。
ひかり:そうそう、私も仮上映会をした日に見たコマ撮りプロジェクトの様子が、すごくいい雰囲気だなって。自分が監督してつくった作品をみてほしいって気持ちが、子どもたちそれぞれにあって、いい意味での緊張感が場に広がっているのもいいなって思ったし、他の人の作品を観て「それめっちゃおもしろいじゃん!めっちゃいいじゃん!」ってリスペクトしあっている感じが、すごくよかった。
それから、3人の姿も。スタッフたちが楽しそうなのも印象的だったなって。たいちやざっきーの言う、その言いがたい雰囲気っていうのは、ちょっと入った私でもすごく感じたんだよね。
たいち:昨日も思ったことがあってさ。プロジェクト中に、ユーミンが幼児と一緒に、「森にお昼食べに来てね」って招待券持ってきたじゃん。その時に、ユーミンはプロジェクトやっている時に乱入していいかな?ってちょっと迷ったみたいなんだけど、でもなんか入っていいっていう空気が出てたから入った、みたいなことを言ってて。まさにそうだなーって思ったんだよね。
きっと入ってきやすいし、出ていきやすい。うちの子たちも、勝手に出ていくし、勝手に帰ってくるしさ(笑)。ちょっとうまく説明できないんだけど…なんだろうね。だれか上手に説明して?
ぽん:私もできないけど(笑)、でも幸せな空間なんだよね。6月とか、結構忙しない毎日でしんどい時期とかもあったりしたんだけどさ、このプロジェクトの時間は心の中でスキップできちゃうみたいな、そんな感じあったな。
ざっきー:あ〜、それわかるな〜。
ぽん:あのメンバーが揃って、顔見てほっとするみたいな。そんな力入れなくていいなっていうか。なんなんだろ?うーん。ざっきー、最後、言語化して(笑)。
ざっきー:わかんない(笑)。でも、ごりさんとかはよく、「ゆるやかな協同」って言うじゃん。ゆるやかな協同だったのか?と思うとさ、どうだったんだろうね?
たいち:うーん、でもなんかさ、ゆるやかな協同って言いたくない感じ。わかる?その言葉に回収されたくない感じ。わかんないけど。
ざっきー:活動自体は協同じゃないんだけど、コミュニティとして共同体であるみたいな感じ?
たいち:だってさ〜、オナラできるんだよ?プロジェクト中に(爆笑)。で、その時俺、確信したよね。ここは安全な場だなって。
ざっきー:そうそう、安全な場なんだよね。それは、僕らにとってもね。子どもも大人も提案できるし、試せる場みたいな。
ぽん:うん、わかる。私たちにとってもだね。一人の人として大事にされている感じがするんだよ。その、ブ〜ッのあとさ、みんな和やかに笑って?苦笑してさ、次の活動へ行く感じとかも、まさにそう。
ざっきー:それを深く取り扱わないで、さっと流すんだよね。はいはい、みんなやることあるから、みたいな。そう、みんなやることあって来るようになったんだよね、だんだん。やりたいことを持ち寄れるようになってきたというか。
ぽん:誰かが(うっかり場を)乱しちゃうようなことをしても、ふっとなんかこう戻るよね。なんだろうね、あれ。やりたいことをど真ん中においたコミュニティって、居心地がいいのかもしれない。
ざっきー:それこそ子どもたちにとっては、他のメンバーがどういう存在だったかとか、ここがどういう場なんだろうっていうのは、今年度が終わって聞いてみたいかも。僕たちも、あとプロジェクト残り2つやったあとには、言葉にできるのかな(※)。
※テーマプロジェクトは年間6本の予定だったが、本年度は春にオンライン期間があったため年間4本。
ひかり:次のプロジェクトも、子どもも大人もメンバーが一緒なんだよね。じゃあ次が終わった時に、またこうやって話そう。
ざっきー:そうだね。今回は全然そんな安全な場になんなかったぞ!みんなめちゃイライラしてたぞ、ってなるみたいなことも、もしかしたらあるかもしれないしね(笑)。
ひかり:うん(笑)。今回の対談は、これで十分記事になる気がする。もうちょっと話したいことあれば話してもいいなあと思っているけど、どう?
たいち:話そうよ、もうちょっと(笑)!これいい時間だよ。俺、結構なんかこうプルってなったよ。プルプルってなったよ。
ぽん:でも、こういう感じの振り返りが、毎日続いてたよね。
たいち:そやね、ほんとそれ。
ざっきー:振り返りが結構雑談だったんだよね。
たいち:いいアイデアが生まれた時も、雑談だったんだよ。だからもうさ、いま絶対(いいアイデアが)生まれないわ!みたいなのもわかってきたよね。
ぽん:そうそう(笑)。あとはさ、色んな人に相談したりしたよね。
たいち:そうそう、だから結構このプロジェクトの裏には色んなスタッフがさ、関わってくれているんだよね。まずはしんさんとか、ごりさんとかももちろん。
ざっきー:ね。話聞いてくれたり、アイデアくれたりとか。
ぽん:あとスタッフだけじゃなくて、外部の人の力もすごくお借りして。八代監督には初回の出会いからはじまり、プロジェクトを通じて本当にお世話になって。佐久市子ども未来館の館長のなおやマンさんも快く協力してくださって、子どもたちの作品をプラネタリウムで上映してくれることになったり。
今はその上映会に向けたパンフレット作りを、あすこまに手伝ってもらったりもしてる。本物の社会とつながっていくことも大切にしていたなぁ。たいちも常に外の人にアドバイスを求め続けてくれたりとかね。
たいち:俺、そういうタイプなんだよね。でもそれがどうなのかな〜って思うこともあるかも。すぐ人に「こう思ってるんだけど、どう思いますか?」とかって言いたくなっちゃう(笑)。ぶれぶれなのよ。
ぽん:それがすごくいいんじゃん。これからも色んな人の力を借りながら子どもたちの学びを支えていけたらいいなぁって思う。次のプロジェクトも楽しみだね。
(2020.08.28談)
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