風越 参観記 2020年7月16日

「プロジェクトアウトプットDAY」1日参観記(前編)(古瀬正也)

かぜのーと編集部
投稿者 | かぜのーと編集部

2020年7月16日

はじめまして。古瀬正也と申します。(風越スタッフのみなさんからは「まーぼー」と呼ばれています。)普段は、フリーランスのワークショップデザイナー、ファシリテーターとして活動をしています。

軽井沢風越学園とは、3年前に「わたしたちワークショップ」で、2年前に「風越コラボ」で、ご一緒させていただきました。

最近では、CDP(カリキュラム・ディベロップメント・パートナー)として、スタッフのとっくんから「かざこしミーティング」の相談を定期的に受けています。(この時間が毎回すごくよくて…。民主主義の芽はここから育まれていくのだ!とか、二人して熱くなっています。)

さて、今回は、2020年7月1日(水)に開催された「プロジェクトアウトプットDAY」に参加してきたので、そこで見聞きしたこと、感じたこと、考えたことを、ありのままに「1日参観記」として書いてみます。ちょっと長いですが(いえ、随分と長いですが…)お付き合いいただければと思います。


いないけど、いる。歓迎とは、そこまでにかけた時間。

時刻は、8時20分頃。駐車場に入ると、他にも出入りする複数の車。そうか、今は登校時間か。と気づきながら、校舎の入り口へと向かいました。

校舎に入って、まず、目に飛び込んできたのは、この大きなアーティスティックな二枚の垂れ幕。次いで、中央には「Project Output」の文字。おお!一挙にわくわく感が高まりました。

入り口に、こういうのがあるのとないのとではまるで違う。なんだか、歓迎されている気持ちにもなる。きっと、それは、この垂れ幕の背後にたくさんの子どもの存在が感じられるからなんだろうな。垂れ幕を描いた時間があって、それを上に掛けた時間があって(これは大人が手伝ったのかな?)そうやって、この光景が生み出されている。そう、だから、いないけど、いる。この光景を生み出すことに関わったすべての存在が、ある意味では、この垂れ幕として僕を歓迎してくれたんだな、と感じました。歓迎とは、そこまでにかけた時間が生み出すものなんですね。


それぞれの「朝のつどい」

気づくと、時刻は8時30分過ぎ。ちょうど「朝のつどい」があちこちではじまりました。部屋の中でサークルになっているホームもあれば、部屋の外で床に座ってサークルになっているホームも。

いずれにしても、サークル。円になれば、お互いの顔もしっかりと見れる。何よりも、円には角がない。前もなければ、後ろもない。だからか、スタッフもその輪の一員のような感じがある。とは言え、スタッフはスタッフとしての存在感もあって、まさに家(ホーム)の主のような雰囲気もありました。

ここで一つびっくりしたのが、スタッフのたいちさんの後期のホーム「こ」。よくよく見ると、ある子がノートPCをサークルに差し向けて持っています。注視すると、画面には一人の子どもがいます。なるほど、オンライン参加しているのね。それにしても、この「オンライン参加」があまりにも当たり前な感じだったことには、驚かずにはいられませんでした。(しかも、そのサポートを子どもたち自身がやっていることにも…。)きっと4月からのオンライン体験が、オフラインとオンラインの混合をより日常的な習慣にしたのでしょう。

一方、とっくんの前期のホーム「え」では、彼がつくったお便りを配って、今日の「プロジェクト アウトプット DAY」について説明していました。あとでその資料を見させてもらいましたが、大きな写真とひらがなだけで書かれていて、低学年の子でもわかるような工夫がされていました。

(それにしても、このお便り、今日だけではなく、毎日発行しているというのだから、これまた驚きです!)

朝のつどいに答えはなく、それぞれのスタッフが、それぞれのやり方で、それぞれのホームをつくっていました。


オープニングセレモニー。どこまでも、子どもが主体。

9時ちょっと手前、「オープニングセレモニーをするので、皆さん、体育館にお集まりください」との校内アナウンス。そのアナウンスが「子どもから」であったことにささやかに驚き、そうか、今日は子どもたちが自分たちでつくっている場なんだな、と再確認しました。

体育館に入ると、そこには大きなスクリーン。前には、マイクを持った高学年だろう男の子。異年齢の中にいると、よりお兄さんに見える。そして、ここでも、やっぱり司会は子どもなのね、と感心しました。

しかも、彼の進行がこれまた素晴らしかった。一方的ではなく、参加型。それぞれのプロジェクトに対して「どんなプロジェクトで、何が一番楽しかったですか?何が一番大変でしたか?」とインタビューする形で進めていました。

インタビューが終わると、今度は小グループに分かれて、「自己紹介」と「今日までに頑張ってきたことや見どころ」を共有する時間。各グループでは、ちょっと上のお兄さん・お姉さんがリーダーシップを発揮しながら、進行していました。

ちなみに、この輪の中にスタッフはいません。一歩引いたところで見守り、何かあったらサポートできる距離感にいる。どこまでも、子どもが主体。やらされている感じが一切感じられない。自分たちで考え、自分たちでつくっていく。開校からの約3ヶ月で、子どもたちの主体性は溢れ出ていました。


プロ並みのコマ撮り動画

9時30分から、保護者もぽつりぽつりと来校し、いよいよ「テーマプロジェクトの発表」がはじまりました。受付でもらったパンフレットを見ると、いろんな場所で、同時多発的に、いろんな発表が行われています。あれもこれも行きたい。でも、全部まわるにはどうしたらいいだろう…と、ここでは参観者も例外なく、主体性を発揮せねばなりません。

そこで、僕が最初に訪れたのは、「はじまりから、おわりまで。」と題されたコマ撮り動画のプロジェクトの発表でした。5・6年生のテーマプロジェクトの一つ。上映時刻に近づくと、入口付近の子どもたちが「まもなく、はじまります〜」「まもなく受付終了です〜」「またのご機会を〜、ははっ(笑)」とか言っていて、なんだか楽しそう。会場内では「小さい子は前へどうぞ」というアナウンスもあって、低学年の子たちへの配慮もありました。(こういう小さな配慮が本当に素晴らしいなと思いました。)

上映時間は約30分。1人1〜2分のコマ撮り動画が次々と上映されていきます。まず驚いたことは、同じような作品が一つもない、ということでした。例えば、2本のポスカがまるで人間のように振る舞いながら大移動するという「ポスカ大移動」。針金でイモムシをつくって、そのイモムシが大きくなり、外の木に止まってサナギになり、蝶になるまでを描いた「針金イモムシ」。体育館を全面的に使って、複数の戦闘機が飛び交い、闘う場面を描いた「たったの4機で、町を守れ!」。飛行機から出る煙も綿で表現していたり、こだわりが凄い。どの作品も、BGMや効果音もこだわっていて、動画とぴったりと合っている。その完成度はプロ並みに見事なものでした。

また、発表のスクリーン付近には、寝転がっている低学年の子もいたり。でも、その感じをみんなで許容している雰囲気も、これまた良い。「こらっ!そんなところで寝転んでいたら、ダメじゃないか!」と怒るような人は誰一人といない。そして、朝見たノートPCがスクリーンに向かって置かれていて、どうやら「オンライン参加」で見ている様子。あとからスタッフに聞くと、オンライン参加の子はこのチームのメンバーでもあり、家でしっかりと撮影をして、コマ撮り動画を作り上げたのだとか。

動画の作品も多様だけど、「参加の仕方」も多様。一様に強制されることがない。それぞれの状況の中で、それぞれの「やりたい」を実現させてくれる。誰一人置いてけぼりにしない。そんな空気感が漂っていました。

上映会場の外にあった「こまどり体験コーナー」


美しいってなんだろう?それぞれの「美」

次に見に行ったのは、3・4年生の「美しいってなんだろう?」のプロジェクト。僕が会場に着いた時には、ちょうど外のテラスでの演奏が終わったところで、ぞろぞろと室内に入り、室内での次の演奏がはじまりました。演奏直前の無音の緊張感。そこから綺麗な鉄琴とピアノの音色が重なって響き渡り、とても素敵な演奏でした。

そのあとには、パワーポイントを巧みに使いながらの、地球に関する発表もありました。途中、「ガガーリン」という言葉も出てきて、えぇ〜!そんなことも知ってるのか〜!と驚きながら、いろいろ探究して勉強したんだな、と伝わってきました。

最後には、「私たちが撮った写真を展示しているので、ぜひ見ていってください。気になることがあったら、ぜひ近くの子にも聞いてみてください」とのアナウンスがあり、展示を見る時間となりました。

アナウンスの通り、子どもたちに声をかけるスタッフや保護者の方もいれば、写真をじっくり見ている人もいたり。ここでも参観側の「参加の仕方」が多様。僕も写真の近くにいる子に「どれ撮ったの?」「撮る時に何かこだわったことある?」と聞いてみたら、「ここの緑と、手前の砂利の色のコントラストが、なんかバランスがいいなって思って」と返ってきたり。はたまた、別の子に「自分が撮った写真の中でどれが一番お気に入り?」と聞いたら、間髪入れずに「これ!」と空の写真を指差して紹介してくれた。「なんか、この空の色が気に入っているんだよね」と。

聞いたら、ちゃんと返ってくる。きっと自分にとっての「美」をしっかり感じとっているんだろうな。「なんかよくわからないけど、これが好き」「なんか気に入っている」と、まだまだ言葉にならないけど、そこにはその子にとっての大切な「美の感性」があるのだと思いました。

「美しいってなんだろう?」という同じテーマのもとで、楽器演奏をする子もいれば、調べて考えたことを発表する子もいたり、写真を展示する子もいる。探求の仕方も、表現の仕方も、人それぞれ。「さぁ、みんなで演奏しましょう!」と一律ではないのがいい。探究や表現の仕方を「選べる」。そのことが子どもたちの主体性を発揮させ、「美の感性」の蛇口を開いたのかもしれません。


音とは何か?火を使った実演。

次に訪れたのは、7年生のホーム「き」の「『見えない』を『見えるに』」をテーマにした「〜音とは何か〜」のプロジェクト。会場の体育館には、大きなスクリーンと大きなブルーシート。ちょうどブルーシートの上で何やら実演しているところでした。

いったい何をやっているのだろう…と、しばし様子を見ていると、なんとっ!?火がついた!おお、火を使うのはありなんだ!と驚いて間もなく、火にスピーカーを近づけ、そこからモスキートトーン(蚊が発する17kHz前後の高い音)が響き渡る。火に変化はない。続いて、車のエンジン音に切り替わる。すると、たちまち火が消えた。

そこで間髪入れずに、「さて、ここで問題です!なぜ、モスキートトーンでは火が消えなかったのに、エンジン音では消えたのか?」とクイズがはじまりました。しかも、「近くの2〜3人と話し合ってみましょう」とのアナウンス。

火を使った音の実演は、まさに体験学習。実際に実験して、確かめて、その体験から学んでいく。知識だけでなく、体験を伴うことで、より深い知が身につく。

さらに、ワークショップデザイナーとしての観点から言えば、最後の「近くの2〜3人と話し合ってみましょう」は、なかなかの名案。きっと日常的にスタッフがそういう関わり方をしているんだろうな、と感じました。

子どもたちは、決して学習の「内容」だけを学ぶわけではなく、日々のスタッフや子ども同士の関わり合いの中で、いろいろなものを学んでいるのだろうな、と思いました。


「気づき」の更新。そして、一人ひとりが一人ひとりにとっての先生。

続いてやってきたのは、5・6年生のもう一つのプロジェクト「色と形で表現しよう」。理科室では、布の「染めの体験」が行われていました。

ホワイトボードに目をやると、興味深いものを一つ発見しました。手順2の「布をしぼる」の「気づいたこと」の欄。「まずぬらすと、やりやすい」の「やりやすい」の部分に横線の訂正が入り、「モットクワシク!」と矢印が書かれ、「液がくっつきやすい」と書き直されていました。

どのような経緯でこのような痕跡が残ったかは知りませんが、少なくとも、「やりやすい」という〈漠然とした気づき〉から、「液がくっつきやすい」という〈より詳しい気づきへ〉と変化していったことが読み取れます。しかも、この最初の気づきを消さないところが、またいい。気づきとは、更新されていくもの。その更新プロセスこそが、「学ぶ」ということなのかもしれません。

また、図工室では、紙を折って、染めて、そっと広げると、きれいな模様が広がる「おりぞめ」体験が行われていました。ここでは比較的、低学年の子たちが参加していて、お姉さん・お兄さんたちがやり方を教えていました。

年上の子たちが、年下の子たちに教える。異年齢ならではの光景でした。教える存在は、決して先生だけではない。ある時は、お姉さん・お兄さん。またある時は、何かに詳しければ、年下の子でもあっても、その子が先生になるのでしょう。ここでは、一人ひとりが一人ひとりにとっての先生なんだな、と感じました。


学んだことは「みんなでそうだんする」こと。

次に、3・4年生の「えんげき お話プロジェクト」にやってきました。教室に入ると、たくさんの人が床に座って子どもたちの演劇を見ていました。僕は一番後ろになってしまったので、あまり声が聞こえなかったのだけど、でも、舞台上の子どもたちが一生懸命に何かしている様子は伝わってきました。時々、恥ずかしがりながら、時々、モジモジしながら、時々、グダグダしながら…。

終わった後、教室前の掲示物を眺めると、これまでの経緯などが写真つきで展示されていました。ああ、この日のために、いろんな準備をしてきたんだな…と伝わってきます。

その中に「今までやってきたことをふりかえってみよう」の振り返りシートがあって、「お話づくりを通して、学んだことはどんなこと?」という質問に対して、「みんなでそうだんする」「きょうりょくしないといけない」と書いている子がいました。そうか、演劇のいろはを教わっただけじゃなくて、演劇をつくるプロセスの中で他者とのコミュニケーションについて学んだのね、となんだか嬉しくもなりました。

きっと完璧に発表することが全てではない。すでに準備の中で多くのことを学んでいるのだから。もちろん発表は発表で大切。たくさんの観衆に見守られながら、その緊張感の中で発表する、その体験そのものが大切なのだと思う。見せて・見られる場。この体験の繰り返しが、それぞれの自己表現力をも育んでいくのだろう、と感じました。


バクテリアアート。予期せぬ副次的な学び。

続いて訪れたのは、7年生のホーム「け」の「~菌とは何か~」のプロジェクト。入り口には「バクテリアアート」の張り紙があって、菌の絵が可愛らしい。

中に入ると、ちょうど発表をしていました。どうも菌のことを探究しているうちに子どもたちは「菌(バクテリア)アート」というものに出会ったのだとか。

しんさんから「山梨大学に菌に詳しい先生がいるらしいよ」との情報を聞きつけ、子どもたちは田中靖浩先生に辿り着きます。そして、田中先生の名前を調べていく中で、なんとメールアドレスがわかった。そこで、協力の依頼メールを作成することになります。

しかし、大人に向けたメールのつくり方がわからない。そこで、スタッフのよっしーからビジネスメールを教わることになりました。しかも、あとからよっしーに聞くと、最初から答えらしいものを教えたのではなく、まず二人の子に自分たちでメールの文章を考えてもらうことからはじめたのだそう。そのあとには、二人で相手の考えた文章を添削し合う。そこで、ようやく具体的なアドバイスをしていったとのこと。

まずは、自分たちで考える。すぐに答えに走らない。スタッフの関わり方一つをとっても、主体性を大切にしようとする一貫した姿勢があるな、と感動しました。

こうして苦労して完成されたメールは田中先生に送られ、無事に協力してくれることになりました。そこからZoomでやりとりしながら、菌アートのつくり方などを教わり、自分たちで実験したものを、教室内で展示していました。

発表の最後、「このプロジェクトで学んだ事」の発表スライドには、菌のことはもちろんのこと、「ビジネスメールの書き方」と書いていたのがとても印象的でした。何かを学ぶ道の途中で、ついでにうっかりと学んでしまう「予期せぬ副次的な学び」がある。その学びこそ、実は一番身について残ることなのかもしれません。


感情は2185個ある?フィードバックからの即座の改善。

続いて、7年生のホーム「く」の「~感情とは何か~」のプロジェクト。はじめに一人ひとりが調べたものの発表があって、最後にグループとして取り組んだ「感情マップ」の話がありました。

この「感情マップ」が凄かった。まず、最新の研究の共有。どうやら「感情は2185個ある」らしく、大きく分けると「27種類」だとか。しかも、その感情に色づけされていたりします。

子どもたちはその理論をもとに、風越での学校生活における子どもたちの感情の変化を調査していきました。朝、午前中、お昼、午後、帰り、と時間を分けて、様々な場所にいる子どもたちに、その時の「感情」をインタビューしていったのだそう。

例えば、朝の時間、そうぞうの広場で、ある子にインタビューをする。その子の感情が「おだやか」と返ってきたら、朝の時間のそうぞうの広場のマップ上にオレンジ色のシールを貼っていく。このような方法で、時間別・空間別に調査していきました。理論をもとに、しかも時間別・空間別に調査していくなんて、かなり本格的な調査だな、と感心しました。

調査の結果、朝は「喜び」や「楽しい」という感情が多いことが判明。特に面白かったのは、9時半ごろから「怒り」の感情が出てきたこと。あとから「どういう怒りがあったの?」と聞いてみたら、どうやら、その子は算数の問題がなかなか解けずイライラしていた、とのことでした。(なんだか分かる気もする…。)

さらに感動的だったのは、発表後のフィードバックの時間。子どもたちも参観者も床にサークルになって、「今の発表へのフィードバックや感想をください」と。しかも、あとから聞いた話だけど、最初からこの形式をとっていたわけではなく、何度か発表をしていく中で、この形に改善していったのだとか。

その場でフィードバックを受けては、即座に改善していく。このサイクルが、ともかく早い。体験学習のファシリテーターでもある僕としては、大感激でした。


においとは何か?ささやかな選択の自由。

次は、7年生のホーム「か」の「~においとは何か~」のプロジェクト。教室内には出店のような場所が3箇所あり、順番にぐるぐるとまわっていきます。それぞれの場所には、それぞれの担当の子が待ち構えていて、行くと、においを嗅がせてくれます。においを嗅いだ人は、それが何のにおいなのか、付箋に書き残していきます。

ここで個人的に密かに感動していたのは、「嗅ぎ方」を選ばせてくれたことです。(このにおいの液体を)「手につけますか?それとも、紙につけますか?」と、まるで香水を売っている店員さんのような振る舞いでした。

どのようにこの二つの嗅ぎ方が採用されたかは知りませんが、きっとそこには思索があったはず。一つではなく、二つから選べるということ。小さなことではあるけど、この「相手に選択の余地を残すこと」が、相手の主体性と自由を保証するのだろうと感じました。

きっと普段から、スタッフからたくさんの「選択の自由」を与えられているからこそ、こうやって来場者に対しても、そのような振る舞いになるんだろうな、と感じました。関わり方は、伝播するようです。

※最後のブースでは、においの抽出液をつくる過程の動画が流れていました。ここにも担当の子がいて、においの抽出の仕方についていろいろと教えてくれました。


ひっくり返って見えるのを、ひっくり返してみても、ひっくり返って見えるの、なんで?

午前中の最後に訪れたのは、7年生のホーム「こ」の「~見えるとは何か~」プロジェクト。しかし、僕が到着したのは11時30分過ぎで、全ての体験型ワークショップが終わってしまっていました…。(ああ、まわり方、失敗した…。)

しかし、しばらくその場所に残っていると、なんとも面白い光景に出くわすことになりました。幼少グループの子たちがやって来て、覗くと景色が反転して見える手作りスコープをいじりはじめます。

その中で、ある男の子がとっても面白い問いを発します。「ひっくり返って見えるのを、ひっくり返してみても、ひっくり返って見えるの、なんで?」と。おお。いい質問だ。その子は、覗くとひっくり返って見えるものだから、このスコープの箱をひっくり返せば、正常に見えると考えた。そこで、実際にひっくり返したみた。でも、あれ?まだ、ひっくり返ってるーーー!となったわけです。

この問いを見逃さないスタッフのゆっけさんとわこさん。「じゃ、聞いてみようか」と、近くにいたプロジェクトメンバーの女の子二人に聞きにいきます。すると、聞かれた二人は「うーん…」と黙り込んでしまいます。そこで、「待って!男子、呼んでくるから!」という展開になり、扉の向こうから一人の男の子が現れます。(この「男子、呼んでくるから!」という感じ、ちょっぴり懐かしくて、ほっこりする。)

そして、7年生のお兄さんが説明しはじめます。説明の途中、「あ、この言葉じゃわからないか…」と、幼少の子への伝え方に少し苦戦している様子。そして、最終的にされた説明は、「人間の目のレンズは二重構造で、このスコープのレンズは一つ。だから、反転を正常に見えるようにするには、レンズを二つ重ねる必要があるんだよ」と。(おおー、なんか、それっぽい説明がきたぞ、すごい!でも、それ本当?あまり目の構造に詳しくない僕はよくわからず、その後の展開を見守ることにしました。)

すかさず、スタッフが尋ねます。「それって、今、実験できるかな?」と。そして、その場で二つのスコープのレンズを重ねてみることになりました。その場面の動画がこちら。

しかし、2つのレンズを合わせてみても、うまくいかない。そこで、スタッフからこんな提案がありました。「もしよかったら、景色が反転しないやつを作ってもらえるかな?で、もしできたらホーム『あ』にお知らせしてくれるかな?」と。それを受けて、男の子は「ちょっと時間をください。一週間後には!」と返答し、この場面は一件落着したのでした。

この場面を目撃していて、率直に、ああ、なんて素敵なやりとりなのだろう、と感じました。子どものささやかな疑問を逃さないスタッフ。そして、その疑問をスタッフが答えてしまうのではなく、プロジェクトメンバーへと接続させる動き。さらに、今できる実験は「今ここでやってみよう!」という提案。しかも、うまくいかなくても、探究を次へと繋げて終わる、という…。

なんと高度な探究の進め方をしているのだろうか、と心から感動してしまいました。異年齢だからこそ、起こった出来事。幼少の子に説明を求められたことで、「より優しい言葉で伝えなきゃ」と、その伝え方を吟味するところにも一つの学びがあります。もちろん疑問を投げた子の探究も続くでしょうし、疑問を投げられたお兄さんの探究も続くでしょう。その橋渡し役を見事にスタッフが担っていたのでした。

きっと「学びの伴走」とは、こういうことなのだろう、と思いました。学びには「持続性」がある。学びは決して一回きりでは終わらない。学びは続く。だからこそ、今この瞬間にポッと芽を出した、その子の探究心を見逃さず、それを支えて、その芽が伸びゆこうとする方向へとしっかりと伸ばしてあげる。その環境づくりとサポートこそが、よき伴走者の役割なのかもしれません。


さてさて、とっても長くなってしまいました(笑)よくここまで読んでくださいました。これで、ようやく午前中のおしまいです。思っていた以上に長くなりすぎましたので、一旦、ここで区切って「前編」とさせていただき、午後の出来事は「後編」として書いてみようと思います。最後までお読みいただき、ありがとうございました。それでは、「後編」もお楽しみに。

古瀬正也(古瀬ワークショップデザイン事務所

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かぜのーと編集部です。軽井沢風越学園設立準備のプロセスを多面的にお届けしたいと思っています。辰巳、三輪が担当。

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