2022年8月23日
風越学園は町内の小中学校と連携をして合同研修を開催している。「連携」の1つの形として「本の虫プロジェクト」があった。これは上田にある古書店であるバリューブックス(VB)から提案されてスタートした,2021年1月から3月にかけてのプロジェクトだ。
VBはインターネットを介して本や雑誌を買取・販売をしており,毎日1万冊の本が届いては1万冊の本が売られていくという。しかし,その中でベストセラーになった本は,多くが買取されて在庫になるものの次の読み手がないまま古紙回収に行かざるを得ないことがあるという。本としてはまだまだ状態が良いにもかかわらずである。そこで,VBでは価格のつかない本をリサイクルとして学校図書館に寄附して,子どもたちの読書環境に寄与したいという「本の虫プロジェクト」にチャレンジしようとしていた。VB担当の中村さんから連絡をいただいて「学校図書館に10万円分の図書を寄贈するプロジェクトを考えている。風越学園でそのモデルをやってもらえないだろうか」と言うお誘いだった。
ありがたいお話だったが風越学園は開校してまもなく,ライブラリーの資料には古書も含まれてはいるが状態の良い本が揃っている。そういえば背が日焼けした本が目立つ棚もあったな・・・と思い出し,そうであれば,町の学校図書館で引き受けることはできないだろうかと思い当たった。。そこで,長野県から教員派遣されていたスタッフのいた軽井沢町西部小学校に相談することにした。図書担当の先生はじめ校長先生も,このプロジェクトを大変喜んでくださったが,同時に本を選ぶこと,PCに登録すること,装備することの手間を考えると・・・考える時間も必要だったと思う。
最終的には,牛木校長先生(当時)の決断があり,このプロジェクトにチャレンジすることになった。風越学園は、本選びと装備の段階をサポートすることになった。
このプロジェクトで大切にしたいことは「西部小学校の先生方が必要だと思う本ができるだけ選ばれること」だと,VBの中村さんと打ち合わせする中で考えた。そこで、町内の合同研修の際に風越学園のライブラリーにある本を参考にして選んでいただくことにした。
2021年1月下旬の合同研修では,まず私が風越で本を選ぶときに大事にしている視点を話して,その後オンラインではあったものの、西部小学校の先生方から「気候をテーマにした本が見たいです」と言うリクエストを受け,風越学園のスタッフが本棚の様子を見せて、さらに一冊一冊の本を開いてこれだ!と思った本をアプリに登録するという作業を行った。わずか20分ほどの時間でしたが、ライブラリーの至るところで風越のスタッフと西部小の先生方がやりとりしながら本を選んでいく姿が見られた。
この後は,裏方の作業。西部小学校にある蔵書のデータをお預かりして,これと先日の合同研修で選ばれた本のリストがデータになったものとをスクリーニング(重複していたものは希望から除いた)した上で,VBの中村さんに希望図書のデータとしてお預けした。そこからの時間が長く感じられた。西部小の先生方が選ばれた本はどのくらい入手できるものかなぁと思ったり、10万円でどこまで希望の冊数の揃えられるものなのかなぁと不安な気持ちがあり・・・内心ドキドキしていたから。
1週間ほどして,中村さんからのメールが届き「調達可能な本のリストです」と書かれた添付ファイルを開いてみると・・・,あ〜やはりこの専門的な図鑑はなかったか,と一喜一憂し,また希望リストには載っていなかったけれどもシリーズの本を揃えてくれていることに感謝し,割引価格で計算してくださっているではありませんか。その総数323冊。
さて,これらの本はどのように西部小学校の子どもたちに届けられたでしょうか。実は・・・本を載せた大きなバス,通称「ブックバス」が西部小学校へ本を届けたのです。
西部小学校の先生方は,プロジェクトが始まった段階からこの本を受け取る子どもたちの気持ちを常に考えててくださっていた。この日,子どもたち一人ひとりが順番にバスに乗り込み,自分が読みたい本を手に取る姿,迷いながら本を選んでいる姿,お友達と話ながら選ぶ姿を見て,子どもたちが本の送り手の気持ちを大切に受け取ってくれているのを感じた。
春休みになると,本の装備(本の背にシールを貼り,全体にカバーを貼る作業)やPCへの登録が待っていた。装備には人手が必要です。こんな相談を牛木先生にしたところ他の先生方にも声をかけてくださり,副校長の阿部先生をはじめ何人もの先生方が,図書室で装備作業をしてくださった。作業をしながら雑談ができるのも良い時間。
それから時間が経ち,2021年度はVBから送られた「本の虫プロジェクト」の本が使われたのだろうか。それについては2022年3月教員派遣を経て西部小に戻られた,れいか先生にお話をうかがったので、また別の記事でお伝えします。
風越学園の「連携」は,システムの中で生きてくる連携はもちろんのこと,今回のプロジェクトのように,人と人が繋がり,時に学校の協力を得ながら子どもたちに還っていくような場合があるのかもしれない。
本は親子をつなぎ,友だち同士をつなぎ,自分自身をエンパワーしてくれる。ライブラリーでは,せんせいと子どもたちがどんな風につながっていくのだろう?自由な読書と学びと連動したメディアの活用の可能性を探り続けてきた,動ける(からだを動かすことがすき)司書教諭です。
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